「追想」
1962年のイギリス。歴史学者志望の青年エドワードは、ヴァイオリニストのフローレンスと出会い恋に落ち結婚する。ハネムーン先のホテルで、二人は初夜を迎えるが…
イアン・マキューアン原作、シアーシャ・ローナン主演といえば、「つぐない」からもう12、3年も経ったんですね~。当時13歳ぐらいだったシアーシャも、すっかり大人の女性、そして何度もオスカーにノミネートされ大物女優に成長しました。20代半ばにして、もはや風格さえ漂わせてます。美しいといっては当たらないけど、少女のような繊細さと複雑さ、そして強い精神力が混在した個性が魅力的な女優。この作品のシアーシャは、今までにないほど生々しい“女”でした。女といっても、色気とかセクシーとかいった明るい魅力を発揮しているのではなく、女性だから負ってしまう性的な苦悩とか痛みとか暗く重い業です。
新婚初夜で悲劇的な事実が発覚するまでは、知性と優しさ、強さにあふれた、シアーシャらしい魅力的なヒロインなのですが、性への不安と嫌悪に苛まれた本当の姿をさらした彼女の思いつめた、いや、狂気一歩手前のような言動と表情は、グロテスクでもありました。悲しみのヒロインって感じは全然なく、ただもう正視しがたい、胸をザワつかせるイタい女でした。シビアな役、演技に果敢に挑むところは、さすが当代随一の若手女優。キレイキレイじゃない、甘ったるくないところが好きです。シアーシャ独特の透明感ある少女っぽさのおかげで、生々しさも気持ち悪くならずにすみました。
シアーシャが脱いだり濡れたりはないけど、あの初夜の営み失敗はかなりリアルでインパクト強烈。悲惨、みじめすぎてもはや滑稽でした。エドワードが童貞ではなく経験豊かな男だったら、ひょっとしたらあんなことにはならなかったかも。童貞のみなさんには、結婚前にある程度は経験を積んでおくことをオススメしますそれにしても。結婚と性生活は切っても切れないもの、愛し合う男女は肉体的にも結ばれなければければならない、夫婦は子どもを作らなければならない、という考えが当然であるかぎり、幸せになれない人は後を絶たないんだろうな~。私なんかもフローレンスほど深刻ではないけど、セックスがそんなに重要とは思わない人間なので、世間一般の“性的に健全な関係”はかなり重く感じます。
破局に至るまでのフローレンスとエドワードのロマンスは甘美で、微熱あるプラトニックラブって感じが素敵でした。お互いにあんなに若い希望にあふれていて、思いやりと敬意を抱き合っていて、芸術家としての感性も楽しく優しく分かち合えてたのに、セックスできないせいですべてがメチャクチャになってしまうなんて。男女の愛ってそんなもんなのか~と絶望感に襲われました。
エドワード役のビリー・ハウルは、イギリス若手俳優の中で私が今もっとも注目してる有望株です。
全然イケメンじゃない、どちらかといえばブサイクなのですが、ブサイクなのにすごいイケメンに見えることがある不思議な男なんですよ。男を美しく見せるのは、やっぱ顔じゃなく豊かな内面を感じさせる雰囲気なんですよね~。座って本を読んでる姿とか、考え事をしてる表情とか、何でもないのに絵になってるんですよ。何でもないシャツやジャケットも、さりげなく上品にオシャレに着こなしてるところとか、貧乏なのに貧乏に見えないところとか、すらっとした長身もさすが英国男子。
繊細で優しく、ロマンチックな文系好青年だけど、決してヒーローではなく悲しいまでにどこにでもいる平凡な男って感じも、ビリーは上手に出していて秀逸でした。人気俳優なら、平凡な役でもどこかそうじゃないところを出そうとするけど、そんな自意識過剰さも自己陶酔もない演技は、カッコいい演技より難しいはず。ビリーのテンパったドキドキオドオド童貞演技も素晴らしかった。初夜の営みでの彼のぎこちなさすぎる不器用ぶりが、イタくて可愛かったです。可愛いお尻も披露してます。それにしても。初夜っつっても、イギリスは緯度が高いせいか昼間みたいな明るさ。せめて寝室は暗くして営みなさいよ、そんなお互い丸見えな明るさじゃ童貞&処女じゃなくてもぎこちなくなるよ、と思いました
脇役では、フローレンスのママ役がエミリー・ワトソン(すっかりオバハンになってて誰だかわかんなかった)、パパ役が英国映画・ドラマを観るとかなりの確率で遭遇するサミュエル・ウェスト、でした。エドワードの脳がイタんだママ役で素っ裸になってた女優は、ジェームズ・マカヴォイの元嫁だとか。「つぐない」組では、マカぼんもキーラ・ナイトレイも今は過去の人化、シアーシャのほうがはるかに格上になっちゃいましたね。
エドワードの実家のある鄙びた村や、新婚旅行先のドーセットの風景が美しい!イギリスの田舎ってほんといいですね~。特に印象的だったのは、オリジナルタイトルにもなってるチェシルビーチ。二人の愛を表してるような寂しく陰鬱で不毛、なのに美しい曇天と海に感銘を受けました。行ってみたい!
↑ シアーシャとはチェーホフの「かもめ」を映画化した作品でも共演してるビリー。そろそろ堂々の主演作で会いたいものです
1962年のイギリス。歴史学者志望の青年エドワードは、ヴァイオリニストのフローレンスと出会い恋に落ち結婚する。ハネムーン先のホテルで、二人は初夜を迎えるが…
イアン・マキューアン原作、シアーシャ・ローナン主演といえば、「つぐない」からもう12、3年も経ったんですね~。当時13歳ぐらいだったシアーシャも、すっかり大人の女性、そして何度もオスカーにノミネートされ大物女優に成長しました。20代半ばにして、もはや風格さえ漂わせてます。美しいといっては当たらないけど、少女のような繊細さと複雑さ、そして強い精神力が混在した個性が魅力的な女優。この作品のシアーシャは、今までにないほど生々しい“女”でした。女といっても、色気とかセクシーとかいった明るい魅力を発揮しているのではなく、女性だから負ってしまう性的な苦悩とか痛みとか暗く重い業です。
新婚初夜で悲劇的な事実が発覚するまでは、知性と優しさ、強さにあふれた、シアーシャらしい魅力的なヒロインなのですが、性への不安と嫌悪に苛まれた本当の姿をさらした彼女の思いつめた、いや、狂気一歩手前のような言動と表情は、グロテスクでもありました。悲しみのヒロインって感じは全然なく、ただもう正視しがたい、胸をザワつかせるイタい女でした。シビアな役、演技に果敢に挑むところは、さすが当代随一の若手女優。キレイキレイじゃない、甘ったるくないところが好きです。シアーシャ独特の透明感ある少女っぽさのおかげで、生々しさも気持ち悪くならずにすみました。
シアーシャが脱いだり濡れたりはないけど、あの初夜の営み失敗はかなりリアルでインパクト強烈。悲惨、みじめすぎてもはや滑稽でした。エドワードが童貞ではなく経験豊かな男だったら、ひょっとしたらあんなことにはならなかったかも。童貞のみなさんには、結婚前にある程度は経験を積んでおくことをオススメしますそれにしても。結婚と性生活は切っても切れないもの、愛し合う男女は肉体的にも結ばれなければければならない、夫婦は子どもを作らなければならない、という考えが当然であるかぎり、幸せになれない人は後を絶たないんだろうな~。私なんかもフローレンスほど深刻ではないけど、セックスがそんなに重要とは思わない人間なので、世間一般の“性的に健全な関係”はかなり重く感じます。
破局に至るまでのフローレンスとエドワードのロマンスは甘美で、微熱あるプラトニックラブって感じが素敵でした。お互いにあんなに若い希望にあふれていて、思いやりと敬意を抱き合っていて、芸術家としての感性も楽しく優しく分かち合えてたのに、セックスできないせいですべてがメチャクチャになってしまうなんて。男女の愛ってそんなもんなのか~と絶望感に襲われました。
エドワード役のビリー・ハウルは、イギリス若手俳優の中で私が今もっとも注目してる有望株です。
全然イケメンじゃない、どちらかといえばブサイクなのですが、ブサイクなのにすごいイケメンに見えることがある不思議な男なんですよ。男を美しく見せるのは、やっぱ顔じゃなく豊かな内面を感じさせる雰囲気なんですよね~。座って本を読んでる姿とか、考え事をしてる表情とか、何でもないのに絵になってるんですよ。何でもないシャツやジャケットも、さりげなく上品にオシャレに着こなしてるところとか、貧乏なのに貧乏に見えないところとか、すらっとした長身もさすが英国男子。
繊細で優しく、ロマンチックな文系好青年だけど、決してヒーローではなく悲しいまでにどこにでもいる平凡な男って感じも、ビリーは上手に出していて秀逸でした。人気俳優なら、平凡な役でもどこかそうじゃないところを出そうとするけど、そんな自意識過剰さも自己陶酔もない演技は、カッコいい演技より難しいはず。ビリーのテンパったドキドキオドオド童貞演技も素晴らしかった。初夜の営みでの彼のぎこちなさすぎる不器用ぶりが、イタくて可愛かったです。可愛いお尻も披露してます。それにしても。初夜っつっても、イギリスは緯度が高いせいか昼間みたいな明るさ。せめて寝室は暗くして営みなさいよ、そんなお互い丸見えな明るさじゃ童貞&処女じゃなくてもぎこちなくなるよ、と思いました
脇役では、フローレンスのママ役がエミリー・ワトソン(すっかりオバハンになってて誰だかわかんなかった)、パパ役が英国映画・ドラマを観るとかなりの確率で遭遇するサミュエル・ウェスト、でした。エドワードの脳がイタんだママ役で素っ裸になってた女優は、ジェームズ・マカヴォイの元嫁だとか。「つぐない」組では、マカぼんもキーラ・ナイトレイも今は過去の人化、シアーシャのほうがはるかに格上になっちゃいましたね。
エドワードの実家のある鄙びた村や、新婚旅行先のドーセットの風景が美しい!イギリスの田舎ってほんといいですね~。特に印象的だったのは、オリジナルタイトルにもなってるチェシルビーチ。二人の愛を表してるような寂しく陰鬱で不毛、なのに美しい曇天と海に感銘を受けました。行ってみたい!
↑ シアーシャとはチェーホフの「かもめ」を映画化した作品でも共演してるビリー。そろそろ堂々の主演作で会いたいものです