まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

Blessed Boys

2024-04-30 | イタリア映画
 「異人たち」公開記念BL映画祭⑤
 「La Santa Piccola」
 ナポリの小さな町で暮らすリノとマリオは、幼い頃からの親友同士。リノの幼い妹アンナルーチェが奇跡を連続して起こし、信心深い町民たちから聖なる少女として崇められるようになる。リノは一変する生活に、マリオは自分がリノに恋をしていると気づき戸惑うが…
 イタリアのBL映画、なのですが。BLそのものががっつりメインじゃなかったのが物足りませんでした。リノとマリオの友情がBLへと形を変えていくプロセスをもっとじっくり描いてほしかったです。それにしても。男同士の仲が良すぎる友情って、立派なBLですよね。女とはヤルし結婚もするけど、一緒にいたい、楽しいことも悩みも分かち合いたいのは男の親友。そういう深く強い心の結びつき、精神的な同性愛の美しさと危うさも、腐をときめかせる魅力です。

 女そっちのけでイチャイチャじゃれ合ってる仲良しイケメン二人組、なんてすごく尊い!萌える!妄想をかきたてる!この映画のリノとマリオも、ほとんどカップル。いくら仲良しとはいえ、男同士であんなことする?なスキンシップばかりするんです。周囲も別に奇異な目で見てないし、イタリアではあんなのフツーなのかな。あっけらかんと堂々としてるよりも、やっぱ周囲も本人たちも、そして観客もドキドキハラハラさせたり不安にしたりするような、そろそろ禁区 by 明菜な領域に入るBL、つまり世間的に後ろ指さされる、やましいものとされている関係が、私はやっぱ好きです

 すべての男性は同性愛を秘めているけど、ほとんどの男性がそれに気づかず目覚めない、と言われていますが。幸か不幸か、突然リノに親友以上の想いを抱いていると気づいてしまったマリオ。なりゆきで熟女と3Pをすることになり、そこでリノの痴態を目の当たりにしたことがマリオのBLスイッチをオンしてしまったのが、可笑しくも切ない。熟女との3Pが、あたかもリノとマリオのセックスみたいなシーンになってたのが、なかなかエロくて刺激的な演出でした。マリオを誘ってるとしか思えぬリノの無防備さ、無邪気さが小悪魔でした。

 軽いBLものにありがちな安易で都合のいいハッピーエンドではなく、かなりホロ苦い結末になるのですが、絶望的でもなかったような余韻。次々と起きた奇跡のように、きっと二人にも…と希望を祈りたくなるラストでした。
 主役の俳優二人が、なかなかイケメンでした。リノ役のフランチェスコ・ペッレグリーノは、クールなやんちゃ男子って感じ。家族のために一生懸命なけなげさと、ハメをはずした時の下半身のだらしなさのギャップが可愛かったです。マリオ役ヴィンチェンツォ・アントヌッチは優しそうで、恋に悩んでオロオロするところが可愛かったです。アンナルーチェ役の女の子が美少女!美男子のリノとはまるで恋人同士のような仲睦まじさで、絵になる美しい兄妹でした。アンナルーチェが固まって動かなくなる、動かせなくなる神がかり?現象がホラーでした。ナポリの町の超庶民的な生活風景や町の様子も興味深かったです。
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おっさんずアモーレ

2024-02-29 | イタリア映画
 「David's Birthday」
 精神科医のマッテオとその妻フランセスカは、友人のディエゴ夫妻と共に海辺の別荘で夏を過ごすことに。そこにディエゴ夫妻の18歳の息子デヴィッドが海外から帰国し加わる。マッテオは美しいデヴィッドに心を奪われ…
 イタリア版おっさんずラブ?といっても、こちらはシリアスで破滅的な大人のBLです。日本のおっさんずラブは正直、もう観るのがキツくなってきてるんですよね~。同性の恋愛や結婚、性生活に、何の障害も苦悩もないなんてファンタジーすぎる。もう男女の話と同じだし。春たんを女にしても成り立つ話になってるような。男も女も関係ないという内容は、確かにLGBTの理想形だとは思うのだけど、男と男ならではの試練や葛藤の欠如はやはり不自然だし、それらに傷ついたり乗り越えたりする姿を描けば、もっとLGBTに寄り添った感動的なドラマになったはず。

 BLはやはり、禁断と苦しみが似合います。そのほうが現実的、かつ映画的でもあります。このイタリア映画、社会的ステイタスと美しい妻がありながら、若いイケメンに夢中になってしまうという設定は、おっさんずラブと同じ。さしずめマッテオが黒澤部長でデヴィッドが春たん、といったところ。違うのは、マッテオが少年に恋する自分に独り戸惑い煩悶し、必死になって自分を抑え想いを隠そうとするところと、デヴィッドの態度が誘惑的なところ。デヴィッドの一挙手一投足が気になって仕方がない様子、デヴィッドを追う目、ギャルと仲良くしてるデヴィッドに嫉妬しイライラ、デヴィッドの着替えをこっそりのぞいてる時の表情…大人の思慮分別を失い、どんどん危険領域へと踏み込んでいくマッテオが狂おしすぎて、何か笑えてしまいました。

 デヴィッドの誘惑も、わかりやすくセクシーすぎて笑えてしまった。マッテオの前では、だいたい裸。着替えだけでなく、エロすぎる自慰行為まで。それをのぞき見てしまったマッテオも、バスルームで狂おしく自慰。男同士の恋にあるはずの濃密な肉欲の臭いが、この映画ではちゃんと漂っていました。ラスト近くにあるマッテオとデヴィッドのセックスシーンも、ライトな腐にはちょっと刺激的かもしれない濃厚さでした。まずは性的な欲望や衝動、なのはいかにも男同士だとは思うけど、マッテオとデヴィッドの間にもうちょっと心が惹かれ合うエピソードもあってよかったのでは、とも思った。デヴィッドがただの気まぐれなイケメンっぽかったのが残念。心に闇や傷を抱えたミステリアスな美青年にしてほしかったかも。

 映画は悲劇的な結末を迎えるのですが。フランセスカが可哀想すぎる。彼女がなぜあんなことになったかを、マッテオとデヴィッドはディエゴ夫妻に告白したのかどうか、もしそうしたら夫妻は息子とマッテオに対してどう出るのか、それは観客の想像に委ねられてます。まあ、おっさんずラブみたいなライトでハッピーな展開には、絶対ならないでしょうね。それにしても。セックスする場所とタイミングが悪すぎ。何で今?そこで?と呆れてしまった。冷静になれない、切羽詰まった愚かさもまた恋の怖さではあります。

 マッテオ役のマッシモ・ポッジョが、いい男!ポール・ウォーカーを濃ゆくした感じの顔?まだ若々しくて、おっさんって感じではないのもBLをジューシーにしていました。優しい夫&パパの時も、悶々と恋する男の時も、大人だけど少年っぽい繊細さがあって素敵でした。シャワー自慰やデヴィッドとのセックスシーン、フランセスカを素っ裸で追っかけるシーンなど、日本の俳優だとありえない脱ぎっぷりのよさでした。
 デヴィッド役の俳優は、美しい肉体のイケメンなんだけど、顔がちょっとジョン・トラボルタ似で私の好みではありませんでした。フランセスカ役は、タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」に出てたポルトガル女優のマリア・デ・メデイロス。独特の可愛らしい顔。けなげな奥さんを好演してました。
 モンテ・チルチェーオのふもとにあるビーチハウスや海辺の、シンプルだけど優雅なリゾート感、小さな海沿いの町のイタリアンな風情など、私もあんなところで静かに楽しくヴァカンスしたいと思いました。
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シネマみたいなBLをした

2023-11-13 | イタリア映画
 秋の夜長の国際BL映画祭③ イタリア
 「ニュー・オリンポスで」
 1970年代のローマ。映画館で出会ったエネアとピエトロは、すぐに激しい恋に落ちる。しかし、思わぬ事態により二人は離れ離れになってしまう。会いたいと願いながら年月は過ぎ、エネアは映画監督、ピエトロは医師としてそれぞれの人生を歩んでいたが…

 BLといっても多種多様で、腐にとっても好みが別れます。私も三度の飯よりBL好きですが、男同士の恋愛ものなら何でもOK!ではなく、かなり偏ってます。まず絶対条件は、イケメンや男前の俳優主演好きな俳優がBLしてくれた時の至福ときたら。次は、適度な性愛シーンがあること。セックス?何それ?な乙女すぎるBLはダメ。かといって、生々しすぎるポルノみたいなBLも苦手。そして、ありえなさすぎる設定やキャラのファンタジー系BLも個人的にはNGです。社会問題を描くことに重きを置いてるBLもしんどい。このイタリア映画は、そういった私の要求をかなり満たしているBLになっていました。

 まず、主人公の二人がイケメンです。イタリアはほんと美男の国。互いに一目ぼれ、どっちかがブサイクだと成り立たない話は、ルッキズムだ!と不快に思う人もいるかもしれませんが、現実世界はともかく、映画の中の美しい人たちを崇め讃えることまで批判するのはお門違いのように思われます。とにかくエネアとピエトロ、どこで何をしていても絵になる美しいカップル!ゲイのハッテン場である映画館のトイレでさえ、ロマンチックな恋の舞台にしてしまうイケメンマジック!

 大事なポイントその2である、適度な性愛シーン。この映画ぐらいのラブシーンが、ほんと丁度いいんですよね~。全裸での絡みや行為はかなり大胆なんだけど、全然いやらしくなくて、求め合ってる愛し合ってる姿は若々しい情熱と優しさにあふれていて素敵でした。主演の二人の脱ぎっぷりがスゴすぎ。ボカシなし、デカいアソコ丸出しなのは、セックス中、セックス後の姿としては自然なんだけど、ちょっと目のやり場がばっちり見せるのは、お尻だけでいいかもそれにしても。コンプラ、ポリコレの悪しき風潮が、どんどん映画をつまんなくしてると、あらためて思いました。いやらしく撮らなければ、全裸も濡れ場も映画を美しく感動的なものにする大事な要素ですよね。

 ありえないファンタジーBL、男女の恋愛と変わらないようなBLではなく、ゲイならではの困難や苦悩と直面するBLだったのも、私の好みに合ってました。ライトでハッピーなBLも悪くないのですが、やっぱ男同士の愛には秘してこそ花な禁断感、深い悲しみと苦しみを求めてしまうんですよね~。でもこの映画、ドラマティックな展開と切ない悲恋が、ちょっと韓流ドラマっぽいんですよ。生き別れとか偶然すぎる再会とか、もろに韓流でした(笑)。ラストはイタリア映画の名作「ひまわり」へのオマージュみたいでした。70年代に吹き荒れた政治運動や映画撮影の現場なども、ラブストーリーの背景に巧く活用されていました。

 エネア役のデミアン・カヴィーノ、ピエトロ役のアンドレア・デイ・ルイジの好演を讃えたい。イケメン俳優がBLに挑戦するならこれぐらいは、と思える理想的な演技でした。どちらも存じ上げなかった俳優さんたちですが、二人とも美男子!そして大胆!デミアンはスマートで可愛いイケメン。アンドレアは朴訥な感じの男前。どっちもさすがイタリア男な色気。どっちもちょっと濃ゆいので、濃密系が苦手な人は胸やけ注意かも。エネアとピエトロは同い年という設定なのですが、そうは見えないのが気になった。出会った25歳の時のパートでは、ピエトロが老けて見えたけど熟年になってからは自然なイケオジに。逆にエネアは熟年になってからの老けメイクがちょっと不自然だった。実際のデミアンは現在22歳、アンドレアは28歳だって。若っ!二人の70年代ファッションがおしゃれでした。

 映画館の受付熟女、エネアの親友、ピエトロの妻、女性キャラも印象的でした。よく考えたらBLに関わる女性たちのほうが、より深刻な苦痛を味わってるんですよね~。男たちは恋に酔ってるだけでいい気なもんだよ。怒りや悲しみ、屈辱に苛まれても、地に足をしっかりつけて生きる女たち。女性のほうが現実的で、精神が強靭!
 ローマの街並みも魅力的!ピエトロとエネアが愛を交わす家も素敵だった。家のベランダから見渡せる風景が美しかった。「異人たちの棲む館」や「ナポリ 熟れた情事」など、イケメン映画の名手であるフェルザン・オズペテク監督、今回もオープンゲイならでの作風でした。日本でぜひリメイクしてほしいわ。ピエトロは竹内涼真か吉沢亮、エネアは横浜流星か山崎賢人がいいかも。「アキラとあきら」やキングダムシリーズよりも、断然こっちのほうがファンにとってはジョイフルですし
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ひとつ屋根の下

2023-02-21 | イタリア映画
 お松のフランス大女優映画祭②
  「ラ・ファミリア」
 20世紀初頭のローマ。ブルジョアの家に生まれたカルロは、両親や弟、3人の叔母や使用人たちに囲まれ成長する。青年になったカルロは、家庭教師の生徒ベアトリーチェの姉アドリアーナと恋に落ちるが…
 イタリアの名匠エットーレ・スコラ監督の作品。主人公が生まれてから老人になるまでの80年間が、ローマの邸宅からカメラが一歩も出ずに描かれています。舞台劇のようで、映画ならではなカメラワークや演出が出色です。二度の世界大戦が起こるなど、80年間はかなり激動の時代なのですが、屋敷内ではドラマティックな異変や悲劇などは起こらず、家族や男女の愛や絆が明るく楽しくにぎやかに、時にホロ苦さやペーソスをもって描かれています。戦死とか病気とかいった、お涙ちょうだいものでおなじみのネタで感動を誘うあざとさは全然ありません。この世に生まれて生きて愛して愛されて、命をまっとうしてそっと消えていく、そんなごく当たり前の人生模様、時の流れの優しさと深さが心に沁みる、そんな映画でした。時代や人が移ろっても、姿を変えずそれらを見守っている家が人間以上の存在感です。

 とにかく明るく騒々しいイタリア人!その楽天的で激情的な気質は、見ているだけだと面白いけど、関わるとなるとかなり疲れそう。喜怒哀楽が激しいところは、ちょっと韓国人とカブるところがありますが、どことなく粘着質で執念深く狂乱めいた韓国人の激情と違い、イタリア人のほうはカラっと後に引かず切り替えが早いので、イヤな感じはしません。登場人物が多く、みんな個性的でいい味だしてます。特にカルロの三人のオールドミス叔母が強烈で笑えます。ものすごい罵倒やビンタ、怒るたびに花瓶割ったりとか、かなり凶暴。私なら一緒に暮らせませんが、カルロ一家にとっては日常の風景になってて、やがて年月が経ち叔母さんたちも一人一人屋敷からいなくなってしまうのですが、家族だけでなく観てるほうもそれが寂しくなる愛すべき存在でした。

 叔母さんたちだけでなく、カルロの妻となるベアトリーチェや、その姉アドリアーナ、家政婦のアデリーナなど、女性たちがすごく魅力的でした。姉妹とカルロの三角関係も、ドロドロだったり悲痛だったりな描き方をしておらず、そっと胸に秘めながらも消えない恋だったのが切なくも優しい、大人のビタースウィートさでした。夫と姉が愛し合ってることを知りつつ、死ぬまでそれをおくびにも出さなかったベアリーチェの強さにも感銘を受けました。心優しく逞しいアデリーナも素敵な女性でした。

 イタリアのブルジョアジーの生活風景も興味深かったです。贅沢はしないけど、ガツガツ働かずとも豊かな生活ができる身分。戦時中に食糧難はあったけど、それ以外は特に困った様子はなかったカルロ一家。カルロのパパ、後にカルロも、学校の先生の給料だけで大家族を養ったり、大邸宅の維持や大勢の使用人の雇用とか無理だもんね。地味だけど、アンティークな家具やインテリア、衣装も歴史や上流社会の趣味の高さを感じさせて素晴らしかった。映画のためのセットではなく、本物の貴族の家で撮影したのかな。
 キャストもイタリア・フランス映画ファンには嬉しいメンツをそろえてます。壮年期から老年期のカルロ役は、イタリアの名優ヴィットリオ・ガスマン。大柄で立派な堂々とした体躯、一見いかめしいけど、同時にすごく優しそうで繊細そうでもあって。頼もしくも時々少年っぽくもあって、可愛く思えることも。アドリアーナ役は、フランスの大女優ファニー・アルダン。

 当時38歳ぐらい、おんな盛りだった頃のファニーおばさま、そのクールな佳人ぶりは男だけでなく女も惚れる!見た目も演技も女おんなしておらず、どちらかといえば剛毅で男性的なところが、時代や男に流されない自立した女性役にぴったり。理知的でエレガントという彼女の魅力は、いつかは褪せて失ってしまう若さとか美貌とは違う、永遠に輝く宝石のようなもの。モデルのような長身、そして美脚で颯爽と闊歩する姿のカッコいいこと!でも、フランス人のファニーおばさまがなぜイタリア女性役を?彼女のイタリア語は吹き替えなのかしらん?
 ベアトリーチェ役は、数々のイタリアンエロス映画で男たちのリビドーを刺激したステファニア・サンドレッリ。今回はエッチな美女役ではなく、明るく家族思いな奥さん役を好演。家政婦のアデリーナ役は、「わが青春のフロレンス」や「愛すれど哀しく」などで知られるオッタヴィア・ピッコロ。彼女の素朴な可愛さ、すごく好き。老年期パート、老けメイクでも可愛いおばあさんでした。アドリアーナの交際相手のフランス人男性役で、名優フィリップ・ノワレがちょこっとだけ出てます。
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強姦魔より愛をこめて

2021-11-14 | イタリア映画
 「スタンダール・シンドローム」
 連続強姦殺人事件を捜査するローマの女性刑事アンナは、情報提供を受け訪れたフィレンツェの美術館で気を失い、親切な男に助けられる。その男アルフレードこそが、警察が追う連続殺人鬼だった。アルフレードはアンナをレイプし、彼女の目の前で娼婦を惨殺する。心身に深い傷を負い、休職して実家に戻ったアンナの前に、再びアルフレードが現れ…
 「サスペリア」のダリオ・アルジェント監督作。大昔にレンタルビデオ(VHSの時代!)で観て、ずっと忘れがたかった変態ホラー映画です。強烈インパクトだったのは内容ではなく、ヒロインを襲う変態強姦魔役の男優。カ、カッコいい!誰?!と、若かりし頃のMYイケメンレーダーをビビビとさせたのでした。その俳優、この映画で初めて知ったトーマス・クレッチマン、当時34歳ぐらい?当然ですが、わ、若い!そしてイケメン!

 猟奇的な強姦殺人鬼役なのですが、すごく爽やかで清潔感がある風貌!白い開襟シャツが似合う!さっぱりとした短髪も涼しげ。まさにクールビズな男前なんです。イタリア人役には違和感あり。イタリアでイタリア人に囲まれてると、薄くて硬質なドイツ人な感じがよく出ていました。劇中に出てくる濃ゆいイタリアの俳優たちに比べると清々しさが際立っていて、返って異彩を放ち異質な存在にしていました。

 元水泳選手のトーマス、まだその名残があるスポーツマンらしい引き締まった肉体美も披露してます。大胆な全裸姿にもちょっとだけなってましたが、多かったのはタンクトップ姿。筋肉質さがよく判り、すごくセクシーでした。でも薄いせいかあまり色気はなく、何してもエロくないです。女たちに近づき、強姦しては惨殺するサイコパスな猟奇殺人鬼役のトーマス、被害者たちやヒロインをいたぶるシーンの彼は不気味で怖いです。笑顔や口調は優しいのですが、さすがナチスドイツ役をオハコにしてただけあって、冷酷で残忍な雰囲気を妖気のように放ってました。薄く冷たい感じが無情なサイコ役にぴったりでした。まだほとんど無名時代、駆け出しの俳優がいかにもやりそうなヨゴレ役ですが、ヨゴレた感じがまったくなかったのが驚異です。出演作の中でいちばん好きなトーマスは?と訊かれたら、今でもこの変態ホラーの強姦殺人魔なトーマス、と私は答えるでしょう。

 主演はアルジェント監督の娘アーシア・アルジェント。まだ若くて、そして美人。ちょっとウィノナ・ライダー似?美人なのに、とんでもないイカレ女役を怪演してます。よくこんな役、娘にやらせたな~。やるほうもやるほうだけど。ぶっ飛びすぎなアルジェント父娘です。ヒロインは刑事なのですが、刑事らしい仕事はほとんどせず、ただもう現実とも妄想ともつかぬ異常な事態の中でどんどん狂っていく、その狂態が常人の理解の範疇を超えていて、早く精神病院に強制入院させて!と思わずにはいられませんでした。強姦魔より危険。彼女に関わる男たちは、みんな血みどろ血まみれの屍と化していきます。ラスト近くの狂乱は、ほとんどカオスでした。心を病んだ女ほど怖いものはない…ダリオ&アーシア父娘とトーマスは、後年「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」で再結集してますね。

 独特の視覚効果や色彩感覚、音楽など、一世を風靡したサスペリアを彷彿とさせます。ヒロインが絵の中に入り込んだり、絵の中の世界が動いたりするシーンがユニークで不気味です。そういったグロテスクなファンタジーシーンや、本当は強姦殺人魔は存在しないのでは?ヒロインの妄想なのでは?と思わせる演出など、連続サイコキラーを追うサスペンス、ミステリーを期待して観ると目がテンになってしまうのでご注意を。アルジェント監督独自の美学で構築されたヴィヴィッドな変態ホラー、私は嫌いじゃないです
 ちなみにスタンダール・シンドロームとは、美しい絵画や建造物などに強い感銘を受けて突然めまいや動揺に襲われる症状のことだとか。アンナとアルフレードが出会うフィレンツェのウフィツィ美術館、有名なヴィーナスの誕生とかメデューサとかがあるんですね!行ってみたい!

 ↑ 若い頃のトーマス、可愛い!
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妖しい罠の美女!

2021-11-03 | イタリア映画
 「甘く危険な女」
 実業家のジャンと、その妻ダニエルとの夫婦関係は冷めきっていた。そんな中、夫妻の住むフラットの上階に、ニコールという美女が越してくる。愛人から暴力を受けているニコールと、ジャンは深い関係になるが…
 1969年のイタリア映画です。不倫、痴情のもつれ、ストーカー、殺人、レズビアン、SMなどなど、ゲスい三面記事的ネタてんこ盛りで、お高くとまった優等生映画や毒にも薬にもならないポリコレ映画にウンザリしてる私には、返って新鮮で美味しい作品でした。こういう映画やドラマ、昔はいっぱいあったのに、すっかり廃れてしまって寂しいです。妖しいブルジョア美女たちが、華やかにエロティックに野望と欲望に突き動かされ犯罪に手を染めるという設定や、レトロだけどモダンでキッチュなファッション、面妖な雰囲気と展開、サイケなファンタジーみたいなシーンなど、土ワイの明智小五郎の美女シリーズを思い出させました。

 やってること起きてることは隠微で背徳ですが、全体的に明るく開放的なのは、やはりイタリア映画だからでしょうか。舞台はフランスのパリなのですが、ブロンドやブルネットの美女たちがエッチ(死語)な服を着たりポーズをしたり、60・70年代に流行ったイタリアのセクシー映画のテイストが濃厚で、そのエッチさはノスタルジーを覚えるほど古典的です。美女たちがチラっとおっぱいやお尻を見せる程度、ラブシーンもがっつり絡むものではなくライトで、エロが大したことないところがご愛敬。

 情痴の果てに殺人が起きるのですが、なかなか読めない展開、予想外の真相など、荒っぽく雑に感じられつつもミステリー、スリラーとしては上出来な脚本だと思いました。どうせあの人は死んでなくて、この人とグルになってるんだろ、チープな設定だなと思ってたら、え?結局そういうことなの?と、一周回った結末に一本とられた感じ。でもかなり強引ではあります。殺人後に判明するダニエルとニコールの百合関係とか、何のにおわせもなく唐突すぎる。真犯人の目的はいったい何だったのか、何がしたかったのかも謎。金?異常な殺人ゲーム?
 ジャン役は、当時39歳のジャン・ルイ・トランティニャン。わ、若い!

 妻がいながら女たちとアバンチュールを楽しむ下半身ユル男役でも、見た目がすごいクールで知的でストイックなので、チャラくもゲスにも見えないジャン・ルイ。とにかくシブいです。冷酷そうで苦み走った男前だけど、ラブシーンが絵になってて上手なところはさすがフランス男優。私生活でも超絶モテ男だったらしいジャン・ルイですが、女優たちとの絡みを見ればそうだろうな~と納得。すごい小柄だけど、ガッチリと引き締まった体つきもセクシー。60年代のスーツやカジュアルなファッションも、パリジャンらしい小粋さと洗練。日本の30代後半から40代の俳優にも、いい歳してカッコいいだけな役や好感度が高い役、共感されたい役ばかりではなく、情痴に身を滅ぼすような色っぽい役やってほしいものです。

 危険なファムファタール、ニコール役のキャロル・ベイカーは、美人というより素朴な顔立ちで可愛い感じ。アメリカ人らしく明るく健康的なエッチさ。ダニエル役のエリカ・ブランともども、熟女の色香を惜しげもなく振りまいていました。二人のブルジョアファッションが目に楽しいです。二人の関係や、追いつめられるダニエルの姿などは、スリラー映画の名作「悪魔のような女」とカブります。
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不幸さえ美しい詩

2021-07-19 | イタリア映画
 「レオパルディ」
 19世紀初頭のイタリア。地方貴族レオパルディ家の長男ジャコモは、病弱で身体に障害を抱えていたが、学識豊かで詩の才能に恵まれていた。退屈で窮屈な田舎の生活に絶望していたジャコモは、ローマの高名な文学者ジョルダーニと手紙を通して親密になり、自由な人生を切望するようになるが…

 恥ずかしながら、ジャコモ・レオパルディについてはまったく存じ上げなかったのですが、世界的な詩人、哲学者なんですね。詩人が主人公というだけで、貧乏とか人間関係のもつれとか病気とか、すごい不幸のにおいがします。日本の有名な詩人って、みんな暗くて悲しい生涯だったような。明るい幸せとは無縁なイメージ。ジャコモ・レオパルディも、障害のある病弱な身体のせいで鬱屈した青春を余儀なくされるのですが、不幸って感じでは全然ありませんでした。貴族という身分、贅沢ではないけど召使にかしずかれた何不自由ない生活、仲良しの弟妹、そして何より輝かしい才能。レオパルディも天才のごたぶんにもれず、人々にすごく愛されるか嫌われるかのどっちかなんですよ。中間があまりないんです。とはいえ、バカにされたり蔑まれたりすることはあまりなく、どちらかといえば大事にしてくれる人、優しい人のほうが多かった。いつも絶望と失望にさいなまれてたレオパルディでしたが、それも詩に昇華して生きる糧になってたし、短くも豊かで幸せな人生だったような。愛情にも才能にも恵まれず、ユルく長く生きるだろう私よりは。
 
 障害があるといっても、日常生活にはあまり差し支えはなく、結構アクティヴに動き回ったり旅をしたり。弟妹やジョルダーニ、親友のアントニオなど、理解者たちから大切に扱われるレオパルディですが、それに感謝したり申し訳なく思ったりすることがほとんどなく、ごく当たり前のように親切や献身を享受しているところも、いかにも天才にありがちな自己中心的さでした。でも、天才だからって何しても許されるなんて思うな!と腹が立つような傲慢さ身勝手さは全然なくて、すごく純粋で無邪気な浮世離れした子どもみたいで可愛かったです。

 レオパルディを厳格に溺愛する父親がちょっと怖かったです。才能ある息子を薫陶しながらも、息子に自由を与えようとせず過干渉な子離れできないパパ。息子が傾倒するジョルダーニへの警戒や敵視はほとんど嫉妬で、あれじゃあレオパルディも重苦しくなって逃げたくもなります。レオパルディの性的な苦悩も切なかったです。下半身は健常だったのが返って辛そうでした。美しい未亡人ファニーへの恋心と失恋、娼館で酷い目に遭う姿など、恋愛についてはかなりみじめで哀れでした。

 レオパルディと親友アントニオとの友情に、ちょっと腐心をくすぐられました。どんな時もレオパルディを支え守るアントニオ、恋人や奥さんにだってあそこまでできんよ。レオパルディがあんな風貌なので、BLに発展しそうな雰囲気は微塵もないのだけど、その友情を超えた無償の精神的な愛が尊かったです。それもこれも、レオパルディが類まれな才能の持ち主だったから。みんなレオパルディ自身というより彼の才能を愛し、それを守ろうとしていたような。健康で頑丈な肉体に恵まれた凡人になれる、と神さまがレオパルディにささやいても、おそらく彼はそれを拒んだのではないでしょうか。
 この映画、ずいぶん前から観ることを熱望していた作品。なぜって、言うまでもなく大好きなエリオ・ジェルマーノ主演作で、彼の熱演が絶賛されていたから!

 エリオ、まさに渾身の、入魂の名演でした。日本の同世代の俳優には絶対無理な難役。あふれんばかりの感受性と情熱を発散できない懊悩のデリケートさ、繊細さときたら!悲痛で苦しそうな身体障害の演技のリアルさといい、心が異次元でさまよっているかのような表情での長い詩の台詞といい、これこそ役者の仕事!な演技に感嘆するばかりでした。その高い演技力、役者魂も素晴らしいのですが、エリオってやっぱすごい可愛いんですよね~。ヒゲなしだと顕著になる童顔。本物のレオパルディは、絶対こんなにイケメンじゃなかったはず。レオパルディ役には、ちょっとイケメンすぎるかもしれなかったエリオです。小柄でトコトコした動きとか、シャイなはにかみとか、ほんと可愛かった。自信満々で高慢なところもあるはずのレオパルディがそんなキャラになってなかったのは、エリオの悲しそうで内気そうな風情のおかげかもしれません。何しても何言っても許して守ってあげたくなる。可愛いシーンたくさんあるのですが、特に好きなのはジェラードを食べてるシーンかも。子どもみたいで可愛すぎ!窓辺で月を眺めながら詩を口ずさむ姿も、いとあはれだった。

 アントニオ役のミケーレ・リオンディーノが美男な色男!女好きだけど女よりレオパルディを大事にするところが、BL好きにはたまらん設定でした。レオパルディのためにファニーとの恋愛をきっぱり終わらせたり、自分が抱いた娼婦にレオパルディの筆おろしを頼んだり、具合が悪いレオパルディをさっとお姫様抱っこして階段を上がったり、レオパルディ大好きっぷりに萌え。ファニー役のフランス女優アナ・ムグラリスが、大人の女、いい女。

 レオパルディの故郷レカナーティや、ローマやフィレンツェ、ナポリの風景が美しい!自然や街並みが実際は21世紀の景色だなんて信じられないほど、19世紀の情趣であふれていました。衣装や屋敷も当時の生活感、息吹を感じさせるものでした。特に印象的だったのは、夜の娼館。洞窟みたいなところにあって、すごく美しくて神秘的でした。ラストの火山噴火も、恐ろしい災害なのに火山灰が粉雪のように降る注ぐような幻想的なシーンになっていて、不幸や凶事がレオパルディの詩のように美しいファンタジーとなっていたのも、この映画の特筆すべき点です。

 ↑ エリオ~「私は隠れてしまいたかった」イタリア映画祭で配信してたのに観逃してしまった~!
 


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夏休みの毒親

2021-06-25 | イタリア映画
 「悪の寓話」
 ローマ郊外で暮らすローザ家とプラチド家は家族ぐるみの付き合いをしていたが、それは上辺だけのものであった。ある日、プラチド家の息子の部屋から手製の爆弾が発見され騒動になるが…
 イタリア映画祭2021でオンライン配信された新作を観ました~🍕今年も大好きなエリオ・ジェルマーノの出演作が数本あり、ファンには喜ばしいかぎり。あまり濃くないけど決して薄口でもない、ほどよい感じにイタリアンイケメンな風貌と、難役にも果敢に挑み見事に演じる役者魂と高い演技力を備えたエリオは、今やイタリアのみならずヨーロッパを代表する俳優と言える存在となっているのではないでしょうか。そんなエリオがこの作品で演じたのは、2児のパパ役。カンヌ映画祭男優賞を受賞した「我らの生活」では子育てに奮闘する愛情深いパパ役でしたが、今回は子どもたちに対して支配的で威圧的、ちょっとしたことで感情的になって激高したり号泣したりする、かなりめんどくさいパパ役でした。

 めんどくさいだけならいいのですが、ビニールプールをナイフで裂いたり、気に入らない質問をしてきた息子を車から引きずり出して殴る蹴るの暴力を振るったり、どんどんヤバいDVパパと化していって怖かったです。あのパパ、情緒不安定というか、ちょっと精神を病んでたのかしらん。近所づきあいでのストレスとかマウント、劣等感で生じるイライラや鬱屈で神経が痛んでいく、その弱さとヤバさがエリオが発する張り詰めた雰囲気や血走った目つきで伝わってきました。こんなイヤな毒親役、エリオぐらいの人気スターともなれば演じないはずなのに、あえて演じるところが真の役者なエリオ。キムタクとかもこういう役やってみれば、いい役者になれると思うのですが。

 クレジットはトップだけど主役ではなく、出ずっぱりというわけでもないけど、出てくるたびにサイコパスっぽさで不穏な空気をもたらすエリオ。その不吉で邪悪な存在感はかなり強烈でした。ラスト、衝撃的な悲劇に対する毒パパのリアクション、あれはどうなの?!とことん愚かで卑小。救いのなさに絶句ですが、あのシーンで初めてあのパパに哀れみを覚えました。それはエリオの表情や動きが、何だか母性本能をくすぐる小動物みたいだったから。やっぱエリオって、どんな役でも可愛いんですよね~。中年になってもナイーブな少年みたい。濁った役でも瞳は相変わらず黒々と宝石のように美しい♡
 爆弾騒動までは、これといって特に事件や騒動が起きるわけでもなく、ごく淡々と静かに郊外で暮らす子供たちの夏の日常をカメラで追っているのですが、明らかに歪んだ人間関係や親子関係の描写がそこに挟まれており、いつかきっと怖いこと、悲劇が発生するに違いないという不安と緊張感をはらんでいます。子どもたちが夏休みに立てる計画が恐ろしい。ラストはかなりショッキングで後味が悪いです。子どもが苦しんだり傷ついたりする姿を見るのは本当に辛いです。親たちも苦しい悲しいんだろうけど、それは子どもを傷つけていい理由にはなりません。

 ↑ エリオ~イタリア映画祭2021では、エリオがベルリン映画祭男優賞を受賞した「私は隠れてしまいたかった」も配信してたのですが、あっちょんぶりけー!知らん間に配信終了してた!でも以前から観たかった旧作「レオパルディ」が!今度こそ観逃さない!
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禁猟区の兄弟!

2020-12-11 | イタリア映画
  「家の主たち」
 大物歌手ミエリの依頼で、彼が病身の妻と暮らす小さな村にやって来るローマのタイル職人コジモとエリア兄弟。閉鎖的な村人たちや、どこか様子がおかしいミエリ夫妻に困惑するコジモとエリアは、やがて起こる恐るべき惨劇のきっかけをつくることに…
 イタリア映画祭2020を、オンラインで楽しんでます(^^♪この作品は、過去に上映された2012年の旧作で、大好きなエリオ・ジェルマーノ主演作です。イタリア映画界も古くから美男・イケメン王国ですが、その中ではエリオこそ最もMYタイプなイタリアンいい男。カッコカワイイ!非現実的な美男子ではなく、かといって一般人に毛が生えた程度のイケメンでもない。スターとしては理想的なルックスなのです。色気もムンムン過ぎず、ちょっと濃い目で程よく甘いカフェラテみたいなフェロモンも、私はちょうどいい。小柄で華奢なところや、陽気で自信たっぷりというイタリア男のイメージにそぐわぬ、ちょっと暗くてシャイな感じも好きです。似てないけど、ちょっと妻夫木聡とカブります。

 何もしなくても女が寄って来るというのは、必ずしも喜ばしいことではない。この作品のエリオ演じるエリアが、まさにそれ。女難のモテ男に忍び寄る不幸、何も悪いことはしてないのに非道い目に遭うエリオが哀れで悲惨でした。エリオがまた、そんな不幸が似合うんですよ。内気だけど女好きではあるところは、やはりイタリア男。女にモテる役、姿も似合うエリオです。あんなイケメン、女がほっておかないですよね。それにしても。真面目で仕事熱心、ダメ男な兄にも辛抱強く優しい、本当に善い男なエリアが、まさかあんなことに。ほんま神も仏もないわ~。

 閉鎖的な村落は、ミステリやホラーでは定番舞台ですが。この映画の村や村人は、そんなに異常ではないんですよね~。おかしな因習とかおどろおどろしい人間関係があったりするわけでもなく、村人もフツーののどかな田舎人って感じです。むしろコジモとエリア兄弟のほうが、要らぬ波風を立てる迷惑な闖入者。誤解やトラブル、小さな齟齬が積み重なり、兄弟と村人たちの関係が険悪になっていくのですが、あんな恐ろしい破局に至るにはあまりにもしょーもない理由すぎる。なのでラストの後味が悪いです。兄弟がもっと村人たちから、理不尽で残酷な仕打ちを受けていてのあのラストなら、きっとスカっとしたブラックなカタルシスを得られたでしょうに。

 とにかくコジモがダメ男すぎて、ほんとイラっとします。すべての元凶は、おっさんのくせにコドモじみた彼の性格と言動。若者相手に大人げなくムキになったり、仕事で大ポカしたり、あんな兄貴に我慢できる優しくできるエリア、天使みたいだった。ラストのコジモの狂気的ぷっつんも、ダメ男の極みです。ダメ男は狂っても死んでもダメ男なままなんでしょうね。コジモ役のヴァレリオ・マスタンドレアは、イタリアでは人気スターだとか。この作品で初めて知りました。フツーの気のいいおじさん風で、特に魅力とかインパクトとかは感じませんでした。

 村人よりもザワつく存在なのが、有名歌手のミエリとその妻。セレブにしては気さくで親切なミエリですが、何か怪しい、何か薄気味悪い、何かズレてるところが笑えて怖かったです。ミエリ役のジャンニ・モランディは、実際にもイタリアでは有名な歌手だとか。脳梗塞の後遺症で肢体不自由、口もきけない妻も何かヤバい空気を出してるのですが、笑っちゃいけないと思いつつつい笑ってしまう表情や動き。ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが台詞なしで怪演してます。村があるアペニン山脈の風景も美しく撮られてました。

 ↑エリオ~イケメンなだけでなく、カンヌとベルリンで男優賞を獲得してる実力者でもあるのです🍝🍕
コメント (2)
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熟女検視官の幽愛体験

2019-08-28 | イタリア映画
 「ナポリ 熟れた情事」
 ナポリの検視官アドレアーナは、パーティーで知り合った青年アンドレアと濃密な一夜を過ごす。しかしアンドレアは失踪し、やがて両目をくり抜かれた惨殺死体で発見される。ショックから立ち直れないアドレアーナの前に、アンドレアと瓜二つの若者が現れる。彼はアンドレアの双子の弟ルカだった。アドレアーナはルカを自宅に匿うが…
 ヒロインが男を射殺する冒頭のシーン、両目をえぐられた惨殺死体、突然現れる被害者の双子の弟、彼のサイコな嫉妬と独占欲、バスルームに残された暗号のような謎の数字、そしてヒロインが少女の時に両親が起こした事件の真相etc.古都ナポリを舞台にした官能ミステリー、のはずだったのですが、だんだん話が違う方向へと変わっていき、え?そっち?な展開に当惑。すべて夢でした、に近いオチ。思わせぶりな謎の数々はいったい何だったのと、ナポリタンを注文したのに気づけば冷麺を食べてた、みたいな映画でした。

 サイコサスペンスでもなくオカルトでもなく、女ざかりのからだを持て余す熟女ヒロインの、更年期寸前な情緒不安定さが産み出したファンタジア、と解釈すべきなのでしょうか。心の迷宮でさまようヒロインの夢かうつつかな世界を、情緒深くミステリアスなナポリに重ねて描いています。ローマとはまた雰囲気が違うナポリの異国情緒も趣深いです。ちょっと猥雑で湿り気のある空気感というか。古い教会や石畳の狭い街路、オープンカフェetc.ヨーロッパならではな歴史の匂いが。老人たちがくつろぐ塔の上の老人ホーム?が素敵でした。アンドレアの住んでた部屋がオシャレだった。海をのぞむあんな部屋で暮らしてみたい。

 濡れ場は最初に一回だけなので、邦題はちょっと誇大広告。でもその濡れ場はなかなか濃密でエロいです。でもwowwow放送なので、ボカシだらけにされて無残で興ざめ。局部ならいざ知らず、お尻までボカさんでもええやろ。せっかくの官能も台無しです。ヒロインのおっぱいはボカしてもいいので、イケメンのケツはボカさないで!
 アドレアーナ役は、ムッソリーニの愛人役を熱演した「愛の勝利を」や、この映画のフェルザン・オズペテク監督の旧作「向かいの窓」なども忘れがたいジョヴァンナ・メッゾジョルノ。すっかりおばちゃん、いや、熟女になってしまってて驚きました。まさに熟れ熟れ完熟トマトです。ぽっちゃりというか、どっしりというか、ずんぐりというか、とにかくふくよか。イタリア女性の典型的な年齢の重ね方をしてます。でも美女であることには変わりないです。不自然に細い人工的美魔女よりも、そのムチムチした肉体は生々しく魅惑的。本国では大物女優なはずなのに、脱ぎっぷりがあっぱれすぎる。堂々とさらす全裸だけでなく、アンなことコンなこと若い男にむしゃぶりつく痴態もエロいです。顔がちょっと上野樹里に似て見えたのは私だけ?のだめ(古っ!)を濃ゆくした感じ。

 アンドレア/ルカ役は、「ダリダ あまい囁き」でもいい男だったアレッサンドロ・ボルギ。ユアン・マクレガーをちょっと濃ゆく、もっとセクシーにした感じのイケメンです。彼の脱ぎっぷりもお見事だった。彼もエロいカラダしてます。そして別に見せなくていいシーンでも、前後ともにポロンと気前よく出してます。イタリア男にしては涼しげな風貌ですが、情熱的な言動と胸毛はいかにもイタリア男でした。

 ヒロインの叔母さんが、モダンな美老婦人で素敵でした。それにしてもイタリア、モブな脇役、通行人でさえ、すごい美男美女がそこかしこに。みんな年取ったら例外なく別人のように太っちゃうんですね~。ちなみにフェルザン・オズペテク監督はゲイであることをカミングアウトしてて、ラウル・ボヴァやエリオ・ジェルマーノ、ステファノ・アコルシ、そしてこの映画のアレッサンドロ・ボルギと、主演に起用する男優はみんな軒並み上質のイケメン!いかにもゲイの監督らしい、センスのいい面食いぶりです。

 ↑ アレッサンドロ・ボルギ、1986年生まれの33歳…って、嵐より年下かよ!役と演技が大人ですね~。ローマ帝国が舞台の最新作“Il primo re”では、ほぼ原始人みたいな風体だけど際立つ美男ぶりとの評判。早く観たい!
コメント (4)
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