7月27日の朝、何人かの患者さんと一緒に入院病棟に案内される。籠城戦のような大きな荷物を抱えているのは私くらいのものでちょいと恥ずかしい。
通されたのは6人の大部屋。私のほかには2人の「先客」がおり、そのうちのお一人は糖尿病歴が長く、病気のことには精通している男性。この病院にも「定期的」に入院しているということだが、あまりそう「常連」にはなりたくないと思う。
入院の手続きを終え、まず初日には血糖値の一日変動を見るということでの採血(11:30、14:00、17:30、20:00、22:00、2:00、6:00、9:00、10:00)が始まる。毎食前・毎食後、就寝前、深夜、起床時の測定ということになる。入院前に自己測定器で測っていく中で、一時期は400台を記録していた血糖値もこのところは200台後半まで下がってきた。果たしてどのような結果になるだろうか。この後、採血の時間になると他の患者さんともども詰め所に呼び出され、針を刺される。こういうの、あまり気持ちのいいものやないな・・・。
入院することを知らせたため、両親が様子を見にやってきた。覚悟はしていたが病室でかなりきつい口調で諭される。まあ、これも自分の生活習慣の不摂生さが招いたことであるから言い返すこともできない。一時は現在の住まいを引き払えという話も出たのだが、そうかといって改めて同居するのも狭いということで、充分に教育を受け、摂生に努めるよう言い残して帰って行った。
さて、入院中の楽しみ(?)というのが食事の時間。病室ではなく他の患者さんと一斉に食堂で取ることになる。「食事記録」と書かれたノートとペン、そしてカメラを持って食堂に入る人が多い。私も「何か撮影することがあるかな」と思い、籠城戦セットの中にカメラを持ち込んでいたために持って上がり、食事の撮影とする。入院中、毎食この作業を続ける。
これはある日の昼食メニュー。患者の性別、年齢、体格に応じて栄養士から一日のカロリー指示があり、私の場合はMAXの2000kcal。1200から2000までの幅があるが、それは主食の量であったり、おかずの中に何か食品を一種類追加することで差をつけている。
病院食、特に糖尿病食は「まずい」とか「味が薄い」という先入観がある。確かに、これまで濃い味を好み慣れてきた身には味薄く感じるが、思ったよりも量はあるし、見た目も鮮やかだ。糖尿病の場合、「これは絶対に食べてはいけない」というものはほとんどなく(「糖質制限食」という考えも一方ではあるが、ここでは置いておこう)、要はバランスと全体の量(カロリー)ということになるが、さまざまに凝ったメニューも出ており、食事に飽きることがない。
男性と女性でテーブルが分かれているのだが、やはり口をついて出てくるのが「今まで食べとったのと比べたら断然少ないわ」「やっぱ味付けは薄く感じるなあ」というのが男性陣。「病院やからええけど、帰って毎日こんなん作るのはようせんわ」「主人がいてるから別に用意せなあかんわ」と心配しているのが女性陣。私も従来この倍とは言わないが、理想カロリーを遥かに上回る食事を、それもごくたまにではなくほとんど毎日のように摂っていたことであり、そりゃ、いずれは身体に影響を及ぼすわということが思い知らされる。
食事の後は、こんな感じでホワイトボードに記載された食事の内容を記載する。ここには食材の種類と量、そして日本糖尿病学会がいうところの「食品交換表」上どの種類に分類され、「何単位」あるかが書かれており、それをノートに書き込んでいく。これを3食について行うことで、理想カロリーに応じて、どの種類の食品をどのくらいのバランスで食べればよいかという「目安」がわかるという仕組みである。「食品交換表」のテキストと実際の食事で出た内容を見比べて、理想とされる分量を感覚で理解させるというものである。
※こうした「カロリー」の面からの食事療法に対して、「血糖値を上げる要因となる炭水化物を制限すれば他の食品は多少多く摂ってもよく、こっちのほうが理に叶っているし楽である」という糖質制限食療法というのがネット上では結構推奨されている。どちらが正しいのかは私にはわからない。※
さて27日の午後からは蓄尿検査。これが丸2日にかけて行われる。尿は全てビンに入れなければならないということで、外出先でトイレに入るわけにもいかず、従って外に出るのもごく限られた時間ということになる。血糖値が高い間は激しい運動は下げるように言われており、結局はベッドのうえで籠城用に購入した文庫本を読んだり、携帯電話のワンセグでテレビを見たりという生活になる。まずは、身体の状態がどうなっているかを徹底的に調べることだ・・・・。