今朝から落ち着かんかった。
旦那はフィラデルフィア、息子Kはカナダのトロント、そやし一人でのんびり、のはずやったんやけど……。
今日はこちらに引っ越してきてから初めての、ほんでもって念願の、わたしがレッスンを受ける日。
それで、それなりに一所懸命仕上げようと頑張ったのやけど叶わず……、
とりあえず今弾けるだけを見てもらうしかない……そう腹を括り、出かけることにした。
食欲もイマイチ。
え?わたし、緊張してんの?
うん、緊張してるみたいやで。
すると突然、息子Tがチャットしてきて、「スカイダイビングした」と一言。
なぬぅ~!?スカイダイビングやとぉ~?!
「気持ち良かったけど、もうせえへん」という報告で終わり。
旦那も、起きてるか~、食べたか~、練習してるか~と、何回も電話をかけてくる。
わたしっていう女は、この旦那という男に、普段どれだけ甘えて暮らしているか、そんなことをふと考えた。
シャワーに入り、身支度をし、もしも路上駐車をする所が見つからなかった場合を考えて、『Best Parking NY』のサイトで、何時間停めても$7という駐車場を探し当て、そこのクーポンをプリントアウトした。
後は、AMラジオの1010で、10分毎に流される交通状況のニュースを聞いて、どの橋、あるいはトンネルを使ってマンハッタンに入ったらええかを決める、それだけやん!
わたしにもできるやん!えらいやん!
朝は晴れ間も見えた空がまた曇ってきたので、家中の窓を閉め、家猫の餌と水の確認をし、レッスン代を払うチェックと地図と駐車場のクーポンを手に、よっしゃ~出かけるでぇ~と意気込んで車に乗った。
ガソリンもまず大丈夫。
行く先までの運転所要時間は、スルスルッといけば30分強。橋やトンネル付近で渋滞したら1時間。
もうちょっと余裕をもって、1時間15分前に出たらばっちり!と思てたのに、気がつくと1時間前になってた。
いかんいかん、いつもの悪い癖や。
ラジオの交通情報を聞く。
ふむふむ、George Washington Bridgeも、とりあえず渋滞無しでマンハッタンに入っていけるっぽい。
よしよし、大丈夫。ええと、G.W.B.降りてから、どっちに曲がるんやったっけな……と、助手席に置いてある用紙の方に目をやった、とその時。
え?!わたし、楽譜どないしたっけか?
ぐゎ~ん……置いてきたし……
ここまでですでに15分が経過。それなりの距離を走ってしもてた。
けど、楽譜無しでレッスンを受けるわけにはいかん。どないしてでも取りに帰らなあかん。
今から15分かけて家に戻ったら、単純に計算して、残り30分。超~ギリギリや~ん
家に戻り、ピアノの楽譜立てにいつもの通り残されてた楽譜をひったくり、再び出発!
落ち着けよ~、焦るなよ~、とにかく無事に着くことが大事なんやから。と自分に言い聞かせながらカーラジオをつける。
えぇ~!?George Washington Bridgeでタンクローリーがひっくり返って、車線が塞がれてしもてるってかぁ!
あかんやん、G.W.B.……。
そこで急きょ、Lincoln Tonalでマンハッタンに入り、ハドソン河沿いの高速で上がって行くコースに変更。
再び、なかなかやるやん自分、とニヤニヤ。
けど、ギリギリに代わりは無いから、とりあえず連絡しとかなあかんかもな、と思たその時、
わたしの前頭葉の辺りに、充電器につながれた携帯電話の姿がくっきりと思い浮かんだ。
どっひゃ~!
携帯置いてきたやん!
こうなったら、なにがなんでも、体当たりで間に合わせるしかない。
Lincoln Tonalは渋滞も無く、ハドソン河の高速も最初の2分はバッチリやった。
なのに……ああ神さん!かんにんしてよぉ~!
50丁目辺りから、いきなりのノロノロ渋滞。それが延々と150丁目ぐらいまで続き……めっちゃ遅れとるがな……。
今頃みんな、心配して、わたしの携帯に電話かけまくってるんやろなあ……。
ほんで、出えへんわ、どないしたんやろ?運転中なんかな?まさか事故とかちゃうやんな……とか言うて、心配してくれてるんやろなあ……。
あまりのことに心が泣き出して、その振動が体の外側にまで伝わってきて、体中が小刻みに震え出した。
行き方を書いた紙はG.W.B.を使た場合のんやったから参考にならず、勘を頼りに、ビュンビュン飛ばしてくるニューヨーカーの車の間を運転した。
もしかしてここか?と思た出口を見過ごしてしもて、次を探してたら、目の前に、ブロンクス地区に入る橋が見えてきた。
万事休す。
わたしはこれからブロンクスゥ~♪
かなりヤケクソになって橋を渡り、ちょいと道路交通法違反をしてマンハッタン方面に入り、とりあえず元来た道に戻った。
ついさっき見過ごした出口を出て、レッスン室のある180丁目近くの道路上に、辛うじて車一台が入る隙間を見つけ、迷う事無く駐車した。
道で立ち話をしていた兄ちゃん達が、「うめぇ~!」と言いながら拍手してくれた。
その兄ちゃん達も、車から出てきたすごい形相のわたしを見て大人しくなり、「Fort Washington Avenueってどこ?」の質問に、速やかに答えてくれた。
心臓破りの坂道をぐんぐんぐんぐん上り、ほんまに心臓の塊が喉のすぐそばまで上がってきたような気がした。
とうとうお目当ての通りについた時には汗みどろ。喉はカラッカラ。自業自得とはいえ、こんなボロボロで弾けるのか?
やっとのことで教室があるビルディングに着き、ややっこしい入り口のセキュリティボタンに四苦八苦し、建物の中に入った。
にこやかに迎えてくれた、わたしの新しい師匠Eliran。
わたしのすぐ前の時間にレッスンを受けてたJaneも心配して残ってくれてた。
もちろんパートナーのSarahも。
事情を話し、小指をテーピングし、30分遅れのレッスンが始まった。
Eliranは30代の若手ピアニスト。室内楽5重奏のピアノ演奏者として活躍してる人。
せやから、他の楽器と一緒に演奏するピアノをすごくわかってる人。
今日は、一曲をひとつの映画、または物語として考えて、クライマックスはどこか、そこにどういうふうに辿り着くか、向かっていくか、
そういう大きなことの理解の他に、ひとフレーズ毎の、それはそれは細かい歌い方や強弱の付け方についての彼のアイディアや思いを、わたしやSarahの気持ちや意見もきちんと聞いた上で教えてくれた。
「この曲はもう、解き放たれる喜び、の一言に尽きるよね。で、どちらのパートもとんでもなく難しい。そんなふうに聞こえないのがまたミソなんだよね」
「この曲一曲を演奏しただけで、全身がくたくたになるほどのエネルギーが必要なんだ。だから最初っから使い過ぎないように、セーブセーブ!」
「興奮したら速くなるって、最近の音楽家は誤解してる人が多いけど、そうじゃないと思う。足をしっかり踏ん張って、顎を上げて、朗々と豊かにしっかりと演奏したらいいんだ。同じテンポで」
明日からの練習がめっちゃ楽しみ!
*おまけ
弾き始めて2秒。
背中をトントンと叩かれた。
「レに♯がついてるよ」
なんのこっちゃ???と楽譜に顔を近づけていくと……。
第一小節目、三拍目の和音のレに、ついてもせえへん♯をしっかりつけて弾いとったわたし。
ずっとそう弾いてたし……しかもめちゃ大事なテーマやし……恥ずかしぃ~!!
旦那はフィラデルフィア、息子Kはカナダのトロント、そやし一人でのんびり、のはずやったんやけど……。
今日はこちらに引っ越してきてから初めての、ほんでもって念願の、わたしがレッスンを受ける日。
それで、それなりに一所懸命仕上げようと頑張ったのやけど叶わず……、
とりあえず今弾けるだけを見てもらうしかない……そう腹を括り、出かけることにした。
食欲もイマイチ。
え?わたし、緊張してんの?
うん、緊張してるみたいやで。
すると突然、息子Tがチャットしてきて、「スカイダイビングした」と一言。
なぬぅ~!?スカイダイビングやとぉ~?!
「気持ち良かったけど、もうせえへん」という報告で終わり。
旦那も、起きてるか~、食べたか~、練習してるか~と、何回も電話をかけてくる。
わたしっていう女は、この旦那という男に、普段どれだけ甘えて暮らしているか、そんなことをふと考えた。
シャワーに入り、身支度をし、もしも路上駐車をする所が見つからなかった場合を考えて、『Best Parking NY』のサイトで、何時間停めても$7という駐車場を探し当て、そこのクーポンをプリントアウトした。
後は、AMラジオの1010で、10分毎に流される交通状況のニュースを聞いて、どの橋、あるいはトンネルを使ってマンハッタンに入ったらええかを決める、それだけやん!
わたしにもできるやん!えらいやん!
朝は晴れ間も見えた空がまた曇ってきたので、家中の窓を閉め、家猫の餌と水の確認をし、レッスン代を払うチェックと地図と駐車場のクーポンを手に、よっしゃ~出かけるでぇ~と意気込んで車に乗った。
ガソリンもまず大丈夫。
行く先までの運転所要時間は、スルスルッといけば30分強。橋やトンネル付近で渋滞したら1時間。
もうちょっと余裕をもって、1時間15分前に出たらばっちり!と思てたのに、気がつくと1時間前になってた。
いかんいかん、いつもの悪い癖や。
ラジオの交通情報を聞く。
ふむふむ、George Washington Bridgeも、とりあえず渋滞無しでマンハッタンに入っていけるっぽい。
よしよし、大丈夫。ええと、G.W.B.降りてから、どっちに曲がるんやったっけな……と、助手席に置いてある用紙の方に目をやった、とその時。
え?!わたし、楽譜どないしたっけか?
ぐゎ~ん……置いてきたし……
ここまでですでに15分が経過。それなりの距離を走ってしもてた。
けど、楽譜無しでレッスンを受けるわけにはいかん。どないしてでも取りに帰らなあかん。
今から15分かけて家に戻ったら、単純に計算して、残り30分。超~ギリギリや~ん
家に戻り、ピアノの楽譜立てにいつもの通り残されてた楽譜をひったくり、再び出発!
落ち着けよ~、焦るなよ~、とにかく無事に着くことが大事なんやから。と自分に言い聞かせながらカーラジオをつける。
えぇ~!?George Washington Bridgeでタンクローリーがひっくり返って、車線が塞がれてしもてるってかぁ!
あかんやん、G.W.B.……。
そこで急きょ、Lincoln Tonalでマンハッタンに入り、ハドソン河沿いの高速で上がって行くコースに変更。
再び、なかなかやるやん自分、とニヤニヤ。
けど、ギリギリに代わりは無いから、とりあえず連絡しとかなあかんかもな、と思たその時、
わたしの前頭葉の辺りに、充電器につながれた携帯電話の姿がくっきりと思い浮かんだ。
どっひゃ~!
携帯置いてきたやん!
こうなったら、なにがなんでも、体当たりで間に合わせるしかない。
Lincoln Tonalは渋滞も無く、ハドソン河の高速も最初の2分はバッチリやった。
なのに……ああ神さん!かんにんしてよぉ~!
50丁目辺りから、いきなりのノロノロ渋滞。それが延々と150丁目ぐらいまで続き……めっちゃ遅れとるがな……。
今頃みんな、心配して、わたしの携帯に電話かけまくってるんやろなあ……。
ほんで、出えへんわ、どないしたんやろ?運転中なんかな?まさか事故とかちゃうやんな……とか言うて、心配してくれてるんやろなあ……。
あまりのことに心が泣き出して、その振動が体の外側にまで伝わってきて、体中が小刻みに震え出した。
行き方を書いた紙はG.W.B.を使た場合のんやったから参考にならず、勘を頼りに、ビュンビュン飛ばしてくるニューヨーカーの車の間を運転した。
もしかしてここか?と思た出口を見過ごしてしもて、次を探してたら、目の前に、ブロンクス地区に入る橋が見えてきた。
万事休す。
わたしはこれからブロンクスゥ~♪
かなりヤケクソになって橋を渡り、ちょいと道路交通法違反をしてマンハッタン方面に入り、とりあえず元来た道に戻った。
ついさっき見過ごした出口を出て、レッスン室のある180丁目近くの道路上に、辛うじて車一台が入る隙間を見つけ、迷う事無く駐車した。
道で立ち話をしていた兄ちゃん達が、「うめぇ~!」と言いながら拍手してくれた。
その兄ちゃん達も、車から出てきたすごい形相のわたしを見て大人しくなり、「Fort Washington Avenueってどこ?」の質問に、速やかに答えてくれた。
心臓破りの坂道をぐんぐんぐんぐん上り、ほんまに心臓の塊が喉のすぐそばまで上がってきたような気がした。
とうとうお目当ての通りについた時には汗みどろ。喉はカラッカラ。自業自得とはいえ、こんなボロボロで弾けるのか?
やっとのことで教室があるビルディングに着き、ややっこしい入り口のセキュリティボタンに四苦八苦し、建物の中に入った。
にこやかに迎えてくれた、わたしの新しい師匠Eliran。
わたしのすぐ前の時間にレッスンを受けてたJaneも心配して残ってくれてた。
もちろんパートナーのSarahも。
事情を話し、小指をテーピングし、30分遅れのレッスンが始まった。
Eliranは30代の若手ピアニスト。室内楽5重奏のピアノ演奏者として活躍してる人。
せやから、他の楽器と一緒に演奏するピアノをすごくわかってる人。
今日は、一曲をひとつの映画、または物語として考えて、クライマックスはどこか、そこにどういうふうに辿り着くか、向かっていくか、
そういう大きなことの理解の他に、ひとフレーズ毎の、それはそれは細かい歌い方や強弱の付け方についての彼のアイディアや思いを、わたしやSarahの気持ちや意見もきちんと聞いた上で教えてくれた。
「この曲はもう、解き放たれる喜び、の一言に尽きるよね。で、どちらのパートもとんでもなく難しい。そんなふうに聞こえないのがまたミソなんだよね」
「この曲一曲を演奏しただけで、全身がくたくたになるほどのエネルギーが必要なんだ。だから最初っから使い過ぎないように、セーブセーブ!」
「興奮したら速くなるって、最近の音楽家は誤解してる人が多いけど、そうじゃないと思う。足をしっかり踏ん張って、顎を上げて、朗々と豊かにしっかりと演奏したらいいんだ。同じテンポで」
明日からの練習がめっちゃ楽しみ!
*おまけ
弾き始めて2秒。
背中をトントンと叩かれた。
「レに♯がついてるよ」
なんのこっちゃ???と楽譜に顔を近づけていくと……。
第一小節目、三拍目の和音のレに、ついてもせえへん♯をしっかりつけて弾いとったわたし。
ずっとそう弾いてたし……しかもめちゃ大事なテーマやし……恥ずかしぃ~!!