JR全線の乗りつぶしもあと少しというところで、冬の車窓を味わおうと根室本線に出かけることにする。途中の池田~釧路までが未乗車区間(夜行列車で寝ている間に走り抜けたことはあるのだが、夜行列車の場合は「夜間走った区間は乗ったことにしない」のが、自分流の乗りつぶしルールのため)であり、これをターゲットにする。
ネットで調べたら、羽田からの往復の航空運賃プラス指定都市のホテル1泊つきのプランがたくさんある。その中で往復の空港が違ってもよいという条件のものを見つけたので、往路は帯広まで、復路は釧路からという組み合わせにする。
ということで羽田から飛び立つ。東京上空は晴天だったが、高度を上げると陸地はすっかり雲に覆われているのがわかる。着地の天候が不良の場合は羽田に引き返すというアナウンスもあったが、再び雲を突き抜け、一気に白い大地を見渡す。陸地をずっとたどり、徐々に雪景色になっていく車窓を眺めるのもよいが、こうして一気に天候、風景が変わるというのも面白いものだ。
帯広には定刻から若干遅れた程度で無事に到着し、連絡バスで帯広駅に向かう。途中、旧広尾線の幸福駅横を通る。数年前に幸福駅に降りたことがあり、旧駅舎の内側の壁(大体どのへんだったかも憶えている)に名刺を1枚貼り付けた。その名刺を見つけるのも面白いかと思ったが、この時期にしては天候が穏やかとはいえ、結局は素通りし、そのまま帯広駅に到着。ここから、釧路まで乗りつぶしをするのがこの日のプラン。
時間があるので駅構内の「ぶたはげ」で、帯広名物という豚丼で早めの昼食。独特のスパイスが効いた豚肉に、うなぎの蒲焼のたれをヒントにつくったという独自のやや甘めのたれが合う。私自身、うなぎの蒲焼のたれの甘さはあまり好みではないのだが、豚丼のたれはそれほどしつこくない。
今年3月で廃刊となるJTB発行の「北海道時刻表」を買い求めた後、帯広発釧路行きの客となる。キハ40の単行。乗りとおせば3時間半の行程である。この根室線は滝川から釧路までの約300キロを8時間かけて走る鈍行列車もあり、長距離列車はまだまだ健在だ。
帯広出発時は座席がほぼ埋まるくらいの乗車率だったが、次の札内をはじめ駅ごとに多くの下車があり、池田に着く頃には半分以下となった。この池田は「ワイン城」もある十勝ワインの産地。駅から近いのだが「ワイン城」に行くだけの時間はなく、時間調整の停車中に一度改札を出て、売店で「トカップ」の小瓶を購入する。普段ワインを飲む習慣がないものだから、結局そのまま自宅に持ち戻り、まだキャップを回していないのだが・・・・。
ここから初めての区間。山間に入り、駅と駅の間の距離も長くなる。「十弗川」という川を渡る。この「十弗」、「弗」の字をよく見れば「ドル$」に見える。その逆で、「$」に「弗」の字を充てようとひらめいた人というのは、感性があるんだろうな。円を¥で表記しようとした人もしかり。
そんなことを考えるうち、その十弗駅着。するとどうだろう、ホームに「十弗は10$駅 10$持って旅に出かけよう」などという看板が立てられている。今1$が108円くらいだから、1,080円持って旅にでかけようってどこまで行けるんや!というヤボな突っ込みは置いておくが・・・。
この後も「内」とか「別」とか「幌」という、アイヌ語由来の北海道らしい響きを持つ名前の駅に淡々と停まっていく。気づけば車内には私のほかに3名だけ。いずれも「その筋」とおぼしき客ばかりである。
薄暗い色をした太平洋に沿う区間もあり、信号場で10分くらい停車したりと、のんびりした時間が過ぎ、釧路到着。道東の中心的な都市である。この日はここで宿泊するプランで、駅前のホテルにチェックイン。しばし休憩した後、駅前の大通りに沿って15分くらい歩いて幣舞橋にたどり着く。釧路のシンボル的存在である。ここで寒風に吹かれながら、しばし運河の風情を楽しむ・・・・。