まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

続・漢(おとこ)!剣闘士

2024-11-28 | 北米映画22~
 「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」
 ヌミディアで妻と平穏に暮らしていたハンノは、アカシウス率いるローマ軍との戦いで妻を失い、奴隷としてローマに連行される。ハンノに剣闘士の才能を見出した商人のマクリヌスは、アカシウスへ復讐心を燃やすハンノを利用して皇帝に接近する。アカシウスと再婚していたルッシラは、ハンノが行方不明だった息子ルシアスであることに気づき…

 24年を経ての「グラディエーター」の続編、ついに観ました!すごく面白かったです!2時間半近くある上映時間も、ぜんぜん苦ではありませんでした。家でパソコンやスマホで観てもいいような映画とは違い、絶対に映画館で観るべき映画です。そのスケールとパワフルさ!まさにこれぞ映画!最近はとんと味わえなくなってる醍醐味です。めくるめくようなスペクタクル、圧巻の映像技術や絢爛なセット、美術衣装、そして俳優たちの渾身の演技、どれもハリウッドの底力と威信を見せつけるものでした。邦画はほんとチマチマとショボいよな~。まあ金のかけかたと俳優の力量に差がありすぎるので、比べるのも愚かですね。

 お話じたいは、奴隷に堕ちた英雄が剣闘士となって復讐するという、前作と同じもの。設定もだけど、コロシアムでの死闘や、頭のおかしい皇帝の狂態など、キャラにも場面にも既視感を覚えるほど、前作と似てます。ちょっと焼き直し感も否めないのですが。細かいことを気にするヒマを与えぬ怒涛の展開と、コロシアムでの趣向を凝らした殺し合いショーの迫力と奇抜さは、前作を凌ぐと言ってもいいかもしれません。
 この続編、やはり何と言っても最大の魅力、見どころは、私にとっては一にも二にも主演俳優!ハンノ/ルシアス役のポール・メスカルですよ!

 知る人ぞ知るアイルランドの若手実力派だったポールが、ついに堂々たるハリウッド超大作主演!「異人たち」で胸キュンさせた後は、胸アツな熱演!パワーと熱気あふれるダイナミックな演技に圧倒されました。屈強で勇猛なだけでなく、どこか壊れやすい繊細な面も見せる演技も秀逸で、やっぱタダ者じゃない子!と今回も感嘆しました。そして何といってもポール、若い!まだ28歳ですから、フレッシュ!フレッシュ!フレッ~シュ♪ by 聖子!すごくイキがよくて可愛くもあるところが、前作のラッセル・クロウとの違いでしょうか。同じ復讐の鬼でも、ラッシーasマキシマスは陰陰滅滅と重苦しい感じでしたが、ポールasハンノは大らかで明るい感じ。むっつりしてたラッシーと違い、ポールは笑顔も多くて、過酷な運命の中でも若者らしい純粋さや楽観さが微笑ましくもあるヒーローでした。


 もともとゴツいポールが役のために鍛えて作り上げた、がっちりむっちり(バキバキ、ムキムキではない)肉体もお見事👏まさに戦う猛者のカラダ!日本のイケメン俳優に最近多い、ナルシーで承認欲求強めなグラビア向けキレイキレイ肉体美とは違う、役に適したリアルさ生々しさがポールの肉体にはあります。ラッシーはほとんど脱いでなかったけど、ポールは脱ぎまくってました。さすがにお尻は出してなかったけど。お風呂につかってるシーンが可愛くて好き。

 商人マクリヌス役の名優デンゼル・ワシントンの、クール&シャープな怪演も強烈です。敵か味方かわからない怪しさで、ハンノのみならず観客まで惑わし煙に巻くデンゼル御大、屈折して悪ぶってるけど根は正義感が強い好漢、というイメージの彼なので、今回もきっとそうだろうと思ってたのですが、ダークで冷酷すぎる超悪役でした!でも超カッコいい悪人。挙措が颯爽としていて、威厳と風格がある悪役。ただのベテラン俳優では無理。デンゼル級の超名優だからこそ魅力と説得力が。彼の前だと、みんな雑魚に見えます。それにしても。ハンノとの最終決戦、あんなに狡猾で悪辣な手段で権力を握ったのに、何でタイマン勝負?!さすがに20代の男にはサシでガチンコしても勝てんやろ

 アカシウス役のペドロ・パスカルも、漢(おとこ)!カッコいい!前作から続投のルッシラ役、ほぼ紅一点のコニー・ニールセンが、美しくも悲しい熟女ヒロイン。息子と夫が殺し合うなんて!けんかはやめて~!二人を止めて~!見ていて河合奈保子気分になりました。双子皇帝ゲタ&カラカラ(名前が可愛い)のイカレっぷり、小物っぷりが笑えたわ。ほとんどお笑いコンビ芸でした。気持ち悪いメイクしてるけど、演じた若い俳優二人、素は結構イケメンみたいです。あと、ヒヒ(ほとんどエイリアンな見た目の怪生物)やサイ、サメ!など、コロシアムでハンノたちに襲いかかるアニマル軍団も笑えた。

 コンスタントに作品を発表し続け、こんな大作まで完成させるなど、リドリー・スコット監督御年86歳、そのお達者ぶりに驚嘆。もう新作に着手中だとか。その精力と功労を称えるために、今度こそアカデミー監督賞を差し上げて!その新作、何と!再びポール主演!すっかり巨匠のフェイバリットボーイになったポール、ますます前途洋々ですね(^^♪

↑ デンゼル御大を伴い初来日も果たしたポール。でも予定を切り上げて急遽帰国したとか。いったい何事?彼がアジア人嫌いのエマ石やダウニージュニアの仲間でないことを祈ってます…

 ↑ たくましくて素朴な感じが好き。マーロン・ブランドを凌ぐ!とロンドンで評判になった舞台「欲望という名の電車」を、今度はブロードウェイで再演するポール。アメリカの舞台に立つのは初めてだとか。日本でも公演して!

 ↑ やっぱまだ20代、可愛い
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悪魔のような貧しさ

2024-09-20 | 北米映画22~
 「デリヴァランス 悪霊の家」
 家族と新居に越してきたシングルマザーのエボニーは、生活苦や反抗的な子どもたち、実母との確執で精神的に追い詰められていた。そんな中、子どもたちに恐ろしい異変が…
 子どもに憑りついた悪霊と対決する母親と神父…という設定は、名作「エクソシスト」と同じ。いたいけな子どもが世にも恐ろしい醜悪な形相になり、おっさんのようなダミ声でおぞましい罵詈雑言を吐き散らし、壁や屋根に這い上がり宙に浮かんだり、といったエクソシストでもおなじみのシーンもあって、リメイクなのかな?と思ったほど。実話をもとにしていると聞いてビツクリ。元祖エクソシストと大きく違うのは、悪魔に襲われるのが貧しい黒人一家だということ。非現実的な悪魔よりも、エボニー一家の底辺生活、困窮っぷりのほうが現実的で怖かったです。
 家賃も光熱費も医療費も払えない貧しさ、治安も悪い、不衛生という劣悪な環境の中で、どんどん荒んでいくエボニーを見ていると、こっちまで絶望的な気分に。貧困から抜け出せない一家の、ドンづまり生活の描写が克明に生々しく描かれていて、オカルト映画であることを忘れそうになるほど。あんなハエがぶんぶん飛んでる家、私なら1日も暮らせません!地下室で猫の腐乱死体発見!とかゲロゲロ(死語)。『醤油でクソ炒めろ!』とか『股が臭い女!』など、エボニー一家や友人の悪態や皮肉で使うボキャブラリーが、下品すぎて笑えました。
 同じリー・ダニエルズ監督の「プレシャス」も、底辺黒人の貧困や虐待を描いたシビアな内容でしたね。「プレシャス」で主人公を虐げる鬼母を熱演し、アカデミー助演女優賞を受賞したモニークが、エボニーから子どもたちを引き離そうとする児童福祉員役で出演してます。執拗に辛辣にエボニーを責めるイヤな女なのですが、彼女がそうせざるを得ない理由が悲しい。子どもたちにみじめな生活を強いても頑なに一緒にいようとするエボニーに、すごくイライラしました。愛してるから親子だから、子どもが不幸でも離れない離さないって。親のエゴイスティックな愛で、子どもの心身の健全な成育を妨げてはならないと思うのだけど。エボニーも必死なのは分かるけど、子どものことをまず第一に考えてあげて、と言いたくなりました。

 エボニー役はアンドラ・デイ、悪魔祓いをする女性神父?役はアーンジャニュー・エリス、そしてモニークと、なかなか豪華な黒人女優陣。エボニーの母役の名女優グレン・クローズが、よく引き受けたな~と感嘆するやら呆れるやならな役と演技。露出高めの悪趣味な服を着て、男に色目を使う色狂い老女。あんな母親、絶対イヤだわ~。がん治療で毛髪がない頭をさらし、バットで車を叩きながら罵倒する姿は悪魔より怖かったです。さらに、末っ子に憑りついた悪魔が、エボニーの母ちゃんに変身するシーンの顔がヤバすぎる!パンティ丸見えなのたうち回りなど、70過ぎた大物女優が何でそこまで

 ほぼ女だけの映画で、イケメンや男前は出てこないのですが、エボニーの長男役の男の子がわりとイケメンでした。まだ少年ですが、将来いい男になりそう。悪魔に憑かれた子どもたち、ほとんど児童虐待!娘がコーラスのレッスン中に、呆然と生理の血を股からダラダラ流したり。末っ子が授業中にウンコして、それを教師に投げたり。ウゲゲすぎて目を背けたくなりました。悪魔のせいとはいえ、あんなこと一生つきまとう黒歴史ですよ。

 
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原爆の父オッピー

2024-05-12 | 北米映画22~
 「オッペンハイマー」
 第二次世界大戦の最中、カリフォルニア大学で教鞭をとっていた理論物理学者ロバート・オッペンハイマーは、ナチスドイツより先に原子爆弾を開発するための「マンハッタン計画」のリーダーに抜擢されるが…
 作品賞や監督賞、主演男優賞に助演男優賞など、今年のアカデミー賞の最多受賞作。日本人にとってはかなりの問題作なのですが、原爆を茶化したバーベンハイマー騒動とか、アメリカではそうでもなさそうです。多くの米国人の無知ゆえの悪意なき無神経さや、日米の原爆に対する思いの温度差には、やはり引っかかるものがあります。日本人、そして広島県民としては、観なきゃいけないと思いつつ気が重くて、映画館へなかなか足が向かずにいたのですが、先日ようやく。期待よりも不安と懸念のほうが大きかったけど、クリストファー・ノーラン監督の独特で斬新な演出と映像は相変わらず目を驚かせるもので、3時間の上映時間もそんなに苦痛ではありませんでした。ダレない緊張感とスピード感、いったい何?どういうこと?な謎めく意味深なシーンの数々は、やはり非凡な手腕だなと感嘆せざるを得ませんした。でも正直、ノーラン監督の作風って苦手なんですよね~。その奇抜さ、才気は、意識高めの映画ファンにとっては高級なキャビアとかフォアグラみたいなテイストなんでしょうけど、舌が肥えてない意識低め映画ファンである私にとっては、美味しいのか美味しくないのか判らないようなヘンな味。明太子やキムチみたいな味の監督のほうが好きです。

 不可解かつ激烈な映像、そして時間軸が複雑な構成は、いつものノーラン節。それよりもやはり、原爆誕生、原爆使用というテーマと内容が日本人にとっては是か非か、賛か否かで、かなりモヤります。原爆の悲惨さを刷り込まれて育った広島県民の私は、オッペンハイマーたちがグイグイ原爆開発と実験に突き進んでいく過程に、すごく動揺してしまいました。中盤の砂漠での実験シーン、見ていて気分が悪くなりました。

 広島と長崎を地獄のような焦土にし、長い苦しみと痛みを強いることになる原爆の威力にもですが、実験の成功を素晴らしい偉業を成したように欣喜雀躍して祝う関係者たちの姿に戦慄。爆発までの緊迫のカウントダウンの演出とか、スタイリッシュに美しく描いてる爆発シーンとか、原爆をエンターテイメントにしてることに違和感を否めず、悲しくなってしまいました。

 原爆投下に関してはいろんな意見、考察があるようですが、やはり何か他に方法はなかったの?と思わずにいられませんでした。京都は歴史ある古都だからダメ、どうでもいいような田舎に落とせ、みたいな作戦会議での意見もゾっとしました。ナチスドイツと同じぐらい、アメリカの軍人や科学者が邪悪に見えました。戦争では侵略や虐殺など、日本もドイツも非道いことをしたけど、原爆こそがやはり最大の罪だとあらためて思いました。いま現在も未来を脅かしている核の恐怖の源となっている、という点において…

 人気スターや実力派がそろう豪華キャストも、ノーラン監督作の魅力です。オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーは、見事アカデミー賞主演男優賞を獲得アイルランドの知る人ぞ知る若手個性派だったキリアンが、今やオスカー俳優だなんて感慨深いわ。ノーラン監督作のお気にいりで常連だったキリアンが、満を持しての主演。いかにも天才です!なエキセントリック演技ではなく、表面的にはフツーの人、どこにでもいるダメ男でさえあるんだけど、目まぐるしい速度で回転している頭脳と、マグマがドロドロと燃え滾っているような精神ゆえの異様さ、しんどさを静かに抑えた感じで演じてたのが、可愛くも怖かったキリアンでした。

 原爆チームを指揮する軍人役で、大好きなマット・デーモンも出演してます。マット、すっかり貫禄も恰幅もあるおじさんになりましたね~。すごい頼もしい感じが素敵。おじさんになったけどおっさん臭はあまりなく、清潔で爽やかな感じがするところが好きです。オッペンハイマーと対立する原子力委員会の会長役、ロバート・ダウニー・ジュニアもオスカーを受賞。でも、そこまで印象に残る演技でもなかったような?かつて候補になった「トロピック・サンダー」で受賞してほしかったかも。オッペンの愛人役のフローレンス・ピューが、相変わらずの無駄脱ぎっぷり。とても20代とは思えぬ完熟ヌードです。原子力委員会長の秘書役、「フェアプレー」でモラハラ彼氏役を熱演してたオールデン・エアエンライクが端正な男前でした。ラミ・マレックも顔を見せてましたが、何の役?登場人物が多すぎて、誰が誰で何の役なのか???になることもノーラン監督作の常連組からは、ケネス・ブラナーやゲイリー・オールドマン(意外な役!)らベテランもチョコっと友情出演してました。
 余談ですが…先日、久々に平和公園に行きました。ものすごい数の外国人観光客に、ちょっとビビってしまいました。楽しそうに笑顔で原爆ドームや平和記念碑の前で写真を撮ったりはしゃいだりしてる彼らに、すごい違和感も覚えてしまいました。アウシュヴィッツ収容所跡やワールドトレードセンター跡ではこんな楽しそうにはしないんだろうな、と悲しくなりました。
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君の運命のひとは僕、じゃない?

2024-05-09 | 北米映画22~
 「恋するプリテンダー」
 恋人になる寸前で気まずい別れ方をしてしまうビーとベン。ビーの妹とベンの友人が結婚することになり、二人は結婚式に出席するためオーストラリアへ。顔を合わせばケンカになる二人だったが、ある事情により恋人のふりをすることに…
 ハリウッドでは今でもこういうライトなラブコメ映画、定期的に作られているようですが。日本では全然ヒットしないからか、ほんとんどが劇場公開されず配信に回されてるみたいですね。私も女子受けを狙ったスウィート&ロマンティック系は苦手。でもポリコレ・コンプラ無視のブラック系と、ハイテンションなノーテンキおバカ系のアメリカンコメディは大好き。「殺したい女」とか「トロピック・サンダー」「ふたりにクギヅケ」「永遠に美しく」や「シリアル・ママ」など、ほんと大好きで何度も観たくなります。

 閑話休題。たまには頭カラッポにして他愛もないラブコメ観るのもいいかな、と思って選んだこの映画。期待以上の頭カラッポmovieでした見た目も性格もいい男女が、けんかしながらフォーリンラブ、な設定はラブコメの定番中の定番。すべてにおいて目新しさのない陳腐な、でもその予定調和がラブコメファンには心地よい映画かもしれません。実際にはありえない、平凡な庶民には無縁なハッピーでリッチな世界も、世知辛い現実からいっとき逃避できる魅力。でも、ベンもビーもその家族友人も、あまりにも上級国民すぎ。いったい何者なのこの人たち?と、呆れたり鼻についたり。

 結婚式のためにオーストラリアに集結、美しいビーチと別荘で夏を満喫、ゴージャスな船上パーティー、とっかえひっかえの衣装、そして華やかなウェディング。羨ましいというより、金の使い方もったいないな!としか思えなかった私は、骨の髄まで貧乏人海外で挙式、それに出席とか、私なんかからしたら理解の埒外。海外どころか、県外でもおいそれとは出席できませんよ。ビーなんかいい年して学生(それも親に黙って退学してる)、無職なのにオーストラリアに何の問題もなく行けて、しかもおしゃれな服、ゴージャスなドレスもいっぱいもってるとか、いい年してお金持ちの親のスネかじり?いい年した娘を甘やかす両親にもイラっとした。

 ビーとベンの恋を応援したり煽ったりする周囲の人々も、不必要に多くてしかも魅力がなく、単にウザいとしか思えませんでした。お互いの当て馬キャラも、いてもいなくてもいいような存在でしたし。レスキュー隊を2回も出動させるとか、ありえないような迷惑行為も笑えなかった。脚本がチープすぎる。台詞にも展開にも、小粋とか洗練とかいった上質の喜劇の要素は微塵もなかったけど、おバカで下品なシーン、ちょっとエッチな下ネタには不覚にも笑ってしまいました。気どってないところには好感。結婚するカップルが女性という同性婚、それをごく当たり前のこととして扱ってる、というのがイマドキでした。

 ビー役のシドニー・スウィーニーは抜群のスタイルのよさと豊満さ、ベン役のグレン・パウエルは長身で筋骨隆々、アメリカでは理想的っぽいセクシー肉体美の男女なのですが、日本で人気を得るのは難しそう。二人の体を張ったおバカ演技は結構インパクトあり。特にグレンは、あっぱれな脱ぎっぷり。大ヒット作「トップガン マーヴェリック」で注目された若手俳優ですが、トム・クルーズの妖怪おじさんっぷりが強烈すぎて、若い男子なんか全然記憶になし。この主演作ではやたらと上半身裸になって筋肉誇示。ハイキング中クモがパンツの中に入ってしまい、ギャーギャー大騒ぎしながら全裸になって半べそかいてケツの穴をビーに点検してもらうシーン、あそこまでやる俳優は最近なかなかいないので、その役者魂には拍手。若い頃のクリス・プラットとかポール・ウォーカーにやってほしかった演技です。オーストラリアの明るく美しい自然や有名な観光地なども、これでもか!とばかりに背景に使用されてます。コアラが可愛かったけど、ハイキングしてたらあんな風にフツーに遭遇したりするんですね🐨
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音楽騎士♬

2024-03-18 | 北米映画22~
 朝晩はまだ寒いけど、日中はだいぶ春めいてきましたね(^^♪マイリトルガーデンにも春の兆しが。ぼちぼちと花が咲き始めてます。




 ラケナリアもボケも例年以上にきれいに咲いてくれました。トリカブトも芽を出してくれました。ロマネスコもやっと収穫。サラダやシチューにして食べます🥦植えっぱなしの球根や宿根草、花木が無事に寒い冬を越えて春に元気な姿を見せてくれると、何だかホッとします。春は心身ともに憂い季節ですが、草花に負けないよう元気に過ごしたいと存じます。


 「シュヴァリエ」
 18世紀のフランス。貴族と奴隷の黒人女性との間に生まれたジョゼフは、類まれな音楽の才能を父に認められパリの寄宿舎で学び、やがて王妃マリー・アントワネットの信寵を得て爵位を授かるまでに。オペラ座の指揮官の座を賭けた舞台の主役に、美声の若い人妻マリー・ジョゼフィーヌを抜擢したジョゼフは、彼女と恋に落ちるが…

 黒人俳優の中で今いちばん好きなケルヴィン・ハリソン・ジュニアが、実在したフランスの音楽家役を演じた歴史劇。「シラノ」に続くコスチュームプレイですね。シラノもシュヴァリエもフランス人の話ですが。ケルヴィンくん、見た目も雰囲気もすごく現代的なアメリカンなので、18世紀のフランス人には見えないのだけれども、イケメンなのでノープロブレム何をしても許される尊い存在、それが若いイケメンという生物。この映画でもケルヴィンくん、若さでピッチピチ&キラキラどう若作りしても元気でもおじさん俳優にはない、出せない瑞々しざと輝きがあります。

 とにかくこの映画、ケルヴィンくんのプロモーション映画かと思うほど、ケルヴィンくんがカッコいい、可愛い!ヴァイオリンやピアノをダイナミックに流麗に弾きこなし、フェンシングはダンスのごとく美しく敏捷な動き、道ならぬ恋に燃えて破れてロマンチックに切なく、もちろんラブシーンでは肉体美も披露。ファンには嬉しい映画ですが、まるでアイドル映画みたいな無難な内容、演技なので物足りなさも。花も実もある俳優なので、若いイケメンなら誰でもできるような役は、ケルヴィンくんにはもったいないかな、とも思いました。時どき顔がすごくあどけなく見えるケルヴィンくん、意外と小柄?落ち着いた賢い少年っぽいところも魅力的。

 ジョゼフがすごく善人キャラだったのも、何だか面白みに欠けていました。味わった苦労や屈辱、黒人という立場上、もっと複雑で挑発的、屈折した人格になりそうだけど。黒人を虐げ軽んじる白人がとことん愚かで、差別や不公平に耐える悲しく誇り高い黒人、という設定や描写もスレテオタイプ。それにしても。ケルヴィンくんみたいな美しく聡明な黒人より、どうしてあんたのほうが上だと思えるの?な凡庸な見た目と低能人間的言動の差別主義白人さん、ほんと多いですよね~。

 話が軽くて薄いのと、時代劇といえばの衣装やセットも現代人のコスプレ劇っぽいのとで、残念なほど重厚さとかスケールに欠けていました。キャストのショボさのせいでもあるかも。ケルヴィンくん以外は、ほとんど誰?な人ばかり。マリー・アントワネットもジョゼフィーヌも、軽薄で打算的なバカ女で魅力なし。革命に身を投じるジョゼフですが、そこに至るまでの道のりがもっと険しく悲劇的だったら共感できたのに。バカ女どもにバカにされた腹いせ、みたいな感じだったのがトホホ。
 
 
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花の月夜に殺される

2024-01-24 | 北米映画22~
  アカデミー賞のノミネーションが発表されましたね!ちょっとサプライズもありましたね。ノミネーション発表を待っていたかのように、問題作「オッペンハイマー」の日本公開も3月29日に決定。キリアン・マーフィーとロバート・ダウニー・Jr.も順当に候補入り。今いちばん観たい映画かもしれない「落下の解剖学」のザンドラ・ヒュラーのノミネートも嬉しいです。大ヒット作の「バービー」が冷遇されたとの批難や抗議もあるようですが、個人的には世間の高評価がいまだに理解できてないので、そんなもんじゃない?と納得でしたが。マーゴット・ロビーは授賞式を華やかにするため候補になってほしかったけど。残念な候補落ちといえば、やはりレオナルド・ディカプリオですよ。共演者の受賞を客席で見守っているレオの優しい笑顔、今年は見られないのか~。久々にレオママも見たかった。ブラッドリー・クーパーが候補入りしたので、ブラパママには会えそう。受賞の予想、そしてノミネートされた作品と俳優の演技を楽しみたいですね(^^♪

 「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
 1920年代、アメリカのオクラホマ州、オーセージ郡では石油で富を得た先住民たちが、次々と謎の死を遂げる事件が起きていた。そんな中、戦争から戻ったアーネストは町の有力者である伯父のもとに身を寄せ、裕福な先住民の娘モリーに近づき彼女と結婚するが…
 レオナルド・ディカプリオと巨匠マーティン・スコセッシ監督のコンビ作は、これで何作目?レオ×スコ爺の作品で私がいちばん好きなのは、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」かな。あの映画でのレオの珍演、可愛かったわ~。レオにはもっとコメディに出てほしいです。それにしても。レオってやっぱスゴい役者だわ~と思わせない作品と演技、ないですよね~。若い頃から長い間、コンスタントにハイクオリティさをキープしてるところが、ほんと驚異的です。いつも見てるほうも疲れるような力演なので、ご本人もさぞやしんどかろうと思いますけれども。

 あの「タイタニック」から27年、すっかりおっさんになったレオですが、私は若い頃より最近のレオのほうが好きかも。イケオジというより、カワオジ(可愛いおじさん)?優しく柔和になった童顔がキュート。ほっそりしたポッキー少年体型も今や、どっしりむっちりしたイカつくも頼もしさにあふれるガタイに。とっちゃん坊や顔と威圧感ある巨躯は、レオの演技をチャーミングかつ迫力のあるものにする武器になってます。

 今回のレオも、いつも通りの名演、熱演なのですが。レオといえばの圧巻のエキセントリック演技、常軌を逸したヤバい役…というより、心ならずも悪に引き込まれ抜け出せなくなってしまった愚かで弱い男を、いつもよりもかなり抑え気味で演じてたのが新鮮かつ、やっぱ巧いなと感嘆させられました。まず、狂気にも悪にも落ちきれない中途半端な小悪党、というのがレオには珍しい役でした。鬼の形相で画面狭しとプッツン大暴れするレオも好きですが、冷酷無比な犯罪にズルズルと加担し、愛する妻をも死に追いやらねばならない窮地にオロオロ、オドオドするイタさと親しみやすさは、今までのレオにはあまりなかった新境地だったかも。

 愚かで卑劣な役なんだけど、モリーと仲睦まじく幸せそうなシーンでのレオは、すごくスウィートで可愛いんですよ。女性との優しくロマンティックなシーンもレオには珍しく、本格的な恋愛ものにも出てほしいと思いました。アーネストが悪魔の走狗とわかっていても、彼から離れられないモリーの女心が理解できるほど、罪な可愛さのレオでした。あと、レオの顔芸もインパクトあり。喜怒哀楽それぞれの表情がどれもラブリー&ユニーク。特にへの字口が漫画ちっくで笑えます。あと、キング伯父さんにケツバットお仕置きされるシーンも笑えた。

 モリー役のリリー・グラッドストーンの、愛と疑惑に揺れる繊細な演技と毅然とした存在感は、「女相続人」のオリヴィア・デ・ハヴィランドや「ガス燈」のイングリッド・バーグマンなど、オスカーを受賞した往年の大女優たちを彷彿とさせました。彼女もオスカーを受賞してほしいものです。キング伯父さん役の名優ロバート・デ・ニーロも、さすがの名演。まさに悪魔!なんだけど、まったく悪人然としておらず、表面的には徳のある好々爺なところが怖かったです。レオとデ・ニーロ御大、新旧スコ爺お気に入り俳優ですが、スコ爺作品での競演は初?衰え知らずなスコ爺の力強く巧妙な演出、今回も冴えてました。

 それにしても。あんな野蛮で凶暴な結婚詐欺虐殺がまかり通り、発覚もしないなんて。みんな気づいてるのに、殺人を止められない、止めようとしない異常事態に戦慄。闇が深すぎるわ。殺人が大胆で過激で、陰湿さがないところがアメリカって感じ。石油で金持ちになったインディア…じゃない、先住民たち、強欲な白人たちに騙され搾取され、あげくは殺されて、人種差別より非道い目に遭ったんですね。裕福な女性先住民たちの衣装が、シンプルかつカラフルでもあって目に楽しいです。オーセージ居住区の自然の風景も美しかったです。

 ↑ オスカー候補ならず😨!残念日本アカデミー賞受賞で演技派扱いされてる元某事務所タレントさんたちの演技に比べると、今回もまさに神レベルな演技だったけど、レオなのであれぐらいはフツー、みたいに思われちゃうんでしょうね
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愛は未知との遭遇

2024-01-21 | 北米映画22~
 「もっと遠くへ行こう。」
 2065年。代々続く農地で静かに暮らしていたヘンとジュニア夫婦のもとに、テランスという男が現れる。テランスは夫婦に、ジュニアが宇宙への移民要員に選ばれたと告げるが…
 シアーシャ・ローナンとポール・メスカルの共演作、ということで以前から気になってました。共にアイルランド人、若き実力派の二人。シアーシャのほうは、もう若手と呼ぶには違和感があるほどのキャリアと貫禄。「つぐない」の可憐な少女も、今では堂々たる大人の女性、そして年下の俳優を相手役に従える大物女優に成長。この作品でも、もはや大女優の風格が漂っていました。日本の同世代の女優のように、まだキレイカワイイだけな役だってできるはずなのに、見る者によっては怖くて気持ち悪いかもしれない、女の複雑で悲しい懊悩や業に悶える難役に挑み演じ切る表現力と女優魂には、今回も圧倒されました。シアーシャの鬱屈した様子や険しい表情、そして激情的な感情の爆発は、かなりニューロティックでホラーです。コワレそうでコワレない、デリケートだけど強靭なヒロイン、というのもシアーシャらしかったです。

 ちょっと驚いたのは、シアーシャがラブシーンで完脱ぎしてたこと。シアーシャのおっぱい、初めて見たような。前半は見えそで見えない、後半になってなぜかぽろん。いかにもこのために磨き上げた!みたいな裸ではなく、もちもちしてて柔らかそうな豊満さが生々しかったです。
 私がこの映画を楽しみにしてたのは、もちろんポール・メスカルこの映画を見て、あらためて思いましたよ。いま20代で世界一の俳優は、やはりポールかも!と。「Aftersun アフターサン」や今回の役を、ポール以上に演じて感銘や驚きを観客に与えることができる20代の男優なんて、日本は言わずもがな、世界のどこにもいないと思います。

 イケメンとか美男ではないけど、素朴で逞しく優しそうな見た目と雰囲気が好き。売れっ子になるにしたがい、どんどん男前にもなっていってるポール。相変わらず素敵にゴツいんだけど、ちょっとスマートにもなってて、そのせいか今まででいちばんイケメンに見えました。屈強な肉体と不安定な精神のアンバランスさが、今回も胸ザワかつ胸キュンなポールでした。コワレていくポールが、痛ましくも悲しく愛おしかったです。

 そしてポール、相変わらず脱ぎっぷりがいい。ラブシーン以外でも豪快にすっぽんぽんになってました。彼もいかにもジムで鍛えました!な人工的な肉体美ではなく、自然なガタイのよさ。ラブシーンや全裸シーンに臆さず大胆に、イヤらしさやわざとらしさなしでナチュラルに挑めるポールのような若い男優って、ほんと貴重です。デカいゴツいけど笑顔や泣き顔が少年っぽく、肌とかもさすがに20代だわと、おっさんの私は可愛いポールとイチャイチャベタベタしてるシアーシャ姉さんが羨ましくなりました。とにかくラブシーンが多かった。若い男女が場所も時間もお構いなしに盛り合うのを見ると、何だか安心しちゃいます。少子高齢化に歯止めをかけるためにも、若者にはもっと励んでほしいです

 ある秘密、恐るべき真実が明かされるラスト。あんな形で夫婦の愛を試すことになるなんて、すごくイビツで異常だと思いました。あんな近未来が来る前にあの世に行きたいとも。SFな設定ですが、SFっぽいシーンはあまりありません。寒々しい不毛の荒野に不意に現れる宇宙船、そしてコピー人間の存在が、不穏で薄気味悪いSFでした。

 ↑ 「異人たち」日本公開が待ち遠しい!

 ↑ ポールが着てるTシャツ、ほしい!アイルランドに行った時、シャムロックのTシャツもっと買っとけばよかったわ~☘
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めおと交響曲

2023-12-28 | 北米映画22~
 「マエストロ その音楽と愛と」
 若き音楽家レナード・バーンスタインは、臨時の指揮者として立ったカーネギーホールでのコンサートを大成功させ、チリ出身の女優フェリシアと出会い結婚する。公私ともに順風満帆なバーンスタイン夫妻だったが、レナードには同性を愛するというもうひとつの顔があった…
 うう~ん…すごく期待してたんだけど…同性愛者の天才音楽家とその妻の、スキャンダラスで破滅的な愛と人生…チャイコフスキー夫妻を描いたケン・ラッセル監督の怪作「恋人たちの曲 悲愴」みたいなのを期待しちゃってたのですが、全然そんなんじゃなかった。期待はずれすぎて、何だか詐欺にでも遭ったかのような気分に。ある意味、今年観た映画の中ではキムタクの「レジェンド&バタフライ」よりもがっかり。映画やドラマに過度な期待や勝手な思い込み、先入観は禁物と、あらためて痛感。

 何が期待はずれ、不満だったのかといえば。とにもかくにもBL映画じゃなかったことに尽きます。男同士の美しくも切なく苦しい関係やラブシーンが皆無とか、トホホすぎます。そんなの期待するほうが間違ってる、とは言わせません。レナード・バーンスタインは男好きでも有名だったし、バーンスタインの恋人役にマット・ボマーが起用された点で、もう腐を煽ってますもん。カミングアウト俳優の中でも屈指のセクシーイケメンなマットと、大好きなブラッドリー・クーパーの親密なシーン。宣伝に使われていた二人のツーショット、否が応でも期待しちゃいますよ。それがどうよ。ブラパとマットの軽いキスシーンが、映画の中で最大唯一のBLシーン、しかもマットは超チョイ役ですぐに退場とか、何というもったいなさ、そして何という誇大広告でしょう。JAROに報告ものな嘘・大げさ・まぎらわしさです。BL詐欺!


 とまあ、BLを期待して観た腐女子のほとんどに、不満と落胆をもたらす映画だと思います。BLに興味がない人は、そんなことにはならないと思うのでご安心を。互いに深く思いやり合い愛し合う夫婦の姿に、きっと感動する人も多いでしょう。でも私は、そういうのが苦手な冷血人間なので富も名声も才能にも恵まれた上級国民の幸せを見せつけられているような内容に、ちょっと鼻白んでしまいました。お金も地位も才能もない私自身、私の周囲、世の中のほとんどの人たちの苦しみや悲しみに比べると、バーンスタイン夫妻の苦悩なんて幸福と幸運の証のように見えて。

 バーンスタイン夫妻がすごく善い人たちで、まったく破綻とか薄汚さがなかったのも、きれいきれいすぎて非現実的だったような。修羅場らしい修羅場もなかったし。妻子がいるのに若い男とも寝てる夫、それに耐えてる妻という、せっかくのドロドロ設定も活かされてなかった。もっと悲痛で醜悪で生々しい夫婦の葛藤、軋轢に戦慄、圧倒されたかったです。まあ、バーンスタイン夫妻の遺族への忖度もあったでしょうし、コンプラやポリコレで雁字搦めにされてるハリウッドでは、もう毒にも薬にもならない描写しかできなくなってるのでしょう。余命いくばくもないフェリシアを献身的に支えるレナード、という後半の展開も、陳腐なお涙ちょうだい。心がゴビ砂漠な私は、もちろん涙ではなく辟易の溜息が出ました。

 でも、決してつまんない駄作ではなく、演出も演技もユニークで魅力的ではあります。「アリー スター誕生」に続いて監督と主演を兼任した、ブラッドリー・クーパーの才人ぶりに感嘆。今回の渾身かつチャーミングな演技と才気あふれる演出も素晴らしかったです。相変わらずカッコいいブラパですが、若い頃のシーンの彼が木下ほうかに似て見えてしまった。一部で批判された付け鼻は、確かにちょっと不自然だったかも。見てるうちにそんなに気にならなくはなりましたが。フェリシア役のキャリー・マリガンの演技も絶賛されてるようだけど、あれぐらいの演技は彼女なら通常運転なのでは?話や演技よりも気になって仕方がなかったのは、レナードもフェリシアも煙草吸ってないシーンがほとんどない、と言っていいほどヘヴィスモーカーだったこと。特にレナードの場をわきまえない喫煙、今だとありえない非常識さでした。
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彼とチョコホリック♬

2023-12-21 | 北米映画22~
 「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」
 豊かなイマジネーションと技術を武器に、世界一のチョコレートの店を開くことを夢みてチョコレートの街にやって来たウィリー・ウォンカだったが、街を牛耳るチョコレート会社の経営者たちは彼を脅威と見なし…
 ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の「チャーリーとチョコレート工場」は大好きな映画。その前日譚、ウィリー・ウォンカの若き日を描いた作品。ドリーミーでファンタジックな映画でした!ミュージカル仕立てになってたのが楽しかったです。「メリー・ポピンズ」や「パディントン」みたいに子どもも安心して観られる、児童向けの映画かもしれません。私のようなおっさんが観る映画ではないんだけど童心に戻れて幸せな時間を過ごすことができました。でも、チャリチョコの毒気、狂った笑いのほうが私好みです

 街や宿屋、教会、ウォンカが開いた店など、セットが素晴らしかったです。ずいぶん金かかってそう。カラフルでスウィートな画面や雰囲気、衣装も、女子が好きそうな可愛さであふれています。ウォンカのチョコレート製造グッズが面白かったです。そのグッズとか空飛ぶチョコとか、ウォンカって天才ショコラティエ、天才発明家というよりほとんど魔術師、いや、魔法使い。人間とは思えぬマジカルボーイ。ファンタジーすぎて、これは人間ではなく妖精の世界なのかな?とも。舞台もロンドンを模した、どこの国かは不明で実在しない架空の町みたいでした。ブリティッシュなテイストが好き。

 若きウォンカは、見た目もキャラも明るく可愛く人が善く情熱的で天真爛漫、行動力やコミュ力が抜群で、ほんとチャーミングな男の子。チャーリチョコの大人版ウォンカとはまるで別人。ほんとに同一人物?ジョニー・デップのウォンカは、ひきこもりでコミュ障、かつ意地悪で狂気的でしたよね。そこが笑えて好きなんだけど。おしゃれなフワフワ髪も、ヘンテコなおかっぱになってしまったのはなぜ?人を大事に、という亡きママのメッセージを胸に刻んだようだった若きウォンカなのに、どうしてあんな人を愚弄して楽しむ性悪な怪人になったの?何かイヤなことがあって人格が変わっちゃったのでしょうか。

 ウォンカ役のティモシー・シャラメ、さすが今をときめくハリウッド随一の若手スター、キラキラ感ハンパないです。彼の周りには常に見えないがあるみたいな。顔、小さっ!体、長身だけど細っ!いので、まるで10代の少年みたい。性を感じさせない、ちょっと中性的なところも、おとぎ話のキャラみたいなウォンカ役に適していました。「君の名前で僕を呼んで」もそうでしたが、容貌も雰囲気も非アメリカンでフランス人っぽく、おしゃれ文系男子なところも彼の個性と魅力でしょうか。カフェのウェイターに変装した彼、めっちゃパリのギャルソンって感じでした。でも彼ってイケメン?美男子って顔でもないような。可愛いファニーフェイス、が一番しっくりくるかな。歌って踊って、若いので動きが俊敏で軽やか、何をしても言っても愛嬌と優美さがあって、とにかくティモたんこそが極上のチョコレートでした。

 その他のキャストも、なかなか豪華、ていうかシブいです。イギリスの名優たちが脇を固めていたのも、この映画に高級感を与えています。まず、驚きのキャスティングだったのがウンパルンパ。ヒュー・グラント!英国美青年→ラブコメキング→自虐おじさん、そしてついにここまできてしまったグラント氏です。イロモノ、キワモノ役でも、グラント氏といえばの皮肉や自虐、そして英国紳士らしさが今回も愉快でした。オレンジ色に塗った顔と小人体の合成、その奇妙さ異様さも笑えます。よく引き受けたな~と、グラント氏の何事にも真剣にも深刻にもならない、皮肉で自虐的な人柄がしのばれるウンパルンパでした。

 あこぎな宿屋の女主人役のオリヴィア・コールマンも、楽しそうに珍演。非道い役なのに、ぜんぜん悪人に見えず笑えるところが彼女らしかったです。チョコ中毒の悪徳神父役、ミスター・ビーンことローワン・アトキンソンも笑えた。教会でキリンに追っかけられたりして。たまにジョージ・クルーニーに似て見えたのは私だけ?ウォンカの亡母役はサリー・ホーキンスでした。

 それにしても。チョコレート大好きな私ですが、この映画のチョコはあまり食べたいとは思えませんでしたチョコ中毒になり、チョコほしさのあまり悪事に加担する警官や神父。警官はチョコの食べすぎで病的に肥満化したり。みんなチョコを食べると多幸感でハイになったり。眠らされたり幻覚や幻聴、異様行動をしたり。ウォンカの作るチョコ、まるでヤバい危険ドラッグみたいでした。

 ↑ バックはビッグベンでしょうか。ロンドン行きたい!
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人形の国から来た女

2023-09-01 | 北米映画22~
 「バービー」
 バービーランドで幸せに暮らしていたバービーは、ある日突然起きた体の異変に戸惑う。自分の持ち主である人間に会えば原因がわかることを知ったバービーは、ボーイフレンドのケンと共に現実世界のロサンゼルスへとやって来るが…
 「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のグレタ・ガーウィグ監督の新作。大ヒット(アメリカでは)中の作品そのものよりも、原爆を茶化したネタ画像が日本では物議をかもしましたね。広島県民としては、とても残念で悲しい。でもまあ、一般的なアメリカ人の原爆に対する意識って、そんなもんなんだろうな~とも。悪意や敵意よりも、無知で無神経であることのほうが怖い、危険だとあらためて思いました。
 閑話休題。おかしな話題に日本では水を差されてしまったけど、映画じたいはド派手でハチャメチャカオスなコテコテアメリカンコメディで、そのパワフルでノーテンキなノリは私の好きなアメリカ人の素敵な特性。でもそっち系のコメディって、日本人の繊細な胃には受けつけない料理みたいな濃ゆさや大雑把さが。笑いの感性がやっぱ、日本人とアメリカ人って違いますよね~。英語やアメリカ文化に精通してたら、きっと大笑いできたかも…と思うようなシーンが多かったです。ベテランコメディアンのウィル・フェレルも出演してるのですが、彼の映画が日本ではまったく受けない理由が今回よくわかりました。

 バービーランドやバービーの衣装など、目が痛くなるようなピンクワールドも、可愛いというより私にはグロテスクでした。私、ピンクが苦手なのでカワイイの感覚も、アメリカ人と日本人では乖離があるのでは。元ネタであるバービー人形も、私には馴染みがなくあまり可愛く見えないんですよね~。何か顔が怖い。日本人にはやっぱリカちゃん人形ですよね。

 最初から最後まで、ハイテンションにツッコミ上等!な強引&意味不明な設定と展開なのですが。永遠の命、永遠にハッピーな毎日を繰り返していたバービーが、人間の世界に飛び込んで人間として、女性としての自我に目覚める、といったガチフェミ映画でもあります。バービー人形でこんなフェミニズム映画を作ってしまう発想、創作力には驚嘆。フェミ映画は苦手なのですが、男社会を断罪したり男の愚かさを揶揄したりが、あくまでノーテンキなおふざけ調なので、現実的な女の生きづらさを見せつけられて気持ちが重くなったり、苦くなったりすることのないフェミ映画になってます。

 バービー役のマーゴット・ロビーは、今やハリウッドの新女王といってもいいスター女優。私と同じ人間とは思えぬスタイルと派手な美貌ですが、それに驕ってるようなイヤな感じは全然なくて、すごく人が善さそうなところに好感。バービー人形みたいに、たまに顔が怖く見える時があったけど。バービーランドのパーティーで踊るシーンが特にチャーミングでした。
 バービーのボーイフレンド、ケン役はライアン・ゴスリング。なかなか強烈な見た目と演技でした。こんなにアホ、おバカなライアンってかつてなかったのでは。すごくノリノリで楽しそうでした。顔はさすがにおじさんで、ボーイフレンド役にはちょっと無理があったけど、カラダは非おじさん。すごい肉体美で、人形にしてはセクシーすぎるほど。歌もお上手で、本職の歌手も真っ青のエモーショナルな熱唱でした。

コメント (5)
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