ランチのお店で我らの年代が話す話題、年金やらお墓やら。
一段落ついたところで、
「ね、私たち三津五郎さんの襲名披露観ているよね」
といちばん長い付き合いの元同僚に聞くと
「えっ?どうだったかしら、覚えてないけれど」って。
えっ?私、一気に不安になる。なにしろ記憶力目減りの一方だからね。
三津五郎さんが亡くなったニュースを見たとき、
「あれえ、先週テレビで観たけどなあ」と頭の中が混乱。
BSで彦根城を嬉しそうに生き生きと紹介している番組を観たばかりだったのよ。次は姫路城を、とか言ってたのよ。
あれって妄想か幻か記憶違いかと一瞬思ったけれど、テレビだからいつ収録したか分からないものね。
風景もお洋服も秋のようだったな、後で調べよう、と納得して。
で、その同僚と記憶を突き合わせる。
「前のほうだったよね。花道の近くがよかったねって言ってたから右側だったよね。
なんか舞台にずらっと並んでいたのは覚えているけれど、そうだったかしら。
そんな、何にも投げてなかったと思うけれど、掴んでいたら覚えているはずよ。現役の時だったからずっと前のことでしょ」
私、またもや自分が不安になる。
ん?違う人たちとだったっけ?いやいや団体で歌舞伎を観に行ったことはこのメンバーでしかない。
たいていは一人だったからね。
「舞台で口上を観たじゃない。そして、なんか投げて、2月だったから豆まきかしら。あなたそれをキャッチしたわよ」
私は三津五郎さんで、初めて襲名披露の口上というものを観たと言おうか聞いたと言おうか、経験したのでかなり興奮したんだと思う。鮮明に記憶しているのよ。
菊五郎さんはじめずらりと並んだお歴々の方々の口上が、半数以上、三津五郎さんの派手な女性関係のことを暴露して、
会場の笑いを誘っていたのよ。
うん、でも玉三郎さんは真面目一筋の内容だったと思う。そこまで覚えていても自信ないから主張できない。
でもでも、彼女はそうだったかしら、と言うから、私は頭の中にあるあの絵はなんだったんだろうと、
自分がおかしいんじゃないかと思って。
こうなりゃあ、筋書きを探すしかないわ。本棚探る、ありましたありました。ほっとしましたよ。
平成13年2月とあって。
もう10年以上、く歌舞伎座には行ってないなあ、と。
三津五郎さんは八十助時代の舞台を結構見ていたのだなあ、としみじみする。
そうだわ、筋書きの中に山川静夫さんとの対談があって、そこでもお城好きの話が出ていたわ。
今頃、仲の良かった勘三郎さんと、演じているのかしら遊んでいるのかしら。