まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

オヨヨ 情痴哀歌

2019-07-30 | その他のヨーロッパ映画
 「COLD WAR あの歌、2つの心」
 1949年冷戦下のポーランド。ピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラは、音楽舞踊学校で出会い恋に落ちる。スターリン崇拝強制を嫌うヴィクトルは、ズーラと共に西側へ亡命しようとするが、ズーラはそれを拒絶。数年後、パリで暮らすヴィクトルの前に、公演のためフランスに来たズーラが現れるが…
 去年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞し、今年のオスカーでは外国語映画賞だけではく監督賞、撮影賞にもノミネートされ話題となったポーランド映画。傑作との評判もですが、大人の恋愛映画というが私が観たいと思った最大の要因です。もういい加減、漫画映画、学芸会演技には飽き飽き、辟易してるので(好きなイケメンが出てるので観ちゃうけど)。この映画のヴィクトルとズーラ、フランソワ・トリュフォー監督の秀作「隣の女」を私に思い出させました。離れていたら狂ってしまう、そばにいたら燃え尽きてしまう…そんな情熱的で破滅的な恋なんて、心が冷めてる情の薄い人や、常識からはみ出すことを恐れる小心な人(どっちも私やんけ)の目には、愚かな痴情としか映らない、けど同時に、強い憧れも抱いてしまうのです。

 才能も地位も安全も、命さえ投げうってしまう誰かと出会える運命って、何という甘美な不幸でしょう。無味無臭な幸福よりも、生きてる実感を味わえそう。くっついたり離れたりを繰り返すヴィクトルとズーラが単なるバカップルに見えなかったのは、音楽と冷戦という特異でドラマティックな世界に二人が身を置いていたからでしょうか。とにかく劇中に流れる音楽が印象的で、物語に情感と哀感をもたらす素晴らしい効果。特に主題歌とも言える、邦題にも使われた「二つの心」のフレーズ、オヨヨ~♪が耳に残ります。デュエットのポーランド版も、ズーラがソロで歌うジャジーなパリ版も好き。
 
 ワルシャワ、ベルリン、ユーゴスラビア、パリと、ヨーロッパ各地でのめくるめく展開もドラマティック。冷戦下の人々の生活や、スターリン崇拝強制の様子も興味深かったです。今どきあんなプロパガンタパフォーマンスしてるのは、将軍さまが支配するあの北国だけ?政治色はそんなに濃くなく、あくまで恋愛の障害の一つな扱い。当時の東欧、もっと過酷で息苦しい生活を余技なくさえてるのかと思ってたけど、ヴィクトルもズーラも結構自由に動き回ってたので意外。二人の、ていうかズーラの性格が最大の障害で、あれじゃあポーランドだろうがアメリカだろうが関係なく幸せな恋愛はできません。でもまあ、二人にとってはあれこそが幸せだったんだろうけど。

 冷戦下の東欧、亡命、激しい女と優しい男、といえば大好きな映画「存在の耐えられない軽さ」とも共通します。ズーラのどこか荒んだニヒルなビッチさ、けだるげだけど内に秘めた熱情で男を翻弄し傷つけ虜にするファムファタールぶりは、往年のフランス映画のヒロインみたいで魅惑的でした。好感度の高い善い子ちゃんよりも好き。演じてるヨアンナ・クーリグは、ちょっとレア・セドゥ+ジェニファー・ローレンス、を地味にドライにした感じ?ヴィクトル役のトマシュ・コットは、物語が進むにつれいい男に見えてくるシブくてスマートな風貌。すごい長身。ちょっとスティング+ベッカム、を地味に濃ゆくした顔?

 外国語映画賞を争った「ROMA」同様、モノクロ映像が清冽で美しいです。「イーダ」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ監督(名前覚えるのにしばらく時間がかかりそう)は、イギリスで育って映画の世界に入ったとか。そのせいか、どことなく英国映画っぽさが感じられました。最後に、この映画で最も感嘆し称賛したい点は、上映時間が1時間半しかないこと。最近は無駄に長い映画が多いので、これは本当にありがたい。ヴィクトルとズーラが離れている間どんな日々を送っていたとかほとんど描かれておらず、見事なまでに説明的なシーンも台詞も排除されてます。
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降魔が時

2019-07-28 | 韓国映画
 「サバハ」
 問題ある宗教団体を取材するパク牧師は、鹿野苑という新興宗教を探り始める。そんな中、女子中学生の他殺死体が発見され、容疑者である鹿野苑の信者が自殺する。事件の真相を追うパク牧師はやがて、想像を絶する闇の世界に足を踏み入れることになるが…
 おぞましい出生の悪鬼の子をめぐって、次々と起こる凶事…「オーメン」系のオカルト、鳥や犬、ムカデやヘビ、気象がコントロールされる超現象などスーパーナチュラル、主人公が探偵のように手がかりや聞きこみから犯人にたどりつくミステリー、などいろんな要素をブッ込んだ内容でした。面白かったのですが、どことなくTVドラマっぽいというか、エグい韓流ホラーやサイコものが好きな人には物足りないかも。血まみれ血しぶきとか、メッタ刺しメッタ打ち殺しといった、韓流おなじみのシーンはほとんどありません。

 悪鬼や邪教よりも私が戦慄したのは、韓国といえばのうら寂しい田舎や貧しい地域の暗く狭い路地。何か禍々しいものが潜んでいそうな、日本にはないおどろおどろしい闇深さを感じます。特にひと気のない夜道。街灯とか舗装の具合とか、ぜんぜん安心して歩けません。
 私はミステリー部分がいちばん好きです。意味不明でバラバラだったピースが集約されいく展開に、ああ!なるほど!そういうことか!と膝を打ちました。悪鬼の正体と鹿野苑の教祖の正体、真の悪をめぐる観客へのミスリードとドンデン返しも巧みでした。教典に隠された暗号とか、ちょっと「ダヴィンチ・コード」もどきでしたが。

 キリスト教と仏教の混在など、複雑で奇異な宗教問題も日本ではほとんど感じられない、韓国らしい混沌、異様さです。ヘロデ王の幼児虐殺をモチーフにしていますが、鹿園苑とその教祖のモデルは明らかにオ〇ムと麻▲彰◇です。マインドコントロールされた若い純真な信者が大量殺人を犯すという悲劇は、まんまあの邪教の犯罪。納屋に監禁されてる忌まわしい姿の悪鬼娘が、楳図かずお先生の赤ん坊少女タマミっぽいキャラで、おぞましくも哀れ。
 牧師探偵パク役のイ・ジョンジェが、相変わらずカッコよかった

 スマートで若々しい、けど若作りしてるのではなくて、大人の男の魅力も備えてるジョンジェ。カッコいいけどファッションが悪趣味、というのが韓流男優の定説ですが、ジョンジェは唯一といっていい例外。シンプルな黒いコートが、スラっとした長身に似合って素敵でした。かなり軽妙でコミカルなジョンジェの演技が可愛かったです。尼さん軍団から卵ぶつけられる(韓国人、これよくやってますよね~)ジョンジェが笑えた。でも、ジョンジェじゃなくてもいいような役でした。いっそ邪教側の役のほうが、ジョンジェの演技力とカリスマを活かせたのでは。それにしても。ジャーナリストみたいな仕事をしてる牧師さんっているんですね~。
   
 金髪の若い信者役パク・ジョンミンが、もっとタイプのイケメンだったら言うことなかったのですが。でも、たまにすごいイケメンに見えたり、不思議な顔してる俳優です。教祖の助手役で、中盤にユ・ジテが登場。彼がただの助手役なわけがないと思ってたら、やはり。意外な正体に驚かされます。▲原彰■がカッコよくなったみたいな風貌だったのは、意図的なのでしょうか。

 ↑ジョンジェ久々のTVドラマ「補佐官」観ようかな~。

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脱獄男子♡

2019-07-23 | 北米映画 15~21
 「パピヨン」
 1931年のパリ。金庫破りのパピヨンは、殺人の濡れ衣を着せられ南米にある絶海の孤島送りとなる。偽造犯のドガと手を組み、生き地獄のような流刑地から脱出しようとするパピヨンだったが…
 スティーヴ・マックイーンとダスティン・ホフマン主演作のリメイク。大スターと名優が競演した旧作は、どちらかと言えば意識高い系映画ファン向けで、ライトな映画ファン、特に若い女性が食いつくような作品ではありません。その点この新版は、明らかに女性、特に腐女子を標的にした作りになってます。はっきりBLではなく、それより高度?な、いま流行りのブロマンス映画。セクシイなイケメンと可愛いイケメンが、命がけで助け合い庇い合い支え合い、ついでに脱ぎまくり合いなんて、腐女子狙い以外のナニモノでもないです。マックイーンとホフマン、二人とも偉大な俳優だけど、まったく腐的な萌えや妄想ができない。同じ内容でも、出演者によってまったく異なるテイストになるんですね。

 旧作のほうが、主演男優の格も作品のクオリティも評価も断然高いと思いますが、いまだに観る気がしないんですよね~。この新版にはすぐに飛びついたのにやっぱ私にとっては、非イケメンの名作<<<<イケメンの凡作駄作、なんですチャーリー・ハナムとラミ・マレックの顔合わせは、なかなか美味しゅうございましたとにかく二人とも、狙ってるとしか思えぬほど見た目も演技もBLカップルでした。

 「キング・アーサー」でもめちゃイケだったチャーリー、カッコいい外国人俳優my Best 10には確実に入りますわ。たまに若き日のブラピに似て見えるイケメンで、惚れ惚れしてしまうような肉体美に目はクギづけ!これでもかと言わんばかりに脱ぎまくってます。特に屋外シャワー、からの乱闘シーンでのケツ丸だし、あそこも見えそうな際どいアングルでの全裸は、眼福すぎるファンサービス。日本の某事務所タレントやヘボい俳優を見慣れた目には、そのラフでタフな精悍さといい強靭で美しい肉体といい、清冽なほどに“男”です。金髪・色白なので、男らしいけど男くさくないところが、濃ゆい男が苦手な女子にとっては口あたりがいいのです。
 日本でも大ヒットした「ボヘミアン・ラプソディ」でオスカーを受賞し、今をときめくスターとなったラミ・マレックを目当てに、多くの映画ファン(特に腐女子)はこの作品を観に行ったことでしょうか。

 フレディ役に続いて腐女子狙い撃ちに出たラミちゃん。ちびっこで童顔のメガネ男子なラミ、周囲の野郎どもからア○ルを狙われ(そこに大金を隠してるからだけど)常にオドオドキョドキョド、子犬のように不安そうに怯えながら、男気あふれるチャーリーのそばにピッタリ寄り添ってるのが可愛すぎ。チャーリーの肩に顔を埋めて寝たり(さすがにウザがったチャーリーが、スヤスヤ眠ってるラミを押しのけるのが笑えた)、今にもキスしそうなほどの至近距離と甘いウィスパーボイスでの内緒話などのシーンでのラミの仕草や表情が、いちいち乙女すぎ。ドガ、もうちょっとズルくてひねくれたキャラにしてもよかったのでは。俺が守ってやらねば!な、ほとんど可憐なヒロインになってたし。チャーリーほどではないけど、ラミもよく脱いでます。小柄でほっそりしてるけど、ボヘミアンの時よりも引き締まったカラダになってます。彼も屋外シャワー乱闘シーンで、キュートなケツを披露してます。

 とまあ、本来なら男たちの厚い友情のドラマ、地獄からの緊迫した決死の脱出劇、極限状態で身も心もボロボロになる迫真の演技、を堪能するはずの映画はずなのに、おっさんずラブを観てるのと同じぐらいのライトな楽しさしか感じませんでしたゲイ役で人気を博したことがあるイケメン(チャーリーもTVドラマ「クイア・アズ・フォーク」で)の起用によって、幸か不幸か腐女子ウハウハなプリズンブレイク映画と化してました。

 登場人物の誰ひとりとしてフランス人に見えなかったのは、まあいいとして。あの流刑地、あの脱獄、実話というのが驚きです。今でも北朝鮮の強制収容所とか、似たような地獄が現実にあるのが怖い。私なら半日で死ぬわ。脱出し回顧録を出版したパピヨンは、勇敢な不屈のヒーローになってましたが、何となく吉本興業の横暴を被害者ヅラで暴露した宮迫とカブってしまった。パピヨン、犯罪者ですから。金庫破りなんかせずにまっとうに生きてたら、あんな目に遭わなかったはずですし。

 ↑チャーリーの新作は、マシュー・マコノヒーやコリン・ファレル、ヒュー・グラントと豪華共演のガイ・リッチー監督作“The Gentlemen”です。ラミは007最新作で敵役!どっちの作品も楽しみ(^^♪
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不徳のよろめき

2019-07-17 | 日本映画
 「淵に立つ」
  町工場を営む利雄は、妻の章江、娘の蛍と共に静かな毎日を送っていた。そんな中、出所したばかりの旧友八坂が突然現れる。章江と蛍はしだいに八坂を慕い信頼するようになるが、利雄の秘密を握る八坂はやがて恐るべき事態を引き起こすことに…
 新作「よこがお」の公開が待ち遠しい深田晃司監督の前作。カンヌ映画祭で賞を獲るなど、国内外で高く評価された作品です。恥ずかしながら私、深田監督のことは「よこがお」で初めて知ったのですが、この作品を観て俄然ファンになってしまいました。作風と役者のチョイスが、私好みかも。私が子どもの頃の2時間ドラマっぽいというか。今はすっかりジジババ向けになってますが、同じサスペンスでも刑事ものや捜査ものではなく、犯罪をめぐってのすぐれた人間ドラマが多かった2時間ドラマ。この映画は、そんな質の高かった時代の2時間ドラマを思い出させました。

 オリジナル脚本で、庶民の日常生活の中にある暗部を描く作風、といえば是枝監督が今は邦画の第一人者ですが、私は深田監督のほうが好きかも。是枝監督の映画は、内容や演出はともかくキャストが必要以上に派手で、彼らのこういう映画に出れば演技派!だと思ってそうなところが鼻について観る気が萎えちゃうんです。その点、深田監督の作品は地味だけど出演者のネームバリューに頼らず、監督の脚本と演出ありきで、しかも役者たちの個性と演技も活かしている印象がして好感。

 映画は序盤は淡々と物語が進むのですが、じょじょに、そしてかなり二転三転するので退屈しません。始まったころはむしろ、不幸な男が優しい人たちに支えられて再生する、みたいな深イイ話なのかなと思わせるのですが、いつしか危険な男と熟女人妻との道ならぬ恋情に発展し、予想のレールから脱線。そしてショッキングな事件が発生し、後半は現実なのかそうでないのか、不可解で不条理な展開とシーンに何?いったいどういうこと?と観る者は狐につままれたような気分に。説明的な台詞や場面はなく、八坂が蛍に何をしたのかも、八坂の行方も、一家が迎えた結末も、観客の解釈に委ねられています。つながりたいけどつながらない人間関係。平穏に歩いてるつもりの道は、いつ落ちるか分からない崖っぷちかもしれない。私たちだって密かに抱えている心の闇に、何かのきっかけで飲み込まれてしまうかもしれない。実際にはありえないオカルトよりも、心も人生も壊すかもしれない不安ややり場のない怒り、絶望のほうが怖い。

 キャストは地味だけど、みんな独特で強烈!疫病神みたいな八坂役の浅野忠信は、すごい気持ち悪いです。前半で姿を消すのですが、もう出てきませんようにと本気で祈ったほど。利雄役の古館寛治は、この映画で初めて知ったのですが、俳優が本職ではないのでしょうか?すごい棒読み。でも味わいある演技と存在感でした。後半、八坂と入れ替わるように登場する若者役、太賀(現・仲野太賀)もなかなかの好演。いい子なんだけど、時おりザワっとさせる表情や言動。これ見よがしでない演技が秀逸でした。太賀くん、若いけどいい役者!30すぎたらいい男にもなりそう。

 そして何といっても章江役の筒井真理子!この映画、彼女こそが最大の見どころ、魅力と言っても過言ではないかも。美人で優しい妻、母なんだけど、平凡な生活に狎れた倦怠感、悪いものが入り込む隙があるユルさが、生々しくも自然かつエロかった。髪型とか服装とか、所帯じみていながらどこかしどけない風情が色っぽかった。人造人間みたいな美貌の女優よりも、生活感を色香に変える筒井さんみたいな女優のほうが好き。あと、同じ優しそうな美人女優でも、吉永小百合みたいな隙のない優等生よりも、筒井さんみたいな隙のある女のほうが、人間的で魅惑的です。ちなみに筒井さんご本人は、小百合さまと同じ早稲田卒の才媛です。

 前半は生活感あふれる色っぽい人妻、後半はすっかり女であることを捨てたおばさん、と見た目も演技もガラっと変化。邦画では久々に、これぞ女優!と感嘆しました。自称女優の無難演技、CM演技にウンザリしてる人にぜひ観てほしい映画です。「よこがお」がますます楽しみになりました!これからも深田監督のミューズとして、他の女優の追随を許さない存在になってほしい。深田監督には、是枝監督みたいに大衆に媚びたミーハーキャスティングはせず、映画に適した俳優を起用し続けてほしいです。



 
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逝かせる男

2019-07-15 | 北米映画 15~21
 「ブレイン・ゲーム」
 同一人物の犯行と思われる連続殺人事件の捜査を担当するジョーとキャサリンは、ジョーの旧友でサイコメトラーの元医師ジョンに捜査協力を求める。犯人が自分と同じ能力を持つことにジョンは気づくが…
 大好きなコリン・ファレルがサイコキラー役、と聞いて楽しみにしていた作品。ようやく観ることができました。でもコリン、映画が始まってもなかなか出てきません。中盤になって、やっと本格的に姿を現します。最近のコリンは、ヨルゴス・ランティモス監督の「ロブスター」や「聖なる鹿殺し」で、メタボおじさん化のイメージが強いけど、彼の原型はスラっとスマート。痩せてたらカッコいいんです。いや、デブおやじなコリンも全然イケてますわ。嵐とおっさんコリンだったら、まったく迷うことなく後者に抱かれたいです

 連続殺人鬼役ですが、悪役ではなく悲しいカルマを背負ってしまった男の役。コリンはワルっぽいけど悪っぽくはない。骨の髄まで悪な役はできない俳優。加害者よりも被害者が似合う。今回のコリンも、可哀想な男にしか見えなかった。それはあの美しく悲しい瞳のせいでしょうか。雨に濡れた捨て犬みたいな表情と瞳に、今回もキュンキュンしちゃいました

 苦しんで死ぬことになる人々を、その前に安楽死させるサイコメトラーサイコキラーなコリンですが、殺すシーンがほとんどないし、物静かでナイーヴな雰囲気と喋り方が何だか母性本能をくすぐる可愛らしさで、その繊細さと男くさい風貌のギャップがコリンの魅力です。私も被害者たちと同じ境遇になったら、コリンに優しくイかされたい、じゃない、逝かされたいです首の後ろ、延髄を一刺しして即死させる殺し方(必殺仕事人の三田村邦彦みたいに)も、怖いけど慈悲深くもあって、ヘンな言い方ですが善い殺人鬼?に私には思えました。殺人そのものよりも、自分は気の毒な人々を救っているという思い込み、歪んだ独善のほうが怖かったです。

 今回のコリンのように、いい男、いい役者だと、ステレオタイプな役でも魅力的に見せることができるのですね。実際、コリンの役もですが、映画そのものもサコメトラーとか犯罪プロファイリングとか、アメドラでよくあるネタを安易にブッ込んでる、どっかで見たことある感ハンパないデジャヴ映画でした。目新しさが全然なくて残念。いろんなものが見える予知能力者って大変だな~と同情、もっと美味しく予知能力を活かせばいいのにと思った。

 主役のジョン役は、英国の重鎮俳優アンソニー・ホプキンス。ホプキン爺さん、もう何やってもレクター博士にしか見えん!無敵感もハンパなくて、ピンチに陥っても全くハラハラしないです。コリンのような若造(ホプキン爺からすると)に負けるわけがなく、はじめっから勝敗の行方は決まってるのがつまんなかったです。ジョー役はジェフリー・ディーン・モーガン。執念深い殺人鬼役だった「ノー・エスケープ」とは別人みたいな素敵熟年!いい男!ちょっとコリンに似てる?十数年後のコリン、あんな感じになりそう。キャサリン役のアビー・コーニッシュは、シャーリーズ・セロン+ニコール・キッドマンを骨太に頑強にした感じの美人。

↑ この頃のコリン、ほんと好き~コリンの新作“The Gentlemen ”は、マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、そしてヒュー・グラントが豪華共演するガイ・リッチー監督作品。楽しみ!
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夫の愛人♂と…

2019-07-10 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 「彼が愛したケーキ職人」
 ベルリンでカフェを経営するパティシエの青年トーマスは、妻子あるイスラエル人のオーレンと恋に落ちる。しかし、オーレンは帰国中に事故死。エルサレムに来たトーマスは、オーレンの妻アナトに近づくが… 
 最近は世界各国で意欲的な、社会派ドラマとしても人間ドラマとしてもラブストーリーとしても秀れたLGBT映画が製作されていますが、ライトなBL好きの腐女子にはちょっとしんどい作品も少なくない。腐が好きなのは、イケメン同士の萌える恋愛。ゲイの生きづらさ、彼らの暗くて重い現実を知りたいわけじゃないんです。この映画を観て、あらためてLGBT映画とBL映画って似て非なるもの、ということを思い知りました。腐にとってBLは甘美なファンタジー。そこに女は存在しないんです。存在してもいいけど、男たちの恋愛に絡むなど言語道断。女性も重要な存在になることには、どうしても抵抗感を覚えてしまいます。現実逃避できるファンタジーじゃなくなってしまう…

 それにしても、この映画。男女の関係が私からすると不可解かつ気持ち悪くて、ファンタジーどころかホラーでした。アナトの自分から離れようとしていた夫の突然死に狼狽する女心、そんな自分を静かに支えてくれる寡黙でミステリアスな青年に心惹かれる女心は、よくある話ながらも嫌いじゃない題材なのですが、やっぱそっちよりも男同士の愛の機微や葛藤に重きを置いてほしかったです。喪失感や後悔に苛まれているトーマスとアナトが、しだいに距離を縮めて親愛感情を抱くようになる、という展開も優しくホロ苦くていい感じだったのに、ああ、ダメよダメダメ!(古っ)何でセックスまで発展するかなあ?

 夫を失くしたばかりの女盛り未亡人アナトが、若い男にハアハアになるのは解かるけど、ゲイのトーマスが熟女とあんな簡単に寝るとか、ええ?!そんなんあり?!トーマスはバイセクシャルだったってこと?それまでのオーレンへの愛や追憶の切なさが、一瞬で崩壊しましたわ。あそこはやっぱ、ハアハア迫ってきたアナトを、やんわり拒絶して気まずくなりつつ、精神的な絆で結ばれた姉弟みたいな関係に落ち着く、が理想的でしたわ。トーマス、いったい何しにエルサレムまで来たんだよ?アナトには真実を告げようとする気振りはなかったし、あのままノンケとして平和に幸せに生きようとしたのなら、とんだ卑怯者です。そんなことができる心と体って不潔。甘美に哀切に描いたつもりだろうけど、かなり爛れた異常な男女関係でした。

 トーマス役のティム・カルコフは、大柄で色白で真面目そう、といういうドイツ男のイメージ通りな風貌。イケメンなんだけど、一歩間違えればデブなガチムチ体型で、ケーキ職人というよりラグビー選手みたいだった。やたら裸になるシーンあり。ムッチムチマッチョです。M字髪が気になった。
 トーマスが作るケーキやクッキーが美味しそうでした。黒い森の羊ケーキ、食べてみたくなりました。イスラエルの首都エルサレムが舞台の映画というのが珍しく、ユダヤ教の安息日などのしきたりや料理、飲食店の経営管理や外国人との関わりにおける禁止事項などが興味深かったです。イスラエルも昔から行ってみたい国のひとつ。トーマスに対するオーレンの兄の態度とか、イスラエル人にとってドイツ人は韓国における日本人、みたい感じなのでしょうか。
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ダミアンだし!

2019-07-08 | 北米映画 60s~70s
 「オーメン」
 外交官のロバートは、死産した妻キャシーに無事に生まれたと偽り、病院で神父から誰の子かも知れぬ赤ん坊を引き取りダミアンと名付け、我が子として大切に育てる。しかしダミアンの成長とともに、ロバート夫妻の周囲では凶事が次々と起こり…
 子どもの頃にテレビで観てトラウマになったオカルト映画。おっさんになった今あらためて観ると、さすがにもう怖くなかったです。でも、次々と突発的に起こるショキングな惨劇シーンは、やはりなかなかのインパクト。怖いというよりビックリさせられるんですよ。後ろから微かに変な音がしたような気がして振り返ろうとすると、わっ!と背中叩かれてギャッ!みたいな感じ。子どもの時は怖かったけど、久々に観たら珍妙に見えて笑ってしまったお笑い同様、恐怖にも不感症な私です。
 オカルト映画ファンの間では有名なシーンの数々。まずはベビーシッターの飛び降り首吊り!

 こんなこと目の前で起きたらイヤですね~。悪魔の力ではなく、頭がヘンになっての実行は実際にもありえそうなので、そういう意味でも怖いシーン。次は、教会での落ちてきた避雷針で神父串刺し!このシーンのせいで、今でも教会の前を通るのが今でも怖いです。アイルランドのダブリンで、この映画と似たような光景と遭遇してしまい、ゾっとしたことを思い出します。

 次は、滑り落ちてきたガラス板でカメラマンの首チョン切れ!これも子どもの時はヒエエエ~!なシーンだったわ~。よく見ると明らかに首が作り物(当たり前ですが)なので、エグいホラーを観慣れた人には稚拙でプっと笑えるかも。このシーンも結構トラウマで、今でも軽トラが停まってたらドキっとして荷をチェックしてしまいます

 あと、獰猛な山犬に襲われるシーンとか、暴いた墓の中から出てきたものとかもショッキング。でも、血まみれ血しぶきなシーンはないので、画面が汚くないです。キリスト教ならではの暗さ、冷ややかさも、おどろおどろしく重苦しくはなく、ヨーロッパが舞台なのに何となくアメリカンな雰囲気がするのは、「リーサル・ウェポン」などハリウッドの娯楽作品でお馴染みのリチャード・ドナー監督が演出を手掛けたからでしょうか。

 悪魔の子ダミアンが、これまた憎々しい気持ち悪いガキンチョで、終盤に今なら幼子に何てことを!とポリコレ的に問題視されそうな扱いをされても、ぜんぜん可哀想じゃないんですよ。もっと見た目も言動も天使な子なら、怖さもひとしおだったことでしょうに。でもスゴい表情や目つきとかしたり、けなげさ可愛さで媚売りすぎな日本の子役には絶対にできない名演でした。ちなみに。私の甥っ子の愛称は言うまでもなく、この映画のダミアンに由来しています。彼が小さい頃、髪を洗ってやる時とかに666があるー!おまえは悪魔の子!とかオーメンごっこをしてました
 ロバート役の名優グレゴリー・ペックが、ロマンスグレーのカッコいい素敵おじさま。屈強そうな体躯と優しさ、清廉さは、英国紳士とは違う魅力。悪人役とかセコい役とか絶対似合いそうにない。ステイタスの高いアメリカ人役が似合う俳優ですよね。
 松本洋子先生や曽祢まさこ先生のオカルト漫画、また読みたくなってきました(^^♪何年か前に「悪魔の花嫁」全巻を捨ててしまったことをNOW REGRET!
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じゅんいち100%

2019-07-05 | 日本映画
 ぎっくり腰!!
 昼から出勤の今日、駐車場で車のトランクに入れっぱなしだった鉢植えを出そうと持ち上げた瞬間、ビキ腰に激痛が走り、悲鳴もあがらないほどの息を詰まらせたまま、地面にへたり込んでしまいました。何度かギックリは経験してるのですが、今回は最大級。ほんと息もできなくて金魚みたいに口パクパクしながら激痛で身動きできなくなり、携帯で職場に連絡するのも命がけでした。昼下がりの駐車場は、人どころか猫、いや、虫一匹いない静まり返った無人地帯で、助けなど待っても来ない。母も留守。呼んですぐ来てくれるような友人もいない。ああ、こうやって私は死んでいくんじゃわ~と、今日ほど孤老の身を痛感したことはありません。1時間ほど倒れたままで誰からも発見されず、野垂れ死にを覚悟。おさまらない激痛をこらえて這うようにすぐ近くの自宅へ、苦痛の汗をダラダラかきながらたどり着きました。今もちょっとでも動いたら激痛が走り、寝るのも怖くてずっと椅子に座ったままです。整形外科に行くべきでしょうか?以前何度か診てもらったけど、レントゲン撮っても何の異常もないと言われ、薬を出されるだけだったし… 
 皆さま腰を痛めぬよう、くれぐれもお気を付けください!

 「ザ・ファブル」
 スゴ腕の殺し屋ファブルは、ボスから1年間誰も殺さず普通の市民として生活するよう命令される。大坂で市民生活になじもうとするファブルだったが、思わぬ事態に巻きこまれて…
 某事務所のタレント主演&漫画原作…私にはかなりチャレンジな映画だったのですが、ケチョンケチョンに酷評してやる!と観終わった時に意気込むほどヒドい映画ではなかったので、安心したような拍子抜けしたようなそこそこだけど面白かったです。荒唐無稽な内容や展開、ハチャメチャなアクションや泥臭いギャグなど、何となくジャッキー・チェンが大暴れしてた頃の往年の香港映画を思い出させてノスタルジイ。ラストのハイライトである救出劇、どっから集めてきたんだ!な敵のドドドドー!!来襲お祭り騒ぎとか、何かの映画で見たことがあるようなシーン。こんなことありえん!なツッコミは野暮、地球とは違う惑星の話として観なければ、真面目な人はついていけない映画です。

 そんなに目を驚かすことはないアクションシーンはまだいいとして、残念だったのはギャクが全然笑えなかったこと。演出も演技も、一生懸命に笑わせようとしているのはヒシヒシと伝わってきたのですが、その必死さがイタくてサムくて居心地が悪くなったほど。ここは笑うところだな、笑わないと失礼だよな、でも…一瞬も笑えない自分を責めずにはいられませんでした三谷コーキ先生やクドカン先生の作品が苦手な理由と通じる、私のお笑い不感症はかなり重症です。

 ファブルのキャラは、すごくチャーミングでした。超絶スゴ腕の殺し屋の時はひたすらカッコよく頼もしく、フツーの生活になじもうとしてる時はトボけてて可愛い。それにしてもファブル、今までいったいどんな生活してたんだよ。ほとんど地球に来たばかりの宇宙人。すごい素直で従順なのも宇宙人級。誰にでも優しいところは、殺し屋の腕前より超人的。男は黙って…な善行に好感。バイト先の盗撮男にも、事を荒立てず犯行を阻止したり注意したりする優しさが素敵でした。ファブルが描くド下手で可愛いイラストが、マエケン画伯の作品みたいだった。ファブルの珍妙さはもっと不気味はずなんだけど、演じてるのが某事務所所属の岡田准一なので、やはりファン忖度のアイドル色の強いカッコカワイさになってます。

 岡田くん、やはり某事務所のタレントの中では顔と演技はピカイチですね。アップになった顔は端正で精悍で美しいです。さすがに老けたけど、いい感じに可愛いおじさん化してるのでは。元スマップや嵐に比べると、そんなに無残な老化劣化はしてません。すごいチビなのもう御愛嬌。チビだけどイカつい体。Tシャツが張り裂けそうなほどの胸筋と上腕筋。ガッチビ体型もファブルを可愛くしてました。首が太っ!ていうか、首がほとんどない!ある意味、異様な体型かも。この映画最大の見どころは、岡田くんの全裸かもしれません。

 自室では常に全裸という設定のファブル、岡田くんが自慢の肉体美を披露。すごいカラダの持ち主とは昔から評判なわりには、彼の裸って見たことなかったので興味津々でしたが、期待してたほど脱いでなかったのでガッカリ。ケツぐらい出せよ。バキバキのシックスパック筋肉ではなく、プロレスラー系のガチムチマッチョは私好みでしたが。ガッチビイケメン俳優って、日本では希少です。ヘンなシチュエーションでの裸や渾身の変顔、俊敏で力強いアクションや格闘技など、キムタクには絶対ムリなのでやはり俳優としては岡田准一>キムタクと認定。壁をのぼるシーン、あれ本当に彼がノンスタントでやったの?!忍者役を今度はやってほしいかも。
 キャストは豪華なの?私の偏った目には、好演と酷演にはっきり分かれてました。敵のヤクザ役の向井理はカッコよかった

 こんなヤーさん、実際には絶対いない。でもBL漫画に出てくる美男ヤクザみたいだった背が高くて小顔で、ほんとスタイルの良さ無双。ドスのきいた声や台詞もなかなか堂に入ってました。私もムカイリーに『どアホが、このまま死ねや!』と言われながら昇天したいものですお笑いキャラじゃなかったので、イタい演技で大根ぶりを露見せずにすみました。ムカイリーは結局、見た目が超タイプなので何をやってもド下手でも、私にはカッコよくしか見えないんです

 あとの出演者は、かなり酷いです。若い連中は、典型的な学芸会。ファブルの助手?役の木村文乃、キャーキャーうるさいだけでウザかったわ。助手なのにほとんど役に立ってなかったような。いなくてもいいようなキャラになってしまってたのは、文乃ちゃんの実力不足によるところが大きい。文乃ちゃん以上にトホホだったのは福士蒼汰。ファブルと対戦しようとする狂気の殺し屋役なのですが、重要な役なはずなのに存在感薄すぎ。文乃同様、いなくてもOKと思えた。ファブルの描くイラストのほうが、よっぽどインパクトありましたよ。落書きイラストに負けてる演技って。もうイケメンでもなくなってるし、彼の今後が心配。騒動の元となるイカレチンピラ役の柳楽優弥は、顔が気持ち悪い。俺すげー演技してるでしょ?的な演技も鼻につきました。バイト先の社長役の佐藤二朗も、私が苦手な俳優の代表格。

 ↑このツーショットも、昔なら豪華だったんだけど…
 思ってたよりは楽しめたと思うのですが、続編ができても多分映画館には観に行かないかも…やっぱ軽すぎる漫画映画やイケメンの学芸会よりも、大人向けの内容と演技で魅せる映画のほうがいいわ…と思い知ったおっさんな私です

 
コメント (8)
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