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雪深い町で家族と暮らす小学生のタクヤは、フィギュアスケートの練習をしている中学生のさくらに胸をときめかせる。そんなタクヤを、さくらのコーチである荒川は気にかけていたが…
久々の映画館での映画鑑賞。すごく佳い映画でした!優しく瑞々しく、そしてホロ苦い。驚きとか衝撃とかいったスパイシーな要素はないけど、タイトル通り、お日さまの柔らかく温かい光に包まれて幸せな気持ちになる、そんな映画でした。雪深い冬の景色も、不思議と冷たさと寒さを感じさせず、汚れない少年の心の世界のように美しかったです。お日さまとは、好きな人のこと。生きる歓びを与えてくれる純真な恋のこと。お日さまとは無縁な私の曇り人生の、何という寒々しさよ
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とにかく主役の3人が、愛おしくなります。ダンススケート大会に向けて練習するのですが、猛特訓!なスポ根ではなく、すごく楽しそうで幸せそうで微笑ましいんです。3人ともそんなにお喋りじゃなく、台詞も少ないのですが、一緒にいる幸福感が交わす笑顔、なにげない仕草や表情で伝わってくる。幸せに多くの言葉は必要ではないんですね。ずっとこのまま…と願わずにはいられない3人の優しく幸せな時間は、ああ…何とも切ない形で断ち切られてしまうのです。まるで楽しい夢から覚めてしまったかのような悲しさと寂しさ、やるせなさ。永遠に続く幸せなんて、やはりありえないのですね。
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この映画、見方によってはかなり危ない内容で、見ていて心配になってしまうシーンもあったりして、ただのほのぼの系映画ではないところが、私にはツボだったのかもしれません。観ていてフランス映画の名作「シベールの日曜日」を思い出しました。シベールは幼い少女、タクヤは少年ですが。大人の男と小学生の男児の、微笑ましさを逸脱した親密さ…コーチがゲイという設定なので、禁断のにおいも薄っすら漂っているんですよ。精神的なショタコンBL映画、と言ってもいいでしょう。誰もいないスケートリンクでの、二人だけの楽しそうな練習。まさに二人だけの世界になってた。さりげない触れ合いや、交わし合う微笑み…さくらじゃなくても、こいつらまさか…?と疑ってしまう甘やかな雰囲気なんです。噂になってスキャンダル、みたいな展開になってもおかしくない二人にドキドキ♡
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コーチは明らかに、さくらよりもタクヤに関心と好意を向けていて、さくらにも優しいけどあくまでビジネスライク、タクヤに対する優しさとは全然違うんですよ。さくらとの練習中にタクヤを目で追って、さくらのことはなおざりだったり。結構露骨なので、身近にいてあれをスルーするにはよほどの鈍さが必要。悲しいかな、さくらは鈍感ではなかった。恋する少女の鋭さ、少女の潔癖さゆえの、あの残酷な拒絶。コーチも痛ましかったけど、私はさくらに同情せずにはいられませんでした。同性愛を嫌悪したのではなく、大人の欺瞞が裏切り行為、屈辱的な嘘に思えて許せなかったのではないでしょうか。幸せを破綻させたのは、さくらの気持ちに気づかなかったコーチの鈍感さ、さくらに彼氏とのイチャイチャを目撃されたコーチの軽率さです。でもそれだって、どうしようもなかったこと。誰も悪くなんかないのが悲しい。何も知らぬままポツンと置いていかれたようなタクヤが、いちばん可哀想だったかも。
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大好きな池松壮亮
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壮亮くん、スイスイと銀盤を滑ってるのもスゴかった。乗馬とかピアノとか、にわか仕込みに見えない演技がいつも驚嘆な壮亮くんです。フィギュアスケーター時代の写真がカッコカワいかった!ちょっと残念だったのは、せっかくゲイ役なのに男性同士のラブシーンとかはなかったところ。同棲中のゲイカップルというより、シェアハウスしてる親友同士って感じだった。恋人役の俳優は、有名な人?苦手かも…
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タクヤとさくら役の子役が、すごく可愛かったです。すごい美少年、美少女ではないけど、優しげで爽やかで清らか。子役にありがちな、わたし演技うまいでしょ!可愛いでしょ!いたいけでしょ!な圧のようなアピールが全然なく、素人っぽい自然さに好感。二人ともスケートが上手!タクヤの親友役の子も可愛かった。タクヤが吃音、という設定の意図は?ぜんぜん障害になっておらず、むしろ可愛さましまし。元有名スケーターを個人コーチに雇えるなんて、さくらはかなりお金持ちのお嬢さま?
静かだけど時に流麗なカメラワーク、柔らかく清澄な光があふれる映像や、冬・春の景色も美しかったです。ドビュッシーの「月の光」が、劇中で効果的に使われていました。
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↑ 今秋は主演作「本心」も公開!このところ色っぽい役や演技は封印してる壮亮くんですが、そろそろ解禁希望
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