湯の山温泉の温泉街から駅まで戻るのだが、バスの時間はかなり開いている。ここから駅までは3キロあまり。温泉街にいてもすることがないので、そのまま歩く。下り坂で一本道だから迷うこともないだろう。
歩いていて気付いたのが、土砂崩れのような跡があちこちに見える。先ほどロープウェーで往復した時にもそういう痕跡があったし、ホテルの施設でも「水害のため休業しています」というのがあった。何だろうなと思って帰宅後に調べてみると、ゲリラ豪雨の影響という。2010年に大きなものが発生し、幸い死者、負傷者は出なかったものの道路の陥没や水没など結構な被害があったという。今でも登山道の一部が封鎖されているし、もし温泉街に活気を感じなかった原因の一端に水害があるというのなら、かなり長期の影響である。
30分あまりで駅に到着。そしてそこからさらに7~8分歩く。近鉄湯の山線に乗って来れば駅の手前、右側に見える建物群である。先ほどの古風な湯の山温泉群と違い、いかにも最近のデザイナーが手掛けたと思われるところ。
こちらが、2012年に開業した、癒しと食をテーマとした温泉リゾート「アクアイグニス」である。片岡温泉の温泉施設を中心に、しゃれたカフェ、スイーツやレストランが並ぶ。私の母も友人グループで宿泊したことがあるという。日帰りバスツアーの立ち寄りスポットにもなっているようだ。
湯の山温泉の入浴はこちらにする。同じように郊外のロードサイトで展開するスーパー銭湯のような派手さはなく、知らなければ絶対に通過しそうな建物である。それでも入浴600円というのはいいのではないかと思う。アルカリ性、ちょっとぬめりのある湯である。屋内の大浴場のほかに、露天のヒノキ風呂、寝湯などを楽しむ。
食事は併設のレストランやカフェで取ることができるし、大広間には大きなクッションがあってそこで寝転がることもできる。食事は先ほど済ませたからもういいとして、ここのレストランやカフェも人気のようだ。ただ、一般のスーパー銭湯のように、自動販売機でちょっと缶ビールやジュースでも飲むとか、マッサージ機に揺られるとかいう楽しみとはちょっと違う。私もそういうのに行くことが多いのでちょっと戸惑いがあったが、女性客にはおしゃれな感じでいいかもしれない。平日でも多くの来客があるスポットだし、湯の山の新たな魅力となるか(一方で、古くからの温泉街がアクアイグニスのせいで活気がなくなったのなら皮肉なことだが)。今度は、食事込みで、(誰かと一緒に)来たいものである。
湯の山温泉駅から3両編成の電車で四日市に戻る。まだ日があるので、せっかくなのでナローゲージ路線に顔を出すことにする。
日本でも数少ない存在のナローゲージ路線。四日市から出る近鉄の内部・八王子線はその一つである。ただ、利用客の減少と、車両の老朽化にともなう入れ替えの問題もあり、近鉄としては路線の廃止を四日市市に申し入れた。その後いくつかの協議を経て、鉄道車両や駅設備は四日市市の所有として、列車の運転は近鉄と四日市市が出資する新会社が行う「上下分離方式」で存続することになった。ただ、「近鉄の路線」ではなくなることで、これで近鉄からナローゲージ路線は消えることになる。特急「しまかぜ」やあべのハルカスと引き換えに、切り離さなければならないものがあるということである。バファロー・・・いや、何でもない。
およそ15分おきに、内部線の内部行きと八王子線の西日野行きが交互に出て行く。今回は次にやってくる方の路線に乗ることにする。来たのは短い方の西日野行き。3両編成の前と後はそれぞれ運転台の方を向いた一人がけシート、中央はロングシートである。
学校帰り、買い物帰りの客を乗せて西日野に到着。住宅街の中心部にこっそりと停まるような感じである。終点に用事があるわけではないのでそのまま折り返し便で戻る。
行きが一人がけシートだったので今度はロングシートに。発車間際にそこそこの数の高校生が乗ってきて、ロングシートに向かい合って座るのもいる。スマホ片手に向かい合うとちょうど膝と膝の間が少し開くくらいの感じで、例えばちょっと広めの喫茶店やファーストフード店のテーブル席で向かい合うくらい。人が通る時は膝をちょっとずらさなければならないが。その間隔というのも、悪くないのではないだろうか(別にそういうことを推奨しているわけではないが)。
新たな経営での運行となるが、道路渋滞が問題になる地方都市にあっては、鉄道の形で残るのは一歩前進と言える。ただ、自治体の負担もそれなりのものであるし、それが運賃という形で利用者に跳ね返るのも事実。これからどうなるだろうか、また折に触れ乗りに来たいものである。
再び四日市に戻り、少し時間は早いが、四日市で訪れるスポットに出かけることにする・・・。