「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」
ファッションデザイナーのペトラは、親友のシドニーが連れてきたカリンに恋をし、彼女を愛人にして自宅に囲う。しかし、奔放で不実なカリンにペトラは深く傷つき…
フランソワ・オゾン監督が男女を逆転してリメイクした「苦い涙」を観に行く前に、ドイツの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督のオリジナル版を鑑賞することができました。オゾン監督の初期の作品「焼け石に水」も、ファスビンダー監督作のリメイクですね。BL映画は三度のメシより好きな私ですが、女性同士の恋愛ものは苦手…女ってやっぱ男よりシビアで冷酷で意地悪、そういう怖くてイヤな部分が面白いけど、見ていて気持ちのいいものではない。同じ悲劇でも、BLはどこか甘く切ないファンタジーっぽい印象のものが多いけど、レズビアンはイタくて狂ってるものばかりなような。狂ってるけど破滅はしない、現実逃避しない冷めた強さが女にはあるところも、繊細で脆い男との違いでしょうか。
この映画の女同士の関係も、かなりイタくてキツいです。見ていて居心地が悪くなる女の愛執と残酷さ。増村保造監督の名作、谷崎潤一郎原作の「卍」と、ちょっと女ふたりの関係性ややりとりが似てます。物語はペトラの部屋の中だけで進み、登場人物もペトラとカリン、ペトラの秘書マレーネ、シドニー、ペトラの母&娘の女6人だけ、という舞台劇仕立て。カリンにZOKKON命 by シブがき隊 になったペトラの、若い女を繋ぎとめようとし捨てられまいとする必死な姿の卑屈さ、一方的な愛怨、キレてカリンにぶつける罵詈雑言の狂気的な陰湿さと激しさ、恥も外聞もない愁嘆場、すべてが醜悪でイタすぎる。男はあんなこと言ったりしたりしないもんね。女ってほんと怖いわ。ファスビンダー監督は女が嫌いだったに違いありません。社会的、経済的な立場とは逆なペトラとカリンの力関係、歪なパワーバランスが、緊密に辛辣に描かれています。
それにしても。恋愛って愛したほうが負けですよね~。愛する者はいつも寛大で、愛されるものはいつも残酷。人間をいちばん残酷にするのは、愛されているという意識…という三島由紀夫の「禁色」にあった一節を思い出しました。ペトラとカリンにぴったり当てはまります。ペトラがどんなに愛しても憎んでも、カリンには暖簾に腕押し。カリンを傷つけようと、どんなに鋭くて毒のある言葉で面罵し侮辱しても、カリンには痛くも痒くもない。目の前を小さいハエが飛んでるウザさ程度のこと。それに比べて、ペトラの心を粉砕するカリンの無関心な様子や軽い冷笑の破壊力ときたら。決して自分を愛してくれない人を愛してしまう苦しみや虚しさが、ここまでくるともう滑稽!な描かれ方をしてるのが、この映画の面白さかも。
ペトラ役のマルギット・カルステンセンの神経症チックな狂おしい演技、カリン役のハンナ・シグラ(オゾン監督の「苦い涙」では、主人公の母役で出演してますね)のムチムチはちきれそうな豊満さが強烈。ペトラのファッションと部屋の装飾(壁の絵や絨毯など)も奇抜でインパクトあります。ペトラに下女扱いされても従ってる物言わぬ秘書マレーネが、不気味な存在感。ラストの彼女の行動は、どう解釈すればいいんだろう。
ファッションデザイナーのペトラは、親友のシドニーが連れてきたカリンに恋をし、彼女を愛人にして自宅に囲う。しかし、奔放で不実なカリンにペトラは深く傷つき…
フランソワ・オゾン監督が男女を逆転してリメイクした「苦い涙」を観に行く前に、ドイツの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督のオリジナル版を鑑賞することができました。オゾン監督の初期の作品「焼け石に水」も、ファスビンダー監督作のリメイクですね。BL映画は三度のメシより好きな私ですが、女性同士の恋愛ものは苦手…女ってやっぱ男よりシビアで冷酷で意地悪、そういう怖くてイヤな部分が面白いけど、見ていて気持ちのいいものではない。同じ悲劇でも、BLはどこか甘く切ないファンタジーっぽい印象のものが多いけど、レズビアンはイタくて狂ってるものばかりなような。狂ってるけど破滅はしない、現実逃避しない冷めた強さが女にはあるところも、繊細で脆い男との違いでしょうか。
この映画の女同士の関係も、かなりイタくてキツいです。見ていて居心地が悪くなる女の愛執と残酷さ。増村保造監督の名作、谷崎潤一郎原作の「卍」と、ちょっと女ふたりの関係性ややりとりが似てます。物語はペトラの部屋の中だけで進み、登場人物もペトラとカリン、ペトラの秘書マレーネ、シドニー、ペトラの母&娘の女6人だけ、という舞台劇仕立て。カリンにZOKKON命 by シブがき隊 になったペトラの、若い女を繋ぎとめようとし捨てられまいとする必死な姿の卑屈さ、一方的な愛怨、キレてカリンにぶつける罵詈雑言の狂気的な陰湿さと激しさ、恥も外聞もない愁嘆場、すべてが醜悪でイタすぎる。男はあんなこと言ったりしたりしないもんね。女ってほんと怖いわ。ファスビンダー監督は女が嫌いだったに違いありません。社会的、経済的な立場とは逆なペトラとカリンの力関係、歪なパワーバランスが、緊密に辛辣に描かれています。
それにしても。恋愛って愛したほうが負けですよね~。愛する者はいつも寛大で、愛されるものはいつも残酷。人間をいちばん残酷にするのは、愛されているという意識…という三島由紀夫の「禁色」にあった一節を思い出しました。ペトラとカリンにぴったり当てはまります。ペトラがどんなに愛しても憎んでも、カリンには暖簾に腕押し。カリンを傷つけようと、どんなに鋭くて毒のある言葉で面罵し侮辱しても、カリンには痛くも痒くもない。目の前を小さいハエが飛んでるウザさ程度のこと。それに比べて、ペトラの心を粉砕するカリンの無関心な様子や軽い冷笑の破壊力ときたら。決して自分を愛してくれない人を愛してしまう苦しみや虚しさが、ここまでくるともう滑稽!な描かれ方をしてるのが、この映画の面白さかも。
ペトラ役のマルギット・カルステンセンの神経症チックな狂おしい演技、カリン役のハンナ・シグラ(オゾン監督の「苦い涙」では、主人公の母役で出演してますね)のムチムチはちきれそうな豊満さが強烈。ペトラのファッションと部屋の装飾(壁の絵や絨毯など)も奇抜でインパクトあります。ペトラに下女扱いされても従ってる物言わぬ秘書マレーネが、不気味な存在感。ラストの彼女の行動は、どう解釈すればいいんだろう。