まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

もうひとりの私が…

2017-07-28 | フランス、ベルギー映画
 「ふたりのベロニカ」
 ポーランドでコンサートの舞台に立っていたベロニカは、突然の発作に襲われ急死する。その時、フランスでは音楽教師のベロニカが強い喪失感に胸を衝かれて…
 いい映画、面白い映画は枚挙にいとまがありませんが、美しい映画となると稀。ポーランドの名匠、故クシシュトフ・キェシロフスキ監督のこの作品は、私にとってそっと心の奥にしまっておきたい、大切な小さな宝石のような映画なのです。たまに宝石箱から取り出して、その美しさを愛でたくなる。そんな映画です。いつ見ても、その美しさは永遠不滅です。
 お話的には、けっこう難解というか、謎が多く、観る人の解釈に委ねる不思議系なので、小中学生向けみたいなわかりやすい映画じゃないとダメな人には、退屈なだけの意味不明映画かもしれません。私にとっては、そのミステリアスさ、深遠さが心の琴線に触れてくる映画です。

 キェシロフスキ監督の作品って、この映画もですが、静かで淡々としてるけど、映像や演出がかなり独特というか、斬新なんですよね~。冷戦時代の東欧の冷たい不気味な社会主義っぽい雰囲気と、フランス映画の高い香りがブレンドされてるというか。哀感漂う静謐さの中に、不穏なドラマティックさがふと現れるところが特徴でしょうか。ちょっと思わせぶりな、不可解な謎シーンや謎人物(ベロニカがすれ違う紳士とか、時おり出てくる老婆とか)も、お約束になってます。

 冷ややかさと温かみが混在する、透明感ある映像もキェシロフスキ監督作品の魅力。そして、音楽も効果的に使われています。清澄で荘厳で宗教的なところが、映画をとても神秘的にしています。ベロニカがコンサートで歌うシーンは、何だか怖くなるほどの神聖さで圧倒されます。あと、小道具もいつも印象的。人形劇の人形、透明のピンボール、ベロニカに届く謎のプレゼントetc.どれも意味があるようでないような、ないようであるような、そういう曖昧なところも魅惑的です。演出も脚本も、奇をてらいすぎて鼻につく才気走り系な映画よりも、私は答えのない、答えを求める必要のない美しい謎に満ちたキェシロフスキ監督のような感性のほうが好きです。あと、人形劇も美しくて面白かった。

 そして何といっても、ふたりのベロニカを演じたイレーヌ・ジャコブ。“キェシロフスキ監督の宝石”と讃えられた彼女の瑞々しい演技と美しさこそ、この映画を傑作にしたと言っても過言ではありません。イレーヌはこの作品で、カンヌ映画祭女優賞を受賞しました、

 まさに宝石のような女優イレーヌ。宝石といっても、ギラギラと輝くダイヤモンドではなく、慎ましくも優美な真珠のような存在。清楚でピュアな美しさと、柔らかで濃厚な女の色香を併せもっています。若く豊満な裸体も惜しげもなく、それでいて自然にさらして魅了してくれます。とにかくイレーヌの、まるで聖女のごとき優しさが崇高。どんなに演技が巧い女優が、どんなに優しい女性を演じても、芯にある性悪さ、気の剛さは隠せない。本当に性質が美しくないと、ベロニカ役は絶対ムリだと思う。見た目の美しさ以上に、演技力以上に、キェシロフスキ監督はイレーヌの人柄で起用を決めたのではないでしょうか。ファンレターの返事をくれたし、イレーヌって絶対善い人!彼女の聖女美がさらに活かされ輝いたのが、キェシロフスキ監督の遺作となってしまった名作、わし史上ベスト映画かもしれない「トリコロール 赤の愛」です。後日、この作品の感想もUPしたいと思います。
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アキラとあきら①~③ 粉飾なきイケメン!

2017-07-24 | 日本のドラマ(連続)
 WOWWOWの連ドラ「アキラとあきら」の第1話から3話まで観ました~(^^♪

☆オサムとタクミ
 大銀行で新人研修中の階堂彬と山崎瑛。前者が向井理、後者が斎藤工。初共演のW主演ですが、すごい顔合わせ!とは、正直あまり思えない。ビミョーな今さら感。5、6年前ならもっと話題になってたんでしょうね~。それでもやっぱ、二人とも相変わらずイケメン!こんな銀行員いたら、ぜひ口座を作りたいものです。
 ムカイリーが金持ちの坊ちゃん彬で、斎藤くんが貧乏育ちの瑛、という設定。ムカイリーはエリートには見えるけど、育ちのよさはあまり感じられません。斎藤くんは、東南アジアから来た苦労人の留学生に見えます。二人とも東大卒にも新人にも、さすがに見えません。研修の討論会でさっそく対決する二人ですが、火花バチバチといった感じではなく、お互いにリスペクト、いや、ずっと待っていた運命の人に出会ったトキメキを抱き合ってるかのような、意図的とも思えるBLムードに萌え~。BL展開に期待!

☆アンディ
 彬の元家庭教師で、銀行の上司でもある安藤役、小泉孝太郎がカッコカワいい!コータローももう上司役やるようになったんですね~。それがちょっとそぐわないほど、今でも爽やかで若々しいコータロー。メガネ男子っぷりもイケてます。このアンディと彬の仲が、親密すぎて怪しい!小学生の彬と大学生のアンディ(コータロー、大学生役に違和感なし!お坊ちゃまファッションの着こなしも見事!さすが元首相の子息!)が、彬の部屋で…距離、近すぎる!ここもかなりBLっぽい!ていうか、常にBL色眼鏡な私が重症な腐なだけ?

☆お涙ちょうだいは苦手
 父親の工場が倒産し、夜逃げする瑛一家。可愛がってた飼い犬のチビは連れて行けず、泣く泣くお別れ。スゴいベタな泣かせ展開ですが、チビが無事と分かった時は、迂闊にもホロリとしてしまいましたあと、心臓病とか病気ネタも陳腐。
☆イケメンいじめ!
 彬のブサイク先輩が、すげえイヤな奴で笑えます。でも、何となくこの先輩の気持ちも解からくもないんですよね~。金持ちのボンボンで東大卒、長身のイケメン、しかも性格もいい暎って、フツーの男にとってはイヤミすぎる存在ですもんね。今ならパワハラ、モラハラで問題にされそうな先輩の言動に、困惑狼狽するムカイリーのリアクションが可愛い!でも、ムカイリーのほうが性格は悪そうだからか(笑)ぜんぜん可哀想じゃないんですよね。こんなバカ、どーでもいいわ!いつでもツブせる、みたいな無関心と冷徹さが暎、いや、ムカイリーからは感じられて。そういうキャラ、展開のほうが面白くなりそうだけど。
☆クソ野郎祭り
 瑛と彬の上司が、みんなクソ。相島一之さんが、適役でいい味。それにしても銀行って、本当にあんなに非情で卑劣なの?!彬の欲深く悪どい叔父さん二人、木下ほうか&堀部圭亮も卑劣な役で水を得た魚。でもみんな、ステレオタイプすぎで陳腐なキャラ。

☆ヒロイン?!
 彬と瑛の間で揺れる?ヒロインの亜衣が、なぜか田中麗奈。ええ~…もうちょっと他に女優いただろうに…恋愛パートは、省いてほしいかも。
☆ティーンエイジのアキラとあきらが
 小学生の時も可愛かったけど、中・高校生になった二人も!暎は男らしい精悍な感じで、瑛は優しそうな美少年。よく見つけてきましたね~。
☆あの娘が田中麗奈になる?!
 彬とクラスメートで、瑛とも知り合う亜衣。ありえない偶然、いや、これが運命?あの子が後に田中麗奈って。整形したの?!としか思えぬ顔の変わりっぷり。あと、身長も縮んでるような?!別人なのでは?亜衣に成りすまし、暎と彬に近づいてきた産業スパイなのでは?!

★総括
 てっきり「ケインとアベル」みたいな宿命のライバルの戦い、かと思ってたら、どうもそうじゃないみたいで肩すかし。想定外のBLっぽさは驚喜ですが、今のところほとんど彬と暎、いや、ムカイリーと斉藤くんのからみがなく、かなり薄口で物足りません。銀行や家族の話よりも、イケメン二人の若い生々しい男の部分をもっと掘り下げて描いてほしいです。今のところ、彬も瑛も何の欠点もない完璧な人格者で、つまんないです。仕事でも私生活でも、もうちょっとゲスっていいと思う!あと、これって昭和の話みたいですが、ぜんぜん昭和臭がしません。
 アキラとあきらよりも、アンディのほうが何か気になる~。
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悲しみキッドナップ

2017-07-19 | 日本映画
 梅雨明け~
 あ~イヤだイヤだ~…ひまわりさんなんか、大嫌い!今年の夏も、殺人的な暑さになりそうですね。今度こそ、乗り越えられそうにないです…(毎年同じこと言ってますが)
 皆さまも、どうぞ体調に気をつけて、無事に涼しい季節を迎えましょう!
 ウナギ食べたいのお~。

 「誘拐報道」
 神戸で小学生の男子児童が誘拐される。警察との報道協定により、新聞記者たちは表立った取材ができない。そんな中、犯人の男から児童の両親に、身代金を要求する電話がかかってくるが…
 70・80年代の邦画、大好きなんですよね~。懐かしいような新鮮なような、濃厚な昭和のにおいと味をこの映画でも堪能できました。昭和の陰影深く重苦しい空気感が好き。そして、今は亡き名優たちの存在感、今は大ベテランとなっている俳優たちの若かりし姿が、衝撃的かつ楽しい映画でもありました。総じてみんな、濃ゆい!そして熱い!大御所も新鋭も、みんなとにかくギラギラしてるんですよ。あのギラギラ感、今の俳優たちには全然ないのが物足りない。同じような内容の「64」も観たのですが、若手のみならずベテランでさえびっくりするほど薄さ軽さで、映画というよりTVドラマみたいだった。やっぱ昭和の邦画のほうが、観た!という満足感、満腹感を得られます。
 いい役者たちが、ギラギラ&コッテリとしのぎを削っています。まず、主人公である誘拐犯役、萩原健一のギラギラっぷりが目に楽しいです。

 最近すっかりお見かけしなくなったショーケンですが、当時32歳ぐらい(今の嵐の連中より年下!)の彼もまた、今のアラフォー男優にはない強烈な個性と雄♂くささ。ショーケンの野性的で粗削りな演技と雰囲気には、小賢しい演劇っぽさや、チマチマした大衆迎合的なタレント演技ばかりな今の男優にはない魅力があります。デスパレートな演技がちょっと暑苦しいけど、それもまた昭和っぽくて好きです。追いつめられた危険な手負いの狂犬でありながら、憎めない情けない悪人になりきれないダメ男でもあって母性本能をくすぐられる、といったショーケンらしい役、演技でした。彼が最高のモテ男だったことが、何となく解かる人には解かる、そんな映画でした。濡れ場ではないけど、あるシーンでケツ出しファンサービス。
 誘拐犯の妻役は、これが映画デビューの小柳ルミ子。今の女優など足元にも及ばないほど美人!すごい美女なのに、貧乏、不幸な庶民の情念、哀感がまさにザ・昭和。悲しい歌謡曲を地でいくようなルミ子の昭和なヒロインっぷりでした。この映画の伊藤俊也監督は、何が何でもルミ子!と彼女の起用を熱望したのだとか。周囲の大反対を押し切って出演し、好演を披露して高く評価されたルミ子は、後年再び伊藤監督のラブコールを受けて「白蛇抄」に主演。伊藤監督がイメージするルミ子は、とことん男運がない、美貌と色香ゆえに過酷な宿命を背負う悲劇的な昭和美女、だったんですね。すごい美女に生まれても、人が善すぎたら不幸になるだけ、と映画の中のルミ子は教えてくれました。

 新聞記者、警察の捜査員、被害者の両親を演じた俳優たちも、個性豊かで強烈。報道を仕切るキャップ役は、この手の大作には必ずといっていいほど顔を見せてた丹波哲郎。カラオケで「ダンシング・オールナイト」を熱唱するという珍シーンに驚喜。支社長役の三波伸介、な、懐かし~!捕まった息子とそう年が変わらない頃の橋爪功、わ、若い!大和田伸也も若くて男前で美声!当時はまだ駆け出しだったと思しき宅麻伸、どぢっ子な新米記者役で可愛いかった。警察側のボス役、平幹二郎も超ダンディでカッコよかった!刑事役の伊東四朗も、わ、若い!男優陣の中でワタシ的ベストだったのは、被害者の父親役の岡本富士太。80年代の2時間ドラマで、荻島真一と双璧の男前だった彼。めっちゃタイプなんですよね~。イケメンなだけでなく、今にもコワレそうな狂気一歩手前な演技で、ショーケンにヒケをとってなかったです。あと、チョイ役で菅原文太も出てました。

 ルミ子のために撮られた映画なので、他の女優の影はかなり薄いのですが、被害者の母親役の秋吉久美子はなかなかの熱演でしたし、宅麻伸の恋人役が藤谷美和子!だったのが、レアなポケモンを発見したような感じでした。やっぱ彼女、独特かつ可愛いですね~。彼女みたいな女優も、今いないですよね。レアといえば、ショーケンを騙して借金を背負わす悪徳実業家役が中尾彬、ショーケンとカーセックスする淫乱女役が池波志乃、という夫婦共演が笑えた(夫婦一緒のシーンなはし)。特筆すべきなのは、犯人の娘役の高橋かおり。現在は性悪女役を得意とするバイプレイヤーな彼女ですが、かつては名子役として引っ張りだこだったんですよね。入浴シーンでの全裸はボカシ入りで、それが返って異様でした。規制だらけで保守的すぎる現在では考えられない幼女ヌードに、古き佳き時代の邦画をあらためて懐かしみました。
 当時の庶民生活にもノスタルジア。特に重要なアイテムとして使われた公衆電話やポケベルに。犯人の実家がある丹後半島の風景が、まさに裏日本って感じの陰鬱な寒々しさでした。今でもあんな雑貨屋とかあるのかな。
 それにしても。営利誘拐なんて、めんどくさくてリスクが高すぎ。成功例もほとんどないですよね~。でも、昔は頻繁に起きてたんですよね。そして、吉展ちゃん事件とか悲劇が多かった。私が幼い頃に起きた福山市の男児誘拐殺人事件とか、悲惨すぎて今でもトラウマ的に忘れられない。ほぼ死刑な誘拐殺人は被害者側だけでなく、加害者の家族にとっても地獄…どんなやむにやまれぬ事情があるにせよ、何の罪もない子どもを犠牲にしてしまう者は、万死に値します…
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ミャンマー祈りの旅④ 危険な一期一会

2017-07-16 | 旅行、トレッキング
 『コンニチハ』
 スーレーパヤーの前を歩いていると、日本語で声をかけられました。いつの間にか、すっと私の隣でミャンマー人の男が歩を並べてるではありませんか。見たところ40歳ぐらいのおじさん?イケメンじゃなくて、ちょっぴり残念来た来た、と内心ウンザリしながら、ハイハイ、コンニチハ、サヨウナラ、と適当にあしらってさっさとやり過ごそうとする私。でも敵もさるもの、なれなれしくはないけどピッタリくっついて離れず、カタコトの日本語で一生懸命話しかけてきます。郵便局を私が探していると知ると、連れて行ってあげマスヨ!と私が断る間も与えずレッツラゴーなノリ。え~めんどくさいことになった…と、ため息な私。人込みにまぎれて上手くまいちゃえと機会を狙いながら、ニコニコおしゃべりなミャンマー男に歩きながら適当に相槌を打ちます。
 このミャンマー男、身長は私より低く貧相な風貌で、ヘンなところに連れ込まれなければ私でも腕力で勝てそうな感じ。でも、ニコニコ優しく明るい人柄っぽくて、バカな日本人を騙くらかそうと目論んでるようには全然見えません。警戒心は保ったまま、やはり異国での心細さも手伝って、だんだんミャンマー男をムゲにできなくなっていくのでした。彼、ちょっと俳優の斎藤洋介に似てたので、仮名はヨースケにしておきます。
 カタコトの日本語よりもカタコトの英語のほうが意思疎通しやすいと気づいて、いつの間にか会話はカタコト英語にシフト。普段は工事現場で働いてるけど今日は休み、休みは観光客の観光案内をして小遣い稼ぎ、というヨースケ。いくらぐらいのギャラなの?と訊くと、びっくりするほど安い値段。じゃあ、ちょっとだけ案内お願いしようかな、と軽く雇ってしまいました。ヨースケは大喜び。ちょっと不用心だったかも?でも、たまにはこういう現地の人と親しむのも悪くないかも、と不安と冒険心。

 スーレーパヤーからちょっと歩いて、海に近いストランド通りにある中央郵便局に到着。ミャンマーはかつてイギリスの植民地。その名残があちこちに見受けられます。この郵便局もそのひとつ。立派な建物です。中に入って、受付前で絵葉書と切手を買います。ヨースケがミャンマー語でささっとやってくれたので、何のトラブルもなし。家族と友だちへ、無事届くかナ?(ちなみに、実家へは私が日本に戻って1週間後、M子宅へは10日後に到着。同日に同じ国、同じ県に出したのに、この時差はいったい?!ていうか、着くまで時間かかりすぎ

 郵便局の近くには、ミャンマー最高級のホテルであるザ・ストランド・ヤンゴンが。ミャンマーを訪れたセレブは、必ずここに滞在するとか。中に入ってイギリス式ハイティーとかしたかったけど、ヨースケがいたのでスルー
 ちょうどお昼時だったので、屋台で食べることに。独りだと勇気がいるけど、現地人が一緒なので心強い。ここでもヨースケがオーダーしてくれたり、食べ方や食べ物の説明をしてくれたりで助かりました。

 ほうれん草みたいな野菜の煮つけとか、あっさり味の角煮みたいなお肉とか、なかなか美味しかったし、超安かったです。ヨースケと二人分で500円ぐらい。お店のおばさんもいい人でした。ちなみにヨースケ、何と23歳だった!てっきり私より年上かと思い込んでた!付き合ってる彼女は16歳とか言ってました。
 昼食を食べ終えると、ガイド代を払ってアリガトバイバイ、しようとしたら、おもしろい場所に連れて行ってあげマスヨ!とヨースケ。用心深い私の心に、危険信号が灯る。が、なぜかミャンマーではそれよりも冒険心のほうが勝ってしまった。ミャンマーという国の雰囲気が全然危険を感じさせず、ミャンマー人もみんな優しいからか、私の心もつい緩んでしまったのでしょうか。じゃあ、お願いしよっかな、と契約続行。
 ちょっと移動するとのことで、バスに乗ることに。巨大な菩提樹の下にあるバス停で待ってると、日本ではありえない状態で走ってるバスが目に入る。開けっ放しの窓からドアから今にも落ちそうなほど、乗客があふれんばかりに詰め込まれてるバス。こんなん無理~!とヨースケに訴えると、じゃあタクシーで、と。

 タクシーに乗って5分ほどで、埠頭に到着。どこに連行されるのだろう?!と、不安に襲われる私をニコニコとヨースケが船着き場へと導きます。ボロい筏みたいな渡り船に、たくさんの人々が乗り込んでいます。漁でもやらされるのかしらん?と恐々と不安定に揺れるボロ船に、ヨースケに手をとられて乗る私。若いお兄さんが操縦する船は、結構スピードもあり大きく揺れたりして、いつ転覆してもおかしくなさそうなスリル。こんな海にドボンしたくないわ~な海水の汚さから逸らした目は、近づいてくる島に当てられます。そんなに暑くはないけど陽射しが強く、それを気にする私にヨースケが、船長が持ってた日傘を借りて優しく私にさしてくれます。ヨースケはとても優しく気配りのある人で、これがイケメンだったらさぞやドキドキだろうな~と、苦笑いを禁じ得ない私なのでした。

 たくさんの人を乗せたボロい渡り船が、島と本土を往復しています。どういう島なんだろう?好奇心と不安に胸をざわつかせていると、約20分ほどで島に到着。後で調べて分かったのですが、ダラというヤンゴンで最貧困の居住区でした。ここで私、いい意味でも悪い意味でも絶対に日本では味わえないような、ものすごく貴重な体験をしました…
 to be continuned
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戦場にも主は来ませり

2017-07-13 | 北米映画 15~21
 「ハクソー・リッジ」
 第二次世界大戦中のアメリカ。敬虔なキリスト教信者の青年デズモンドは、志願して軍に入隊する。しかし、銃を持って敵と闘うことを拒絶する彼に、軍の仲間や上官たちは辛く当たる。やがてデズモンドは、衛生兵として戦地である沖縄に派兵されるが…
 最近すっかり問題おじさんと化していたメル・ギブソンですが、本来は俳優としてだけではなく監督としても評価が高く実績もある才人。それを久々に証明したのが、この新作です。今年のオスカーで監督賞にノミネートされ、リベンジ的な復活を遂げたのでした。
 舞台が第二次世界大戦中の沖縄、ということで日本でも話題になりました。悲惨な戦争映画はこれまでたくさん観てきましたが、この作品は衝撃度でいえば群を抜いていました。本当にこんなことがあったのかと、あらためて戦争の怖さ、非情さ、残虐さに打ちのめされました。とにかくこの映画、目と耳を覆いたくなるような地獄絵図が、これでもか!と怒涛の勢いで観客に襲いかかってくるんですよ。気の弱い人は、ぜったい観ないほうがいいです。

 生きてるほうが不思議なほどの阿鼻叫喚な銃撃、砲撃!吹っ飛ぶ脳みそ!飛び散る内臓!ちぎれる手足!火炎放射器で火だるま!も、もうヤメテー!!と、小心な私は逃げ出したくなりました。リアルすぎるわ~。容赦ない苛烈な描写は、徹底的に戦争の現実を追及しているというより、何だかメルギブの悪ノリ的な趣味のなせるわざ、みたいにも感じられたのは私だけ?でもこんな映画を観させられたら、戦争に賛同なんか絶対できなくなります。反戦映画としては意義のあるリアリティだったかもしれません。こんな形で大事な若者たちを犠牲にしてまで、守らなければならないものってあるのかな~…と、つくづく戦争なんかしたくない、と願わずにいられません。

 戦闘シーンが強烈すぎて、そこばかり印象に残ってしまいますが。もうひとつの重要なテーマ、宗教についてもいろいろ考えさせられました。信仰心ゆえに、戦地で銃を持つことを拒むデズモンドですが。高潔、信念が強い、というより、信心深すぎる人にありがちな特異さがかなり怖かった。一歩間違えたらデズモンド、オ◯ム級のヤバい人ですよ。本人はどんなに非道い目に遭っても、信仰を守ってるという歓びで幸せだけど、周囲にとってはかなり迷惑です。お国のために敵をやっつけたい俺たちは、じゃあ間違ってる?!完全否定?!と、軍の仲間たちが不快に思い、激怒するのも当然。宗教とは違うけど、デズモンドみたいな人っていますよね~。エロい下ネタ話で盛り上がってるのに、清らかキャラを頑なに貫いてノってこない人、みたいな。壮絶なイジメを受けても、それを甘受して決して屈しないデズモンド、まるで受難中のキリストきどり。地獄のハクソー・リッジでは、まさに神降臨!カープどころじゃなく神ってる活躍をするデズモンド、勇敢でカッコいいというより不気味で怖かったです。
 主人公デズモンドを神がかり的に熱演したアンドリュー・ガーフィールドは、オスカー候補になるなどキャリア最高の賛辞を浴びました。

 いや~。ガーくん、まさに入魂の演技でしたわ。ハクソー・リッジでの決死の神っぷりも圧巻でしたが、軍隊に入る前の純情でロマンチックなガーくんも可愛かった。幸せよりも、不幸や悲しみでいっそう魅力的になる俳優ですよね。傷つき苦しんでる時の彼、ほんとイケメン。逆に、笑顔になるとラビット関根に似て見えて萎えるそれはそうと。地獄の中で信仰を貫くドMな男役、そして舞台が日本って、「沈黙 サイレンス」と同じ!すごい偶然!
 上官役のヴィンス・ヴォーンも好き!デカい体、極悪コワモテで威圧感ハンパないけど、笑いを誘うところがさすがヴィンス。シビアでハードな状況で、クスっと笑わせてくれるコメディリリーフ的なヴィンスもgood job!同じく上官役のサム・ワーシントンも、ゴリ押しされてた若い頃よりもシブくなっていい男になってました。

↑どんどんいい男、いい役者に成長していってるガーくん。でも彼ってほんと善い人!って感じ。悪人役なんかできなさそう
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浪漫フォルテッシモ

2017-07-11 | フランス、ベルギー映画
 お松の独りフランス映画祭④
 「真夜中のピアニスト」
 仲間と共に悪どい取り立てや地上げを行っていた不動産ブローカーの青年トマは、ピアニストだった亡母の元マネージャーと再会し、オーディションを受けるよう勧められる。トマはピアノへのくすぶっていた情熱を再燃させるが…
 名匠ジャック・オディアール監督の作品の中で、私はこの映画が最も好きです。最近知ったのですが、この映画はハーヴェイ・カイテル主演のアメリカ映画のリメイクなんだとか。
 この映画、何といっても主演のロマン・デュリスですよ。ロマンの出演作の中でも、この映画がmy bestかも。ほぼ出ずっぱりのロマン、その強烈な個性と卓越した演技力を遺憾なく発揮しています。あこぎな不動産屋と、夢見るピアニストという相反する二つの顔を、どっちも魅力的に激烈に演じてます。

 「彼は秘密の女ともだち」など近作のロマンは、さすがにおじさんになってきてますが、この映画の頃は30歳ぐらい、まだ青年って感じで若い!ロマンって受け口の猿顔なんだけど、時おりハっとなるほど美男に見えるんですよね~。瞳が美しいです。マグマのような狂熱と、ガラス細工のような繊細さのせめぎ合いで荒れ狂ったり苦悩したりしているロマンに、グイグイ惹きこまれます。
 プッツン大暴れしてるロマンは、まるで凶暴な狂犬でヤバすぎ。でも、パパや好きな女には別人のように優しく傷つきやすいロマンは、まるで可愛い捨て犬。ヤバくてキュンとさせる、ヤバキュンなロマンに目はクギヅケです。独り自室でピアノを練習してるシーンのロマンは、まるで射精寸前みたいなR指定顔。とにかくロマンの若い激情に圧倒されます。トマ役って、好きな日本の若手俳優に挑戦してほしい役かも。

 実際にもピアノを弾いているロマン、すごい腕前!「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリングより上手いかも?!私もピアノ、真面目に頑張ればよかったな~。ピアノって弾けたらカッコいいし、気持ちよさそうですもんね。この映画でもよく脱いでたロマンですが、胸毛ボーボーなのがちょっと残念。胸毛がなければ、けっこうエロいカラダしてるんだけどな。
 ラストの意外な展開、そしてトマの表情が深い余韻を残します。トマ、いったいどうなるんだろう。絶対に安穏な人生は送れそうにない。暴力と音楽、持って生まれた二つの天性。どっちかひとつだけでもしんどいのに、死ぬまで囚われて生きねばならないトマは不幸だけど、ほとばしる情熱が羨ましくも思えました。

 トマのパパ役は、オディアール監督の「預言者」でも好演してたニエル・アレストリュプ。こんな親父イヤ!な極道パパだけど、何か放っておけないペーソスにあふれていてて、見ていて悲しくなります。ファザコンすぎるトマが、けなげで可愛かった。トマがピアノのレッスンを受ける中国人ピアニスト役の女優、どっかで見たことあるな~と思ったら、あ!「インドシナ」のリン・ダン・ファンじゃん!この映画の彼女も、素朴だけど凛として可愛かったです。トマとフランス語が解からない彼女とのやりとりは、「アスファルト」のアメリカ人宇宙飛行士とアラブ人老女みたいでした。チグハグだけどほっこりほのぼのしていて、言葉は解からなくてもフィーリングで伝わる、みたいな微笑ましさ。トマだけではく、観客にとっても心安らぐシーンとなってました。

 ↑ロマンの最新作は、イザベル・ユペール!共演の“Madame Hyde”です。これまた楽しみな顔合わせですね
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おひとりさまも悪くない

2017-07-09 | フランス、ベルギー映画
 お松の独りフランス映画祭③
 「未来よ こんにちは」
 高校で哲学を教えているナタリーは、それなりに充実した日々を送っていたつもりだったが、夫との離別や老母の死などで人生が突然に一変し、想定外のおひとりさまになってしまい…
 傑作(怪作?)「エル ELLE」でアカデミー賞にノミネートされ、アラ還にしてますます燦然と輝く無双の大女優イザベル・ユペール。エル同様に賞賛され、数多くの主演女優賞を受賞した作品を、ようやく観ることができました。気鋭のミア・ハンセン・ラヴ監督、女性ならではの感性も秀逸な佳作でした。

 いや~。イザベル・ユペール、ほんと素敵な女優ですよね~。今回もあらためて彼女を見てて思ったけど、女性の本当の美しさって、若いとか若くないとか、シワがあるとかないとか、スタイルがいいとかよくないとかじゃないんですよね。内面のエレガンスと知性こそ、永遠に色褪せないサファイアのような美。イザベル・ユペールは、そんな最高の美を備えてる数少ない女優です。そんなユペりんが演じたナタリーも、私が常に憧れている心のしなやかさ、軽やかさが魅力的なヒロインでした。

 熟年離婚、老母の介護と死、仕事の行き詰まり、愛する教え子との間にできた埋められない溝etc.いろんなことがコレデモカ!とばかりに突然に、一気にナタリーに降りかかってくるのですが、深刻で悲痛な不幸に狼狽えたり落ち込んだりはするものの、ガクっと絶望して世をはかなんだりせず、かといってシャカリキに戦う女にもなったりせず、淡々と時の流れに身を任すナタリーの姿が、すごく爽やかでカッコよかったです。

 突然おひとりさまになってしまうナタリーですが。ナタリーのような孤独はむしろ理想的に思えました。子どもたちは自立してるけど仲良しだし、老母も長患いなんかせずポックリ逝ったし、別れた夫とも友だちみたいな関係になれたし、彼女の孤独はかぎりなく自由に近いものでしたから。もちろん不安や納得のいかなさも消えないでしょうけど、同時に希望や優しさも失わず生きていける。そんなナタリーとは真逆で、私には悲惨な孤独死しか待ち構えてない

 フツーの女優なら、ナタリーはステレオタイプなヒロインになっていたかもしれません。イザベル・ユペールだからこそ、個性的でチャーミングなヒロインとして成立したのではないでしょうか。「エル」もだけど、今回のユペりんもクールでシニカルなんだけど、どこかシレっとすっとぼけてるんですよ。ユペりんのシレっとすっとぼけ、ほんと好き。エルほどの猛毒はないけど、ナタリーもピリっとした軽めの毒が言動にあって、クスっと笑えます。いつもはほとんど無表情なユペりんですが、今回は笑顔も泣き顔もたくさん見せてくれてるのが新鮮でした。生まれたばかりの孫をだっこしてるシーンの優しそうな彼女とか、レアな姿かもしれません。ボケ気味の老母とのやりとりとか、母のペットだった黒猫のパンドラとの関わりとか、皮肉の効いたユーモアいっぱい。

 ユペりんのファッションも相変わらずトレビアン。趣味が高い、とはまさに彼女のことです。何気ないシャツやジーパンでも、すごくエレガントでオサレに見えるんですよね~。山辺節子だと不気味な露出度の高いサマードレスや花柄のワンピースも、ユペりんだと可愛い!あと、ユぺりんのトコトコした歩き方が何か可愛かった。
 悲しいこと切実なことであふれている人生を、ドライで軽やかなユーモアで描いているところがいかにもフランス映画。家族も必要以上にベタベタせず、ほどよい距離感を保ってるところもフランス的。ナタリーとパンドラの別れもサバサバしてて、ベタベタしいペット愛着が苦手な私にはすごく爽快でした。イケメン愛弟子のファビアンとの、ただの先生と生徒にしては親密すぎる、そこはかとなく男と女の甘い空気感を醸しながらも決して一線は超えない関係も、何だかフランスっぽいカッコよさ。

 「エル」を観た人なら、より楽しめる映画かも。ヒロインの手を焼かせる奔放な老母、そしてペットの黒猫、という共通点が面白かった。エルの猫は可愛いけど何か不吉な存在でしたが、この映画のパンドラはデブだけどホッコリさせてくれました。
 ナタリーの愛弟子ファビアン役は、ミア・ハンセン・ラヴ監督の前作「エデン」にも出演していた注目のイケメン、ロマン・コリンカ。

 ちょっとガエル・ガルシア・ベルナルに似てる?ほっそりスマートになったガエル、みたいな。母親のような熟女に女の顔をさせる、若く魅力的な青年の無防備さ、残酷さも、いかにもフランスな香ばしさ。名優ジャン・ルイ・トランティニャンの孫、という血統書付きのイケメンであるロマンくん。ラヴ監督の最新作では主演だとか。楽しみですね。
 フランスの高校生って、哲学とか政治とか、ほんと早熟で知的だな~。哲学はワケワカメ~。哲学を理解し楽しめる人間に生まれたかった…
 パリ、ブルターニュ、フレンチアルプスなど、うつろう季節の風景が美しく、かつナタリーの心象と重なるように撮られています。音楽もセンス抜群です。

 ↑今年もフランス映画祭で来日してくれたユペりん。ミヒャエル・ハネケ監督の新作や、ギャスパー・ウリエル共演作など相変わらず精力的!

 ↑注目のボーギャルソン、ロマン・コリンカ。ジャン・ルイ・トランティニャンの孫という超サラブレット!異父弟のジュール・ベンシェトリも、「アスファルト」でユペりんと共演してましたね。兄弟そろって今後が楽しみ!
コメント (5)
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