世界各地で数々の賞をもらったらしいですが、私にはイマイチの感じでした。
巨大な製作費を使ったかつてのハリウッドの大作映画のようです。特に1979年の中国・ベトナム間の戦争シ
ーンに時間とお金をかけ過ぎです。映画の主役の一人小萍は、野戦病院の過酷な経験などから精神を病むので
すが、戦闘シーンも、過剰な血しぶきは必要とは思えません。また上映時間136分は長すぎです。
中国の歴史は、複雑で難しいです。映画の舞台は、プロレタリア文化革命が終わりを迎えた1976年です。文化
革命の様々な残滓が色濃く残っています。一般大衆は、何よりもその出自が重視されて来ました。貧農や労働者
階級出身はそれだけで優遇されました。でも、知識階級でも革命に参加して、功績をあげるとエリートでした。
家族つまり父親の出身・経歴、つまり封建的戸籍制度が残酷なほど大きな役割を果たすのです。主人公たちが属
したのは、兵士・紅衛兵を慰問する歌劇団・文工団、です。出自の良い団員はその「威光」を借りて、そうでない人
を半端なくいじめを受けます。
文革で弱まった軍隊は、ベトナムに完敗します。中国は、この敗北を一つの契機に毛沢東の死と文革の疲弊を
乗り越えるために「近代化」に舵を切り始めます。そうした時代背景の中で、青年たちの苦悩を描くのが本来な
らこの映画のテーマになのに…、残念ながらそれらの表現は全く不十分です。中国映倫はとても厳しいので、現
代中国の批判はとても難しいらしい中、皮肉的批判が随所に込められてもいるので頑張ったな、の印象もあり
ますが、冒頭写真にあるプールサイドの水着や下着シーンなどは全く不要で、興ざめでした。
心を病んだ小萍と右腕を失った劉峰がホームのベンチで肩を寄せ合うラストシーンに、やっと静けさと穏や
か取り戻した二人に私は、少し心穏やかな気持ちになり、「良かったね」です。
【11月11日】