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高橋源一郎『官能小説家』

2009-09-25 18:19:00 | ノンジャンル
 昨日NHK・BS2で今話題のTGCを見ました。上野千鶴子さんが言う通り、プレイメイトのポーズとまったく同じである男を誘う仕草をするモデルたち。そしてそれに嬌声を上げる女性たち。不思議な空間でした。

 さて、本「顰蹙文学カフェ」の中で山田詠美さんが真面目に言葉遊びやってる一番おもしろい種類の小説だと言っていた、高橋源一郎さんの'02年作品「官能小説家」を読みました。
 朝日新聞に連載小説を書いている高橋源一郎は、いきつけの文壇バーで森鴎外に出会います。彼は向こうの世界の短調さに辟易してこの世で新作を書きたいので編集者を紹介しろと言います。やがて鴎外は気紛れからAV男優になりますが、今度は夏目漱石が現れ、しばらくすると彼がリーダーとなって明治時代の文豪たちがバーに勢ぞろいし、各出版社の新人賞を総なめし、漱石の「新明暗」もベストセラーになります。そんな中、源一郎は作家以外の食いぶちを探したりしながらも何とか連載小説を書き終えると、漱石はすべてを元に戻して本来自分たちがいなくてはならない世界に戻ることにし、源一郎は未来に希望を抱きます。一方、明治時代の一葉は小説の手引きを半井桃水に受けて衝撃的なデビューを果たし、一時文壇から遠ざかった後自分の性生活を赤裸々に語った問題作で復帰したにも関わらず評価は今一つだった鴎外は、病気の漱石から朝日新聞の連載を譲られ「官能小説家」という題で連載を始めます。漱石の仲立ちで対談した一葉と鴎外は恋に落ちますが、桃水との三角関係から一葉が自殺未遂を起こし、桃水と鴎外は和解するのでした。
 実際にはユーモラスな現代の話と「純文学」している明治時代の話が交互に章立てされていて、最後の章でそれが重なり入れ子状態があいまいになって面白い効果を上げていました。現代の話の方は楽しく読めましたが、鴎外をAV男優にしてしまったり、石川啄木を路上の色紙売りにしてしまったり、実在の人物にこれだけのコラージュを施して叱られないのかと要らぬ心配をしました。一方明治時代の話は心理描写を読むのに疲れ、後半は飛ばし読みしてしまいました。源一郎さんの本はこれからも機会を見つけて読んでいこうと思います。変わった小説を読みたい方にはオススメです。

ヴィム・ヴェンダース監督『都会のアリス』

2009-09-24 15:35:00 | ノンジャンル
 スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、ヴィム・ヴェンダース監督の'74年作品「都会のアリス」を再々見しました。
 砂浜のボードウォークの下に座り込んで風景のポラロイド写真を撮るフィリップ(リュディガー・フォグラー)。彼はモーテルに泊まりながら車でニューヨークに着くとドイツに帰る旅費の前借りをするために出版社を訪ねますが、ライターなのに1ヶ月写真ばかり撮っていたことを責められます。車を売って空港へ行くと、ドイツの空港はストで閉鎖されていてアムステルダム行きの翌日の便を勧められ、小学校低学年ほどの娘・アリス(イエラ・ロットレンダー)を連れた英語が不自由なリザ(リザ・クロイツァー)と知合い、飛行機が出るまで一緒にいてくれるように頼まれます。結局彼女らの部屋に一緒に泊まったフィリップは翌朝起きると、男に会うために午前中アリスを預かってほしいというリザの書き置きを発見しますが、待ち合わせ場所に彼女は現れず、ホテルには先にアリスとアムスに行っていてほしいという伝言が残されていました。アムスでもリザは現れず、アリスが唯一知っていた祖母の住む町にバスとモノレールで行き、レンタカーでアリスの覚えている祖母の家を探しますが、やがてアリスはこの町ではないと言い出します。嘘をついていたアリスに愛想を尽かしたフィリップは警察に彼女を引き渡しますが、食事がひどいと言ってアリスは警察を脱走しフィリップの元へ戻り、警察の情報から祖母の家の本当の場所を教えます。しかしようやく探し当てた家には2年前からイタリア人が住んでいて、その前の住人のことは一切分からないと言うのでした。憂さ晴らしに泳ぎに行った二人は公園で知合った女性の家に泊まらせてもらい、翌朝早くその家を抜け出しますが、立ち寄ったドリンクスタンドで見た新聞でフィリップはアリスが公開捜索中なのを知ります。フェリーに乗っていたところを警官に見つかり、アリスは親元に帰されることになり、フィリップは彼女と一緒に列車に乗って、物語を書くつもりだと彼女に語ります。列車の窓を開けて外を眺める二人を外から捕えたカメラは空高く上昇して広大な大地を写し出すのでした。
 元祖ロードムービーとも言える映画で、ふんだんな縦の移動撮影があります。あらゆる乗り物が出て来ますが、最後にやっと列車が出て来るところもシャレていました。「ミファラシドミシラ」が連続するCANによる音楽が物悲しい雰囲気を醸し出しますが、イエラ・ロットレンダーのおしゃまさんぶりが映画を明るいものにしていました。空港の回転扉の中に入ってぐるぐる回っている最初に登場するシーン、フィリップに母が頼ることが分かって作り笑いするシーン、母が現れなくて空港のトイレに閉じこもって泣き出したところに、フィリップが祖母のいる町を思い出させようと町の名前を列挙していき、それに対して様々なニュアンスで「ナイ(違う)」と言い続けるシーンなど、魅力的なシーン満載です。私はヴェンダースの映画の中ではこの映画が一番好きです。未だ見ていない方には文句無しにオススメです。

パワーズ・オブ・テン

2009-09-23 13:22:00 | ノンジャンル
 月刊ソトコトで紹介されていた、フィリップおよびフィリス・モリソン、チャールズおよびレイ・イームズ共編著「POWERS OF TEN 宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅」を読みました。大きさをめぐる変わった本です。
 まず大きさに関する論考があり、その後、一辺が10の25乗メートルの写真が右ページに提示され、左ページにはその写真に関する説明や他の関連する写真が掲載されています。ページをめくると、今度は先程の写真の中心部が10倍に拡大されたページ(つまり一辺が10の24乗メートルの写真)が右ページに提示され、左ページにはその写真にまつわる説明や関連写真が掲載されています。これが次々に行われて行き、一辺が10の1乗メートルのところではシカゴの公園でピクニックしながら昼寝するカップルの写真になり、最後には10のマイナス16乗メートルの素粒子を超えた小ささにまでなります。その後に、大きさに関する様々な説明が掲載されています。
 勉強になったのは、動物は大きくなると体重は長さの3乗に比例して大きくなる一方、それを支える足裏の面積は長さの2乗に比例してしか増えず不安定になること、天体は大きくなると重力により球体になるしかなくなること、小さな天体は重力が小さいので山が巨大化すること、恒星は太陽のように単独で存在するのは稀で、たいてい連星であること、土星の輪には山のような大きな塊も含まれていて、それらが土星の回りを回転しながらぶつかっては削り合っていることでした。また、横方向に10km移動することは容易だが縦方向に10km移動することは生命の危機になるというのは、当たり前ながらも改めて納得させられたことでした。宇宙の段階では面白かったのですが、人体の中に入っていくと途端につまらなくなったのは惜しまれます。しかし宇宙や極小の世界に興味にある方にはオススメです。

ジャン=ポール・ラプノ-監督『プロヴァンスの恋』

2009-09-22 13:58:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが「山田宏一のフランス映画誌」の中で絶賛していた、ジャン=ポール・ラプノー監督の「プロヴァンスの恋」をDVDで見ました。
 イタリアの若き愛国者・アンジェロは征服者のオーストリアの秘密警察に追われフランスに亡命しています。逃げ込んだ村はすべての村人がコレラにかかって死に絶え、そこを訪れた医者も彼に薬を残して病死してしまいます。次に訪れた町では持っていた薬を毒だと誤解した人々から病気の元凶だとリンチを受け警察に捕まりますが、そこを抜け出して屋根に逃げ延びます。降り出した雨を避けるために忍び込んだ家には女性(ジュリエット・ビノシュ)が一人で住んでいて、彼を匿ってくれます。翌朝目覚めると彼女の姿はなく、彼は家に押し入ってきた軍隊によって強制的に町から移動させられますが、その人々の群れの中に仲間を見つけ、仲間に軍資金として集めた金貨を託されてイタリアに持って帰ることになります。道中、以前匿ってくれた女性と再会し、その時のお礼として彼女を行く先まで送ることにします。軍の検問を突破するなど困難を乗り越えて、女性が行く先に着くと、彼女は侯爵夫人であり夫を追って来たことが分かりますが、夫は彼女のいた町に既に発った後でした。夫を追って今は疫病の町となったところへ帰るという彼女をアンジェロは止めようとしますが彼女は言うことを聞きません。結局彼女は途中で軍に捕まり、それを見ていたアンジェロもわざと軍に捕まって彼女のいる隔離所に入ります。彼は放火して混乱の中脱出し、彼女の目的地がもうすぐというところまで来ますが、そこで彼女が発病します。彼は医者から教わった体をさするという方法で何とか彼女を救おうとしますが、彼は力尽き倒れます。しかし翌朝彼が気がつくと彼女は病気から回復しており、町に着いていた夫と無事に会うことができました。アンジェロはイタリアに旅立ちますが、彼女の彼を慕う気持ちは抑えがたく、侯爵は彼女の気持ちを尊重しようと思うのでした。
 フランスの田舎の景色がとにかく美しく、そんな中を主人公の二人が馬で颯爽と駆けるシーンは夢のようでした。山田さんが言及していたように、屋根の上でアンジェロになつく猫も素晴らしかったと思います。古典的な映画を見たい方にはオススメです。

豊島ミホ『夏が僕を抱く』

2009-09-21 18:15:00 | ノンジャンル
 豊島ミホさんの最新刊「夏が僕を抱く」を読みました。6つの短編からなる本です。
 「変身少女」は、幼馴染みで片思いの相手・鞠男が中学入学と同時に不良になって口を聞いてくれなくなったことから、あたしも髪を染めスカートを短くして彼と話をしますが以前の距離感は掴めず、また元の姿に戻り周囲を安心させ、中学卒業時にまだ彼を好きだったらまた髪を染めようと思う話。
 「らくだとモノレール」は、幼馴染みであたしと同じく面倒くさがりのらくだが高校3年になり予備校通いを始めて、これまでのように一緒の時間を過ごせなくなるのを身に染みて感じたという話。
 「あさなぎ」は、幼い頃にお姉ちゃんとキスをしたことのある研吾くんと見合いをし、3度目のデートでわたしからホテルに誘ったのを断られたので、わたしは今はバカになったお姉ちゃんと会わせて幻滅させることに成功しますが、研吾くんはお姉ちゃんへの初恋の気持ちに整理をつけ、改めてあたしにプロポーズしてくれた話。
 「遠回りもまだ途中」は、大学に入ってかっこいい先輩の彼女となり不幸なクリスマスイヴを過ごしたあたしが、イジメに会っていた中学生の時に助けてくれた格好悪い幼馴染みに結局惹かれていることに気付く話。
 「夏が僕を抱く」は、夏休みに青森のじーちゃんちで一緒に遊んだミーちゃんと渋谷で出会った俺は、彼女にライブに来てもらうことでライブを乗り切る決心をし、彼女もそれを機会に元上司との間に続いていた不倫関係を終わらせることに決めた話。
 「ストリベリー・ホープ」は、人生を見失って東京から帰ってきた幼馴染みの護とともに、私が小さな幸せを感じるようになる話です。

 どれも幼馴染みとの絆を語った話でしみじみと感じさせるものばかりでした。はかない青春小説を書かせたら今は豊島さんの右に出る者はないのではと思わせる感じです。本好きの方には文句無しにオススメです。