広島からしまなみ海道経由の「しまなみライナー」で今治に到着。今治は私にとって四国八十八ヶ所めぐり区切り打ちの基点となったところの一つである。松山方面から来て今治がゴールだったこともあるし、今治駅前には第55番の南光坊(大山祇神社の別宮)もある。また、今治駅近辺の札所もいろいろと回っている。2017年~2018年春にかけてのことである。3年ぶりくらいかな。
今治に泊まった時には、残念ながら焼き鳥には縁がなかったが、鯛料理やせんざんき、来島サザエなどいただいた。B級グルメに焼豚玉子飯というのもあった。今回は昼食のアテがあるのでこれらはスルーしてしまうのがもったいない。せめて土産として地酒の300mlくらい買うことにしよう。
待合室の上に、岡山理科大学今治キャンパス、獣医学部の看板がある。大学名だけではピンと来ない方がいるかもしれないが、一時「モリカケ問題」で国会を騒がせた加計学園獣医学部のことである。私の四国めぐりの時、ちょうど前の札所から今治駅までの何キロかを歩いたのだが、少しだけ遠回りして、ちょうど建設中の今治キャンパスの横を通ってみた。
その「モリカケ問題」も、結局は証拠不十分というか、結論がうやむやのうちにいつしか忘れられたようだし、実際は次から次へと明らかになる問題、疑惑で上書きされてしまった感がある。結局安倍内閣から菅内閣に替わったが、コロナ対策は別としても、こちらはこちらでさまざまな問題があって・・。
岡山理科大学今治キャンパスの場合は、「国家戦略特区」などという仰々しい言葉も出たと思う。「四国には獣医学部がない」ということで、この特区制度を利用してキャンパスが建てられ、学生数も募集枠に対してそれなりに埋まっているようだが、四国の獣医師不足を解消するためとして設けられた「四国枠特待生制度」については、応募者がほとんどいない状態が続いているという。これを受けて、別に今治で認可することはなかったのではないか、やはり安倍首相(当時)の友人だから認可されたのではないか・・という野党の声もある。今治にはまた来ることにして、青春18にスタンプをいただき、11時07分発の高松行きに乗る。この列車の始発は松山で、9時36分発。終点の高松には14時33分着という5時間コースである。車両は2両つないでいるが、後ろの車両は回送扱いということで実質は単行運転である。
ボックス席とロングシートが交互に並ぶ四国オリジナルの車両、ボックス席にはすでに先客がいるので、ロングシートに陣取る。松山から高松まで5時間かけて走る車両だが、トイレがないのが難点である。5時間乗り通す人はほとんどいないだろうが、実際には途中の列車行き違い停車がトイレ時間になるし、今治や、この先の観音寺、多度津といった区切りの駅では10分以上停車する。そうした情報も仕入れたうえで乗るのがよさそうだ。
この列車も今治で20分近く停車した後、1両編成としてはそこそこの乗車率で出発。次の伊予富田で何人かの客が下車するが、そのうちの一人の男性が運転手と何やら話をしている。その後で下車したが、列車は停まったまま。運転手が無線で「お客様お手洗い」と告げている。JR四国ではやむを得ずこうした措置が行われているようだが、仮に時間が長引けば、単線区間のため列車の行き違いにも影響が出るところ。この客は今治から乗って来たが、松山方面から通しで乗っていたのなら「今治で停まっている間に行っとけよ」と言われても仕方ないところ・・。幸い、列車運行に影響がない程度で戻って来て発車する。
西条市に入り、伊予小松、伊予氷見、石鎚山と走る。この辺りも四国八十八ヶ所の札所が固まっているところ。今治シリーズの後は伊予西条をベースキャンプにしてこの辺りの札所を回り、横峰寺への遍路転がしをたどったり、果てはロープウェー併用で石鎚登山までしたのも思い出である。伊予西条そのものも名水の町だし、四国の中でもよい印象を持っている町の一つである。
11時45分、伊予西条に到着。ここで途中下車する。乗客のほとんどがここで下車した。さすがに松山から高松まで乗り通そうという人は(少なくともこの日は)いなかったようだ。
伊予西条、今回は札所めぐりや石鎚登山をする予定はないが、青春18日帰りの目的地である。列車が近づくと「千の風になって」のメロディが流れる駅。
まずは、駅に隣接する四国鉄道文化館に向かう。西条出身で、国鉄総裁として東海道新幹線の実現に尽力した十河信二を顕彰する意味もあって建てられた博物館である。
この博物館の目玉は0系新幹線。現実には四国に新幹線は走っていないのだが(予土線のそれっぽい改造車両はさておき)、その生みの親が十河信二ということで、瀬戸内海を越えて展示されている。
当時の座席もそのまま残されているし、運転室にも入ることができる。以前来た時には運転台にも上がれたが、コロナ対策ということで人形を置いて立入禁止としている。
0系と並ぶのがディーゼル機関車のDF50。主に四国で活躍した形式である。
他の鉄道博物館と比べれば小ぢんまりした建物だが、中には四国の鉄道の素朴な風情が発信されている。
駅構内を跨ぐ通路の向こうには南館がある。実際の側線にDE10が停まっていたのは偶然として、こちらも個性的な車両が並ぶ。
まずは屋外に展示されているフリーゲージトレインの試作車。新幹線と在来線という軌間が異なる路線の直通が可能という触れ込みで開発され、九州新幹線の長崎ルートでも導入が検討されたが、結局はフル規格での建設となった。
屋内にはC57、キハ65、DE10という車両が並ぶ。個人的には新幹線よりもこうした車両たちに目が行く。この中でキハ65はオリジナルの国鉄急行型の塗色で、見ているだけでも旅情が掻き立てられる。中のボックス席は張り替えられたものだが、さすがに急行型ということでゆったりしている。