まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

あのクズを殴ってやりたいんだけど

2024-12-09 | フランス、ベルギー映画
 「パッセージ」
 映画監督のトマスは恋人のマーティンとパリで同棲中だが、魅力的な若い女性アガテに惹かれ彼女と深い関係になる。アガテの部屋で暮らし始めるトマスだったが、マーティンを忘れることができず…
 去年の東京国際映画祭は、「異人たち」とこの作品が腐の注目作でしたが、異人たちと違ってこっちは結局日本では一般公開されませんでした。いい作品なのに、何でだろ。異人たちはアンドリュー・ヘイ監督、こちらはアイラ・サックス監督、どちらも独自の感性でBL佳作を発表し続けてる、作家性の強いオープンゲイのフィルムメーカー。この映画は、やっぱ内容と性的シーンが日本人向けではないと判断されたのかしらん。ロマンティックでスウィートな悲しさ、優しさが心に沁みた異人たちと違い、こっちはリアルでシビア、そしてイタいBLでした。実際のゲイってこんな人が多いんだろうな、恋愛もこんな感じなんだろうな、と思わせてくれました。とにかくトマスが自由すぎるというか、クズすぎてイライラするわ~♬by 明菜!

 長年の彼氏をあっさり捨てて、若い女に奔っただけでも最低なのに、元カレとも関係を断とうとせず、のらりくらり、かつ忙しく二人の間を行ったり来たりする堂々とした二股ぶり。それの何が悪い?みたいな顔して、厚かましいにもほどがある!女と別れて僕のもとに戻ってきた、とマーティンが信じてしまうようなセックスの後、アガテの妊娠を報告したりする狡さ、無神経さに唖然。しかも3人で一緒に赤ちゃん育てよう、と提案したり。相手の都合や気持ちはお構いなし、ぜんぶ自分のしたいようにするノーテンキな身勝手さは、もはや頭おかしいレベルで滑稽でもあった。ちょっと笑いも狙ってるのかな?と思ってしまうトマスのクズっぷりでした。

 クズなトマスが許せないと同時に、振り回されても彼を許して受け入れてしまう、マーティンとアガテの人の善さも理解しがたかったです。あんな二股、屈辱以外のなにものでもないのに。マーティンもアガテも、怒ったり悲しんだりはするけど、トマスへの愛がそれに勝ってしまってつい…の繰り返しがイタすぎる。恋敵なのに、マーティンとアガテの間に憎悪も衝突も発生せず、冷静に距離を置いた分別ある関係を保ってたのも驚き。悪いのは全部トマス、ということがお互い解ってたからでしょうか。もし男を奪い合う相手が同性だったら、きっとありふれた修羅場になってたんでしょうね。何でこんなクズをそこまで?!もうやめとけ!と言いたくなる二人でしたが、蓼食う虫も好き好きというか、ダメでクズなところに惹かれる人も世の中にはたくさんいるみたいですね。だめんず女(男も)が後を絶たないわけですね。クズ男も、それに引っかかる男女も、結局どっちもどっち。そんなグダグダした痴情のもつれ話は、確かに日本の映画ファンにはアピールしないものかもしれません。
 マーティン役は、ゲイを演じさせればsecond to noneな役者、ベン・ウィショー。

 ベン子さん、今回も生々しくも魅力的なゲイっぷりでした。ノンケ俳優が頑張ってゲイ役やってるのとは、ぜんぜん違うんですよね~。ゲイ=気持ち悪いオカマ野郎、みたいな扱いだった時代はもう遠い過去。ベン子さんこそが、ゲイがゲイ役を演じる意義を体現する俳優の代表格、先駆者ではないでしょうか。ベン子さんの表情、仕草ひとつひとつが、女性にもノンケ男性にもないもの。すごい気が強そうで、みじめなほど優しい、そんなベン子さんasマーティンが痛ましくも可愛かったです。
 トマス役は、やはりBL映画である「大いなる自由」で知られるドイツ俳優のフランツ・ロゴフスキ。カープの菊池涼介をすごく薄めたような顔?イライラさせつつも、何か放っておけないような脆さとか愛嬌を振りまく魔性のクズ男っぷりでした。彼のゲイゲイしすぎるファッションがスゴいです。ベン子さんとのセックスシーンが、かなり大胆でリアルでした。ベン子さん、「ロンドン・スパイ」でもケツ丸出しで腰を激しく動かしてましたが、今回はあれを上まわるものでした。お尻の穴も見えそうなほどのアングルと動きは、見ていて気まずさを覚えてしまうほど。今回も彼がタチだったので驚きました。ああ見えてベン子さん、私生活でも攻めのほうなんですかね。

 アガテ役は、「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス。若いのにもう熟女の妖艶さが。あのムチムチピチピチさ、そりゃ男はスルーできんわな。夫や彼氏には絶対引き合わせていけない女です。でも、男にはそんなに関心なさそうな、どーでもいいわみたいな冷めた感じ、ドライなそっけなさがカッコよくて好きです。アガテがいちばん大人だった。なのでいちばん可哀想でもあった。それにしても。マーティンがイギリス人、トマスがドイツ人、アガテがフランス人と、インターナショナルな三角関係!
 パリの生活風景も、いい感じに撮られていました。昼と夜のカフェとか、舗道の絵とか、キッチンで使ってる食器、料理とか、なにげなさがさりげなくおしゃれ。

 ↑ Netflixのテレビシリーズ「ブラック・ダヴ」が、今のところ日本で見られる最新のベンでしょうか。アイラ・サックス監督の新作“Peter Hujar's Day”もベン主演!有名な写真家の話?ゲイ役?楽しみ(^^♪
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ロミオはメンヘラ、ジュリエットは天然ビッチ

2024-07-05 | フランス、ベルギー映画
 「ランデヴー」
 女優志願のニーナは、不動産会社に勤務する青年ポロと親しくなる。ポロのルームメイトであるクエンティンの無礼さにニーナは反感を覚えるが、破滅的な彼に強く惹かれて…
 前から観たかったフランス映画を、ようやく。「私の好きな季節」や「野生の葦」「かげろう」「Quand on a 17 ans」など、アンドレ・テシネ監督の作品が好きなんです。いかにもフランス映画って内容と雰囲気が好き。決してワケワカメな難解ゲージュツ映画じゃないところも。何よりテシネ監督の作品のほとんどが、フランスの大女優+イケメン俳優主演、というキャビアとフォアグラがセットになってるような美味しさなんですよ。って、キャビアもフォアグラも食べたことないけど

 1985年公開なので、39年前!の作品ニーナ役は、当時21歳、デビューしたばかりの頃のジュリエット・ビノシュ。わ、若い!ピッチピチです!若かりし頃のビノシュさんは、田舎の童顔おぼこ娘って感じで可愛いと思うけど、同性受けしないタイプの女優でした。何でこんな美人でもない、イモくさい女がヒロイン?!しかもイケメンにモテまくって!と、女性が反感を覚えたりやっかんだりするのも理解できる見た目と役、そして私生活。でも私は昔からすごく好きな女優さんなんですよね~。好感や共感など求めていない、男にも女にも媚びてないところが好き。「存在の耐えられない軽さ」とか、スゴい女優だな~と圧倒&魅了されましたし。キレイカワイイだけ女優など石ころ同然にしてしまう、その存在感と演技力と役者魂はまさにダイヤモンドの原石でした。あっという間に国際的な女優となり、ついにはアカデミー賞まで受賞した躍進を、私は驚きませんでした。

 そんなビノシュの初主演作が、このアンドレ・テシネ監督の作品。フランス女優ってスゴいわ~と、この映画の彼女を見てあらためて思いました。若い頃から脱ぎっぷりがいいことで知られるビノシュですが、この映画では何もここまでと呆れるほどに。ただ脱ぐだけじゃなく、脱ぎ方と脱ぐシチュエーションがおっぱいやお尻どころか、ヘアも丸出し。ラブシーンや裸も全然きれいじゃなく何だか卑猥な生臭さがあって、見ていて居心地の悪さを覚えました。あの生々しさ、生臭さこそが男を惹きつける、ビノシュの強烈で強力な魅力なんでしょうね。親しみやすいイモ可愛さと生臭い雌フェロモンで、男たちに俺でも抱ける!と思わせる女。一度抱いたらズルズル、ドロドロと沼ってしまう危険な女。実際にも、ロボットみたいな完璧な美女よりも、ビノシュみたいな女のほうが男にモテてるような気がします。ビノシュのモチモチねっとり吸い付きそうな白い柔肌の、淫らな色香ときたら!

 ニーナとポロ、クエンティンの三角関係のお話なんだろうけど、ほんとフランス人の恋愛ってわけがわかりません。今まで観たテシネ監督作品の中では、最もワケワカメな話でした男から男へなニーナがビッチすぎる。尻軽なのにポロとは寝ないのが、またややこしくてめんどくさい女。悪意や計算なんか全然なく男を振り回すニーナ、まさに魔性の天然女。フランス映画伝統のヒロインですね。尽くしてもヤラせてもらえず、振り回されて悶々イライラなポロが可哀想でした。傷ついてもニーナと縁切りできないポロのドM男っぷりも、まさにフランス男って感じ。

 クエンティン役のランベール・ウィルソンも、わ、若い!ハリウッド映画「サハラ」のちょっと後、当時27歳ぐらい。美青年!背が高っ!並ぶとビノシュが子どもみたいだった。意味不明なイカレ言動が気持ち悪くて笑えた。いかがわしいアングラ劇の舞台で全裸本番みたいなシーンとか、よーやるわなことを彼もやってました。すぐ死んじゃってビックリ。でも亡霊?幻覚?になってチョコチョコ現れます。中盤にジャン・ルイ・トランティニャンが登場。シブい!いぶし銀の熟年ですが、走るシーンとかすごく俊敏で若々しかった。ジャン・ルイおじさままでビノシュの毒牙に!?と思いきや、そうはならなかったので安心。ポロ役の俳優は、ブノワ・マジメルを地味に非イケメンにした感じでした。ブノワといえば。この映画の頃はまだ小学生だったブノワを、後にビノシュが…と思うと、何かモヤモヤします
 
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母は見た!“息子が男と…”

2024-06-30 | フランス、ベルギー映画
 「Le fil」
 チュニジアの首都チュニス。裕福な未亡人サラは、フランスで暮らしていた息子マリクの帰国を喜ぶ。同性愛者であるマリクは、使用人の青年ビラルと恋に落ちる。それを知ったサラは…
 MY 老母や職場のおばさまたちに、もしも愛する息子がゲイだったらどうするか、もし息子が男の恋人を連れて来たらどうするか、と訊いたことがあります。彼女たちのほぼ全員が、別に構わない、本人の自由、と理解ある姿勢を示していましたが、果たして本当なのでしょうか。真に受けることができなかったのはなぜでしょうか。

 昔に比べると、LGBTには寛容な世の中にはなってるみたいですが、まだ多くの人たちにとって、特に広島のような保守的な地方では、同性愛者なんて映画やドラマの中だけの作り物、実際に関わることはない宇宙人みたいな存在なのではないでしょうか。もしほんとに目の当たりにしたら、ぜったい困惑や拒絶反応があると思います。親が傷つくから、悲しむから、そして自分を拒絶するかもしれないから隠し通すしかない、そんなゲイの心理が痛ましくて苦しいです。子どもがゲイだから拒否、嫌悪するような親なんてこっちから願い下げ、私なら恩も愛も涸れ果てると思うけど、そんな簡単に冷徹に割り切ることができない親子の情、しがらみに苦しんでいる人も多いんだろうな~…

 この映画のマリクも、老いた母を気づかってゲイであることを隠し、母を安心させるために女性と偽装結婚までするのですが。そこまでしなくちゃいけないの、しんどいな~と、異性愛者ならしなくていいような苦労が気の毒になったけど。マリクの場合は、ママへの配慮以上に家族も恋人も社会的ステイタスも保つためには、これぐらいは喜んでするみたいな気軽な計算高さがあったので、何かを犠牲にしてるという重苦しさはなし。おそらく70年代ぐらいの話だとは思いますが、隠れキリシタンのような旧来のゲイとは違う、したたかな新世代のゲイっぽかったです。マリクがブルジョアということも、庶民のゲイよりも生きやすくなった恩恵のように思われました。

 ママバレすると開き直って、ビラルを堂々と恋人扱いし始めるなど、清々しいほど我が道を行くマリクでした。この映画はBLよりも、息子がゲイと知った時の母親の反応、対処について考えさせる内容かも。ベッドで眠っている裸のマリクとビラルを見ているサラの顔、まさに鬼の形相で怖かったです。悲しみよりも怒り。同じ立場に置かれたら、世の中のママのほとんどがそうなるのでは。女性と結婚して子どもに恵まれる健全な幸せを、自分の息子も当然…と信じていたのに裏切られた、という怒り。女性特有の独善的で支配的な愛が、はからずも膿のように出てしまったサラのリアクションでした。
 イライラしたり罵倒したり、急に体調を崩して息子を困らせるなど、これまた女性的なイヤガラセっぽい反抗をひと通り実践しつつも、結局は白旗をあげちゃうママ。はじめっから勝負はついてた感じ。母親の愛、特に息子への愛はやはり海よりも深いんですね。愛される者が勝者で、愛する者は敗者。負けて勝ての言葉通り、BLを受け入れてからのママは、どことなく距離を感じていたマリクに対する苛立ちや不安も消えて、優しく安らいだ境地にたどり着いたかのようでした。自分らしく正直に生きるためには、大きな代償を支払うことになるかもしれないけど…それでももいい、と思えるような愛に出会えることは幸せなことですね。

 サラ役は、イタリア映画界のレジェンド女優クラウディア・カルディナーレ。この映画の時は御年71歳ぐらい。老女だけど、老いさらばえた媼って感じは全然ない。華やかで艶やかな雰囲気は健在。彼女のブルジョアファッションも、貴婦人気どりな堅苦しさがなく、かつ高級感があって素敵でした。フランス語が流暢だな~と思ったら、サラと同じくフランス領だったチュニジアのチュニスで生まれ育ったため、母国語はフランス語なんだとか。現在は御年89歳ぐらいのカルディナーレさん、ご健勝ならいいのだけど。マリク役のアントナン・スターリ・ヴィシュワナダンは、パイレーツ・オブ・カリビアンのバルボッサ船長似?もうちょっと私好みのイケメンだったらよかったのだけど。ビラル役のサリム・ケシゥシュは、なかなかイケメンでした。いいカラダしてたし。アラブ系の若者の浅黒い肌が、艶っぽくてエロい。男同士のラブシーンは大したことなし。あまり馴染みのない遠い国、チュニジアの風景が珍しくて興味深かったです。
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鳩に愛をあげないでください

2024-06-19 | フランス、ベルギー映画
 「Les ailes de la colombe」
 高級娼婦のカトリーヌは、ヴェネツィアで音楽ライターの青年サンドロと出会い恋人関係になる。裕福だが孤独な娘マリーとも親しくなったカトリーヌは、マリーが不治の病で余命いくばくもないと知り…
 ずっと前から観たかった1981年のフランス映画を、ようやく!文豪ヘンリー・ジェームズの小説「鳩の翼」を、現代のイタリアに設定を置き換えての映画化。本家イギリス版の「鳩の翼」は、主演のヘレナ・ボナム・カーターがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなど、高く評価された時代劇の佳作です。このフランス版は何といっても、若かりし日のイザベル・ユペールとドミニク・サンダの競演!大女優の競演って、その美と個性と演技での火花散る対決だけでなく、撮影の裏話も気になりますよね~。和気あいあいよりも、お互いにガン無視あるいは大ゲンカ!のほうが面白いし、演技にも磨きがかかりそう。ユペールもサンダも若い頃から一流の映像作家たちから愛されてきた、数々の傑作や問題作のヒロインとして映画史に名を刻む女優。凡百な女優とはレベチな美しさと才能とキャリア、そしてプライドの持ち主である大女優が二人同じ画面とか、平穏無事であるわけがない、あってはいけない(笑)なんて、勝手な想像でわくわくさせてくれるのも、大女優の魅力です。

 ただもうそこにいるだけで、妖しいカオス。その美しさも佇まいも、不穏で不吉な予感しかさせない。ユペールもサンダも、そんな女優。どっちか一人だけでも危険なのに、二人とかヤバすぎ。この二人で生ぬるいヒューマンドラマなど生まれるはずがない。猛毒入りのよく冷えた高級ワインのような映画に違いない!と、長年期待してた作品。どうだったかというと…うう~ん、火花バチバチ感は全然なかったです。お二人とも他の出演作同様、冷ややかでミステリアス。それが彼女たちの魅力ではあるのですが、役まで二人の持ち味に飲まれてしまった感じでした。どんな作品、どんな役でも、その個性と魅力を堅守するところがスゴい、けど、この映画のヒロインたちには適していなかったように思われます。

 カトリーヌ役のドミニク・サンダは、親しみやすさなど微塵もない、近寄りがたい氷の美女。コールガールというより高貴な佳人。あんな娼婦、恐れ多くて私なら勃たんわおんな心の複雑さ、愚かさが生々しくも悲しかったヘレナ・ボナム・カーターがすごくチャーミングだったので、常に冷静沈着、喜怒哀楽のない無感情なドミニク・サンダは、まるでアンドロイドみたいで味気なかったです。でも、その冷たい気高い美貌は、もはや絶滅種の尊さ。マニッシュなファッションが似合ってて、着こなしには一般人には絶対出せない気品と高級感が。サラっと無駄脱ぎしてるところも、さすがフランス女優。

 マリー役のイザベル・ユペールは、少女みたいで可愛い。純真無垢で可憐なお嬢様ファッションも可愛かった。でも、何を考えているのか読めない底の知れなさ、不可解さが何となく不気味でもあるところが、これぞイザベル・ユペールでした。命と引き換えに愛を得ようとする悲しみのヒロイン、という感じも全然しなかった。もうどうでもいいわ、みたいなクールなアンニュイ自暴自棄っぽかったというか。不治の病というより、低血圧でしんどそうな感じでもあった。とにかくカトリーヌにもマリーにも人間臭さ、おんなの情念がなさすぎ。もうちょっとメロドラマティックなヒロインにしてほしかったけど、そういうのはドミニク・サンダとイザベル・ユペールには似合わない。もし二人にわかりやすいヒロインを演じさせたら、すごい違和感を覚えることでしょう。わかりにくい女、わかりにくい物語でこそ魅力が発揮できる女優たちだと、この映画を観てあらためて思いました。

 サンドロ役のミケーレ・プラシド、現在はシブい名優ですが、当時の彼はフランスの大女優二人の相手役にしては、かなり地味というか、位負けしてる感じ。まあ、イザベル・ユペール&ドミニク・サンダと対等になれる俳優なんて、当時イタリアにもフランスにもそうそういなかったでしょうから仕方ありません。サンドロ役は少々演技がヘタでも、すごいイケメン俳優を起用したほうがよかったのでは。ちなみにプラシド氏の息子、ブレンノ・プラシドはイケメン!ユペりんとは「眠れる美女」や、パパが監督したカラヴァッジョを描いた映画でも共演してますね。
 ドラマじたいは味気なかったけど、舞台となったヴェネツィアは情緒たっぷりに撮られています。有名な広場や聖堂、教会、そして運河etc.ヴェネツィアといえばの風景が、素晴らしいカメラワークで。フィリップ・サルドの音楽も、流麗で美しかったです。女優映画の名手ブノワ・ジャコー監督は、この作品の後もドミニク・サンダ、イザベル・ユペールと何度も仕事してますね。
 「鳩の翼」邦画でリメイクしてほしいかも。「異人たち」みたいに、BLアレンジで!舞台は京都、BLカップルが財産を狙って病弱な金持ちの娘に近づくが…みたいな設定で!妄想キャストを真剣に考えてるアホな私です
 
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愛した男の息子と…

2024-04-18 | フランス、ベルギー映画
 「異人たち」公開記念BL映画祭②
 「Arrête avec tes mensonges」
 人気作家のステファンはワイン会社の招待を受け、35年ぶりに故郷であるコニャック地方に帰ってくる。ワイン会社で働く青年リュカと親しくなるステファンだったが、リュカが高校時代の恋人トマの息子と知り…
 初恋は実らないと言いますが、だからこそ忘れられないスウィートペインな思い出になるのですね。それがBLならなおのこと。男子高校生二人のファーストラブが、美しい田舎町を舞台に甘く切なく描かれているフランス映画です。主役のDK二人が、翳のあるイケメン不良少年と真面目な地味メガネ男子、という定番ともえいるベタなカップリング。いつも不良をドキドキ目で追ってたメガネが、ある日突然こっそり近づいてきた不良に人の来ない体育倉庫の連れて行かれ、当惑しつつも嬉し恥かし初体験。BL関係になるまでにまわりくどいエピソードや描写がなく、すぐにセックスする展開がよかったです。初めてのセックスシーンは、短いながらもリアルで大胆でした。ぜんぜん甘美でも情熱的でもなく、鬱積していたものを吐き出した感じ。せわしなく稚拙な性行為が、いかにも未成年の男子って感じでした。

 ステファンとトマのこじらせBLが、もどかしくも切ない。ステファンのほうはゲイという自覚があり、そのことを恥じてないので、恋にポジティヴで正直なのですが、トマは病的なまでに二人の関係を秘密にしようとし、表向きは頑なにノンケのふりを続けてステファンを困惑させたり傷つけたり。俺はゲイじゃない!なのになのに何で、みたいな葛藤や自己嫌悪から逃れられず、そのことがやがて悲劇へと彼を導くことに。ひと昔、そして田舎のゲイの生きづらさを、悲観的で臆病なトマを通して知ることができます。そこまでビクビクしなくても、コソコソしなくてもと思うのは、現実のゲイの苦悩や悲しみとは縁がないからでしょう。ゲイとして堂々と生きるには、あまりにも小さく狭い世界である田舎町。ステファンのように、いずれは都会に行ける自由も才能もない。恋が幸せよりもどうしようもない閉塞感と絶望の淵へとトマを追い詰め、それになすすべもないステファン、悲しすぎるトマの選択…痛ましいけど、やはりBLには悲劇が似合う。

 ステファンとトマが人目を忍んで過ごす恋人の時間は、暗く重い雲間から射す優しく明るい光のような儚くも幸せなシーンでした。あんなに心も体もひとつになれる相手と出会えた、愛し合えたのに、夢も希望も抱けないなんて理不尽。トマとステファンが密会する湖畔が美しい。でも、体育倉庫といいステファンの部屋といい、コソコソしてるわりには誰か来るかもしれない場所で真昼間からイチャイチャしてるので、バレやしないかこっちが不安になりました
 DKステファン役の子は、ジュリエット・ビノシュそっくり。彼女の息子かと思ったほどに。トマ役の子は、ちょっと間宮祥太郎似?脱ぎっぷりがよく、大きなアソコもボロンっと大胆に出してました。熟年ステファン役のギヨーム・ドゥ・トンケデックは、ジャック・レモン系の軽妙な温かみがある俳優ですね。リュカ役のヴィクトル・ベルモンドは何と!フランスの大スター、故ジャン・ポール・ベルモンドの孫だって!言われてみれば、ちょっと似てますね。おじいちゃんのような男くさいワイルドさはなく、優しげな感じ。ワインで有名なコニャック地方の風景が、すごく美しく撮られていました。高級ワイン飲みたい!
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疑惑に落とす女!

2024-04-01 | フランス、ベルギー映画
 皆さま、こんばんは!どうしても心に秘めておけないことがあり、家族にも職場でも話せていないことを、ここで打ち明けさせてください。それは…ああ、私ついに、高額宝くじに当選したんです!!!100万200万じゃないですよ!黙ったまま誰にもビタ一文あげません!もう仕事も辞めます!バラ色の優雅な引きこもり生活をエンジョイします!そして一か月ほどハワイとイギリスで過ごそうと思ってます♬ワーキングプアライフよ、さようなら!
 なんてね。今日はエイプリルフールですね(^^♪自分でも悲しく虚しくなる嘘ついちゃいました。いつかこの嘘が真になりますようにと祈りながら、ワーキングプア生活を今年も続けます…

 「落下の解剖学」
 フランスの雪深い山里で、作家であるサンドラの夫サミュエルの転落死体が発見される。第一発見者は夫妻の息子で視覚障害のあるダニエルだった。警察はサミュエルと不仲だったサンドラの犯行と見なし、彼女を殺人罪で逮捕するが…
 去年のカンヌ映画祭パルムドール受賞、アメリカの賞レースも席捲し、アカデミー賞では脚本賞を獲得した話題作を、やっと観ることができました(^^♪で、どうだったかというと…評判通りの秀作でしたが、何だろう、期待外れとまでは言わないけど、そこまで大傑作とは思えなかったというのが正直な感想です。期待し過ぎたんでしょうね。グイグイ引き込んでくる衝撃と面白さという点では、同じオスカー作品賞候補だった「哀れなるものたち」のほうが格段に上だし、ザンドラ・ヒュラーの演技も「ありがとう、トニ・エルドマン」のほうがユニークで強烈でした。

 手に汗握るサスペンスとか、二転三転するドラマティックさとか仰天の真実とか、がっつりエンターテイメント!な映画ではなく、どこにでもいる夫婦、ありふれた家族の関係の中に潜んでいるイヤな感情ー軽蔑とか恥辱、無関心とか嫌悪感、疎外感といったものーが冷ややかに、かつ痛烈に暴かれ晒されていく息詰まる相克のドラマ、として見ごたえがありました。とんでもなく醜悪な秘密とか、恐ろしい動機とかではなく、破滅へと導くのがパートナーや家族がいれば大なり小なりある身近で些細な行き違いや軋轢、自分勝手さというのが現実的で怖いです。
 それにしても。サンドラ夫妻の冷え切った関係、責任の押し付け合い、自分の利益や都合優先、いがみ合っての罵詈雑言を見ていると、ぼっちのほうがやっぱいいわと痛感。あんな不満やストレスで蝕まれた生活、まっぴらごめん。二人の間に息子がいなかったら、きっと別れられたんだろうなあと思うと、ダニエルの悲しみのほうがサミュエルの死よりも不幸で可哀想でした。

 疑惑のヒロイン、サンドラを薄気味悪いほどに冷静沈着に、時にホラーな激情で演じて絶賛され、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされたドイツの名女優、ザンドラ・ヒュラーの巧妙な演技がやはりこの映画の白眉でしょうか。疑惑の女といえば、いかにもやってそうな悪女、毒婦、あるいは濡れ衣を着せられた哀れな女、みたいに演じるのが常套ですが、そんなオーソドックスかつ陳腐じゃないところが、さすがザンドラさん。見た目も言動もごくごくフツー、でも空虚さや冷酷さが渦巻く女の底の知れなさを、エキセントリックに怪演熱演するのではなく、トボけた感じさえする表情や雰囲気で伝える演技が独特で非凡でした。ドイツ人の彼女が主に英語で、時々フランス語で演じてるのも驚嘆ものでした。悪意なく家族や周囲の人々を苦しめ傷つけ不幸にするサンドラみたいな女はある意味りっぱな悪女、でも苦しめられても傷つけられても壊れないサンドラの強靭な精神に憧れもします。

 今やフランス映画界随一の役者スワン・アルローが、サンドラの弁護人役を好演。すごい個性的な顔。役と演技は人間味があり、なおかつ鋭さもあって、それでいて演技派気どりの俳優にありがちな出しゃばり感がなく、かつ強烈なヒロインに食われない存在感も放っている、という理想的な相手役演技でした。ダニエルの盲導犬スヌープの、人間たちに翻弄されても忠実な姿がけなげで愛しかったです。それにしても。この内容で上映時間2時間半はちと長い!集中力がない私には、冗漫に感じられもしました。
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味わい合いたい男たち

2024-03-24 | フランス、ベルギー映画
 「趣味の問題」
 レストランで働くニコラは、美食家で有名な実業家フレデリックにスカウトされ、破格の報酬で彼専属の味見係となる。フレデリックは料理だけでなく、味覚やファッションのセンスまでもニコラが自分と同じになるよう仕向け、要求はしだいにエスカレートしていく。ニコラは戸惑いながらも、フレデリックとの危険なゲームにのめり込み…

 このフランス映画、すごく好きなんです。エレガントな変態映画というか。金持ちの熟年と若いイケメンが主役という設定からしてソソられますが、二人が繰り広げるイビツな主従関係、愛憎が異常でスリリング。性的な関係にはならないけど、どんな手段を使ってでもすべてを共有、果ては同化しようとする男ふたりの言動は、じゅうぶんに濃密で耽美的な同性愛のぬめりが。フレデリックとニコラ、人生と命を賭けて二人だけのゲームにのめり込んでいくのですが、何やってんの?!はあ?ウソやろ?!と、目がテンもしくはドン引きするようなことばかり大真面目にするのでプっと吹いちゃう、これってコメディなのかなと思えるほど笑える、私にとってはそんな珍作です。

 フレデリックのニコラとの同化作戦が、かなり手が込んでて怖い、けど笑えます。自分と同じ味覚にするために過酷なダイエットをニコラに強要し、腹をすかせたニコラに彼の大好物だけど自分の嫌いなカキを病気になるほど食わせ、もうカキを見るのもイヤにしてしまうとか。ニコラに抱かせた女を自分も抱いたりとか。はじめは困惑したり怒ったりしてたニコラも、だんだん異常さにハマっていってしまい、フレデリックが足を骨折すると自分も…みたいな行為に走った挙句、おいおい~(笑)な末路に。攻めのフレデリックと受けのニコラ、どっちも負けず劣らずな変態。出会った瞬間ニコラにロックオンしたフレデリック、同じ変態のにおいを嗅ぎつけたのでしょうか。甘美で危険な変態ゲームを心ゆくまで味わい尽くして破滅した二人は、ある意味幸せ者だったと言えるのではないでしょうか。親密だけど対等ではない関係も、二人の心理戦を面白くしていました。

 ニコラ役は、名作「トリコロール 赤の愛」で私のイケメンレーダーをビビビとさせたジャン・ピエール・ロリ。この作品でもイケメン!端正で優しいマスク、知的で品がある雰囲気が好き。貧乏な若者が贅沢な生活とブルジョアの退廃に磨かれ毒されていく過程を、まるでマイフェアレディの青年版のように魅力的に演じてます。高級スーツの着こなしに惚れ惚れ!あてがわれた女とのセックスシーンでは、全裸も披露してます。フレデリック役は、オゾン監督の「焼け石に水」やルコント監督の「リディキュール」など、フランス映画ファンにはおなじみのおじさま俳優だった故ベルナール・ジロドー。この作品でもねっとりと倦んでて隠微、イカレてるけどエレガント、どこかシレっとした感でクスっと笑わせてもくれる好演。フレデリックの大富豪っぷりも、韓国の財閥とかと違って優雅で洗練されています。
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愛されすぎた女!

2024-02-12 | フランス、ベルギー映画
 「L'Amour et les Forêts」
 教師のブランシェは、理想的な男性グレゴワールと恋に落ちて結婚する。愛する子どもにも充実した仕事にも恵まれるブランシェだったが、やがてグレゴワールが偏執的な独占欲の持ち主であることに気づき…
 ヒロイン役のヴィルジニー・エフィラは、「年下のカレ」や「ヴィクトリア」」などラブコメで人気を博し、最近は「エル ELLE」「ベネデッタ」と連続してヴァーホーヴェン監督の変態映画に出演し、「パリの記憶」で昨年度のセザール賞主演女優賞を受賞。主演作が引きも切らず、名実ともに今やフランスのトップ女優。熟女だけど童顔で、すごく親しみやすい可愛さ。ちょっとブリトニー・スピアーズ似?お高くとまった感じが全然なくて、悪女役とかは似合わなそうな明るさと温かみがあります。でもすごい大胆なところも彼女の魅力。ベネデッタとか、AV女優も真っ青な脱ぎっぷり、痴女っぷりでした。この映画でも、ヘアも見せる全裸でのラブシーンあり。ムチムチした熟女ヌードがエロすぎる。人気女優なのに何でここまでやる?でもそういう惜しみなさが、彼女の人気の理由だとも思います。

 大人可愛いエフィラさん、今作ではDV被害者役をシリアスに演じてます。何の落ち度もない、いい人を絵に描いたような彼女が、イカレ亭主から理不尽で残酷な仕打ちを受ける姿が、悲惨で痛ましい。ブランシェとグレゴワールが出会って恋に落ちて結婚するまでは、ロマンティックで情熱的なラブストーリーとして描かれているのですが。ブランシェが子育てと仕事の両立を始めた頃にグレゴワールがヤバい本性をあらわし始め、破局へと向かって不気味で激しい愛憎ドラマにシフトチェンジ。とにかくグレゴワールが、サイコ野郎すぎて戦慄。

 夫からのDVに苦しんでいる女性の話を見聞きするたびに、何でそんな男と結婚を?何で別れない?と、そんな悲劇とは無縁な私なんかは安易に思ってしまいますが、当事者にとってはそんな簡単に白黒つくような状況とか関係じゃないんですよね。ブランシェじゃなくても、グレゴワールにはよほどカンが鋭い人、疑り深い人でないと騙されますよ。エリートの美男子で、人当たりがよく家庭的、奥さんを心の底から愛してる、という表の顔も演じてるのではなく真実の彼なところが、厄介で怖い。ブランシェにだけドス黒くネチネチした独占欲や嫉妬を見せて、決して肉体的には傷つけず、怒鳴ったり物を壊したりして恫喝したり、執拗かつ攻撃的で陰湿な言葉攻めでモラハラ、ブランシェが自己否定や罪悪感を抱くよう仕向け彼女の心を壊して支配しながらも、やり過ぎるとハっとなって僕が悪かったと泣いて許しを請うたりと、グレゴワールの狂気的だけど悪賢いDVの手口を見てると、なるほど世の中からDVされ妻がいなくならないわけだ、と悲しい納得。

 愛しすぎるのも愛されすぎるのも、過ぎたるは及ばざるがごとし、でしょうか。愛も適度がいちばん、むしろ無縁なままでいいわと、この映画のカップルの修羅場を見ていて思いました
 グレゴワール役はメルヴィル・プポー。「夏物語」や「ぼくを葬る」の美青年も、すっかりイケオジ俳優に。おじさんになったけど、若い頃とは違う円熟の魅力と、若い頃の名残の美しさで往年のファンを魅せてくれました。DV男って、ブサイクがやるより美男がやるほうが怖さが増しますね。アラフィフになっても、官能的なラブシーンができるところがトレビアン。日本にも彼みたいに、大人な役と演技ができる熟年俳優がいたら嬉しいのだけど。熟年とはいえメルヴィル、キムタクより年下なんですよね~。
 ブランシェの同僚役で、懐かしのロマーヌ・ボーランジェが出演してます。言われなきゃ誰だかわかんないほど、枯れたおばさんになってます。ブランシェとグレゴワールの、庶民よりちょっと上なライフスタイルがおしゃれでした。双子の姉妹二役を演じてるエフィラさん、お姉さんのブランシェはシンプルだけど上品でフェミニン、妹はカッコカワイイ大人ギャル風と、彼女のファッションがハイセンスで素敵。
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号外!汚れっちまったイケメン記者

2024-02-09 | フランス、ベルギー映画
 「幻滅」
 19世紀前半のフランス。詩人として立身したい青年リュシアンは、愛人関係にある貴族の人妻ルイーズに伴いパリに出るが、貧しい田舎者であることを上流社会の人々に嘲られ、ルイーズにも見捨てられてしまう。そんな中、新聞社の編集者エティエンヌと出会ったリュシアンは、エティエンヌに導かれるまま記者となるが…

 セザール賞で作品賞など7部門を受賞した話題作、やっと観ることができました。大好きな時代劇というのも観たかった理由のひとつですが、最大の目的は主演のバンジャマン・ヴォアザンです(^^♪「Summer of 85 」や「社会から虐げられた女たち」などでのイケメンぶり、そして大胆な演技はかなり印象に残るものでした。さすが20代のフレッシュさ、美しさ可愛さなんだけど、いろんなことをもう経験済みみたいな倦怠感と色気が、日本の若い俳優と違う大人っぽい魅力。主役に抜擢されたこの時代劇でもバンジャマンくん、日本の若い俳優もこれぐらいはやってほしいと思える演技で魅せてくれました。

 竹内涼真をねっとりと眠たげに退廃的な感じにしたような顔のバンジャマンくん、喜怒哀楽どの表情も可愛い!その可愛さに何となく粘着質な色っぽさがあるところがすごい好きです。衣装もどれも似合ってて、モダンなおしゃれさ。脱ぎっぷり、濡れっぷりもハンパないです。全裸シーン、一回や二回じゃなかったぞ。女優たちとのラブシーンも、これでセックスしたといいたいのか?な手抜きや稚拙さ、思い切りの悪さに呆れる男優ばかりの中、性の悦びを大胆に自然に演じることができるバンジャマンくんを、私は心から讃えたい。ここまで脱ぐ必要ある?抱く必要ある?とは、ちょっと思ったけど

 どん底から成り上がり、何をやってもイケイケドンドン状態で調子ぶっこき、あっという間に転落。リュシアンの激しすぎるアップダウンライフが、めくるめく華やかさとスピードで描かれています。19世紀の話ですが、現代ともかなりカブる内容。今も昔もマスコミって、百鬼夜行の醜い汚い世界なんですね。才能よりも金とコネ、劇中で横行するフェイクニュースとか情報操作、ステマ、やらせ、腐敗など、当時の行われ方の描写が面白かったです。リュシアンが商品広告のコピーライターをしてたのも興味深かった。精神的にも肉体的にも踊り踊らされて消耗疲弊して毒されるメディアや芸能界は、私のような一般人からすると狂気の世界。そんなところで元気に輝き続けることができる人たち、ほとんど魔物です。

 若いバンジャマンくんを盛り上げる脇役もトレビアン。エティエンヌ役はヴァンサン・ラコスト。俗悪だけどどこか憎めない茶目っ気がある男を好演して、セザール賞の助演男優賞を受賞。リュシアンのライバルだけど理解者でもある作家ナタン役は、人気監督のグザヴィエ・ドラン。イケメンだし、役者としても魅力的なドラ美さん。監督業引退宣言は本気なのかしらん。ルイーズ役のセシル・ド・フランス、いい女優。でもルイーズみたいな女よりも、強くて誠実な女性役のほうが似合う風貌。ジェラール・ドパルデュー御大も顔を出してます。新聞社にいる猿が可愛かった。

 時代劇の醍醐味は、やはり当時を再現した衣装やセットです。この映画も随分それらにお金をかけてます。社交界や劇場、屋敷など上流社会が華やかだけどド派手な成金っぽさとは違う、優雅で落ち着いた色彩や装飾で描かれていたのも素敵でした。原作は文豪バルザックの小説。バルザックも田舎出身で作家として芽が出る前は、リュシアンみたいにコピーライターや記者をしてたとか。自伝的な作品なのかな。

 ↑ 主演作であるアンドレ・テシネ監督の“Les âmes soeurs”日本公開が待たれます

コメント (2)
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インドの恋人

2023-10-13 | フランス、ベルギー映画
 「Maya」
 シリアでテロ組織に拘束されていたフランス人ジャーナリストのガブリエルは、解放後にインドのゴアで静養生活を始める。旧友の娘マヤと親しくなるガブリエルだったが…
 ミア・ハンセン・ラブ監督の日本未公開作。佳作なのにもったいない。ラブ監督の「未来よ こんにちは」でイザベル・ユペールの教え子役だったロマン・コリンカが、主役のガブリエルを演じてます。「未来よ こんにちは」でMYイケメンレーダーをビビビとさせたコリンカくん、主演に格上げされたこの作品では、さらにイケメン!

 ちょっと見、顔はガエル・ガルシア・ベルナル+ザック・エフロン、みたいな?イケメンなだけでなく、雰囲気が優しそうで知的で育ちがよさげ。パリでもゴアでも高価そうな服なんか着てないんだけど、何を着ても洗練されて見えるんですよね~。パリの街を歩きながら、カフェで人を待ちながら煙草を吸ってる時の彼、めっちゃカッコいいんですよ~。ポイ捨てはダメ!だけど、ポイ捨ての仕方さえサマになってるんです。バリバリの主役なので、出ずっぱりなのも嬉しい。どこを切ってもコリンカなコリンカ金太郎飴な映画でした。

 そして、なぜかやたらと脱ぐコリンカくん。初登場からしても、全裸シャワーシーンだったし!美尻を披露した後も、パリでもゴアでも上半身裸になりまくるコリンカ。バキバキに鍛えた筋肉見ろやー!な肉体ではないけど、胸板が厚くいい具合に引き締まって、胸毛とか全然ないきれいな細マッチョ。あれぐらいが理想的ですね~。着衣だとほっそりスマートなところもトレビアン。顔といい体といい雰囲気といい、こんな外人彼氏ほしいわ~なコリンカasガブリエルでした。流暢な英語も、フランス人イケメンだからソソるんですよね~。

 コリンカくんのどこかいつも遠い目が、ガブリエルの内省的な性格をよく表していたと思います。異国インドでの独り暮らし、インド国内を独り旅、女性たちとの深入りしない恋愛関係など、独りが好きなんだな思わせるガブリエル。そのせいでマヤを傷つけてしまうのですが、優しく知的で孤独癖のあるイケメンとか、反則に近い魅力ですよね。恋愛には向いてないガブリエルみたいな男、女性にとってはちょっと厄介だけど、ご本人も何か気の毒。モテようとか女とヤリたいなんて全然思ってないのに、女が寄ってきちゃうもんね。ガブリエルの愛を拒む優しい冷たさもまた、イケメンだけに許される魅力でした。

 マヤ役のアーシ・バナルジーも、聡明そうな美人&好演。マヤは18歳ぐらいの設定?年上のイケメンフランス男への、さりげなく遠慮がちなマヤのLOVEモーションが可愛くてけなげでした。マヤの気持ちに気づきながらも、彼女を子ども扱いして優しくスルーするガブリエルの紳士ぶりも、もどかしくて胸キュン。
 インド旅行気分になれるのも、この映画の魅力です。インドといえば、人がいっぱいでゴチャゴチャ混沌、貧乏で不潔というイメージですが、この映画のゴアは清潔で閑静な町でした。マヤのパパが営むホテルも素敵。マヤは富裕層の娘で、ライフスタイルも上品でリッチ。極貧の最下層の描写はなかったけど、インドも格差が厳しそう。ガブリエルが列車で回るインドのローカルや庶民の暮らし、古い宮殿などもインド情緒あふれていて興味深かったです。暑そうだけど乾燥しているので、汗ダクダクベタベタにならないところが、さすがインドだと思いました。

 ↑ ロマン・コリンカ、1986年生まれの現在37歳。名優ジャン・ルイ・トランティニャンの孫というサラブレット。出演作が多くないのは、ガツガツ働く必要がないから?仕事を選んで、秀作佳作にまた出てください
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