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元レーサーであるカーデザイナーのキャロル・シェルビーは、アメリカ最大の自動車会社フォード・モーターズから、24時間耐久レースのル・マンでフェラーリに勝つ車を作りだすようオファーをされる。天才的なドライバーだが今は小さな自動車工場を営むケン・マイルズをスカウトし、彼とル・マン出場を目指すキャロルだったが…
車にもモータースポーツにもあまり興味がない私ですが、すごく楽しめました!仕事帰りのクタクタ状態でのレイトショーだったので、ヘタすりゃ爆睡かなと危惧してたのですが、驚異的な映像と音響のおかげで長い上映時間ながら一睡もできませんでした!まるでドライバーと同乗しているかのような高速体感。なかなかのスリルと快感でしたが、車に酔う人やジェットコースターとかが苦手な人には、ちょっとキツイかも。ワイルド・スピードもそうですが、カッコいい車がデンジャラスに爆走するのを見るのは楽しいけど、憧れはしないですね~。マネしたいとも思わない。私って骨の髄まで保守的で小心者なんです。安全運転がモットーです。スピード違反はダメ!絶対!
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それにしても。スピードレースって、ほんとんど自殺行為だよな~。劇中、炎上したりクラッシュしまくるレースカー。生きてるのが奇跡な死と隣り合わせの高揚感なしでは生きられない男たち、私なんかからするとほとんど病気。レースに身を捧げるキャロルとケンを衝き動かしてたのは、夢とか挑戦ではなくスピードというカルマのように感じました。あと気になったのは、大破したり炎上したりする車の処分方法とか、ものすごい量の排ガスとかガソリン。この映画、環境問題少女のグレタさんが観たら、How dare you!と激怒するに違いありません
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中盤から後半は、ほぼ大迫力のレースシーンだけで、人間ドラマとかはほとんどありません。それが返って贅肉を削いだようなスッキリした映画にしていました。恋愛とか家族愛とか、余計なベタベタしいエピソードは除かれていて、ひたすらスピードと勝利のために奮闘する男たちのロマンがメインになっていました。キャロルとケンの友情も、厚いけど互いの私生活や心に踏み込むことはせず、あくまで車で繋がったクールな関係だったのも好感。一度だけ中学生みたいな取っ組み合いしたのが微笑ましかったです。ケンの奥さんが、ちょっと言動がいい女気取りすぎで鼻についたわ。
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キャロルとケンを翻弄するフォードとフェラーリの内幕、大人の事情が興味深かったです。キャロルとケンに感銘を受け支援するフォード社長ですが、盲信はせずあくまでビジネス重視な狸爺なキャラ。頂点に立つ者は純真で善良なだけじゃダメ、ズルさも汚さも大事なんですよね。キャロルとケンの邪魔をする重役の、いかにも小物なセコい妨害や干渉にはイラっとしましたが。金にものをいわせて何でも思うようにしようとするフォード社長を見下し突っぱねるフェラーリ社長は、まさにアメリカを蔑むヨーロッパのプライドの高さ所以。二人ともまるでマフィアのボスみたいな風貌と手下への態度で笑えた。
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決戦のル・マンに挑むフォードのGT40、赤いフェラーリがカッコいい!マスタングやポルシェなど、車好きにはたまらんであろう名車が妍を競っています。私が特にいいな~乗ってみたいな~と感嘆したのは、キャロルが普段乗ってたオープンカーです。
私がこの映画を観たのは、もちろん車やレースが目的ではなく、W主演のマット・デーモンとクリスチャン・ベールの競演、ということは言うまでもありません(^^♪
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のレオナルド・ディカプリオ&ブラッド・ピットほど派手ではりませんが、こっちも十分に超大物の事件な競演。クリベーは子役、マットもまだ20代前半の頃から。ずっと二人を応援してきた私からすると、ほんと感無量な二人の成熟ぶりです。二人ともおっさんになった。でも、すごくいい感じのおっさんに。
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まず、マット。おっさんになったけど、脂ぎった中年ではなく爽やかで若々しい。ゴリゴリしい体つきが好き。その貫禄といい恰幅といい、年齢とともに増す篤実さ頼もしさといい、ちょっとトム・ハンクス路線?大物になっても威張った感じがしないところも共通点。若い頃は鼻もちならない天才役が多かったマット、今でも優秀な人物役がほとんどですが、昔と違って角がとれて柔らかくなった。大人になったんだな~。真の主役はクリベーに譲って、主人公を守り支える一歩退いた控え目なマットも、新鮮かつ役者としての余裕を感じさせました。
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ケン役のクリスチャン・ベールは、いい男というよりいい役者としてすっかり地位を確立してますよね~。極端に太ったり痩せたり見た目の変化が激しく、作り込みすぎる演技が見ていて疲れるクリベーですが、今回は素に近い風貌で、エキセントリックながらも天真爛漫、愛嬌たっぷりなクリベーもなかなか珍しく、役者としての幅の広さに感服。レースシーン同様、一流俳優の演技力と魅力にも酔える快作になってます。同じカーレース映画でも、ゲス不倫大根と14歳で隠し子男の「オーバードライブ」は、学芸会の見本のようなトホホ映画でしたけど。
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どんなにエモい衝突や仲良しぶりを見せつけても、二人ともいい男だけど色気がないので、BLの匂いは全然なし。腐女子が妄想を楽しめるカップリングではありませんが、最近はレオ&ブラピのワンハリもですが、男同士の恋や性愛ではなく友情を超えた精神的な愛を描いた、いわゆるブロマンス映画が人気。ブロマンス好きな人なら、信頼と敬意で結ばれたマット&クリベーの絡みに萌えるのではないでしょうか。
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↑マットも今年で50歳!クリベーも46歳。まさに男ざかりですね~
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↑ マットの最新作はリドリー・スコット監督、アダム・ドライバー共演の時代劇“The Last Duel“で、久々に親友ベン・アフレックと脚本も担当してます
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↑クリベーの最新作は何と!マイティ・ソーのシリーズ第3弾!元バットマンがマーベル映画に?!