「愛の記念に」
17歳のシュザンヌは、恋人の他にも複数の男たちと関係を結んでいたが、満たされることのない日々を送っていた。そんな中、父親が突然蒸発してしまい…
日本では知る人ぞ知る存在、フランスでは個性的な名匠として高く評価されていた、故モーリス・ピアラ監督の代表作。セザール賞の作品賞も受賞しています。
家族や恋人、友人との関わりを通して成長するフランス娘の物語といえば、ソフィー・マルソーの「ラ・ブーム」を思い出しますが、コメディタッチで明るいラ・ブームに対して、こちらはリアルでシビアなガール映画。シュザンヌが、ちょっと心の病を抱えてるようなキャラで、その見ていて危なっかしい理解できない言動に、呆れるやら暗澹となるやら。男とヤリまくるシュザンヌですが、単なるセックス好きなヤリマンとか、魂胆があってのビッチとかじゃないんですよねえ。誰とヤっても、心の空洞が埋まらない。何かを求めて無謀な彷徨い方をしてるシュザンヌが、ヤバいけど哀れ。男よりも病院に、と忠告してくなります。悩みは多いけど、いちばんキラキラした年頃なんだから、男あさりに時間を費やしてしまうなんてもったいない、と心底思いました。
男が欲しけりゃコンビニの買い物より簡単に調達できる、いや、男のほうが寄ってくるシュザンヌのモテっぷりが羨ましかったけど、おとこ中毒なんてメンドくさいよなあ、大変だなあと同情も。シュザンヌの風情がまた、男なんかそんなに好きじゃないんだけど、ヤらないと落ち着かない…って感じなんですよ。誰とも本気にならない、なれないので恋愛ができない。愛されたいけど、愛せない。遊び目的なら、とっても都合のいい女ですが、彼女を真剣に愛する男にとっては、非道で残酷。でもそこが一種の魅力というか魔性っぽくなって、男を夢中にさせちゃうんですよね。体は自動ドアだけど、心は開かずの扉。その柔らかさと硬さで男を翻弄し傷つけるシュザンヌみたいな女、実際にいますよね。若いうちから重い女の業を背負ってるなんて、しんどいだろうなあ。シュザンヌ、いったいどんな人生を歩むんだろう。いつか男に殺されるタイプだよなあ。
シュザンヌの虚無の原因である家族関係が、イタすぎて何か笑えます。傷つけ合う修羅場に、まさに愛と憎しみは紙一重なんだなあ、と戦慄。シュザンヌがニンフォマニアっぽくなってしまったのは、明らかにパパに愛されたい愛されないというファザコンが嵩じたせいだし。ママンと兄が、これまたヤバすぎてほとんどギャグなんです。情緒不安定で神経症ちっくなママンのヒステリーぶりときたら。これじゃあ夫は蒸発するよと納得。兄ちゃんは、通報&逮捕ものなDV男だし。男狂いなシュザンヌにプッツンし、殴る蹴る!このホモ野郎!と罵倒して唾引っかけるシュザンヌも、かなりワイルド。言い争いの内容が、そこまで言うか?!な本音ブチまけ。慎み深い日本人からしたら、かなり蛮行に思える。たいていのことは知らんぷりなくせに、自分のテリトリーや心を侵害されたら激しく攻撃するところは、いかにもドライな個人主義者フランス人です。
シュザンヌ役は、これが映画デビューとなったサンドリーヌ・ボネール。
ズブの素人だった彼女が、ピアラ監督の目にとまっていきなりヒロインに抜擢され、フランス映画界に彗星のごとく現れたエピソードは、まさにシンデレラ物語。ズブの素人とは思えぬ豊かな情感やニヒルさ、でも熟練の演技派では出せない新鮮さ、自然さが驚異的です。演技してるって感じがせず、ドキュメンタリーで追ってるみたいなリアルさですが、決して生々しくはなく、10代の女の子にしかない清らかで爽やかな色気で魅了してくれます。ムチムチピチピチした裸体が、これまたエロい。まさにサンドリーヌ・ボネールのために撮られた映画といっても過言ではなく、ピアラ監督の彼女への愛(ちょっと屈折してますが)があふれています。美人とか可愛いとかいったタイプではないけど、天性のナチュラル感がハンパないサンドリーヌ・ボネールは、この映画でセザール賞の新人賞に輝き、その後「冬の旅」でセザール賞主演女優賞を最年少19歳で受賞するなど、トントン拍子にフランス映画界のトップ女優に成長、現在は監督業にも進出するなど活躍を続けています。
モーリス・ピアラ監督の作品は初めて観ましたが、透明感ある知的なテイストがいかにもフランス人監督。ちなみに監督は、パパ役も演じてます。恰幅のいいシブいおじさまで、なかなか素敵でした。シュザンヌと結婚する青年役で、エイズで死んだ故シリル・コラールが。可愛いイケメン!早世が惜しまれます。
17歳のシュザンヌは、恋人の他にも複数の男たちと関係を結んでいたが、満たされることのない日々を送っていた。そんな中、父親が突然蒸発してしまい…
日本では知る人ぞ知る存在、フランスでは個性的な名匠として高く評価されていた、故モーリス・ピアラ監督の代表作。セザール賞の作品賞も受賞しています。
家族や恋人、友人との関わりを通して成長するフランス娘の物語といえば、ソフィー・マルソーの「ラ・ブーム」を思い出しますが、コメディタッチで明るいラ・ブームに対して、こちらはリアルでシビアなガール映画。シュザンヌが、ちょっと心の病を抱えてるようなキャラで、その見ていて危なっかしい理解できない言動に、呆れるやら暗澹となるやら。男とヤリまくるシュザンヌですが、単なるセックス好きなヤリマンとか、魂胆があってのビッチとかじゃないんですよねえ。誰とヤっても、心の空洞が埋まらない。何かを求めて無謀な彷徨い方をしてるシュザンヌが、ヤバいけど哀れ。男よりも病院に、と忠告してくなります。悩みは多いけど、いちばんキラキラした年頃なんだから、男あさりに時間を費やしてしまうなんてもったいない、と心底思いました。
男が欲しけりゃコンビニの買い物より簡単に調達できる、いや、男のほうが寄ってくるシュザンヌのモテっぷりが羨ましかったけど、おとこ中毒なんてメンドくさいよなあ、大変だなあと同情も。シュザンヌの風情がまた、男なんかそんなに好きじゃないんだけど、ヤらないと落ち着かない…って感じなんですよ。誰とも本気にならない、なれないので恋愛ができない。愛されたいけど、愛せない。遊び目的なら、とっても都合のいい女ですが、彼女を真剣に愛する男にとっては、非道で残酷。でもそこが一種の魅力というか魔性っぽくなって、男を夢中にさせちゃうんですよね。体は自動ドアだけど、心は開かずの扉。その柔らかさと硬さで男を翻弄し傷つけるシュザンヌみたいな女、実際にいますよね。若いうちから重い女の業を背負ってるなんて、しんどいだろうなあ。シュザンヌ、いったいどんな人生を歩むんだろう。いつか男に殺されるタイプだよなあ。
シュザンヌの虚無の原因である家族関係が、イタすぎて何か笑えます。傷つけ合う修羅場に、まさに愛と憎しみは紙一重なんだなあ、と戦慄。シュザンヌがニンフォマニアっぽくなってしまったのは、明らかにパパに愛されたい愛されないというファザコンが嵩じたせいだし。ママンと兄が、これまたヤバすぎてほとんどギャグなんです。情緒不安定で神経症ちっくなママンのヒステリーぶりときたら。これじゃあ夫は蒸発するよと納得。兄ちゃんは、通報&逮捕ものなDV男だし。男狂いなシュザンヌにプッツンし、殴る蹴る!このホモ野郎!と罵倒して唾引っかけるシュザンヌも、かなりワイルド。言い争いの内容が、そこまで言うか?!な本音ブチまけ。慎み深い日本人からしたら、かなり蛮行に思える。たいていのことは知らんぷりなくせに、自分のテリトリーや心を侵害されたら激しく攻撃するところは、いかにもドライな個人主義者フランス人です。
シュザンヌ役は、これが映画デビューとなったサンドリーヌ・ボネール。
ズブの素人だった彼女が、ピアラ監督の目にとまっていきなりヒロインに抜擢され、フランス映画界に彗星のごとく現れたエピソードは、まさにシンデレラ物語。ズブの素人とは思えぬ豊かな情感やニヒルさ、でも熟練の演技派では出せない新鮮さ、自然さが驚異的です。演技してるって感じがせず、ドキュメンタリーで追ってるみたいなリアルさですが、決して生々しくはなく、10代の女の子にしかない清らかで爽やかな色気で魅了してくれます。ムチムチピチピチした裸体が、これまたエロい。まさにサンドリーヌ・ボネールのために撮られた映画といっても過言ではなく、ピアラ監督の彼女への愛(ちょっと屈折してますが)があふれています。美人とか可愛いとかいったタイプではないけど、天性のナチュラル感がハンパないサンドリーヌ・ボネールは、この映画でセザール賞の新人賞に輝き、その後「冬の旅」でセザール賞主演女優賞を最年少19歳で受賞するなど、トントン拍子にフランス映画界のトップ女優に成長、現在は監督業にも進出するなど活躍を続けています。
モーリス・ピアラ監督の作品は初めて観ましたが、透明感ある知的なテイストがいかにもフランス人監督。ちなみに監督は、パパ役も演じてます。恰幅のいいシブいおじさまで、なかなか素敵でした。シュザンヌと結婚する青年役で、エイズで死んだ故シリル・コラールが。可愛いイケメン!早世が惜しまれます。