「ブラック・クランズマン」
1979年のアメリカ。コロラドスプリングの警察署で黒人初の警察官となったロンは、白人至上主義集団クー・クラックス・クラン(KKK)への潜入捜査に抜擢される。ロンと相棒のフリップは二人一役で、KKKのメンバーとの接触を試みるが…
昨年のカンヌ映画祭でグランプリ、今年のオスカーで脚色賞を受賞した名匠スパイク・リー監督の新作を、やっとこさ観ることができました~。評判通り、すごく面白かったです!とっても強烈でゴキゲンな快作でした。映画ってやっぱ、楽しい!面白い!が最重要ですよね。あと、驚きと刺激が加われば無敵。もうね、最近は誰が観てもOKなユルいヌルい無難映画ばかりなので、この作品はまさにキノコ狩りでマツタケ発見したかのような僥倖です。数々の問題作を世に放ち、物議を醸してきたスパイク・リー監督。一貫してアメリカに巣食う黒人差別を糾弾する映画を撮り続けてる彼の作品中、この新作はかなり異色と言えるのではないでしょうか。今回もコッテコテでガチガチの黒人差別糾弾映画なのですが、かなり笑えるんですよ。コメディ仕立てになってたのが、まずもってスゴい特色です。
もう見るに耐えない、聞くに耐えない非道すぎる黒人差別をコレデモカ!と突きつけられるのですが、心が痛んだり暗くなったりする代わりにプっと笑えるシーンや台詞が満載。深刻で重い内容なのに、軽やかなシニカルさとポップなノリのおかげで、凡百な差別告発映画とは違う愉快痛快な問題提議映画になってました。声高に過激に激怒する告発調から、アメリカの暗部・恥部を嗤う余裕へと成熟したスパイク監督です。とにかくこんな映画、日本では絶対に作れません。
KKKの連中のイカレっぷりを、徹底して滑稽に描いているのがコメディ色を濃ゆくしています。スパイクさん、KKKをディスりまくり。出てくるKKKメンバー、そろいもそろってアホバカ。狂ってるとしか思えない思考回路や言動なんだけど、暗い狂気なんてカッコよさは微塵もありません。悪ではなく愚者として描かれていた差別主義者たち。それが返って監督の激烈な嫌悪と蔑みを浮き彫りにしていました。フリップと親しくなるKKKのメンバーが、魅力も共感も感じさせないけど個性的で笑えるキャラばかり。特に疑い深いフェリックスと、見るからにノータリンなアイヴァンホー、フェリックスのデブ嫁が笑えた。彼らの口汚すぎるトンデモ差別用語も非道すぎて、一周回って笑えました。特に冒頭の政治家?のおじさんの演説、もう笑うしかない頭のおかしさ。このおじさん、完全にあの人とカブります。
笑えると同時に、もちろん戦慄も。こんなイカレた連中に支持されているレイシスト大統領の存在に。白人以外は汚物同然だと信じてるトランプさん、どんだけ我慢して阿部首相と仲良く握手やゴルフしてるんだろ、と同情さえしちゃいます。トランプさんもですが、白人至上主義者って強い憎悪や嫌悪があって差別してるわけじゃなさそう?交通ルールや社会常識を守ってるに近しい軽さが、返って怖いです。黒人側にある溶けない憎悪や怒り、頑なな警戒心と猜疑心もまた深刻で、歩み寄りの困難さだけは笑えませんでした。
主役のロン役は、名優ゼンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントン。
若い頃のパパほど美男ではないけど、おおらかさとふてぶてしさを併せ持った男らしい面構えが素敵。パパよりどっしりした恰幅のよさも、頼もしさ抜群。何かすごく可愛く見えてしまう愛嬌ある表情や仕草など、パパよりもコメディの才を感じる好演でした。アフロヘアとカラフルなファッションもオシャレでした。現在34歳のジョン・デヴィッド、嵐とかと同世代なんですね~。若々しいけど大人っぽいところが、嵐と真逆ですね。
ユダヤ人のフリップ役は、スターウォーズシリーズのカイロ・レン役で日本でも人気のアダム・ドライバー。彼はこの作品で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
アダムさん、ぜんぜん大熱演なんかしてないのに、ほぼ無表情なのに、すごいインパクト。演技に見えない演技の名手ですね。ドキュメンタリーの中の人物みたいなリアルさ自然さだけど、無音な不気味さ、不穏さがジワジワ…ゴゴゴゴ…と出ていて、はっきり異常者よりヤバい雰囲気。風貌も独特。イケメンなんだけどヘンにも見える小顔と、ヌオオオ~っと威圧感ある巨体のアンバランスさも奇妙で個性的。危険な任務は主に彼の担当だったので、見せ場も主演のジョン・デヴィッドより多く、KKKになりきってる姿はマジで洗脳されたのでは?と不安になるほどの迫真の演技でした。
↑このラストシーン、すごい好き!それにしても。カッコいいけどアフロヘアって大変そう!
ロンとフリップのコンビに、ベタな友情や悩みを盛り込まず、サラリとした仕事仲間で終始していたのも、ありがちな刑事ドラマにらなずにすんだ要因。ミュージックビデオみたいな斬新な演出、そして音楽も秀逸で、サントラが欲しくなりました。やっぱり出てきた!なトランプさんや、シャーロッツビル事件など、実際の映像を使ったラストが、ポップで軽快な本編とギャップのある重さ痛ましさで、アメリカの今をあらためて憂慮せずにはいられませんでした。
↑ SWの最新作公開が待たれるアダムさんの新作は、先日カンヌ映画祭でお披露目されたジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画“The Dead Don't Die” です。ジョン・デヴィッドはクリストファー・ノーラン監督の新作に主演!アゲアゲな二人です
1979年のアメリカ。コロラドスプリングの警察署で黒人初の警察官となったロンは、白人至上主義集団クー・クラックス・クラン(KKK)への潜入捜査に抜擢される。ロンと相棒のフリップは二人一役で、KKKのメンバーとの接触を試みるが…
昨年のカンヌ映画祭でグランプリ、今年のオスカーで脚色賞を受賞した名匠スパイク・リー監督の新作を、やっとこさ観ることができました~。評判通り、すごく面白かったです!とっても強烈でゴキゲンな快作でした。映画ってやっぱ、楽しい!面白い!が最重要ですよね。あと、驚きと刺激が加われば無敵。もうね、最近は誰が観てもOKなユルいヌルい無難映画ばかりなので、この作品はまさにキノコ狩りでマツタケ発見したかのような僥倖です。数々の問題作を世に放ち、物議を醸してきたスパイク・リー監督。一貫してアメリカに巣食う黒人差別を糾弾する映画を撮り続けてる彼の作品中、この新作はかなり異色と言えるのではないでしょうか。今回もコッテコテでガチガチの黒人差別糾弾映画なのですが、かなり笑えるんですよ。コメディ仕立てになってたのが、まずもってスゴい特色です。
もう見るに耐えない、聞くに耐えない非道すぎる黒人差別をコレデモカ!と突きつけられるのですが、心が痛んだり暗くなったりする代わりにプっと笑えるシーンや台詞が満載。深刻で重い内容なのに、軽やかなシニカルさとポップなノリのおかげで、凡百な差別告発映画とは違う愉快痛快な問題提議映画になってました。声高に過激に激怒する告発調から、アメリカの暗部・恥部を嗤う余裕へと成熟したスパイク監督です。とにかくこんな映画、日本では絶対に作れません。
KKKの連中のイカレっぷりを、徹底して滑稽に描いているのがコメディ色を濃ゆくしています。スパイクさん、KKKをディスりまくり。出てくるKKKメンバー、そろいもそろってアホバカ。狂ってるとしか思えない思考回路や言動なんだけど、暗い狂気なんてカッコよさは微塵もありません。悪ではなく愚者として描かれていた差別主義者たち。それが返って監督の激烈な嫌悪と蔑みを浮き彫りにしていました。フリップと親しくなるKKKのメンバーが、魅力も共感も感じさせないけど個性的で笑えるキャラばかり。特に疑い深いフェリックスと、見るからにノータリンなアイヴァンホー、フェリックスのデブ嫁が笑えた。彼らの口汚すぎるトンデモ差別用語も非道すぎて、一周回って笑えました。特に冒頭の政治家?のおじさんの演説、もう笑うしかない頭のおかしさ。このおじさん、完全にあの人とカブります。
笑えると同時に、もちろん戦慄も。こんなイカレた連中に支持されているレイシスト大統領の存在に。白人以外は汚物同然だと信じてるトランプさん、どんだけ我慢して阿部首相と仲良く握手やゴルフしてるんだろ、と同情さえしちゃいます。トランプさんもですが、白人至上主義者って強い憎悪や嫌悪があって差別してるわけじゃなさそう?交通ルールや社会常識を守ってるに近しい軽さが、返って怖いです。黒人側にある溶けない憎悪や怒り、頑なな警戒心と猜疑心もまた深刻で、歩み寄りの困難さだけは笑えませんでした。
主役のロン役は、名優ゼンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントン。
若い頃のパパほど美男ではないけど、おおらかさとふてぶてしさを併せ持った男らしい面構えが素敵。パパよりどっしりした恰幅のよさも、頼もしさ抜群。何かすごく可愛く見えてしまう愛嬌ある表情や仕草など、パパよりもコメディの才を感じる好演でした。アフロヘアとカラフルなファッションもオシャレでした。現在34歳のジョン・デヴィッド、嵐とかと同世代なんですね~。若々しいけど大人っぽいところが、嵐と真逆ですね。
ユダヤ人のフリップ役は、スターウォーズシリーズのカイロ・レン役で日本でも人気のアダム・ドライバー。彼はこの作品で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
アダムさん、ぜんぜん大熱演なんかしてないのに、ほぼ無表情なのに、すごいインパクト。演技に見えない演技の名手ですね。ドキュメンタリーの中の人物みたいなリアルさ自然さだけど、無音な不気味さ、不穏さがジワジワ…ゴゴゴゴ…と出ていて、はっきり異常者よりヤバい雰囲気。風貌も独特。イケメンなんだけどヘンにも見える小顔と、ヌオオオ~っと威圧感ある巨体のアンバランスさも奇妙で個性的。危険な任務は主に彼の担当だったので、見せ場も主演のジョン・デヴィッドより多く、KKKになりきってる姿はマジで洗脳されたのでは?と不安になるほどの迫真の演技でした。
↑このラストシーン、すごい好き!それにしても。カッコいいけどアフロヘアって大変そう!
ロンとフリップのコンビに、ベタな友情や悩みを盛り込まず、サラリとした仕事仲間で終始していたのも、ありがちな刑事ドラマにらなずにすんだ要因。ミュージックビデオみたいな斬新な演出、そして音楽も秀逸で、サントラが欲しくなりました。やっぱり出てきた!なトランプさんや、シャーロッツビル事件など、実際の映像を使ったラストが、ポップで軽快な本編とギャップのある重さ痛ましさで、アメリカの今をあらためて憂慮せずにはいられませんでした。
↑ SWの最新作公開が待たれるアダムさんの新作は、先日カンヌ映画祭でお披露目されたジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画“The Dead Don't Die” です。ジョン・デヴィッドはクリストファー・ノーラン監督の新作に主演!アゲアゲな二人です