11月も中旬になると、職場にも来年の挨拶回り用カレンダーが届いたり、お歳暮の贈り先のとりまとめがある。最近では「虚礼廃止」の方向でそうしたものを取りやめる流れが強くなっているし、私の勤務先企業でもトップはその方針を出しているが、まだまだ現業レベルではこうしたものは挨拶のツールであるのが実情である。まあ、相手先は精査する必要はあるが。
年末年始、青春18きっぷを軸にどこに行くか、夏のうちからああでもないこうでもないとプランニングして、宿のチェックもしていたが、ここに来て大筋は決まった。後は予約が必要な交通機関の席が取れるかどうか。
そんな中、16日の午後にすっぽり時間が空いた。この時間に何をするということもなかったところ、ふと、西国三十三所めぐりの近場に行こうという気になった。とはいうものの、山道を上る槇尾山施福寺はまた別の機会に行くとして、1ヶ所行くならばと近鉄電車とバスで訪ねる壺阪寺にした。1巡目は秋の高取城との組み合わせ、2巡目は近鉄特急「青の交響曲」との組み合わせだったが、今回は単純に寺との往復である。西国三十三所開創1300年の記念印がまだなので、早めに押してもらおうという思いもある。
雲一つない秋晴れの下、近鉄の壺阪山駅に降り立つ。この時間からだと次のバスは14時20分発。乗り込んだのは私だけで、山道を登ること10分あまりで参詣入口に到着した。
壺阪寺に来たのは、12月1日までの期間、秋の特別拝観ということで、本尊の十一面千手観音像の「お身ぬぐい」ができるためである。1巡目、ちょうど5年前だが訪ねたのが秋の時季で、ちょうど同じようにお身ぬぐいを体験した。このお身ぬぐいがどのくらいの頻度で行われているかは知らないが、今回は西国三十三所開創1300年記念と、天皇陛下即位記念として行われるそうだ。
まずは大講堂で諸仏に手を合わせる。そうするうちに外で賑やかな声がする。ちょうど札所めぐりの団体が到着したようで、先達の案内で本堂にぞろぞろと向かっている。この後、団体の後について境内に向かう形になる。
山門をくぐる。境内も少しずつ紅葉が進んでいるようだ。見頃にはまだまだほど遠いのだろうが、壺阪寺もこの奥にある高取城ともども紅葉のスポットとして紹介されている。
本堂前のめがね供養像、舛添要一・元東京都知事寄進の石灯籠も健在だ。舛添氏といえば東京オリンピックのマラソンが札幌開催に変更されたことに対していろいろ発言して、久しぶりに存在感をアピールしていたなあ。
本堂に着く。先ほどの団体が先に中に入るところである。この後のお参りもかぶりそうなので、先に納経帳への朱印をいただくことにする。先達用の巻物は重ね印だが、開創1300年の記念印がまだである。それもいただくようお願いすると、「ほんまにええんですか?」となぜか二度も念押しされてから押される。その一方で、西国観音曼荼羅の八角形の台紙は、書き置きか直筆かの選択を確認されたので、ならばと直筆をお願いした。ドライヤーで乾かす必要があり、先ほどの団体の添乗員が納経帳や納経軸の整理をしているところだったが声をかけて場所を空けてもらう。
本堂に入る。ちょうど団体が先達のリードでお勤めの最中である。そこは外陣の片隅に控えて終わるのを待つ。団体の中も皆さんそれぞれ熱心に読経されているのに感心する。お勤めが終わり、「集合は16時ですが、揃い次第出発します」という先達の声で団体はそれぞれ動く。それを見終えてから私もお勤めとする。外陣には常に椅子が並べられているので楽だ。
せっかくお身ぬぐい参拝があるので団体も多くが体験するのかと思いきや、多くはそのまま本尊が祀られる八角円堂をぐるりと回ってそのまま出たようである。そのため、八角円堂に入ってのお身ぬぐいも待ち時間なしで自分だけ体験することができる。
特別参拝料の500円を納める。手にお香をまぶし、笈摺を着せられる。そして布をいただき、十一面千手観音像の前に立つ。室町時代制作という貴重なものなので、保護の意味もあってぬぐうことができるのは胡坐をかいているその足から下である。貴重な体験の後は、係りの人から「ちょうど外でお参りしている人もいませんし、よかったら観音様の写真を撮っていただいても結構です」と言われる。このご本尊、これまでも撮影してよいものかどうか迷いながら写真に残していたのだが、お身ぬぐい参拝だけでなく誰でもOKのようである。心の広い観音様である。ぬぐった布は枕カバーと枕の間に挟んで眠るとご利益があるそうで、その夜から実践してみるのだが・・・。
この後は、インド渡来の大観音石像、大涅槃石像のエリアに向かう。開放的な壺阪寺にあって大和盆地を望むことができるスポットである。ちょうど1時間後の15時35分発のバスに乗って、壺阪山駅に戻る。居合わせた団体よりも少し短い滞在時間だった。
今回は思いつきで慌ただしい参拝となったが、秋の一時を過ごすことができた。西国三十三所めぐりについては引き続きボチボチと・・・。