ほんとうに久しぶりに原田マハさんの小説を手に取った。
美術小説に飽きていたというのがある。
が、風神雷神上下2冊が書架に並んでいるのを見て、読んでみようかなと。
いやいや完全に原田さんの想像の世界で遊ばせてもらった。
頭の中は、そんなことありえないでしょと否定しつつ、でもそんなことがあったら面白いな
と自分も空想したりして、それらがごちゃごちゃぐるぐると回る。
半分否定、半分肯定を行ったり来たり。虚実ないまぜの世界。
京の扇屋の息子宗達がいくら絵がうまくて評判だったとしても、織田信長と謁見する機会を
得て、信長を前に即興で白い象の絵を描いてみせたりするなんて、ね、ありえない。
永徳が信長の命を受けて2作目の「洛中洛外図」を描き、しかも少年宗達を手伝わせるなんて
ありえない。完全に原田さんの想像の世界に付き合わされる。
じゃ想像の世界だからどうだってんだと言われれば、それが面白いの、引き込まれるの。
話は更に飛躍して。
「天正遣欧少年使節」メンバーは、伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルティノ、
派遣当時はわずか13~14歳。宗達も信長の命を受けて狩野永徳の『洛中洛外図屏風』を
ローマ法王に届けるため、ヴァチカンへの旅を彼らに同行することに。なんてすごい妄想。
なかでも原マルティノと気が合い、深い友情が育まれていくのよ。ここらあたりはちょっと
胸熱くなったりして。
(webより)
原マルティノ カラバッジョ
で、原田さんの想像は、ミラノにある「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」食堂に
描かれてあるダ・ヴィンチ『最後の晩餐』の前で、宗達、原マルティノと後のカラバッジョ
が遭遇しひとときを過ごす、というところまで飛んで行って。
ここまで来ると、ありえないなんてことはどうでもよく、ほんとうに宗達とカラバッジョが
このように巡り合って絵師としてお互いに刺激し合っていたら、と想像を膨らませ
フィクションを楽しんだわ。
原田さんは言っている。
「歴史小説の面白さは、歴史上、周知されていることを踏まえて、解明されていないことを
小説家がドラマチックに物語ること。ただ正確に描くことではなく、あらゆる逸脱や矛盾を
乗り越えて、高揚感を味わえるのが小説の醍醐味でもあります。もう500年近くも前のこと
だし、誰にも本当のことはわからないぶん、私の想像の翼を思いっきり羽ばたかせて好きな
ように書いています。」
(webより)
なお、宗達の人生や人物像などが何もわかっていないという。
俵屋宗達という名は、扇絵や屏風絵、金銀泥の下絵といった絵画を制作販売する「俵屋」を
営んでいたことからつけられたもので、絵師として知られるようになったのは、
芸術家・本阿弥光悦が自身の書の下絵を宗達に描かせたことがきっかけだといわれている。
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