昨日まで、いや、正確に言うと、先週の水曜日の夜まで、わたしは自分のピアノに文句タラタラだった。
9年前にこのピアノの音を聞いたある人に、「このピアノの低音は深みがなくて薄っぺらね」と言われて、余計にイヤになったりしていた。
挙げ句の果てに、わたしは我慢してあんたを弾いてやってるんだ、みたいなふうに思い始めていた。
その同じピアノで、師匠が、見事に美しく、モーツァルトやスカルラッティを演奏してくれた。
軽く横っ面を張られたような気がした。目が覚めた。
A子からのストレートパンチも効いた。これもわたしには絶対に必要だった。
今日、新しい気持ちでピアノの前に座った。
昨日一昨日と、注意してもらったことを念頭に置いて、自分が出す音に耳と心を澄ませて聞いた。
だめ、違う、もう一度、もう一度。1時間経ってもまだできない。たった2小節も進まない。
でも焦らない。これでいい。こういう時間がわたしには必要だったのだから。
ピアノに謝りながら一音一音、時間をかけて音作りをした。
どんな細かい音にも、それにふさわしい響きがあるのだから、一音たりとも疎かにしてはいけない。
「もっとこのピアノを鳴らしてあげなきゃ。そのためにはあなたがどうやったらいいか、それを真剣に探し求めなきゃ。そうやってコツコツ、けれども心を解放して重心を低く、自然な動きの中で鍵盤に向かっていくことを忘れずに」
「このピアノはいいピアノだと思いますよ。そりゃ、高価な、いわゆるスターピアノと比べたら差はあるけれど、高い音から低い音までバランスがよくとれているし、もっと丁寧に鳴らしてあげれば良い音が出ると思うのだけど」
奢り高ぶっているばかりか、物や人のせいにして、努力をすっかり怠っていた自分が恥ずかしい。
穴に入りたい気分だけれど、今はそんなことをしている暇がない。
残念ながら、歌の伴奏曲のあまりの惨状に、ブラームスのソロ曲を見てもらうところにまで行き着かなかったけれど、歌曲の中で学んだことを生かしてなんとか作り直したいと思う。
2小節を4小節に、そしてひとつのフレーズに、そうやって一曲一曲、時間をかけて謙虚に取り組もう。
カーネギーの第一リハーサルは今週末の土曜日。85%の仕上げを求められる。
ピアノの椅子に座り、目を閉じて瞑想した。
骨盤の辺りに気が落ち着き、腹にあたたかい気が満ちてきた。
まだ弾かない。もう少しこのままで。
今までのこと、ごめんな。
9年前にこのピアノの音を聞いたある人に、「このピアノの低音は深みがなくて薄っぺらね」と言われて、余計にイヤになったりしていた。
挙げ句の果てに、わたしは我慢してあんたを弾いてやってるんだ、みたいなふうに思い始めていた。
その同じピアノで、師匠が、見事に美しく、モーツァルトやスカルラッティを演奏してくれた。
軽く横っ面を張られたような気がした。目が覚めた。
A子からのストレートパンチも効いた。これもわたしには絶対に必要だった。
今日、新しい気持ちでピアノの前に座った。
昨日一昨日と、注意してもらったことを念頭に置いて、自分が出す音に耳と心を澄ませて聞いた。
だめ、違う、もう一度、もう一度。1時間経ってもまだできない。たった2小節も進まない。
でも焦らない。これでいい。こういう時間がわたしには必要だったのだから。
ピアノに謝りながら一音一音、時間をかけて音作りをした。
どんな細かい音にも、それにふさわしい響きがあるのだから、一音たりとも疎かにしてはいけない。
「もっとこのピアノを鳴らしてあげなきゃ。そのためにはあなたがどうやったらいいか、それを真剣に探し求めなきゃ。そうやってコツコツ、けれども心を解放して重心を低く、自然な動きの中で鍵盤に向かっていくことを忘れずに」
「このピアノはいいピアノだと思いますよ。そりゃ、高価な、いわゆるスターピアノと比べたら差はあるけれど、高い音から低い音までバランスがよくとれているし、もっと丁寧に鳴らしてあげれば良い音が出ると思うのだけど」
奢り高ぶっているばかりか、物や人のせいにして、努力をすっかり怠っていた自分が恥ずかしい。
穴に入りたい気分だけれど、今はそんなことをしている暇がない。
残念ながら、歌の伴奏曲のあまりの惨状に、ブラームスのソロ曲を見てもらうところにまで行き着かなかったけれど、歌曲の中で学んだことを生かしてなんとか作り直したいと思う。
2小節を4小節に、そしてひとつのフレーズに、そうやって一曲一曲、時間をかけて謙虚に取り組もう。
カーネギーの第一リハーサルは今週末の土曜日。85%の仕上げを求められる。
ピアノの椅子に座り、目を閉じて瞑想した。
骨盤の辺りに気が落ち着き、腹にあたたかい気が満ちてきた。
まだ弾かない。もう少しこのままで。
今までのこと、ごめんな。