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川上未映子『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』

2010-03-08 18:37:00 | ノンジャンル
 川上未映子さんのデビュー作である'06年刊行のエッセイ集「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」を読みました。ネットに「未映子の純粋悲性批判」の名前で書かれていた文章を集めたものです。
 いつもながらの川上さん独特の文体で書かれており、具体的には読点と句点の逆転、体言止め、動詞の省略、谷川俊太郎さん風の言葉遊び、文節の換骨奪胎ぶりなど、一般的な日本語文法には縛られない天衣無縫な書き様なので、さすがに読んでいて理解するのに疲れ、また「世間」に適合できない苦しさ、過剰なまでの感情量から来る絶叫を感じて、全200ページ超のうちの120ページを超えたあたりで先を読み進めるのを断念しました。それでも深く共感する部分は多々あり、例えばミニチュアの家具を集めるのが子供の時に流行した話では、私がレゴで同じような思いを幼少時にしたのを思い出し、「空の美しさにかなうアートなんてあるのだろうか?」という文には、よく空を見上げる自分を重ね合わせてみたりもし、「石がころっとあるように、なんでか風が吹くように」「単に生きてゆくだけ」の有り様に憧れるというのにも深く共感し、次のは共感というのではないのですが、サウナの風景をアウシュビッツと重ね合わせるというのも「シンドラーのリスト」の一番印象的なシーンの一つであるガス室のシーンを川上さんも思い出しているのではないかな、と思ってみたりもし、また謙虚とか奥ゆかしさの賞揚には深く共感し、生前は世間から全く認められず狂気に走りながらも自分の感動を追求したゴッホに対して書かれた文章には心揺さぶられ、NHK教育テレビの「にほんごであそぼ」を川上さんも見ているのを知ったり、といった具合で、大変刺激的な読書体験をさせてもらいました。
 私は途中から飛ばし読みしてしまったのですが、時間をかけて最後まで読めばもっと大きな世界に触れられるかもしれません。エモーショナルな文章が好きな方には特にオススメです。