お松のフランス映画祭③
「ロマン・デュリス 偶然の殺し屋」
失業したジャックは、恋人にも去られ失意の日々を送っていた。そんな中、闇ポーカーを仕切るゴルトー氏から、浮気をしている彼の妻を殺してほしいと頼まれるが…
ロマン・デュリスの主演作を観たのは久しぶり。若かりし頃は、花の都パリのアート系猿男って感じだったロマンも、今や43歳。すっかりおじさんになりました。でも、ジェラール・ドパルデュー化が著しい同い年のブノワ・マジメルと違って、ロマンは今でも体型はほとんど変わっておらず、雰囲気もまだ青春の残滓を感じさせる若々しさがあります。今回の役は仕事も恋人も失った中年男、人生に行き詰った底辺生活者なのですが、くたびれ感や憂いはありつつもそんなに切羽詰まっりショボくれたりな様子もなく、楽観的とはまた違った気怠い諦念が、いかにもフランス男らしかったです。やっぱロマン、ハリウッド俳優とは違うな~と思いました。それと、地道に生きたいだけの男なのに、それを許さない危険な才能やヤバい狂気を秘めているという設定も、ロマンに相応しいものでした。天性の美質に恵まれながらも、不幸や暴力とは無縁でいられない男の役、というのが昔からロマンのオハコ。今回は音楽や文学ではなく、殺しの才能、という点がミソになってます。
コメディ映画なのですが、ハリウッドコメディの分かりやすく派手でパワフルな笑いと違い、静かにブラックで皮肉な展開や台詞がいかにもフランス味でした。ロマンも特にコミカルな演技をしているわけではないのですが、偶然なのか才能なのか、仕方なく引き受けた暗殺が次々と巧くいって、それにも特に狼狽するわけでも興奮するわけでもなく、淡々としてる様子がそこはかとなく笑える、といった感じでした。往年のロマンらしかったのは、イヤミな上司にキレてションベンぶっかけるシーン。ヤバい狂猿ロマンの面目躍如でした。その上司を殺すシーンも、なかなかブラックで笑えました。
原始人みたいな風貌なのに、ふとした瞬間にハっとなるほど美しい顔に見える、というロマンマジックがこの映画でも何度かありました。ロマン、基本的にはやっぱみんな同じに見えるイケメン俳優など足元に及ばぬ美男です。瞳の美しさは映画界屈指です。だいたい暗い無表情だけど、たまに見せるハニカミ笑顔が可愛い!野人っぽいけど、シャイで優しい物腰も女心をくすぐります。ちょっと守ってあげたくなる繊細さ、何を考えてるのか掴めないミステリアスさも、ロマンの魅力です。年上のおっさんな友人たちに頼りにされてるアニキなロマンもカッコよかったです。
失業後、友人が店長をしているガソリンスタンドで働き始めるジャックなのですが。ジャックも友人もバイトの男の子も、かなりルーズで適当な仕事ぶりなんですよ。イヤミで細かいことにうるさい上司とか、確かにイラ&ムカつくけど、それぐらい我慢しろよ!レベル。なのに、すぐ不快そうな顔したり反抗的な態度をとるジャックたちを見ていて、韓流ドラマもそうだけど、やっぱ日本人とは勤労意識が違うのかな~と思ったりしました。
ジャックに殺しを依頼するゴルトー氏役は、名コメディアンであり名優でもあるミシェル・ブラン。ジャックを脅したり持ち上げたりして殺しを引き受けさせる、調子がよくてマイペースすぎるキャラが笑えました。ロマンとの珍コンビぶりもいい感じでした。見た目は全然コワモテじゃなく冴えない小男なので、怖い極道というより胡乱で小粋な金持ちって感じ。ロマンみたいな誰にも飼いならせない猿を、上手に掌の上で操るような役は、ただのベテラン俳優では説得力をもって演じられません。その点、フランス映画界きっての才人として尊敬されているブラン氏は、なかなか抜け目のない猿使い役をオチャメに、エスプリいっぱいに好演していました。ブラン氏の代表作「仕立て屋の恋」や、強烈な怪作「タキシード」、小粋な佳作「他人のそら似」とか、また観ることができればいいのだけど。
暗殺出張先のベルギーの街や南国の海が、とても美しくて行ってみたくなりました。慎ましく平和な生活を取り戻しながらも、覚醒してしまった殺しの才能もまた…みたいなラストにもニヤリとさせられました。ジャックに殺される人々は、決して悪人じゃないけど何か同情もできない、というシニカルさのおかげか、陰惨さとか後味の悪さも残さずにすみました。
↑ 「ゲティ家の身代金」に出演してるらしいロマン。イザベル・ユペール共演の“Madam Hyde”も、年内に日本公開されるといいな~
「ロマン・デュリス 偶然の殺し屋」
失業したジャックは、恋人にも去られ失意の日々を送っていた。そんな中、闇ポーカーを仕切るゴルトー氏から、浮気をしている彼の妻を殺してほしいと頼まれるが…
ロマン・デュリスの主演作を観たのは久しぶり。若かりし頃は、花の都パリのアート系猿男って感じだったロマンも、今や43歳。すっかりおじさんになりました。でも、ジェラール・ドパルデュー化が著しい同い年のブノワ・マジメルと違って、ロマンは今でも体型はほとんど変わっておらず、雰囲気もまだ青春の残滓を感じさせる若々しさがあります。今回の役は仕事も恋人も失った中年男、人生に行き詰った底辺生活者なのですが、くたびれ感や憂いはありつつもそんなに切羽詰まっりショボくれたりな様子もなく、楽観的とはまた違った気怠い諦念が、いかにもフランス男らしかったです。やっぱロマン、ハリウッド俳優とは違うな~と思いました。それと、地道に生きたいだけの男なのに、それを許さない危険な才能やヤバい狂気を秘めているという設定も、ロマンに相応しいものでした。天性の美質に恵まれながらも、不幸や暴力とは無縁でいられない男の役、というのが昔からロマンのオハコ。今回は音楽や文学ではなく、殺しの才能、という点がミソになってます。
コメディ映画なのですが、ハリウッドコメディの分かりやすく派手でパワフルな笑いと違い、静かにブラックで皮肉な展開や台詞がいかにもフランス味でした。ロマンも特にコミカルな演技をしているわけではないのですが、偶然なのか才能なのか、仕方なく引き受けた暗殺が次々と巧くいって、それにも特に狼狽するわけでも興奮するわけでもなく、淡々としてる様子がそこはかとなく笑える、といった感じでした。往年のロマンらしかったのは、イヤミな上司にキレてションベンぶっかけるシーン。ヤバい狂猿ロマンの面目躍如でした。その上司を殺すシーンも、なかなかブラックで笑えました。
原始人みたいな風貌なのに、ふとした瞬間にハっとなるほど美しい顔に見える、というロマンマジックがこの映画でも何度かありました。ロマン、基本的にはやっぱみんな同じに見えるイケメン俳優など足元に及ばぬ美男です。瞳の美しさは映画界屈指です。だいたい暗い無表情だけど、たまに見せるハニカミ笑顔が可愛い!野人っぽいけど、シャイで優しい物腰も女心をくすぐります。ちょっと守ってあげたくなる繊細さ、何を考えてるのか掴めないミステリアスさも、ロマンの魅力です。年上のおっさんな友人たちに頼りにされてるアニキなロマンもカッコよかったです。
失業後、友人が店長をしているガソリンスタンドで働き始めるジャックなのですが。ジャックも友人もバイトの男の子も、かなりルーズで適当な仕事ぶりなんですよ。イヤミで細かいことにうるさい上司とか、確かにイラ&ムカつくけど、それぐらい我慢しろよ!レベル。なのに、すぐ不快そうな顔したり反抗的な態度をとるジャックたちを見ていて、韓流ドラマもそうだけど、やっぱ日本人とは勤労意識が違うのかな~と思ったりしました。
ジャックに殺しを依頼するゴルトー氏役は、名コメディアンであり名優でもあるミシェル・ブラン。ジャックを脅したり持ち上げたりして殺しを引き受けさせる、調子がよくてマイペースすぎるキャラが笑えました。ロマンとの珍コンビぶりもいい感じでした。見た目は全然コワモテじゃなく冴えない小男なので、怖い極道というより胡乱で小粋な金持ちって感じ。ロマンみたいな誰にも飼いならせない猿を、上手に掌の上で操るような役は、ただのベテラン俳優では説得力をもって演じられません。その点、フランス映画界きっての才人として尊敬されているブラン氏は、なかなか抜け目のない猿使い役をオチャメに、エスプリいっぱいに好演していました。ブラン氏の代表作「仕立て屋の恋」や、強烈な怪作「タキシード」、小粋な佳作「他人のそら似」とか、また観ることができればいいのだけど。
暗殺出張先のベルギーの街や南国の海が、とても美しくて行ってみたくなりました。慎ましく平和な生活を取り戻しながらも、覚醒してしまった殺しの才能もまた…みたいなラストにもニヤリとさせられました。ジャックに殺される人々は、決して悪人じゃないけど何か同情もできない、というシニカルさのおかげか、陰惨さとか後味の悪さも残さずにすみました。
↑ 「ゲティ家の身代金」に出演してるらしいロマン。イザベル・ユペール共演の“Madam Hyde”も、年内に日本公開されるといいな~