帰りは上大岡のバス停で小柄な老女が話しかけてきた。
JRの駅に行くには「ここに並んでていいのかい」と何度も確かめる。ここでいいのですと前に並んでもらう。
耳鼻科に行くんですって、家は伊勢佐木町のマンションですって。
伊勢佐木町からわざわざ上大岡に出てそれからまたJRの駅か、遠いね、と思いつつも諸々の事情があるのだろうと。
普段はいいのだけれど携帯が聞こえないから息子が補聴器つけろと勧めるんですって。
補聴器と聞きつけて、思いやりベンチに座っていた(上大岡のバスターミナルには4,5人座れるベンチがある)
老女が「私も補聴器つけていますよ」と付けている補聴器を外して小柄な方に見せた。
しげしげと見たその方「いくらするの?」
単刀直入、会話に躊躇がない遠慮がない、好きよ。
「24万8千円です」って。
小柄な方と私はひっくり返った、いやいや父のそれがそのくらいの値段だったからやっぱり、とは思った。
小柄な方は「私は2万円くらいだと思ってきたの」
とおっしゃる。う~んそれは無理かもしれませんね。もうちょっとかかりますよ、とそれとなく。
ベンチの老女も「お値段はいろいろありますから」とフォロー。
それにしても耳鼻科にわざわざバス乗り換えで通うのは大変だ。
ベンチの方と二人で、何回も通うようになるから、耳鼻科はご自宅の近くの方がいいんじゃないですかと勧める。
「そうだね、せんせいといろいろ相談してみますわ」って。そうですその方が絶対いい。
第一、補聴器要らないくらい普通の声で会話できるのですもの、つけなくてもいいんじゃないの思ったくらい。
ベンチの方、やおら「おいくつですか?」と聞いて。
「87ですよ」「あらご一緒だわ、私も87」
お二人ともお元気である。しゃんしゃんしている。
私はその年まで生きていられませんと言うと、小柄な方がいくつと聞くから○歳です。
「あら、少女だね」
まことに気分がよくなりました。バス待ちのわずかな時間の会話、こうだから楽しい。
もちろん、バスに乗ったらそれで終わり。一切かかわりなし。