夏の青春18きっぷ旅の2回目。前回は「サイコロ」で行き先を決めて伊勢湾フェリーと岡崎の八丁味噌探訪ということになったが、ならば今回は西のほうに行ってみようということになる。
8月8日、今回はサイコロを振ることもなく、久しぶりに昼間の姫新線に乗ってみようと思う。姫路から津山を経由して新見まで結ぶ158.1kmの長いローカル線である。ただ今ではこれを直通する列車はなく、何回か乗り継ぎを重ねていくことになる。
プランニングしたところ、姫路を朝6時55分に出る播磨新宮行きから始めるのがよいが、大阪・尼崎からだと普通列車では間に合わない。一度上郡まで行って智頭急行線で佐用まで北上すれば佐用からは同じ列車になるのだが、今回はあくまで姫路から乗るのが目的。最初は姫路への前泊も考えたが、前日は神戸でのナイターを観戦。姫路まで移動するのもしんどいなと。
・・・・ということで、この日は新大阪からの新幹線で始める。6時05分発のひかり541号。ガラガラの自由席に乗り込み、わずか30分で姫路までやってくる。道楽とはいえちょっと反則かな・・・?
高架の姫路駅、播但線と姫新線の共用ホームに真新しいステンレス製の車両が停車している。キハ127形というやつで、姫新線の姫路から佐用の間で走っている。内装は1列×2列の転換クロスシートが並び、ぱっと見ただけでは気動車とはわからない。エンジン音も静かなものだ。
地元の人や学生が半分、そして「その筋」の人たちが半分の割合で、2両の座席が8割がた埋まったところで発車。すぐに高架線を下り、近郊住宅区間を行く。余部までは区間列車を含めて1時間に2~3本の割合で走るところで、田園地帯ではあるが分譲住宅やマンションも結構目立つ。
本竜野着。童謡「赤とんぼ」などで知られる三木露風ゆかりの地であり、ホーム横には「赤とんぼ」をモチーフにした像も立つ。この気動車のドアにも「KISHIN」と赤とんぼをモチーフにしたマークが飾られているし、駅名標も夕日をイメージさせるオレンジ色。路線のイメージアップである。
一方で竜野はヒガシマルに代表される醤油の産地。またここからはそうめん「揖保乃糸」の看板が目立つ。そうめんに関する資料館もあるそうだ。うーん、そうめんか。毎日暑い日が続くからな、冷えたそうめんなんぞすするのもいいかな・・・。
播磨新宮着。現在改築中のところ、踏切を渡って反対側ホームに佐用行きが待っている。再びキハ127形の人となり、冷房の風がちょうどあたるところのシートに陣取る。ここで「その筋」の人たちの占有率が高くなった。
この辺りから車窓のほうものんびりとしてきた。朝からギラギラした太陽に照らされ、緑が濃い。三日月という珍しい駅名も過ぎる。
佐用到着。ここまでは転換クロスシートのガッチリした車体で走ってきたが、ここからが「その筋」には評判の悪いキハ120形が一大勢力をなす中国山地である。車両もいっぺんに小ぶりになったし、ロングシートだし、かといってボックス席は狭いし・・・結局ロングシートに座る。ただ冷房の通風口がバスのように位置を動かせるタイプのもので、これ幸いと有利に風が吹くように調節する。
佐用といえばホルモンうどん、それに昨年の集中豪雨での被害、それらを思いながら走る。集中豪雨で亡くなった方の遺族が佐用町を相手に4億円だかの損害賠償を求める裁判を起こしたとあった。気持ちはわからないでもないが、それを町相手の損害賠償訴訟という手段に訴えるのは果たしてどうかという気がする。
上月を過ぎ、播磨から美作に入る。進行右手には中国自動車道も寄り添ってきた。今や高速道路もETC割引のご時世。こういう姫新線のようなローカル線にとってはより厳しい状況となっている。かつては姫路から急行列車も走っていたように記憶しているが、今はこうして青春18の時だけ賑わうというところか。
9時24分、津山に到着。盆地特有の熱気が出迎えてくれる。次の新見行きまで時間があるので一度改札を出て駅前を歩く。
歩いてすぐのところに吉井川。この川もその昔は物流面で大きな役割を果たしており、河口の備前、そして瀬戸内を通じて大坂、江戸・・・。いまでこそ堤防やダム建設などで河川敷が広く、川の流れも細々としたものになっているが、そういうものがなかった昔は船を浮かべられるほどの流れがあったのだなと思いをはせる。
ちょうどこの日は「ごんご祭り」というのが行われているようで、夜には花火が上がるという。津山城の公園が特等席のようだ。一方の私の鉄道旅行は祭りとは関係なく淡々と進むのだが・・・。
この「ごんご」というのは河童のこと。昔は吉井川に「ごんご」がいて、船に悪さをするなどという言い伝えもあったそうだ。そんな「ごんご」も今は商店街の名前になるほど地元の人に親しまれているキャラクターである。
うーん納涼もいいかなと思いつつ駅に戻る。ここから再び姫新線の人となる・・・。