8月8日、暦の上では立秋を過ぎているが残暑が厳しい岡山の日帰り旅行。
姫新線で新見に到着し、14時48分発の伯備線~赤穂線に入る播州赤穂行きに乗車。このまま播州赤穂まで乗ってもいいくらいのものだ。
岡山県を南北に流れる3河川の一つ、高梁川に沿って走る。渓谷ムードが広がる中、2つ目の井倉で下車する。この時のツィッターを後で見ると、「イクラで途中下車。バブー」などと書いている。暑さで思考回路がどうかしちゃったかな。
ここで下車したのは、名勝・井倉洞に行ってみようということである。井倉洞へは駅から徒歩10分ほどのところ。やはりこう暑いと、涼を求めたくなる。こういう洞窟の中というのは年中気温が10度台とほぼ一定しており、30度を超える暑さから逃れるのにはちょうどいいだろう。井倉洞、幼い頃におそらく家族で訪れたことがあるはずだが、私の記憶で定かではないので、実質初めて訪れるといってもいいだろう。
高梁川の長い歴史が作り出した渓谷の中に洞窟がある。流れ落ちる滝が何ともいえない清涼感を演出してくれる。
1000円の入場料を支払い、高梁川に架かる橋を渡って洞窟の入口へ。中から冷んやりとした空気が洩れてきて、立っていて涼しい。
そして中へ。これまで見学用に解放された昔の鉱山史跡に入ったことがあり、そういうところは人や物資の運搬のこともあって坑道が整備されているいわば人工の穴だが、ここは鍾乳洞。何億年もかけて自然がつくりだしたいわば芸術作品の中を進むのである。そのため通路の幅も最小限しかないし、両側、そして上から鍾乳石や石灰柱がこれでもかと迫ってくる。
後から見学客が来るということであれば身を寄せてじっくりと鑑賞ということもできずひたすら前に進むようになるし、またところどころ身体をよじらせたり、かがませたりして岩の間をすり抜ける(よく私の身体が入ったなと思った箇所も若干あり)ことになる。全長1200m、高低差90mというスケールの大きさもあり、結構身体を動かすことにもなった。洞内の気温は15~16度とはいえ、かえって暑く感じた。空気が流れてないんじゃないかとすら思う。まあ、外気温がこのくらいの秋から冬場だって、身体を一定の時間動かせば温もって汗ばんでくるしね。
そのまま、30度の外気に出ると一瞬で眼鏡が曇る。また真夏の太陽の下に戻された。本当、どうなってるんだか・・・。
列車の時刻までもう少し時間がある。何か涼を求めようということで「これ」とやってみたのが、ちょうど流れる高梁川に足をひたすこと。浅瀬だが腰掛けられるくらいの石もあったのでそこに落ち着き、裸足になってズボンの裾を上げて川の中へ。ちょうど滝を正面に見る辺りで、足元から水の冷たさが伝わってくる。地球の息吹、歴史を感じるというのであればもっとじっくり井倉洞の中を楽しむべきなのだろうが、この時は洞窟より川の水のほうが涼を求めるということで気持ちよかった。
駅に戻り、16時25分発の姫路行きに乗車。この車両は115系の「湘南色」。やはりこの色は貴重であるし、山河を行く風景にもよく合っていると思う。JR西日本のグレーというのか、何とも言えない独特の塗装もまあ大分見慣れてきたが、最近中国地区を中心に「青」「黄」という原色を一色だけのっぺりと塗ったのが新たに登場しているとか。気動車の赤に近いオレンジというのか、あの色はあれでローカル線らしくていいと思うが、青や黄色というのはなあ・・・。何か違うと思う。都市圏で、電車の系統がややこしいから路線別に色を塗り分けているというのとも意味が違うし。
そんなことを考えるうち、高梁川の流れを見ながらウトウトともする。渓谷がいつしか幅の広い大河となったところで岡山平野。17時58分に岡山到着。姫路行きなのだし、青春18きっぷ利用期間では山陽線のうち最も座席の確保に苦労する区間でボックス席に座っているのだからそのまま乗ればいいのだが、やはりここで下車する。時刻は18時。夕食にはちょうどよい頃合である。
・・・というわけで、日帰り旅行の「打ち上げ」は岡山駅前の居酒屋「鳥好」。この7月にも訪れたところで、自分としては岡山の関所のようなところになりつつある。広い店内はほぼ満員御礼で、カウンターに辛うじて空いていた1席に入れてもらう。カウンターの向こうの板場では大将が威勢のいい声でトロトロしている従業員にカツを入れているし、客同士の話し声も賑やか。・・・確か今日は日曜日だよな。
旅行者風の西洋人のカップルもテーブルに座っており、来たのはいいけど何をどう注文していいかわからない様子で固まっている。すると相席になっていた常連風のおっちゃん2人が「通訳」を買って出たようで、身振り手振りで何がおすすめ、これはこういう料理というのを説明しているようだ。そして注文を聞くホール係は中国人のアルバイト。うーん、インターナショナル。
私のほうもしかるべく飲食した後、19時56分の三石行きにあえて乗車。姫路まで行かないこの列車は地元の人で満員だったが駅ごとに降りて行き、終点の三石まで乗ったのは4両で4人。そのうち2人はすぐに改札の向こうに消え、もう一人旅行者風の人と私だけになった。列車はこの日の営業終了のようで側線に入る。駅舎は階段を下りて向こうにあってしかもこの時間はもう駅員もいない。山の中の小さな駅に静かな一時が訪れた。風は結構涼しいし、虫の鳴き声ももう秋を感じさせるもの。次に岡山方面からやってくる姫路行きに乗るのだから岡山で待って着席を狙ったほうがよさそうなものだが、こういう乗り方というのもありだと思う。
この日も結構長い時間の鉄道利用であったが、久しぶりのローカル線の風情、そして途中下車駅での一時など、まだまだ奥深さというものを感じることができた夏の一日。もう少し時間があれば今度はその先まで足を伸ばしてみようかな・・・。