中日新聞の柴犬フランス歩記(あるき)というコーナーで、「母の短い恋」というタイトルで、浅野素女(あさの・もとめ)さん(フリージャーナリスト、指圧施療師)が投稿されていました。
アニックとその姉妹は、夫亡きあと大きな家にひとり暮らす母(84)の今後に悩んでいた。
生きることに興味を失ったかのように、娘たちの訪問を待つばかりになった母の存在は重かったし、一人暮らしの限界も見えていた。
それぞれの家庭生活を尊重するフランスで、子が親を引き取る例は少ない。
さんざん探し回り、母を説得してある高齢者施設を試してもらうことにした。
二週間のテスト滞在だ。
1ヶ月ほどして様子を尋ねると、「それがね、もう家には戻らないって!」。
即座には状況をつかめず目をしばたたくと、アニックはちょっとためらってから続けた。
「入居者のひとりで車椅子生活の9歳年下の男性とすっかり意気投合しちゃって、もうずっとここにいるって、頑として動かないの・・・・」
つまりは一目ぼれ。
娘たちが予想外の展開にうろたえた様子が目に浮かぶ。
「以来、いつもふたり一緒。もう家なんか野となれ山となれって感じよ」。
男性の絶対数が少ない高齢者施設で、周囲の目などてんで気にならない様子。
アニックの口ぶりになお戸惑いがにじんでいた。
80代の母が少女のように恋に落ちたのだ。
魔法のように、生きる喜びを取り戻したのだ。
徐々に娘たちも状況を受け入れ、相手の男性と親交を深めていった。
ところが3ヶ月後、「話したわね、母の彼のこと。実は先週突然、心筋梗塞で亡くなってしまったの」。
なんとまあ、短い恋だったことか。
先がないからこそ純粋になれたのだろうか。
「もちろん悲しんでる。でも、彼に出会ったおかげで、母は他の人たちにも心を開くようになったの。いくつになっても、変われるって大切なことね」。
娘たちの中でも、母への視線が微妙に変わったようだ。
以上です。
この話から昔 宿直のバイトをしていた時、宿直の先輩からお聞きした話を思い出しました。
先輩は私と同じ特養の宿直をされていました。
私のところと違って、元気な方が入居されていました。
そこで男女のカップルが生まれました。
このカップルは特養から出て、アパートに住むようになったとのことです。
男性は働きに出て、女性は家事をすることになったそうです。
半年ぐらい経って、先輩の施設に女性から電話があったそうです。
「施設に戻りたい!」と。
分かるような気がします。
施設に入れば、食事も準備しなくて良いですし、何もかもワーカーさんがやってくれます。
二人で暮らせば、家事の一切を引き受けなければいけません。
現実の大変さに気づかれたんでしょうね。
もう先輩の施設は空いていませんでしたので、他の施設に入られたのかな?
高齢者の恋は、難しいですよね。😅
四月の恋/パット・ブーン