まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

害vs悪 必殺アンチヒーロー

2024-06-23 | 中国・台湾・香港映画
 「我、邪で邪を制す」
 悪名高き殺し屋の陳桂林は、暴力団の組長を射殺し逃亡するが、潜伏中に自分が末期がんで余命いくばくもないことを知る。死ぬ前に自分より重大扱いされている凶悪指名手配犯二人を殺すことを決意し、彼らの行方を追う陳だったが…
 韓流に押され気味だった華流ですが、ここのところ新作映画やドラマの公開や配信が盛んで、復調の兆しを見せているようです。ジャッキーやウォン・カーウァイ監督が人気だった80・90年代、最盛期の香港映画が大好きだったので、華流の再興は喜ばしいかぎりです。現在は香港ではなく台湾が華流の主流になってるみたい?「君の心に刻んだ名前」や「恋の病」「青春弑恋」など、最近の台湾映画はイケメンが出てる良作が多い、というイメージが。この台湾映画は、なかなかクレイジーな怪作でした。

 エグいヴァイオレンスといえば韓流ですが、この台湾映画も負けてませんでした。容赦なき凄絶な暴力と殺戮、人間も社会も狂ってるハチャメチャさは、韓流も真っ青でした。いったいいつの時代の話なの?!やくざのドンパチ抗争、反社会の人々の風貌や言動など、邦画の「孤狼の血」以上の昭和臭が。街並みの風景や雰囲気が昔の日本っぽいところも、何だか懐かしい感じ。東南アジアっぽい暖かい湿り気を含んだ空気感が、日本との違いでしょうか。

 とにかく主人公の陳桂林がイカレてます。一見、寡黙でスマートな二枚目風なのですが、中身は危険な狂犬。暴力も殺人も呼吸と一緒、みたいな躊躇も罪悪感もなきサイコパスが、おとなしく病死すればいいものを(彼の病気については、ラスト近くに意外な事実が)、自分が最悪の犯罪者と見なされていなかったことに反発、俺こそが最凶!死ぬ前に自分がナンバーワンの悪であることを世間に認めさせる!と悪人抹殺を計画、という理解不可能な思考回路とプライド、そしてブレない行動力と凄腕ヒットマンの能力を発揮して、まるでダークヒーローのように屍を重ね続けるんですよ。その狂った展開と場面は、見方によってはコメディでもあります。

 映画の中盤、陳桂林が新興宗教団体の施設にたどり着き、教祖に洗脳されて罪を悔い改め信者になる、という意外な展開に驚かされます。その新興宗教がオ〇ムや統〇教会を彷彿とさせるヤバさと悪辣さ。そんな悪を倒せるのは愛や善ではなく、やはり悪…という皮肉なカタルシスが待ち受けている終盤も、目がテンになる地獄絵図でした。殺すのは悪人だけ、悪に虐げられていた人たちを救うダークヒーローなんかではなく、正体はやはり妄執に憑かれた冷血な狂人だったと判明する救いのない虐殺シーンには、陳桂林をほんとはいい人、可哀想な人として描かない苛烈な潔さがあり、ヌルいユルい凡庸な内容にならずにすんだと思います。

 台湾の死刑執行シーンも、衝撃的かつ興味深かったです。数年前に台北の地下鉄で起きた、通り魔による無差別殺人事件の犯人の死刑執行ニュースで私は初めて知ったのですが、台湾は銃殺刑。日本の絞首刑とどっちが怖い、どっちが人道的なんだろう。どっちもイヤですが…この映画の陳桂林は、捕まって処刑された実在の殺し屋の男をモデルにしてるとか。「青春弑殺」の通り魔も、地下鉄事件の犯人がモデルっぽい。許しがたい凶悪き〇がい犯罪者を、イケメン俳優に狂演させる台湾映画が好きです陳桂林の悪人駆逐と重なる中国の故事、仏教の教えが奥深い。

 陳桂林役は、台湾の人気俳優イーサン・ルアン。初めて演技するところを見ましたが、涼しげで優しそうなイケメンですね。イカレてるのに澄んだ目がきれい。顔はちょっとチョ・インソン+伊原剛志、みたいな?髭があるほうが好きかも。スラっとした長身で、スタイルがいいな~。ほんとはとんでもない狂人、害悪男なのに、カッコよく見えなきゃいけない役である陳桂林は、演技がうまいだけの俳優やイケメン大根俳優が演じてはいけない役。非道い!頭おかしい!けど応援してしまう、いい男マジックと演技力を具えたイーサン・ルアン、いい役者ですね。他の出演作も観たいと思います。
 
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もう会えないディスタンス

2024-03-14 | 中国・台湾・香港映画
 「再見、在也不見」
 3つの物語から成るオムニバス映画。
 「背影」中国の広西州に仕事で来た陳は、自分と母親を捨てて失踪した父を発見する。ひそかに父を観察し続ける陳だったが…
 「湖畔」音信不通だった幼なじみから手紙を受け取る陳。友人は死刑囚としてシンガポールの刑務所で刑の執行を待つ身だった…
 「再見」大学教授の陳は、講演のためタイを訪れる。そこにはかつての恩師で恋人だった女性がいて…

 日本でも活動していた台湾の俳優チェン・ボーリン主演作。久々に見たチェン・ボーリン、「藍色夏恋」の可愛いイケメンも、すっかり色気のある大人の男に。繊細で愁いのある演技も魅力的で、いい男いい俳優になりましたね~。映画そのものよりも、チェン・ボーリンの成熟に感銘を受けました。とはいえまだ若く(この映画の時は33歳)おっさん臭は全然ありません。父親役、大学教授役にはまだ不似合いなほど青年っぽいです。三つの物語それぞれで、大人になっても遠い昔の悲しみや喪失感を引きずっている男をボーリンくんの、少年の蒼い残滓が滲む表情や風情が切なかったです。

 でもほんとボーリンくん、いい男になりましたね~。薄口な韓流俳優と比べると、華流俳優はいい感じに濃くて香ばしい。ほっそりした長身も、若い頃より肉付きがよくなって色気が増した。口元が何かエロいです。シャワーシーンでちょっとだけ脱いでましたが、ちょっとユルめの裸もバキバキ筋肉より自然でよかったです。一般人とは異なる華がルックスにも雰囲気にあって、それが地味で暗い物語の救いにもなってました。

 3つの物語にはつながりはなく、主人公の陳は台湾人で同姓同名の別人。中国、シンガポール、タイの監督がそれぞれの母国を舞台に、親子、友人、男女の、離ればなれになった愛の終わりを、チェン・ボーリンに一人三役をさせて哀切に描く、という趣向になってます。もう二度と元には戻れない、もう会うこともない、という喪失と後悔の悲しく甘い痛み。美しいテーマですが、冷血人間の私の心にはあまり響かないんですよね~誰とも深く関わらない、終わった人間関係に執着しない、後ろは振り向かない(ていうか、今がいっぱいいっぱいなので振り返る余裕がない)、独りでいい、今を大事にしたい、というドライな性格なので、過去や他人に囚われすぎる人って大変だなと思ってしまいます。でも、そういう悲しみや苦しみこそが人生を豊かにもしてるのかな、と羨ましくもなります。

 三つのエピソードの中では、シンガポール編の「湖畔」が好きです。かなりBLっぽかったので。監督はゲイなのかな。そう思わせる感性が演出や場面にありました。少年時代の陳と幼なじみが親密すぎて村の噂になり、陳の父親が二人を引き裂こうとするのですが、二人は湖のほとりで会わずにはいられない。性的な関係ではないのですが、全裸で一緒に泳いだりじゃれ合ったり、どちらかがあと一歩踏み出せば肉体的にも恋人になる、でも踏みとどまってる二人がもどかしくも痛ましい。大人になって再会した二人の限られた時間と言葉少ない会話には、友人ではなく恋人同士の想いであふれているようでした。それにしても。異国で死刑囚になるとか、最悪の転落だわ。いったい何したんだよ。死刑囚になった友人役は、懐かしの台湾BL映画「僕の恋、彼の秘密」のトニー・ヤンと知り驚きました。彼もずいぶん見ないうちに大人の男になりましたね~。私も年を取るわけだわ

 ↑ 今年で41歳になるチェン・ボーリン、大人っぽくなったけどまだまだ可愛いですね~
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闇落ちZ世代

2023-09-06 | 中国・台湾・香港映画
 「青春弑恋」
 大学にも行かずゲームばかりしているミンリャンは、ネットでエロティックな動画を配信していたミッシーに恋をしている。コスプレイヤーの女子高生キキは、ミンリャンの彼女になりたいと思っている。劇団員のユーファンは、同じく女優を志しているモニカと親密になる。外国船のコックだったシャオジャンは、喫茶店でバイトしているユーファンに想いを寄せている。恋人同士となったユーファンとシャオジャンに、思いもよらぬ凶事が…

 ずっと気になってた台湾映画を、やっと観ることができました(^^♪予告編が怖くて、かつ美しくて、すごくソソられてたんですよね~。キレイカワイイ女子とカッコいいイケメンの漫画ちっくな軽い恋愛ものも悪くないけど、そんなの嘘っぱちなファンタジー。人間関係も恋愛も構築できない保てない、努力や忍耐をしてまで家族や社会に適応しようとはせず、自分ルールで生きようとするので当然生じる軋轢や齟齬、そこから逃げるか他人を巻き込んで破壊するか…今の若者たちのリアルが、静かな不穏さと不気味さ、そしてメランコリックな情感で描かれていました。

 今の若い子たちって、悪い人間じゃないけど、相手の気持ちや立場をあまり大切にしてくれませんよね~。もちろん、わしのような年寄り世代にもそんな人たくさんいますが、それとは何か質が違うような…この映画の若者たちの、自分のこと以外は無感動で無関心、自分の想いや欲望を相手にわかってほしい、受け入れてほしい、相手も自分と同じはず、という願望や思い込みが、私には不可解で恐ろしかったです。

 若者たちが本人たちの気づかない形でつながっていて、物語が進むにつれ意外な事実も浮かび上がってきて、破局へと向かう展開と構成が巧みでした。Z世代と呼ばれている若者たち、ネット依存ゲーム依存って怖い!と、あらためて痛感。ゲームのしすぎでもう現実世界と折り合えなくなってるミンリャン、殺戮VRゲームを現実に持ち込む彼の暴走に戦慄!ゲーム脳ってほんと危険。とにかくミンリャンがイカレすぎてて、ほとんどホラーでした。甥のジミーや、わしの周囲にいる若い子の多くも、おかしなゲームやyoutubeの動画に心と脳を蝕まれてるのが心配…


 エロ動画の女に恋をして、正体も住所も突きとめて尾行、のぞき、部屋に侵入するなどストーカー化し、ついには本人に結婚を迫って大暴れ。モニカにとっては誰こいつ?な見知らぬ赤の他人。そんなのが電車の中でいきなり。き〇がい!精神病院に強制入院レベルですが、事件を起こすまで誰も気づかないところも現代社会の闇です。ミンリャン役を怪演したのは、台湾の人気俳優リン・ボーホン。

 「僕と幽霊が家族になった件」を観たばかりだったので、おバカコメディと今回とのギャップに驚嘆。ミンリャンみたいなヤバすぎる役、人気スターはフツーなら引き受けませんよ。異常に鋭い目つきが狂気的。ユーファンとモニカが求め合ってる姿を、ドアの隙間からのぞいている目とか怖すぎ!ゲームを真似た戦闘服と日本刀でキメて、衆人環視の台北駅でユーファンを襲撃するシーンもトラウマ級。私、通り魔がこの世でいちばん怖いので、もしあんなのが駅とか路上でこっちに向かって走ってきたら、と想像しただけで失禁しそうに。

 幽霊とかモンスターなんかよりも、はるかに怖いボーホンのリアルなコワレ人っぷりでした。怖いけど、不思議と気持ち悪くないんですよ。フツーにしてたら、ちょっと不愛想で内気な金持ちの青年って感じで、キキが彼氏になってと迫るのも理解できるイケメン。ボーホン、やっぱ岸優太くんに似てますね。岸くんをスタイルのいい長身にしてシャープにしたらボーホン、みたいな。台北駅での襲撃コスチュームも、ヤバいシーンなのに妙にカッコよく見えたし。マッサージシーンで上半身裸に。引きこもりゲーマーらしからぬ肉体美でした。エロ動画を見ながらの自慰行為シーンも、何か可愛かったです。

 LGBTも現代の若者を描く上では今やマスト。でもやっぱ私、骨の髄まで腐。Lは苦手Gのラブシーンにはワクワクするけど、Lのそれには居心地の悪さしか感じなくて…ユーファンとモニカのラブシーンがキスどまりだったので、何だかホっとしました。好きな女が女と、男が憎悪する恋敵が女、というシチュエーションはなかなか新鮮でしたが。
 いちばん可哀想だったのは、平岳大似のシャオジャン。ユーファンをかばって斬られて重傷を負うわ、ユーファンの過去にガーンだわと散々。でも、ユーファンを一途に愛し信じる彼の存在は、暗くて狂った物語の中で希望と救いになってました。ユーファンの愛に飢えた境遇も悲痛だった。病んだ現代社会に生きる若者の孤独や虚無を表すような、台湾の陰鬱な曇り空や雨も印象的でした。台湾って雨が多いんですね。劇中に流れるショパンの夜想曲が美しかったです。こういう映画を日本でも作ってほしいわ。ミンリャン役は岸優太で(^^♪アイドル卒業のためにぜひ!
 
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BL冥婚♡

2023-08-23 | 中国・台湾・香港映画
 「僕と幽霊が家族になった件」
 刑事のウー・ミンハンは、捜査中に公園で赤い祝儀袋を拾ってしまい、死者と結婚をしなければならなくなる。相手は轢き逃げされて死んだゲイの青年マオ・バンユーだった。幽霊となってミンハンの前に現れたバンユーは、嫌がるミンハンにつきまとい轢き逃げ犯を捕まえるようせっつくが…
 ちょっと前から気になってた台湾映画。日本で公開されたらいいな~と思ってたら、いつの間にかNetflixで配信になってました。成仏できない幽霊が人間にとり憑いてドタバタ騒動という、結構ありきたりな内容には目新しさはないのですが、幽霊がゲイという設定、そして冥婚という台湾の風習をネタにしていたのはユニークでした。冥婚、つまり死後結婚というオカルトめいた風習が、今でも台湾にあることに驚きました。もしあんな赤い封筒が落ちていたら、気持ち悪くて私なら拾えません。冥婚のセレモニーにはおどろおどろしさはなく、中華な結婚式って感じで面白かったです。

 同性婚が合法化されている台湾は、ずいぶん前からBL先進国。他のアジア各国に先駆けて、BL映画やドラマが活況でした。でもこの映画は、そんなにBL色は濃くないです。ミンハンとバンユーがケンカしながらも、しだいに相手を認め合うようになりタッグを組む、というフツーのバディものっぽかった。ゲイのバンユーにノンケのミンハンがだんだん惹かれていき、友情以上っぽいやりとりや雰囲気にドキドキ♡な展開にならないので、腐にとってはちょっと物足りない期待外れな残念さが。

 腐向けのBLでもなく、現在の台湾のゲイ事情を描いているわけでもなく、ゲイをイロモノ扱いして笑いをとる、みたいな旧弊な安易さや陳腐さがなくもなかった。腐の好みに合わせて、もうちょっと繊細さとか切なさも加味してほしかったです。イロモノ扱いするならいっそ、昔の香港映画みたいにもっとコテコテおバカなコメディにしてほしかったかも。下ネタは多かったけど。



 主演の二人は魅力的で、体を張って頑張ってました。ミンハン役のグレッグ・ハンは、相葉雅紀+中尾明慶みたいな顔?脱ぎっぷりのよさに驚嘆。バンユーが初登場するシャワーシーンや、全裸での路上ストーリーキング&ポールダンス、自慰行為をしようとパンツを脱ぎケツ丸出しで室内を歩く姿など、よく事務所が許可したな~。人気若手俳優ならフツーはやらない果敢さでした。バキバキムキムキすぎないキレイな肉体美、美尻でした。
 バンユー役は、「恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター」での好演が忘れがたいリン・ボーホン。

 彼、やっぱ岸優太に似てますね。岸くんよりイケメンですが。初登場の仕方が笑えた。ゲイ=オネエ、みたいなステレオタイプな役と演技でしたが、オネエな仕草やポーズは可愛かったです。髪型も可愛いかった。彼もちょっとだけ脱いでますが、いいカラダしてます。バンユーのお父さんにちょっとホロリとさせられました。ヒロイン的ポジションであるミンハンの同僚女刑事が、なかなか独特なキャラでした。どうせミンハンといい感じになるんだろうなと思ってたら、ぜんぜん違ってました。男の添え物じゃない、男にとって都合のいい存在じゃない、男をギャフンと言わせる快傑なヒロインでした。
 この映画、日本でリメイクするとしたら、わしの理想妄想キャストはミンハン=竹内涼真、バンユー=横浜流星、かな。つまらなさそうな映画で共演してた二人ですが、この映画のリメイクのほうが二人の魅力を活かせるし、演技力も試せるし、ファンも喜ぶ。涼真くんは自慢の肉体美を思いっきり自慢できるし、流星くんのオネエ演技は斬新で強烈で美しいと思う!
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汚れたくない僕たち

2021-11-07 | 中国・台湾・香港映画
 「恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター」
 重度の潔癖症と強迫性障害のため、決まった日に買い物に出かける以外は引きこもり生活を送っている青年ボーチンは、地下鉄で自分と同じく防菌服を着たジンと出会う。交際をスタートさせた二人だったが…
 気になってた台湾映画。日本で公開されると聞いた時は驚喜!広島でも思ってた以上に早く観ることができました。潔癖症や強迫性障害をネタにしたおバカなコメディかと思ってたのですが、なかなか奥の深い深刻なテーマを扱った映画でもありました。前半は、オリジナルタイトル(怪胎=変人)通り、二人の潔癖症と強迫性障害による行動やこだわりをコミカルに描いています。私も不潔はイヤだし、雑然としてるよりは整然とした環境のほうが好きですが、あそこまで徹底的にはなれません。自分以外すべてが汚くて危険なバイ菌に見えてしまうとか、何て生きづらいんだろうと同情を禁じ得ません。奇異!理解できない!と異常者扱いされてしまうことも多いんだろうな。おもしろおかしく描いてたけど、実際に障害に苦しんでる人たちの困難を思うと、心の底からは笑えませんでした。

 ボーチンもジンも障害のせいで普通の社会生活ができなかったけど、経済的には余裕があったおかげで私には何だか羨ましい引きこもり生活だった。簡素だけど小じゃれた家に住んで、付き合い始めてからはあちこち楽しそうにデートしてたり。お金がなく外で働く必要がある障害者のことを思うと、複雑な気持ちになりました。潔癖症と強迫性障害への理解と支援は必要だけど、そんな余裕がまだまだない社会を憂います。

 潔癖症と強迫性障害の人たちにとって、この世は秩序もなく汚濁まみれ。ただでさえ汚なくて混沌としてるのに、コロナなんてものにまでまみれて、もう一歩も外へは出られないことでしょうか。世界一清潔な日本でさえ辛いなら、東南アジアなんて生き地獄でしょ。潔癖症でも強迫性障害でもない私でさえ、ミャンマーでは暮らせないと思ったし。台湾もかなりキツそう。屋台のシーンとか、かなりデフォルメしてるとはいえ、あんなの日本ではありえんし。完全武装な二人の防菌服が奇異、だけど可愛くてオシャレにも見えました。あんな恰好で街を出歩いても、誰も気にしないのが不思議だった。

 後半になると、愛の試練が二人に襲いかかり、怒涛の急展開に。突然ボーチンだけ奇跡のように障害がきれいさっぱり消えて、今までできなかった社会生活をエンジョイし始めてジンとの間に深い溝ができてしまうのですが。離れていく心、壊れていく愛がシビアで残酷。不幸も二人なら幸せなのに。障害がなくなった途端に幸せが崩れてしまうなんて、何て皮肉なのでしょう。ボーチンのことを裏切り者!と責めることもできません。私だって同じ道を選ぶでしょうし。愛があれば大丈夫とか、愛する人のために自分を犠牲にして…なんて甘い夢物語。ばい菌のように汚いのが人間の本当の姿。悲しいけどこれが現実です。最後の最後に、え?!なドンデン返しもあり、なかなか予測不可能な映画でした。
 主演の二人がすごく魅力的でした。ボーチン役のリン・ボーホンは、誰かに似てるんだよな~とずっと思ってたら、あ!わかった!キンプリの岸優太だ!

 岸くんの顔を端正なイケメンにしたら、ボーホンって感じ?某事務所随一の肉体美を誇る岸くんですが、ボーホンのカラダもすごい!何度かあるシャワーシーンで、見事な筋肉ボディを披露してます。でも、引きこもりであのカラダはないわ(笑)。韓流男優の肉体美もすごいけど、華流男優も負けてませんね~。日本には眼福の肉体美を持つ俳優がいないので残念。なので、岸くんには今後も頑張ってほしいものですヘンな髪型も可愛かったです。

 ジン役のニッキー・シエもチャーミングでした。ちょっと濃い目の派手な顔立ちの美人なのが、日本や韓国の女優と違います。はっきり年齢については言及してなかったけど、どう見ても女のほうが年上で、グイグイとテキパキと男をリードしたり、かいがいしく家事をこなしたり、不思議ちゃん風ながらも年上女房的いい女キャラにも好感。それにしても。二人とも結構いい歳した大人なのですが、無邪気なコドモみたいなのが可愛くも不気味でした。社会に毒されてないピュアな人って、美しいけど共感はしづらいです。防菌服だけでなく、二人のファッションや室内の色彩、インテリアなどもカラフルにポップ&キッチュで目に楽しいです。台湾の温暖な雰囲気も好きです。日本でリメイクするなら、ボーチン役はもちろん岸優太で、ジン役は上野樹里とかがいいと思います。
 邦題が、ちょっと???恋の病…潔癖症、強迫性障害は病気じゃなくて障害なので、何だか違和感を覚えます。病気は治るけど、障害は治らない…

 ↑ 林柏宏、いいですね~。キレイカワイイ男子よりも、こっち系のほうが断然好きです美男子やイケメンがわんさかいる華流映画、かつてのようにまた盛り上がってほしいものです
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蒼く燃えたBL

2021-06-23 | 中国・台湾・香港映画
 「君の心に刻んだ名前」
 戒厳令が解除された直後の台湾。高校生のアハンは、変わり者の同級生バーディと親しくなる。二人はしだいに友情を超えた想いを抱き合うようになるが…
 BL先進国である台湾から、また佳作が届きました。この作品も、腐の琴線に触れまくる内容、そしてシーンの数々でした。

 とにかく切なくて苦しくて痛くて甘い少年たちの恋。BLの基本と醍醐味って、やっぱスウィートペインですよ。最近は、いい意味でも悪い意味でも市民権を会得してるBLですが、あまりにも一般受けを狙いすぎてるというか、結局は男同士の恋愛って特殊なもの、キワモノで滑稽な描き方をしてるものが多いような気がします。あまりにもノーテンキでハッピーだと、BLを軽んじているようで嘆かわしい。まあ現実的なBL映画やドラマを観たい人なんて、そんなにいないと思うし仕方ないのかな。その点この作品は、ライトすぎずヘヴィすぎずなBL強度と濃度。どちらかと言えば甘さよりも苦さが強めなので、BL好きな人向けではあると思います。

 真面目な優等生と自由なはみ出し者、真逆な少年同士が友情を超えた感情や欲情に苦悩、離れようとしても傷つけ合っても止まらない抑えられない想い…BLの設定的にはごくオーソドックスです。その鉄板さ、お約束こそBLの魅力。ヘンに奇をてらったBLものは、ワタシ的には邪道です。フツーの男女みたいな恋愛のBLにも違和感。やっぱ同性愛は禁断、いろんな障壁にぶつかり阻まれるからこそ切なく燃える、というのが理想的なBLなのです。この作品のアヘンとバーディも、あの時代だったからこその悲しい恋でした。LGBTへの理解が深まってる今なら、きっと幸せになれたはず。今の感覚で観ると、そこまで同性愛者であることを恐れたり否定しなくてもいいのでは、と思ってしまいます。でもちょっと前までは、同性愛者=反社会的な異常者、みたいな偏見や差別が一般常識だったんですよね。あんな非道い同性愛者へのいじめや蔑みを目の当たりにしながら生きてたら、よほど勇敢な反骨精神がないかぎり堂々とBLなんかできません。

 先に好きになったのはバーディで、眠ってるアハンにキスしそうになったり。アハンもしだいにバーディのことで頭がいっぱいになり、性的な夢を見たりしたり。二人の交わし合う視線や笑顔は、まさに世界は二人だけのもの的な恋人同士のもの。その甘酸っぱさ、微熱感に腐はキュンキュンします。女の子と付き合うことでアハンを諦めようとするバーディ、女の子とイチャつくバーディに嫉妬して苦しむアハン。何をやっても結局は恋心を盛り上げてしまい、荒ぶる激情そして蒼い性的衝動…シャワールームでの行為と海への束の間の逃避行は、胸が痛くなる切なさでした。二人が賢い大人だったら、何食わぬ顔で隠れて恋人になれたかもしれない。それができなかった少年の純真さが、老いた目には瑞々しくまぶしかったです。

 同じ台湾のBL佳作「花蓮の夏」と違い、こちらは女の子がそんなにBLに絡んでこないのがよかったです。それにしても。BLに出てくる女の子って、可哀想ですよね。BLカップルには当て馬にされるし、腐には邪魔者扱いされるし。BLにもいろんなジャンルがありますが、やはりDKものがいちばん爽やかで美しいです。若さって正義。まさに何しても許される特権。今どきのチャラついたDKではなく、素朴で清潔な風貌のDKなのがポイント高し。まるで少年院みたいな厳しい寮生活の中でも、みんな楽しそうでイキイキとしていて、ああ男子っていいなあ~と思いました。

 主演の台湾俳優二人、アハン役のエドワード・チェンもバーディ役のツェン・ジンホアも、若者にしかない蒼いキラキラ感で魅せてくれました。エドワードは金城武+要潤、ツェン・ジンホアは美男になった松山ケンイチ、みたいな顔。二人とも脱ぎっぷりがいい!どちらもしなやかに引きしまったきれいなカラダです。ラスト近くの海での全裸が大胆でした。セックスシーンがなかったのが、ちょっと物足りなく惜しかったけど。ギリギリのところで踏みとどまれたのが驚異。あのシャワーと海のシチュエーションでヤらないとか、少年なのにすごい自制心。少年時代は悲痛な形で終わるのですが、年月を経ておじさんになったアハンに起きる奇跡、あれはどうなんでしょう?お涙ちょうだいな悲劇で終わらなくて安堵した反面、少年時代の切なさがかなり軽減されてしまったようなハッピーエンドでした。

 戒厳令解除直後の台湾の様子も興味深く描かれてまいました。そんなに大昔でもないのに、すごい遠い時代のことのよう。亡くなった蒋介石を国をあげて悼むエピソードとか、まるで北朝鮮みたいな異様さだった。軍がまだ強権的で、学校にもその影響と支配力が色濃かったのも、日本と違う特異さでした。

 ↑ 台湾イケメンもいいですね~。韓流もいいけど、かつてのようにまた華流映画も公開されてほしいです

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君が男でも女でも愛してる

2021-04-01 | 中国・台湾・香港映画
 久々の更新!皆様ご機嫌いかがでしょうか?
 思いがけないことが起きて、身も心も慌ただしくしておりました。というのも…私事なのですが、このたび縁あって結婚することになりました。恥ずかしながら、相手は15歳も年下です。いろんな不安は否めませんが、彼を信じて幸せになりたいと存じます。
 何てね(^^♪ぜんぶ嘘です今日はエイプリルフールですね!しょーもなさすぎる嘘ですんません結婚は嘘ですが、ある思いがけないことは本当に起きて、バタバタとしておりました。何が起きたのかは、おいおいお話ししたいと思いまする。
 今日4月1日は、レスリー・チャンの命日でもありますね。レスリーの死のニュースは、たちの悪い嘘かと思いました。あの日の衝撃と悲しみは、今でも鮮明に覚えてます。レスリーを偲んで、特に好きな彼の作品を回顧していきたいと思います…

 永遠的張國榮 ①
 「君さえいれば 金枝玉葉」
 人気歌手ローズに憧れるウィンは、彼女に近づきたい一心で男になりすまし男性歌手オーディションに応募、何と合格してしまう。ローズの恋人で音楽プロデューサーのサムは、天真爛漫なウィンに惹かれる自分に戸惑い悩むが…
 これまで観た香港映画、そしてラブコメ映画の中ではMY 最高傑作!これほどハッピーな楽しさと胸キュンにあふれた映画、他に私は知りません。気が滅入った時に観たくなる作品。コロナ禍で気分が落ち込んでる人に、ぜひ観てほしいです。それにしても。この映画、公開からもう27年!も経ったんですね~。でも、いま観ても色褪せない、それでいてノスタルジーにもあふれた、往年の香港映画ファンにとっては宝物のような映画。久々に観ましたが、やっぱ名作!

 女の子が男になりすます設定は韓流ドラマでおなじみですが、この香港映画こそその元祖、そしてベストですよ。韓流は亜流かパクリ。そもそも韓流の男装ヒロインは、これのどこが男なの?!男でまかり通るなんてありえん!な可愛すぎる女の子ばかり。男受けを狙ってるあざとさも鼻につく。その点この映画のウィンは、見た目もキャラも男に変身する前から女子女子しておらず、かなり男に近い。まさに香港人なガヤ娘っぷりが笑えます。演じてるアニタ・ユン、一世一代の名演!まさにウィン役を演じるために生まれてきたかのような女優。背が高くてペチャパイ、声が低い、短髪が似合う、という身体的特徴も奇跡的。もちろん顔は超可愛いので顔だけだと男には見えないのですが、BL漫画に出てくる可愛い男の子みたいなのが腐には好感。アニタ・ユンこそ、後にも先にもmy best of 男装ヒロインです。アニタ・ユン、現在はどんな姿になってるのか、気になるけど怖くて調べられない。彼女には私の中ではずっとウィンのままでいてほしいから。

 香港コメディ独特のあのガヤガヤしさが、楽しく懐かしい。みんなドタバタと大騒ぎ、ベタすぎる泥臭い笑いが愛おしい。香港人ってみんないつもあんなにオーバーリアクションなの?広東語だと、何でもコミカルに聞こえる。下ネタも多いのですが、下品にならず微笑ましいレベル。ウィンと幼馴染のユーロウとのやりとりが、いかにもコテコテな香港で好き。ユーロウのウィンへの男に化けるための特訓が笑えます。この映画は脚本もすぐれてるんですよね~。蛍光ペンやゴキブリなど、小道具の使い方が秀逸!
 この映画が忘れ難いのは、やはり故レスリー・チャンの存在ゆえでしょう。様々な映画で魅力を振りまいたレスリーですが、このコメディではとりわけ彼の個性と才能が活かされてる、いや、炸裂してます。とにかくレスリー、スマート&スウィート。ベタなお笑いシーンも可愛い過ぎる。特に好きなのは、暗いエレベーターに閉じ込められてギャーギャー騒ぐシーン。そして、ピアノを弾きながら歌うシーンの彼は神々しいカッコよさ。本当に素晴らしい俳優、そして歌手だったレスリー。

 性を超えた魅力を、レスリーが遺憾なく発揮すればするほど悲しい。中性的なレスリーですが、決してキャマキャマしくはなく、むしろ男っぽい演技。やたらとパンイチ姿になったり、ふんがー!と女にがっついたり。でも、男にはない柔らかさ、女にはない優しさが匂いたってます。そしてガラス細工の繊細さが切なくも痛ましい。男に恋してオロオロ悩むレスリーが愉快なのですが、実際にもゲイの噂があったレスリーがこんな役を、と当時は驚かされたものです。前作の「さらば、わが愛 覇王別姫」の大成功で、何か吹っ切れたものがあったのでしょうか。覇王別姫、金枝玉葉、そして「ブエノスアイレス」と、同性愛を描いた秀作を連発したこの頃のレスリーは、まさにカミングアウト的な絶頂期にあったように思われます。

 苦悩と葛藤を乗り越えたサムがウィンに言う『君が男でも女でも愛してる』は、私にとって映画史上最も感動的な台詞。ウィンが本当に男だったら、もっと感動的だったんだけど。当時は悲劇かキワモノで描かれることが多かったLGBTに、優しさと希望の光を射した佳作、そして不世出の明星レスリー・チャンの魅力は永遠に語り継がれることでしょう。

 可憐な花のようだったレスリーが散って、もう18年。彼がもしあんなにも美しくなければ、ひょっとしたら自ら死を選ぶことはなかったのでは、と今でも思ってしまいます。老いて美しさを失う苦しみと絶望は、美しい者にしか解らないのでしょう。悲しみは尽きないけど、みっともない若作りに必死になって嗤われる老人と化したレスリーを見ずにすんだことだけは、不幸中の幸いと言えるのではないでしょうか。
 ワガママだけどめっちゃ善い女なローズも、好感度の高いキャラ。演じてたカリーナ・ラウもいい女。旦那のトニー・レオンともども、すっかり日本では見なくなりましたね。おかまプロデューサー役は、香港映画の顔的存在だった大御所エリック・ツァン。やくざの親分役がオハコだけど、気風のいいおっさんオカマも軽妙に好演。ウォン・カーウァイ監督作品など、この頃は大人気だった香港映画。またかつての輝きを取り戻してほしいものです。

 この映画を日本でリメイクするなら、サム役はヒゲダンの藤原聡がいいかも(^^♪レスリーみたいな美男子ではないけど、きっと似合うのではなかろうか。ウィン役は、若い頃の榮倉奈々が風貌的には合ってると思うけど、今の女優ではとんと思いつきません。

 
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僕も恋した父の愛人♂

2019-10-06 | 中国・台湾・香港映画
 「先に愛した人」
 台北の中学生シエンは、父親が愛人のもとへ奔ってから自分に過保護、過干渉になった母親にうんざりしていた。そんな中、父が病死し保険金を愛人に遺したことを知った母が激高、愛人のもとに怒鳴り込む彼女にシエンは同行する。父の愛人はジエという若い男だった…
 今ではすっかり市民権を得た感があるBLですが、それはあくまでリアルでは関係ない映画や漫画の世界、ファンタジーだから。実際に自分の夫や息子が男を好きになったら、ノーテンキに萌えたり理解を示すことができるでしょうか。シエンの母親が陥った境遇って、ほんと女にとっては屈辱的で理不尽。何にも悪いことなんかしてないのに、神も仏もない呪われた運命だわ。あまりにも無情な仕打ち。いきり立って憤慨し、大騒ぎする気持ちもよく解かります。それが滑稽に描かれてるのですが、笑えない悲痛さも。やり場のない怒りと悲しみ、何かにぶつけなきゃ生きてられない。そのはけ口にされる息子と愛人も哀れ。でもギャーギャーうるさすぎ。あれじゃあシエンじゃなくとも家出したくなるわ。

 ゲイがフツーに生きたいからと、セクシャリティを隠して女と結婚し子どもをもうける。家族を大事にするならいいけど、やっぱ男のほうがいい!と妻子を捨てるなんて、とんでもなく卑劣で卑怯なゲスゲイだと思う。シエンの父、あまりにも無責任で不誠実。誰もが自分を偽らず自由に勇気をもって生きるべきだとは思いますが、そのためには人を傷つけてもいい、悲しませてもいい!な生き方は、勇気ある選択ではなく単なる人でなしの所業。シエンの父がガンで苦しんで死んだのは、彼を愛した人たちを傷つけたバチとしか思えません。

 それでも夫を愛したシエンの母も、まさに死が二人を分かつまで一途に添い遂げたジエも、そこまで人を愛せるなんて…と、怖くもあり崇高でもありました。特にジエの献身は、そこまで愛されるに値する男なの?と首を傾げたくなるほど。若い男が病人の下の世話まで迷いなくする姿が衝撃的でした。自分に恨みがましくつきまとうシエンの母にも、自分の生活に入り込んでくるシエンにも、うんざりしつつ耐えて受け入れるジエの優しさも痛ましかった。あれは彼なりの、夫と父親を奪ってしまったことへの罪滅ぼしだったのでしょうか。母が金のことで浅ましく騒いでいたのではないこと、父とジエが心の底から愛し合っていたことを知ったシエンが、みんなを許して元の生活に戻る姿が爽やかに感動的でした。BL映画というより、少年の成長物語かもしれません。よく考えたら始めっから最後まで、シエンがいちばん冷静で大人な言動してたけど。

 ジエ役のロウ・チウが、なかなかのイケメンでした。舞台劇の演出家役なのですが、ちょっと〇◯組の若いチンピラ風な風貌とキャラがカッコよかったです。シエンの父親と出会った頃の80年代男性アイドル風な髪型も可愛かった。チンピラファッションにしても、スタイルがいいので何着ても似合います。ちょとだけ脱いでますが、いいカラダしてました。シエンの父とはキスシーンはあったけど、ドキ♡なラブシーンなどはなし。相手がフツーのおっさんだったのが残念。シエンもぜんぜん美少年ではなく、どちらかといえばブサイク男子なのですが、ちょっと少年時代の太賀に似てて私は好きなタイプ。シエンのジエへの態度はかなりツンデレで、もし二人までもがBL関係に発展したら、さぞやドキドキな内容になってたことでしょう。って、それっていくら何でもドロドロすぎるか父子と親子どんぶりなんて、刺激的すぎる背徳関係ですね
 ゴミゴミした街の裏通りやアパートなど、やはり日本とは趣がまったく違う、どこか東南アジア風な猥雑さ。台湾の庶民の風景も興味深く撮られていました。台湾といえばの小籠包、屋台のチキンとかも美味しそうでした。
 
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男狩り

2018-02-22 | 中国・台湾・香港映画
 「マンハント」
 大阪に滞在中だった中国人の国際弁護士ドウ・チウは、何者かの罠により殺人犯に仕立て上げられてしまう。警察の追跡と謎の殺し屋の襲撃をかわしながら、ドウ・チウは事件の真相を探ろうとするが…
 中国で空前の大ヒットとなった高倉健主演の伝説の映画「君よ憤怒の川を渉れ」を、若い頃から日本映画フリークだったというジョン・ウー監督がリメイク。
 久々にコテコテの香港アクション映画を観たような満腹感。かつて「男たちの挽歌」などで一時代を築き、今なおコアなファンも多いジョン・ウー監督ですが、その独特な味わいが不変で健在だったのが、往年の香港映画好きには嬉しい一作でした。とにかく新作でも、ストーリー&登場人物ともにいたって大真面目なんだけど、起きることやってることはほとんどギャグに近いほどハチャメチャで愉快痛快、というジョン・ウー節が炸裂してました。舞台が日本の大阪というのも、ありえなさに拍車をかけ、笑いのスパイスになってました。

 銃弾が一発でも発射されたら、車が一台でも暴走したら大ニュースになる、秩序が保たれている平和な日本で、アナーキーすぎる怒涛の銃撃戦やカーチェイス!まるで戦争みたいなことが大阪で起きてるのに、マスコミも警察も政府もほとんどスルー。ここは本当に日本?!日本をイメージしたパラレルワールド!?かなり強引ながら、手を変え品を変えのノンストップアクションは、スローモーションとストップモーションを駆使したスタイリッシュさ、でもハリウッドアクションとは違う香港テイストなドロ臭さ。ジョン・ウー監督といえばのお約束の白いハトも、なかなか効果的かつ心憎く使われていました。

 アクションのハチャメチャさはゴキゲンでしたが、お話のメチャクチャさは失笑ものでした。オープニングから、もう何なんこれ?の連続です。ド演歌が流れる中、ドウ・チウが立ち寄った居酒屋の女将と女中(女殺し屋コンビのレインとドーンの変装)が、カタコトの日本語とか。中国語、日本語、英語が交錯するのですが、まったく統一感がなくてメチャクチャなんですよ。日本人に育てられたはずのレイン&ドーンの日本語も変でしたが、日本人と中国人のハーフで、日本で牧場を経営している麻由美なんか、もろに日本人声優の吹き替えで超不自然だった。麻由美の牧場の従業員が、みんな中国語を喋ってたのもわけがわからんかった。いったいどういう牧場なの?!細かいことを列挙すればキリがないほど、すべてがかなり雑です。悪い日本人が中国人や韓国人を非道い目に遭わせたり、支配したり操ったりしているという設定に、ちょっとだけ反日なテイストも。スーパーサイヤ人を生み出す人体実験も、も、大真面目にやってるのが笑えます。

 キャストは、なかなか魅力的です。主人公のドウ・チウ役は、「グレートウォール」でも激シブだったチャン・ハンユー。この映画でも、めっちゃシブかった!鋭い眼光、熟年男の濃密な色気がハンパないですね。小柄だけど引き締まったメタボ無縁な体で、おじさんとは思えぬほど俊敏な動きもカッコよかったです。タキシード姿も似合ってて素敵でした。でもドウ・チウ、エリート弁護士にしてはマヌケすぎだし、身体能力が高すぎ!

 ドウ・チウと呉越同舟となる大阪府警の凄腕刑事役に、福山雅治が起用されたのが日本ではこの映画最大の話題、見どころでしょうか。泥だらけ、傷だらけになって大暴れしてる福山さんは、なかなか新鮮でした。でも、ぜんぜん凄腕のアウトロー刑事に見えなかったわ~。スマートすぎて乱闘シーンでも迫力がないし、50近いのに何か軽くて薄く、シブさとか硬派な魅力が皆無。顔も何かちょっとむくんでいて、メイクのせいで蝋人形みたいだった。いつまで経っても何やっても福山雅治なのは、キムタクと双璧ですね。それはそうと。この映画にはイ・ビョンホンの出演も噂されていたのですが、結局実現せず残念。何の役だったのだろう?福山雅治と違って、キレッキレのアクションと男の色気で魅せてくれたでしょうに。
 主役の男二人よりも、女殺し屋のレイン&ドーンのほうがカッコよくて魅力的だった。特にレイン役、私が韓国女優の中でいちばん好きなハ・ジウォンの、鋭くもフェミニンな女豹っぷりに、彼女演じるレインが主役の映画を作ってほしい!と思ってしまった。

 私がこの映画を観に行ったのは、福山さんではなくハ・ジウォン目当てです。韓国ではトップ女優の彼女が、ヒロインではなく脇役、しかも悪役、というのも楽しみでした。これでハリウッド映画出演とか言うなよ~と苦笑してしまう日本人俳優みたいに、どーでもいい扱いだったりチョコっと出だったりなのなと思いきや、ほとんどヒロインな美味しい役もらってました。

 ジウォンさんのあの鋭い目が好きなんですよね~。「チェオクの剣」や「シークレット・ガーデン」などアクションも得意な彼女、この映画でも華麗に銃ぶっぱなしバイクかっとばし、キャットファイトでは鮮やかな格闘も。敵をバッタバッタと倒していくジウォンさんですが、強いといってもゴリゴリのアマゾネスではなく、毅然としてしなやか、たおやかでもあるところが彼女の魅力です。それにしてもジウォンさん、老けないですね~。あの伝説のドラマ「バリでの出来事」の頃と、ほとんど変わってないし。

 悲しい宿命を背負った女アサシン、レイン&ドーンの物語をもっと見たかったです。二人の死と隣り合わせな運命共同体、これって女じゃなくてイケメン同士だったらさぞや萌え~だったろうな。ドーン役のアンジェルス・ウーは、何と!ジョン・ウー監督の実娘!ぽっちゃり系で女芸人風ですが、ドウ・チウに惚れて弱気になる妹分のレインを叱咤激励するクールな姐御っぷりと、ド迫力の大暴れで存在感抜群でした。
 日本人キャストでは、悪の親玉役の國村準が「哭声 コクソン」に続いての国際的な怪演。その息子役の池内博之も、スーパーサイヤ人になったりと濃ゆい珍演。パーティーのシーンで踊る彼が可愛かった。テロリスト役で、こんなところにも出てきたよ感がハンパない斎藤工が、意味不明で不必要な出演。何しに出てきたんだよ?な、あっという間の退場が笑えた。その他、竹中直人とか田中圭とかが顔を見せてました。

 ↑ハ・ジウォンといえば、やっぱ弟のチョン・テスの急死。最近知って、本当に驚きました。自殺?ジウォンさん、ショックで「マンハント」のPR活動をキャンセルしたとか。「トキメキ☆成均館スキャンダル」のチョン・テス、カッコよかったな~。姉に負けない活躍を期待してたのに。ご冥福をお祈りします…
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マットと越えたい万里の長城

2017-11-05 | 中国・台湾・香港映画
 今日、大きな一歩を踏み出しました。尋常でない勇気と体力が必要でしたが、ついに…
 って、単に初めての美容院に行っただけですオーバーな書き方してすみみません(^^♪でも、小心で怠け者で変化が苦手な私にとっては、すごく頑張った行動だったのです。
 長年通ってた美容院が遠くへ移転してしまい、さてどうしような状況に。早く探さねば行かねばと思ってるうちに、急な入院。髪は貞子、いや、佐藤蛾次郎みたいな惨状となり、ドクターやナースに手術や看護やりにくい!と確実に思われてました。結局、M子の友人が利用しているという美容院に、勇を鼓して予約し、今日ついに断髪できました。カットしてくれたのは、徳井優をチョビ髭にしてオカッパみたいな髪型にして、パリジャンみたいなオサレな服を着せた感じの男性美容師さんで、過剰なほどの愛想トークでもなく、接客は適度というかテキトー。カットも可もなく不可もなく、といった感じでした。値段もそこそこ。これって、もっと良いと思う店を探すべきなのか、めんどくさいしそこでいいじゃん!なのか、今ぼんやりと短くなった髪に深まりゆく秋を感じ、ちょっと寒いです。
 
「グレートウォール」
 最高の武器を求めてアジアを旅する欧州の傭兵ウィリアムとトバールは、中国の軍隊に捕縛される。万里の長城を越えようとする謎の怪物の大群と、中国軍は死闘を繰り広げていたが…
 愛するマット・デーモン主演なので劇場で観る予定だったのに、あっという間に、知らん間に上映が終わってた作品。

 ハリウッドの大スターであるマット・デーモンと、中国の名匠チャン・イーモウ監督、なんて異色すぎる!けど良作を期待させる顔合わせ、なのですが。完成した作品は、かなりのトンデモ系になってしまいました。混ぜたらヘンな味になった料理、混ぜたらヘンな化学変化を起こした実験、みたいな映画。アメリカでは酷評され大コケしてしまい、今年のアカデミー賞授賞式では司会者にそれをイヂられたり。すっかり駄作の烙印を押されてるみたいだけど、そんなことは観ない理由にはなりません。むしろますます観たくなったわ。いざ待望の蓋を開けてみると…私はそれほどヒドい映画とは思わなかったけどな~。決して質が高い映画とは言えないけど、ぶっちゃけララランドより面白かったぞ(笑)。それは私がトンデモ系が好きで、なおかつマットが大好きだからでしょうか。

 万里の長城にモンスターが襲来、という設定からしてトンデモなのですが。時代考証も怪物の正体も、かなり雑というかテキトーというか、これってパラレルワールドだよね?な内容です。ただひたすらモンスターと闘う、それだけ、な映画ですが、そのシンプルさも好ましかったです。やたらと話を複雑にしたり、凝ったドラマをぶっこんでくる某人気SFシリーズや某人気ファンタジーシリーズとか、私は苦手です。

 モンスターとの戦い方が、なかなか愉快でユニークです。美女軍団のバンジージャンプ攻撃とか、火炎玉攻撃とか、奇想天外で目に楽しいです。中国舞踊のようなアクション、衣装の色鮮やかさなどが、同じイーモウ監督の「HERO」を思い出させます。

 ハリウッドで1、2を争う高額ギャラスターなのに、どんだけ稼ぐ気!中国でも荒稼ぎのマット。「オデッセイ」もそうだったけど、中国マネーがハリウッドに及ぼす威力を今回も感じずにはいられませんでした。今回はついにマットの買収?に成功。日本映画はどう頑張っても、マット・デーモンを招くことなどできませんから。でも、邦画にマットがまったく必要でないのと同様、中国映画にもマットの需要はないはず、なのに、無理やり主演作を作ったゴリ押し感も、ひしひしと感じられます。そんなことはどーでもいい、ギャラさえもらえればなマットと、ハリウッドを動かすことができる富と国威を知らしめたい中国との思惑が一致してできた映画?製作費のほとんどは、マットの出演料なのでは。CGだらけでかなり安く仕上げてたし。

 でもマット、ギャラ目当てのやっつけ仕事でも、やっぱカッコいい!中国人に囲まれると、いつも以上に逞しく頼もしいゴリマッチョに見えました。舞台がどこでも、時代がいつでも、明るく優しく素朴なアメリカ人にしか見えないのもマットの魅力。ウィリアムって、でも何人だったんだろ?あの時代に、アメリカ人は海外で交易とかしてたの?まさかイギリス人の役?!

 トバール役のラテン系俳優ペドロ・パスカルも、なかなか男前でした。ウィレム・デフォーも出てましたが、彼の役も雑すぎ。中国人が英語を喋れるという設定のために作られた役みたいでした。中国側のキャストは、将軍役のチャン・ハンユーが激シブな男前!でもすぐ消えてガクっ。チャン・ハンユーは、ジョン・ウー監督の新作で福山雅治とW主演!女将軍リン役のジン・ティエンの麗人ぶり、アンディ・ラウの津田寛治化が目立ってました。それはそうと。「インファナル・アフェア」でのアンディの役と、ハリウッドリメイク版の「ディパーテッド」でのマットの役って同じなんですよね。意外で奇遇な共演となりました。

 ↑マットの新作「ダウンサイジング」が来春日本公開決定
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