株安、円高のニュースが連日流れる中、政治はといえば民主党の代表選挙に向けた駆け引きのニュースばかり。その中で「この人は行政面で何か貢献をしたことがあるのか?」と大いに疑問視している小沢一郎の動きがカギになり、このまま出馬すれば次は「小沢総理」の誕生というのだから、結局この国の政治というのは政権政党が変わったところで何らプラスにならない、いやこの停滞期に何をやっているのかという思いがする。
一方で日に日にエネルギーを感じるのが中国経済。特に今年は上海万博の賑わいやら、買い物・観光ツアーで大挙して来日する中国人の行動が話題として取り上げられている。
その中国を中心として、東から南を見れば日本、韓国、ASEAN諸国ということになる。そして一方で西から北へとなるとロシア、中央アジア諸国、インドということになる。やはりアジアの諸勢力図の中心は中国なのかなと思わせるところだ。
そのロシア、中央アジア(主にカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)とを合わせた地域「ユーラシア」というものについて著したのが本書『ユーラシア胎動』(堀江則雄著、岩波新書刊)である。
中国の西部・新疆ウイグル自治区やら中央アジア諸国といえば「シルクロード」のイメージで、砂漠のオアシスとか、大自然の中の遊牧民の生活やら、日本では私も含めてそのようなのんびりしたイメージを持つ人が多い。ただそれがこの10年ほどで、中国の経済成長に引っ張られるように経済の「胎動」が見られるという。
本書では「石油・天然ガスの国際パイプライン」と、地域協力組織としての「上海協力機構」の紹介を中心として、実際のルポを間に織り交ぜるという構成になっている(もっともルポは数年前のことであり、現在はまた次の局面に展開しているかもしれないが)。中国、ロシア、中央アジアという、それぞれ異なる民族、宗教、文化を持つ国同士が「ユーラシア」という大きな括りを拠り所として集まるというのは興味深いことである。不勉強な話、本書を呼ぶまでこの「上海協力機構」の存在などほとんど知らなかったが、今や世界経済の中で存在感を大きくしつつある組織である。
そんな中、日本経済はどうだろう。素人の目から見る限りでは、そんなユーラシアとは逆に今でもアメリカや西側諸国のほうばかり意識しているように見える。ロシア、中国となるとどうしてもどこか領土問題のことが引っかかっているのか、冷戦構造の意識がいまだに根強いのか。ただ、これだけ「ユーラシア」の存在が大きくなっているということであれば、日本もアジア諸国の一つとしてどのように関与していくか、そういう戦略を持つ必要があるのではないかと思うのだが・・・。