まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

浪漫に殺される

2018-08-29 | フランス、ベルギー映画
 お松のフランス映画祭③
 「ロマン・デュリス 偶然の殺し屋」
 失業したジャックは、恋人にも去られ失意の日々を送っていた。そんな中、闇ポーカーを仕切るゴルトー氏から、浮気をしている彼の妻を殺してほしいと頼まれるが…
 ロマン・デュリスの主演作を観たのは久しぶり。若かりし頃は、花の都パリのアート系猿男って感じだったロマンも、今や43歳。すっかりおじさんになりました。でも、ジェラール・ドパルデュー化が著しい同い年のブノワ・マジメルと違って、ロマンは今でも体型はほとんど変わっておらず、雰囲気もまだ青春の残滓を感じさせる若々しさがあります。今回の役は仕事も恋人も失った中年男、人生に行き詰った底辺生活者なのですが、くたびれ感や憂いはありつつもそんなに切羽詰まっりショボくれたりな様子もなく、楽観的とはまた違った気怠い諦念が、いかにもフランス男らしかったです。やっぱロマン、ハリウッド俳優とは違うな~と思いました。それと、地道に生きたいだけの男なのに、それを許さない危険な才能やヤバい狂気を秘めているという設定も、ロマンに相応しいものでした。天性の美質に恵まれながらも、不幸や暴力とは無縁でいられない男の役、というのが昔からロマンのオハコ。今回は音楽や文学ではなく、殺しの才能、という点がミソになってます。

 コメディ映画なのですが、ハリウッドコメディの分かりやすく派手でパワフルな笑いと違い、静かにブラックで皮肉な展開や台詞がいかにもフランス味でした。ロマンも特にコミカルな演技をしているわけではないのですが、偶然なのか才能なのか、仕方なく引き受けた暗殺が次々と巧くいって、それにも特に狼狽するわけでも興奮するわけでもなく、淡々としてる様子がそこはかとなく笑える、といった感じでした。往年のロマンらしかったのは、イヤミな上司にキレてションベンぶっかけるシーン。ヤバい狂猿ロマンの面目躍如でした。その上司を殺すシーンも、なかなかブラックで笑えました。

 原始人みたいな風貌なのに、ふとした瞬間にハっとなるほど美しい顔に見える、というロマンマジックがこの映画でも何度かありました。ロマン、基本的にはやっぱみんな同じに見えるイケメン俳優など足元に及ばぬ美男です。瞳の美しさは映画界屈指です。だいたい暗い無表情だけど、たまに見せるハニカミ笑顔が可愛い!野人っぽいけど、シャイで優しい物腰も女心をくすぐります。ちょっと守ってあげたくなる繊細さ、何を考えてるのか掴めないミステリアスさも、ロマンの魅力です。年上のおっさんな友人たちに頼りにされてるアニキなロマンもカッコよかったです。
 失業後、友人が店長をしているガソリンスタンドで働き始めるジャックなのですが。ジャックも友人もバイトの男の子も、かなりルーズで適当な仕事ぶりなんですよ。イヤミで細かいことにうるさい上司とか、確かにイラ&ムカつくけど、それぐらい我慢しろよ!レベル。なのに、すぐ不快そうな顔したり反抗的な態度をとるジャックたちを見ていて、韓流ドラマもそうだけど、やっぱ日本人とは勤労意識が違うのかな~と思ったりしました。

 ジャックに殺しを依頼するゴルトー氏役は、名コメディアンであり名優でもあるミシェル・ブラン。ジャックを脅したり持ち上げたりして殺しを引き受けさせる、調子がよくてマイペースすぎるキャラが笑えました。ロマンとの珍コンビぶりもいい感じでした。見た目は全然コワモテじゃなく冴えない小男なので、怖い極道というより胡乱で小粋な金持ちって感じ。ロマンみたいな誰にも飼いならせない猿を、上手に掌の上で操るような役は、ただのベテラン俳優では説得力をもって演じられません。その点、フランス映画界きっての才人として尊敬されているブラン氏は、なかなか抜け目のない猿使い役をオチャメに、エスプリいっぱいに好演していました。ブラン氏の代表作「仕立て屋の恋」や、強烈な怪作「タキシード」、小粋な佳作「他人のそら似」とか、また観ることができればいいのだけど。
 暗殺出張先のベルギーの街や南国の海が、とても美しくて行ってみたくなりました。慎ましく平和な生活を取り戻しながらも、覚醒してしまった殺しの才能もまた…みたいなラストにもニヤリとさせられました。ジャックに殺される人々は、決して悪人じゃないけど何か同情もできない、というシニカルさのおかげか、陰惨さとか後味の悪さも残さずにすみました。

 ↑ 「ゲティ家の身代金」に出演してるらしいロマン。イザベル・ユペール共演の“Madam Hyde”も、年内に日本公開されるといいな~
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踊り子

2018-08-26 | フランス、ベルギー映画
 お松のフランス映画祭②
 「ザ・ダンサー」
 19世紀末。ニューヨークで女優を目指していたマリー・ルイーズは、斬新な舞踊で注目された後、パリに移りロイ・フラーと名を変えて大成功を収める。ダンスに没頭するロイの前に、イサドラという才能ある若いダンサーが現れるが…
 恥かしながら、この映画を観るまでロイ・フラーのことは存じ上げなかった私。有名な舞踏家なのですね。私は盆踊りさえまともに踊れないので、ダンサーってスゴいわ~とバレリーナや三浦大知がとかが踊ってるのを見るたびに驚嘆します。

 ジュディ・オングみたいな衣装と、照明を駆使したロイのダンスは、斬新で面白かったです。それにしても。ロイのダンスに邁進する体育会系ド根性っぷりときたら。心身ともに満身創痍になっても踊り続ける執念は、ほとんどホラーでした。あんな命を削る情熱、怖いけど羨ましいです。才能や情熱であふれてる人って、ロイも含めだいたい人生は不幸だけど、平々凡々と無傷、誰にとっても無害な、ただ生きてるだけの私などからしたら、輝かしいまでに幸せな人々に思えます。死んでもいいと思える何かのためにボロボロになってみたい、良くも悪くも誰かに影響を与えられる人になってみたい、けど、輝くための代償、苦悩や苦痛はあまりにも大きすぎて、私はやっぱ無理!凡人でええわ!とも、ロイを見ていて思いました

 エグザイルとかも、チャラチャラしてるけど影では努力してるんだろうな~と、ちょっと彼らを見る目が変わりそうになりました。でも、彼らと違ってお金や名声とかには興味がなく、ひたすらダンスに希求するロイの姿は、情熱的というより神経症でかなり病的でした。人間関係でも恋愛でも、相手の都合や思いを忖度できない不器用すぎる重度のコミュ障なロイって、ちょっとアスペルガーの症候が見受けられました。悪気はないけど常に自己中心的で、他人への配慮や思いやりに欠けてる、それが天才?世の中の天才と呼ばれてる人って、確かにそんな感じの人が多いですよね。

 ロイ・フラーを熱演したのは、フランスの人気歌手であるソーコ。力強くも精神不安定な演技は、なかなかの女優魂。男顔ですよね~。中身はほとんど男なロイには、美しい女優よりも似つかわしいです。私がこの映画を観たのは、ロイの夫となるフランス貴族ルイ役のギャスパー・ウリエル目当てです(^^♪ギャス男、めっちゃカッコよかった~

 初登場シーンは後ろ姿だったのですが、もう後ろ姿だけでも周囲とは違うイケメンオーラ!ハリウッドのイケメンスターには無理な耽美で退廃的な役を、美しく哀しく演じてました。スカした男が多いフランス人にしては、優しそうで内気そうなところが好き。相変わらず瞳が美しいです。貴族の衣装も優雅に着こなしてました。コミュ障なロイにも我慢強く優しく接す姿が、けなげで素敵でした。娼婦へのロウソクプレイやク◯ニが、エロかったです。エレガントだけど、のしのしした歩き方とかガッチリした体格とか、ナヨナヨしい優男とは違う男らしさも、ギャス男の魅力です。

 ロイを支えるマネージャー役を、ギャス男も出演してた「La princesse de Montpensier」や、ニコラ・デュヴォシェル主演の「Je ne suis pas un salaud」での好演も忘れがたいメラニー・ティアリーが好演。一見そっけないけど、ベタベタしくないクールな優しさがカッコよかったです。天才的な舞踊家として有名になる前のイサドラ・ダンカン役は、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの愛娘であるリリー・ローズ・デップ。初めて彼女が演技してるのを見ましたが、ジョニーの娘がもうこんなに大きくなったのか~と、月日の流れの速さをしみじみ感じました。ジョニーにもヴァネッサにも似てますね。二人のいいとこを、上手に受け継いでる可愛さです。華奢な肢体も、女子受けしそう。女優としては未知数ですが、英語とフランス語が堪能な語学力も活かして、国際女優として成長してほしいものです。

 可愛い顔して、結構な食わせ者であるイサドラに振り回されるロイが可哀想でした。ロイとイサドラのレズ関係は、事実なのでしょうか。BLシーンは3度のメシより好きなのに、レズシーンは苦手な私は性差別主義者?デカタンムード漂うルイの屋敷や庭が、アメリカや韓国の成金豪邸とは違う、まさに貴族の世界でトレビアンでした。

 ↑ イザベル・ユペール共演の「エヴァ」が日本公開中のギャス男。今年のフランス映画祭で上映された新作「世界の果て」の一般公開も待ち遠しいです(^^♪
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カルチェラタン古書堂の事件手帖

2018-08-22 | フランス、ベルギー映画
 お松のフランス映画祭①
 「静かなふたり」
 田舎からパリに越して来たばかりのマヴィは、店員を募集していた古書店で採用される。初老の店主ジョルジュは謎めいた人物で、マヴィは戸惑いながらも彼に惹かれていくが…
 ヒロインのマヴィを演じてるのは、大女優イザベル・ユペールの娘であるロリータ・シャマ。子役で出演した「主婦マリーがしたこと」他、現在にいたるまでママンと何度も共演してるロリータは、さすが血は争えないというか、顔はママンに似てます。小柄で華奢なママンと違って、ロリータは長身でイカついけど、モデルみたいなカッコいいスタイルの良さが魅力的。クールだけどどこかトボけた感じや演技も、ママンを彷彿とさせます。ファッションも、ママン譲りのハイセンス。ガーリーでありながらエレガントで、シンプルで気取りがないけど高級感ある劇中のロリータの衣装がオサレでした。

 どっからどー見ても生粋のパリジェンヌで、庶民的な生活感の薄いロリータなので、田舎娘役にはちょっと違和感が。力みや気負いがなく軽やかだけど、少々のことでは動じないシレっとした図太さは、まさにイザベル・ユペールのDNAを受け継いでいますが、ママンほどの冷酷さと毒はなく、イカレ女役や悪女役は似合いそうにないロリータ。ママンほどの大女優にはならないかもしれませんが、個性的すぎないけど他に似たような女優があまりいない、という個性で脇役などでも重宝される女優になりそう。

 お話はあるようでないような、ないようであるような。パリでの静かな日常の中でマヴィが遭遇する、ちょっと奇妙な出来事や人物が、淡々とした不思議ムードを醸してました。いかにもフランスの小品という感じの映画なので、そういうのが苦手な方にはかなりかったるい、睡魔に襲われる映画かもしれません。ジョルジュとマヴィとの、年の差ロマンスになりそうでならない、友だち以上恋人未満な関係も、フツーの映画ならもどかしく切なく描いたでしょうけど、この映画ではそれはあまり重要ではなく、あくまで主役であるパリの風景や空気の一部として扱われていたようでした。

 商売っ気ゼロな古書店でしたが、私もあんな店の店番になりたいです(笑)。生計のことを心配せずに、マヴィみたいに日がな一日のんびり本の整理や読書をしたり、書きものをしたり散歩に出かけたりしてみたいわ~。マヴィが散策するパリの景色が、昼も夜もそれぞれ趣がありました。大昔に行って実際にこの目にしたパリは、映画ほど美しくはなかったけど(笑)それはガヤガヤした観光地ばかり歩いてたからでしょうか。いつかまた訪れることができたら、この映画の古書店があった学生街カルチェ・ラタンとか、路地や川べりなど逍遥してみたいです。

 空からボトボトと絶命したカモメ?が落ちてくるのが、怖くて笑えました。実際にもあれって、パリでは日常茶飯事なの?マヴィがフラっと入った名画座で出会う青年役のパスカル・セルボが、なかなか可愛いイケメンでした。ジョルジュ役のジャン・ソレルは、二谷英明を小粋にした感じの熟年でした。 

 ↑仲良しオサレ母娘。いくつかある共演作、日本でも公開されるといいですね
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ヨン様の色情遊戯!

2018-08-19 | 韓国映画
 「スキャンダル」
 18世紀の朝鮮。名うての遊び人である貴族のチョ・ウォンは、従姉のチョ婦人から彼女の夫の側室となる若い娘ソオクの純潔を汚してほしいと頼まれる。チョ・ウォンの標的は目下、貞節を守る未亡人ヒヨンだったが… 
 かつて日本を席捲した空前の韓流ブームも、今となっては懐かしい昔話。当時、おばさまたちを夢中にさせたのが、TVドラマ「冬のソナタ」と、その主演男優であるヨン様ことペ・ヨンジュンでした。“微笑みの貴公子”とも讃えられ、まさに新興宗教の教祖さまのごとくマダムたちから崇め奉られ、ファンミだのグッズだので彼女たちから巻きあげたお布施は、韓国の経済を大いに潤し活性化させたそうです。熱狂的な信徒、じゃない、ファン待望の初主演映画にヨン様が選んだのが、このラクロの「危険な関係」朝鮮版です。セックスどころか、ウンコもシッコもしない清らかで上品なイメージで神格化されていたヨン様が、な、何と!女たちをたぶらかすスケコマシ役で、アンなことコんなことしまくる!蓋を開ければ、ヨン様信徒にはショッキングすぎる映画となっていたのでした。公開当時、私も劇場まで観に行ったのですが(もう14年前のことになるのか~。月日の経つのは早いわ~…)、ヨン様頑張ってるな~と感嘆したのをよく覚えてます。

 冬ソナをさして面白いとは思わず、ヨン様も全然タイプじゃなかったので(知り合いのおばさんにそっくりだったし)興味なしだった私(「美しき日々」のイ・ビョンホンにハマってたので(^^♪)。どうせ初主演映画も、冬ソナのイメージを死守するような甘々お涙ちょうだいものになるんだろうなと鼻で嗤っていたのですが、どうしてどうして。冬ソナとはまさに真逆な役と演技。こんなのヨン様じゃない!とファンは裏切られた思いをしたかもしれませんが、私には彼のチャレンジ精神と気概、そして日本の浮かれた韓流ファンに対して内心ペロっと舌を出してるような茶目っ気を、この映画から何となく感じられました。ヨン様が韓流の教祖さまではなく役者、と思えた最初で最後の出演作です。

 ジェラール・フィリップやコリン・ファースなど、これまで多くの有名俳優が演じてきた希代のプレイボーイ役に挑んだヨン様。時代劇なので、トレードマークであるメガネは当然かけてませんので、え?これ誰?ほんまにヨン様?と、観始めは戸惑うかもしれません。メガネしてないヨン様、ちょっと顔がネプチューンのホリケンと嵐の相葉を足して2で割って優しく福々しくした感じに見えます(わしだけ?)優男のイメージが強いヨン様ですが、やはり彼も韓流男優、体つきがガッチリ逞しく、かなりのゴリマッチョです。冬ソナ?何それ?と言わんばかりのハレンチで調子がよくて軽薄才子な男を、軽やかに楽しそうに演じてます。そして、女のおっぱいを揉んだり、お口で奉仕させたり、濡れ場ではお尻も丸だしなムチムチマッチョ全裸になって、ヒロインと濡れ合っております。当時は、あのヨン様が!と驚いたものですが、今あらためて観ると、韓流人気男優たちの全裸ズコバコに慣れてしまった目には、大したシーンではありません。

 終盤以外は、ヨン様の演技もお話もコミカルタッチな艶笑喜劇調。18世紀の朝鮮貴族の優雅な生活も細やかに描かれていて、料理や衣装、調度品なども目に楽しいです。韓流時代劇ファンは必見です。同じ原作の「危険な関係」や「恋の掟」でも思ったけど、退廃的な有閑生活って憧れるけど、恋愛ゲームにうつつを抜かすより、もっと有意義に時間とお金を使いたいわ~。それと、他人を陥れ傷つけて喜ぶなんて、悪趣味すぎる。そんなことしたら、ろくことにならない。でも、善い人や善行よりも、悪い奴と悪事のほうが面白い、だからこそ、ラクロの原作はいつの時代も人気なのでしょう。

 ヒヨン役は、カンヌ女優賞を受賞するなど今や韓国随一の女優であるチョン・ドヨン。貞節という堅い蕾が、はかなくも艶やかに開いて散っていく過程を、彼女らしく繊細に演じてました。彼女みたいな、大物なのに必要とあらば潔く脱ぐ女優、ほんと貴重ですよね~。日本の女優はほんとつまんない。チョ婦人役は、妖艶な熟女イ・ミスク。毒と険のある美貌が、これまた日本にはいない魅力の女優です。
 日本でもぜひ「危険な関係」を映画化してほしいわ~。理想妄想キャストは、ヨン様⇒新田真剣佑、チョン・ドヨン⇒壇蜜、イ・ミスク⇒鈴木京香、がいいかも(^^♪華やかな鹿鳴館の大正時代を舞台にして。マッケンユー、大正時代の貴族の洋装も和装も似合いそう!
コメント (9)
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人は誰も悲しい罪びと

2018-08-15 | 北米映画 60s~70s
 「ニュールンベルグ裁判」
 1946年のドイツ。アメリカ人判事ヘイウッドが裁判長として臨むことになったナチス戦犯裁判では、ユダヤ人迫害に加担した高名な法律家ヤニングスら被告人をめぐって、戦勝国側の検事ローソンとドイツ人弁護士ロルフが激しく争うが…
 ナチスを描いた映画は数え切れないほどありますが、この作品は内容といい演技といい、傑出した名作と言えるのではないでしょうか。3時間近い長さなのですが、集中力がない私でも最後まで全くダレることなく、一気に観ることができました。裁判の展開と人間模様、そして演技にグイグイ引きこまれ、こみあげる怒りと悲しみに動揺、翻弄されっぱなしでした。あらためてナチスの残虐さ、非道さに心打ちのめされました。こんなことが本当に起きたのか…信じられない、信じたくない…法廷で明かされる悪夢は、まさに人類最大最悪の恥ずべき汚点、暗黒歴史です。

 ナチスといえば、アウシュヴィッツなどでの強制収容所でのユダヤ人虐殺が有名ですが、この映画では精神や知的に障害があった人たちから生殖能力を奪う手術を強制できる断種法とか、ユダヤ人との結婚や性的関係を禁じたニュルンベルグ法とか、ナチス時代に施行された悪魔の法律がクローズアップされてます。こんなの人間のすることじゃない!人間にすることじゃない!まさに狂ってるとしか思えない。でも、ナチスのエリートたちは、狂ってなんかいなかったんですよね。彼らのほとんどが異常者なんかではなく、冷静で文化的で知的な人々だった。その怖さと悲劇を、この映画は観る者に思い知らせてくれます。

 裁く側の苦悩と葛藤も痛ましかったけど、ヒトラーの台頭やユダヤ人虐殺に賛同したり、見て見ぬふりをしてナチス時代を生きたドイツ人の、不幸な罪深さに暗澹とさせられます。許せん!と断罪するのは簡単ですが、もし我々が当時のドイツ人ったら、果たしてナチスに反対したり反抗したりできたでしょうか。長いものに巻かれず生きられる!と、自信をもって私は言えません。愛する母国のために正しいと信じてやった、というヤニングの告白には、先日死刑執行となったオウム信者の後悔や懺悔の言葉とカブりました。そして、堂々と人種差別をしている某大国の大統領とも…彼こそ、今この映画を観るべき人です。ナチスやドイツ人を断罪するだけでなく、ナチスの台頭を許し利用もしたアメリカやイギリスも、決して正義ではないという痛烈なメッセージも、今を生きる私たちにの胸を衝きます。
 
 この映画、とにかく超一流の豪華な俳優陣のアンサンブル演技が秀逸!彼らの火花散る演技合戦に圧倒されます。ヘイウッド判事役は、ハリウッド史上最高の名優と讃えられたスペンサー・トレイシー。貫禄と威厳はあるけど、決して威張りくさったエラソーな爺いではなく、温かさと優しさにあふれていて、素朴だけど人間的に懐が深く大きい人物といった、ある意味アベンジャーズとかアメコミヒーロー以上に今はもう現実的じゃない理想の男性。演技も全然オーバーではないけど、静かに力強く悲哀があって、奇をてらった演技や役をすれば演技派、と勘違いしてる自称名優とはまさに質が、格が違います。被告人ヤニング役のバート・ランカスターは、終盤までほとんど台詞がないのですが、映ってるだけでスゴい存在感。ドイツ人軍人の未亡人役を、レジェンドな大女優マレーネ・ディートリッヒが好演。60過ぎてるけど、ミステリアスでクールな魅力は褪せてません。
 この映画で最も燦然としてたのは、ロルフ弁護士役のマクシミリアン・シェルです。当時30歳、オーストリア出身の気鋭の若手だった彼は、名だたるハリウッドスターたちを圧倒する大熱演を披露し、アカデミー主演男優賞を受賞する快挙を遂げたのでした。

 まさに圧巻の演技!激烈で鋭い怒涛の舌鋒!生半可なアメリカ人俳優やイギリス人俳優にはこなせないような、膨大で難しい政治用語、法廷用語にあふれた英語の台詞を、ドイツ語が母国語であるオーストリア人俳優が、よどみなく感情豊かに操ってるのが驚異的。オスカー受賞も納得の名演です。演技だけでなく、理知的で端正な、それでいてドイツ男らしい骨太で精悍なイケメンぶりにも感嘆。とにかく彼、ほんと聡明で怜悧そう!数年後の出演作「トプカピ」の彼も、クールでスマートでカッコよかったわ~。晩年の彼もシブくて素敵でした。ファンレターの返事もくれた優しい彼の訃報は、本当に悲しかったです。

 ローソン検事役は、悪役スターとして人気だったリチャード・ウィードマーク。冷徹に正義をまっとうしようとする、いぶし銀の演技に痺れた!彼とマクシミリアン・シェルとの白熱した法廷バトルは、異様な緊迫感と迫力で圧倒されます。この映画を観た後に、某事務所の人気タレントが共演した裁判もの映画は観ないほうがいいかも。最高級ワインとカルピスぐらいの違いがあるでしょうから。裁判の証人役で、モンゴメリー・クリフトとジュディ・ガーランドが登場。生き延びたけど、人間としての尊厳を奪われ、身も心もズタズタにされ、法廷でさらなる屈辱にまみれる彼らの、虚ろで悲痛な表情や言動も観る人の胸をえぐります。
 この映画をリメイクするとしたら、my理想妄想キャストはこうだ!
 
 ヘイウッド判事 … トム・ハンクス
 ローソン検事 … トム・ハーディ
 ヤニング被告 … コリン・ファース
 ロルフ弁護士 … ピエール・ニネ
 公爵夫人 … イザベル・ユペール
 断種法の証人 … ベン・ウィショー
 ニュルンベルグ法の証人 … アリシア・ヴィキャンデル

 こんなん出ましたけどぉ~?
 トム・ハンクスは、明らかに第二のスペンサー・トレイシーになろうとしてるので、ヘイウッド判事役をやらせてあげたら欣喜雀躍するでしょう。ロルフ弁護士役は、英語が完璧なドイツ人俳優であるダニエル・ブリュールあたりが妥当なんだけど、あえてフランス人のニネっちを。ニネっちも英語が得意そうだし、コメディフランセーズ仕込みの熱演が見たい!彼とトムハの激突なんて、想像しただけでジュンとくるわ~(^^♪

  
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ブラックロイヤー

2018-08-10 | 北米映画 15~21
 「マーシャル 法廷を変えた男」
 1940年のアメリカ。黒人弁護士のマーシャルは、全米黒人地位向上協会のメンバーとして、裁判で不当な扱いを受けている黒人を救う活動をのため、各地を忙しく飛び回っていた。そんな中、裕福な白人の人妻をレイプしたとされる罪で、黒人の使用人スペルが裁判かけられることになり、マーシャルは弁護を引き受けるが…

 アメリカ初の黒人最高裁判所判事となったサーグッド・マーシャルの、若き日の活躍を描いた実話の映画化。
 「ブラックパンサー」で一躍、私が今いちばん好きな黒人スターとなったチャドウィック・ボーズマン主演作。ブラパン以外のチャドウィックは初。陛下なチャドウィック同様、弁護士な彼もカッコよかったです正義感あふれる男気キャラを、聖人的な善い人っぽさではなく、自信満々な俺様っぽさで演じていて、それが男らしく頼もしくて素敵でした。私もマーシャルみたいな、相手に忖度や追従、妥協する必要なんかない実力や魅力がほしいわ~。俺様なマーシャルなんだけど、ブラパン同様、チャドウィックの顔って何となく愁いがあって悲しげなので、エラソーな傲慢さは皆無。美男でも性格が悪そうな俳優が演じてたら、かなりカチンとくる男にマーシャルはなってたかも。

 男らしいけど童顔で、40過ぎには見えない若々しさのチャドウィック。セレブな弁護士ではなく、貧乏な黒人のためにほとんど手弁当で活動してる庶民派弁護士役なんだけど、40年代のスーツを身にまとったチャドウィックは、まるでグラビアから抜け出してきたモデルのようなスタイリッシュさ。あまりにもオサレで、ちょっと違和感を覚えました。ブラパンのイメージが強いせいもあって、犯しがたい颯爽とした威や品があるところも、わらわらいる黒人俳優と一線を画しています。一緒に観たmy老母は、エディ・マーフィーの息子?とか言ってました。ええ~?!似てるかな?

 チャドウィックasマーシャルはカッコよかったけど、肝心の映画そのものは何だかTVドラマみたいでした。ジジババでも楽しめる2時間ドラマ的な観やすさ、でも何の刺激も衝撃もない内容で物足りなかった。マーシャルが主役なのに、法廷で発言を禁じられた彼の代わりに弁護するユダヤ人弁護士フリードマンのほうが、出番も見せ場も多かったような。フリードマン役の俳優も誰?な人だったし。史実ドラマだから仕方がないけど、どうせならフリードマンもイケメン俳優に演じてほしかったです。
 マーシャルと法廷対決する冷徹な検事役は、何と!ダン・スティーヴンス!

 「ダウントンアビー」にハマってたくせに、「美女と野獣」も数回観たとか言ってたのに、最後まで検事がダンだと気づかなかったmy老母。教えてあげたら、ええー!とビツクリしてました。確かに、ふっくらと優美なダウントンのダンとは別人のような、シャープで酷薄そうなダンでした。マーシャルをガン無視したり、汚いものでも見るような目をしたり、バリバリの黒人差別主義者を冷たく刺々しく好演してました。ダンが嫌いになりそうなほどのイヤ~な役でしたが、役者としてはそれでOK、大成功なんですよね。いつも同じなんて、役者としては失格だもん。その他のキャストには、レイプ被害を訴えた人妻役にケイト・ハドソン(老けたな~。すっかりおばさんになった)、ブラパンでもチャドウィックと共演してたスターリング・K・ブラウンがスペル役でした。

 それにしても。アメリカの人種差別は、ほんと卑劣で凶暴ですよね~。マーシャルやスペル、ユダヤ人のフリードマンに精神的肉体的暴力をふるう白人たち、あんたらのほうがよっぽど薄汚くて低能に見えるけど?な、わかりやすいバカ白人にはもう嗤ってしまった。でも、こんな下劣で頭カラッポな人たちに支持されているのが、今のアメリカ大統領という事実は嗤えません。昔ほど露骨ではないとはいえ、アメリカ社会を蝕んでる差別偏見って基本的には何も変わってないんだろうな~。

 ↑ 陛下との再会が楽しみ(^^♪
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奥さまは醜聞がお好き

2018-08-08 | イギリス、アイルランド映画
 残暑お見舞い申し上げます猛暑が続いてますが、皆さまつつがなくお過ごしでしょうか。
 わしは夏風邪を引いてしまいました~仕事を2日も休んでしまい、職場に大迷惑をかけてしまいましたこれが若い頃なら、ああヤバイマズイと気に病んでたことでしょうが、ああ年をとると本当に図太くなるものなのですね。仕事?ああもうどーなってもええわ!クビにしけりゃすればいい!なんて、開き直って平然と寝倒れてた自分が怖かったです。甚大な被害をもたらした豪雨も、こんな投げやりな気持ちの要因かもしれません。元通りに復旧すれば、私もちゃんと生きねばと思えるようになるでしょうか?
 冬の風邪より夏の風邪のほうが、苦しくて治りにくいみたいですね。こんなに暑いのに、くしゃみと鼻水が止まらずマスク着用、喉が痛くて冷たいものも飲めないなんて、いったい何の拷問。皆さまも、なにとぞご自愛遊ばして、試練のような猛暑を乗り切りましょう!秋の気配が待ち遠しい!
 
「ある公爵夫人の生涯」
 18世紀後半のイギリス。貴族の娘ジョージアナは、英国きっての名門で大富豪のデヴォンシャー公爵に嫁ぐ。社交界の人気者として華やぎながらも、親子ほど年が離れ後継ぎが欲しいだけの公爵との愛のない結婚生活に虚しさを感じていたジョージアナの前に、初恋の男性であるチャールズが現れて…
 大好きなドミニク・クーパー出演作ということで観ました~。2008年、つまり10年前の映画なので、ドミ公は当時30歳。まだ青年っぽく、ピチピチの男前盛り!いつ見ても美味しそうな男!ジューシーという言葉がピッタリな役者です。毒にも薬にもならん、薄っぺらい無味無臭な日本のイケメンCM俳優を見慣れてると、ドミ公のデミグラスソースのような濃厚さ、味わったら無傷ではすまなさそうな危険な甘さが、いっそうデリシャスに感じられます。

 チャールズ役のドミ公、濃ゆくてワイルドなところが非英国的ですが、イケメン、美男でセレブでも庶民臭、品のなさをごまかせないアメリカ人俳優と違い、優雅な身のこなし、美しいブリティッシュイングリッシュなど、やはりイギリスの香り高き俳優。スラっとスレンダーな長身に、18世紀上流社会の衣装が似合うこと!時代劇だけでなく、ラブシーンも得意なドミ公。優しくてエロいキスと愛撫、ヒロインじゃなくてもうっとりします。脱ぎ男なドミ公、今回も引き締まった細マッチョ裸体を披露してます。恋人、というより愛人、情夫、ジゴロって感じがするところもまた、ドミ公の魅力で独自の個性です。

 カツラもイケてましたが、カツラをとった時の短髪が、何だか東映やくざ映画の下っ端やくざ風で、サラシ巻いて右手にチャカ、左手にドス、な姿も似合いそうで可愛かったです。ファンは必見な、スウィートで情熱的な恋人ドミ公ですが、ヒロインの夫役とか彼氏役ばかりでは物足りなさも。ドミ公一枚看板な主演作が観たいです。

 とまあ、ドミ公しか眼中になかったので、他に語ることが思い浮かばない💦あえて感想を述べるとしたら、ヒロインであるジョージアナには1ミリも好感や共感が抱けず、その身勝手で自由すぎる言動や生き方に反発や不快感を覚えました。非道い夫の仕打ちや貴族社会の因習に耐える悲しみのヒロイン、みたいに思ってほしかったのでしょうけど、全然そんな風には見えなかった。生半可に計算高くて狡猾な悪女よりも怖い、自分に酔ってる自分大好き女。悲劇のヒロインぶってるところが片腹痛かったわ。忍従とか貞淑とかいった、日本人が好きな女性の美徳とは無縁で、ギャーギャーとヒステリックにやりたい放題でしたし。彼女の産んだ子供たちが可哀想でした。みじめな最期を迎えるどころか、結局は大したダメージもなくめでたしめでたしみたいな、お気楽すぎる美味しい生涯には呆れてしまいました。でも、おしんみたいな辛気臭い女よりも、ジョージアナみたいなしたたかな女のほうが、見ていて面白くはあります。そして、モラルなさすぎで贅沢ざんまいな貴族生活には、ちょっと憧れますちなみにジョージアナは実在の人物で、あのダイアナ元妃のご先祖さまに当たるそうです。スキャンダラスな血筋なのですね~。

 ジョージアナ役のキーラ・ナイトレイは、かなり苦手な女優。美人ですが、女性的な優しさや柔らかさ、潤いがなく、圭角があってギスギスしてます。たまに顔が男に見えるし。めちゃくちゃ勝気そうで、意地悪そうなところも怖い。でも、クニャクニャしたブリっこ女優じゃない、キリっと毅然としたところが彼女の良さかも。デヴォンシャー公爵役のレイフ・ファインズは、フェミニストの敵みたいなトンデモ亭主役でしたが、優しそうで哀れな感じのおかげで悪い男には見えず、我が強すぎる若妻に苦労してるおじさんって感じでした。

 ジョージアナの母役はシャーロット・ランプリング。絵に描いたような打算的なママながら、シブくて怜悧な雰囲気がランプリングおばさまならでは。ジョージアナの親友ながらデヴォンシャー公爵の愛人になるリズ役は、「キャプテン・アメリカ」シリーズでおなじみのヘイリー・アトウェル。彼女も男顔ですね~。とんだ食わせ者なのか、それとも哀しい女なのか、どっちでもあるリズのキャラは興味深かったです。
 アカデミー賞の衣装賞を受賞しただけあって、きらびやかに派手ではないけど、清らかに華やかなコスチュームが美しく目に楽しいです。ロケに使用された実際の古城や館、庭園なども、ゆかしくも壮麗でした。デヴォンシャー公爵の本邸や別荘など、広大さといい整然さといい、管理や手入れが大変そうだった。

 ↑ マンマミーアの続編が近日日本公開となるドミ公の新作“The Escape”は、主婦が生活に疲れて現実逃避する話みたい。つまんなさそう。ドミ公はヒロインの夫役、といういつものパターン。しょーもないハリウッドアクション映画の脇役とか、だんだんB級俳優のにおいがし始めてることを危惧。そろそろオスカー狙えるような役を!実力や魅力は、エディ・レッドメインやバッチさんにも遜色なしなので、チャンスさえあればなんだけどね
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夢は見える

2018-08-05 | ドイツ、オーストリア映画
 「5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生」
 先天性の病気で視覚の95%を失った青年サリヤは、一流ホテルで働くという夢を諦めきれず、障害を隠しミュンヘンにある五つ星ホテルの見習いとなり、努力と機転で厳しい研修課題を乗り越えていくが…
 網膜剥離の手術をしたばかりの私には、他人事とは思えぬお話でした。こんなにも長く生きてきて、今さら目が見えなくなってしまったら、もう生きる気力を失ってしまうでしょう。サリヤみたいに、若くて美しくて有能なら、まだ頑張ろうという闘志も抱けるでしょうけど、私みたいな何の取り柄もない老いぼれだと、絶望しか残されないでしょう。この年で暗闇の中で生きねばならぬのは、ある意味ガンで余命3か月宣告されるよりも怖いです。

 障害を理由に諦めたりせず、夢をかなえようとひたむきに奮闘するサリヤは、立派としか言いようがありません。健常者と同じ、いや、健常者以上の働きをするための血のにじむ努力は、まさに超人的でした。私なんか目が見えても、皿洗いさえまともにできないでしょうし。でも、かなり無茶しよんな~と思わずにもいられませんでした。障害を隠して就職とか、あかんやろ~。障害者差別に阻まれて仕方なくとはいえ、自分や他人の命に関わるような大変なこと起きたらどうすんの。起きたらそれがまた差別偏見につながってしまうのに。サリヤの必死な頑張りは、けなげというよりかなり自分さえよければ的な感じもしました。まあ、あんなにイケメンで優秀なんだから、自信もプライドも人一倍なのは当然。現実に納得も妥協もせず、独りよがりに“目が見えなくても誰よりも有能な俺”を確認しようとしてるかのようなサリヤの奮闘は、日本の24時間テレビのお涙ちょうだい障がい者、難病ドラマなんかより、応援したいという好感を抱けました。

 もし目が見えてたら、数年でホテルの支配人になれそうな有能さと同じぐらい、サリヤ運の良さも驚異的でした。特に人間関係。家族を捨てる父親以外は、サリヤを傷つけたり憐れんだりする者は出てこず、寄ってたかって善い人オンリー。サリヤをイビる教官だって、実は厳しいだけで悪い人じゃなかったし。いい人のオンパレードの中、特に親友マックスが天使でした。マックスと出会えてなければ、サリヤのサクセスはありえなかったし。障害を負っても、サリヤみたいにみんなから愛され助けてもらえるとはかぎらないですし、そういう面ではかなり非現実的な設定でした。厳しい研修や特訓シーンは、「愛と青春の旅立ち」や「スチュワーデス物語」っぽかったです。何でもテキパキと臨機応変にこなさねばならないホテルマンも、本当に大変な仕事!
 サリヤ役のコスティア・ウルマンが、めっちゃカッコカワイいかった~

 ちょっとガエル・ガルシア・ベルナルに似てる?小柄でがっちりした体格もGGBと共通してます。ドイツとインドのハーフである彼、ほどよく濃ゆい甘口インドカレー風味なイケメンです。頭が良いけどそれをひけらかさない、真面目でシャイで優しそうなところもGGBに似てます。イケメンで、しかも演技とは思えぬいい子オーラは、みんなから愛され守られるのも理解できる説得力が。色気も抜群で、エキゾティックな浅黒い肌がセクシー。ちょっとだけ脱ぐシーンがありましたが、いいカラダしてました。いい男の条件って、やっぱ色気ですよね~。いくら顔やスタイルが良くても、毒にも薬にもならん無味無臭なイケメンばかりな最近なので、コスティアみたいなエロさを備えた俳優は貴重です。

 金持ちのぼんくらボンボンで、すごいテキトーでチャラいけど、友だち思いで頼りになる、最高にいい奴で理想の親友なマックスを好演したヤコブ・マッチェンツは、ちょっとトーマス・クレッチマン+ベネディクト・カンバーバッチ÷2、みたいな風貌?ちっちゃいコスティアと長身な彼との凸凹コンビが微笑ましかったです。仲の良さにBLっぽさがなかったのが、ちょっと残念でした。女性客とヤリまくってたマックスですが、一流ホテルではああいうサービスもあるの?(笑)サリヤと恋に落ちるシングルマザー役のアンナ・マリア・ミューエは、ダニエル・ブリュール主演の「青い棘」のヒロインでしたね。すっかりおばさんになってて、コスティアがかなり年下に見えた。実際にはコスティアのほうが一歳上と知りビツクリ。女のほうが老けて見えますね。
 それにしても…この映画しかり、西日本豪雨しかり、普段は当たり前のように思ってるものの大切さを、あらためて痛感させられてます。粗末にしたり軽んじたりしてはいけないと思い知りました。

↑注目のドイツイケメン、コスティア・ウルマン。ヨーロッパとアジアの血が混じると、エキゾティックな美貌が生じることが多いそうですが、イザベル・アジャーニとこのコスティアが、その最高の典型ではないでしょうか。コスティアの作品、もっと観たいです(^^♪
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パパのBL

2018-08-01 | ドイツ、オーストリア映画
 「Jonathan」
 末期がんで余命いくばくもない父に代わって、叔母マーサとともに農場を切り盛りしている青年ヨナサンの前に、ロンという男が現れる。彼が父の恋人であったことを知り、ヨナサンは激しく動揺するが…
 久々にMYイケメンレーダーが激しくビビビ!なかなか佳さそうなBL映画だな、と軽い気持ちで観たのですが…内容よりも、主人公ヨナサンのイケメンっぷりに目も心もクギヅケ!この子、誰?!と、疾風のごとくチェキラー(^^♪

 ヤニス・ニーヴナーくん、1992年ドイツのクレーフェルト生まれ、現在26歳!この映画のヤニスくん、めちゃんこカッコカワイかったです清々しい短髪、185㎝の長身、愁いある瞳、端正だけどどこか少年っぽくもある甘いマスクは、童顔だけど無精ひげが男らしく、少女漫画の王子さまみたいに非現実的にキレイすぎない素朴さ。でもそのへんにゴロゴロいる一般人レベルのイケメンでは決してない、まさに濃すぎず薄すぎずイケメン。イギリスやフランスの美青年と違って、飾らない骨太な清潔感がドイツ人らしいです。

 可愛くて爽やかだけど、すごく男らしいところが魅力的でした。若々しくナイーヴな演技にも感銘を受けましたが、やたらと脱ぐサービス精神も特筆に値します。色白で引き締まった筋肉質な肉体美が眼福でした。ラブシーンでは、あっぱれなスッポンポンに。丸だしにした可愛い色白ケツを、元気よく動かしてました

 生まれたままの姿で草原や森を走りまわり転がりまわるという、ジョイフルすぎるシーンもあり。大胆だけど、全然イヤらしくありません。すごく清々しく自然な微笑ましくさえある全裸とセックスシーンでした。私もあんな風に、真昼間から美しく静かな自然の中で、ヤニスくんみたいなイケメンとアオカンしてみたい~ヨナサンと恋に落ちる看護婦が、どう見てもかなり年上だったのも、羨ましさを増大させました

 爽やかで可愛くて男らしいヤニスくんが演じる主人公ヨナサン、けなげで切ないキャラでした。ヨナサン、いい子すぎ。あんなできた息子、ちょっといませんよ。デザインの才能があるのに、夢を諦めてド田舎の農場で朝から晩まで働くだけでなく、献身的に病んだ父の介護もしているヨナサン。文句ひとつ言わず、黙々と青春を犠牲にしてる彼が可哀想で仕方がなかったです。

 涙ぐましいヨナサンに比べて、彼の父やその妹マーサ、父の元カレであるロンなど大人たちの意固地さ、身勝手さには腹が立ちました。特に親父。いくら余命短しとはいえ、自由すぎるだろ~。みんな彼のせいで傷つき不幸になってるもん。ロンがいきなり家に上がり込んで、ヨナサンを差し置いて父の介護をしだすのも不愉快だったわ~。ヨナサンが怒り悲しむのも当然。無神経すぎるやろ~。ヨナサンの気持ちや苦労を無下にしすぎ。もう死ぬんだから何してもええんや!と言わんばかりなパパの暴挙の数々、私が子どもならヨナサンみたいに我慢したり受け入れたりできるだろうか。結局は何もかも赦すヨナサンの優しさが、悲しくて愛おしかったです。親が子どものために苦しむのは当たり前かもしれないけど、子どもが親のために傷つくのは見ていて辛いです。

 BL映画なのですが、おっさんずラブです本家の日本のドラマと違って正真正銘のオヤジBLなので、ライトな腐女子はご注意を。おっさん同士、しかも片方は死の淵にある病身。二人のセックスシーン、かなりキツいです。今さらヤらんでええやろ~とドン引きしました。ヨナサンにBLしてほしかった!!BL、農村で若い主人公がハードワーク、扱いにくい父親の介護、と設定は「God's Own Country」とかなりカブってます。イケメン度はヨナサンのほうが断然上ですが、かんじんのイケメンがBLしないなんて、まるで詐欺に遭ったようなガッカリさです。でも映像は清らかで美しく、田舎で暮らしたいな~と憧れをかきたてられました。

 イケてるヤニスくんの画像、集めてみましたわいな~か、可愛い!カッコいい!日本では、WOWWOWで放送された若者向けファンタジー映画シリーズ「タイムトラベラーの系譜」や、ドイツ映画祭で上映された「クリスマスの伝説 4人の若き王たち」、SFパニック映画「ザ・グラビティ」といった出演作がお目見えされてます。どの映画のヤニスくんも、カッコカワいい!どれも観たい!観ねば!

 チェキってみたら、面白そうな映画やTVドラマにいっぱい出てるヤニスくん。若く凛々しい王さま役の史劇“Maximilian”では、コスチュームプレイもイケてることを証明してます。ラブコメの“High Society”ではイケメンおまわりさん役で、制服姿に萌え~。“So auf Erden”では、何と!BL!でも相手はおっさん、いや、お爺さんでちょっと萎え~。イギリスやフランスのイケメンもいいけど、ドイツのイケメンもクオリティ高い!ヤニス、Ich bin in dich verliebt!
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