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デイヴィッド・クロネンバーグ監督『イースタン・プロミス』

2009-09-20 14:59:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、デイヴィッド・クロネンバーグ監督の'07年作品「イースタン・プロミス」を見ました。
 ロンドン。床屋のアジムに散髪してもらっていたロシア人がアジムの知恵遅れの息子エクレムに殺されます。病院に担ぎこまれた身元不明の女性は女児を出産して亡くなります。助産婦のアンナ(ナオミ・ワッツ)はその女性の持っていたロシア語で書かれた日記の翻訳を叔父のステパンに頼みます。日記に挟まれていたカードからロシアン・レストランを訪れたアンナはオーナーに身元不明のタチアナのことを聞くと知らないと素っ気無く言われますが、オーナーは日記の存在を知ると急に態度を変えて自分に翻訳させてくれと言い出します。ロシア人の死体はオーナーの息子のキリルと運転手のニコライが処理して海に沈めますが、警察によって発見され「法の泥棒」というロシアン・マフィアのメンバー・ソイカであることが分かります。アンナはオーナーに日記のコピーを渡し、叔父は身元不明の女性がオーナーによってレイプされシャブ漬けにされ売春させられていたことをアンナに教えます。オーナーはアンナに日記の実物をくれるなら女性の故郷の住所を教えると言って手に入れた日記を燃やし、ニコライに日記の内容を知ったステパンの殺しを命じます。オーナーは「法の泥棒」のボスでした。エクレムは復讐のためソイカの兄弟に殺され、アジムはキリルを殺したら命は助けてやると彼らに言われたことをオーナーに知らせます。ステパンを殺したと言うニコライをオーナーは「法の泥棒」に入会させ、キリルの身代わりとしてソイカの兄弟に差し出すことにします。ニコライはサウナでソイカの兄弟に襲われますが重傷を負いながらも返り討ちにし、病院でアンナにステパンをスコットランドに避難させていることを知らせます。ニコライは実はロシア諜報部のスパイであり、DNA鑑定で身元不明の女性の娘がオーナーの子供であることを立証して未成年強姦の罪でオーナーを逮捕することを上司に進言します。キリルは父の危機を救おうと身元不明の女性の娘を病院から持ち出し海に沈めようとしますが、寸での所でアンナとニコライはそれを阻止します。そしてタチアナの娘はアンナの家庭で暖かく育てられていくのでした。
 不安を抱かせる音楽と暗い画面で、すぐにクロネンバーグの映画だと分かるところはさすがでした。クロネンバーグのおどろおどろしさとロシアン・マフィアの暗さがほどよくマッチしていたように思います。ただ残酷なシーンが多いので、そうした場面にも耐えられる方にはオススメです。

後藤繁雄編著『独特老人』

2009-09-19 16:06:00 | ノンジャンル
 本「顰蹙文学カフェ」の中で高橋源一郎さんがむちゃくちゃおもしろかったと言っている、後藤繁雄さんの'01年作品「独特老人」を読みました。著明な65才以上の人へのインタビュー集です。
 インタビューされている人は登場順に、森敦(作家・76才)埴谷雄高(作家・78才)伊福部昭(作曲家・76才)升田幸三(棋士・73才)永田耕衣(俳人・89才)流政之(彫刻家・65才)山田風太郎(作家・68才)梯明秀(経済哲学者・86才)淀川長治(映画評論家・84才)大野一雄(舞踏家・84才)杉浦明平(作家・76才)下村寅太郎(哲学者・87才)杉浦茂(漫画家・91才)須田剋太(画家・82才)安東次男(詩人・俳人・70才)亀谷雄策(アート・ディレクター・74才)細川護貞(文人・77才)水木しげる(漫画家・67才)久野収(哲学者・79才)芹沢光治良(作家・94才)植田正治(写真家・76才)堀田善衛(作家・73才)多田侑史(裏千家執事・75才)宮川一夫(映画キャメラマン・81才)中村真一郎(作家・72才)沼正三(作家・64才)吉本隆明(詩人・77才)鶴見俊輔(哲学者・72才)(数字はインタービュー時の年齢)。顔のアップの写真と編者による本人紹介・導入部の後に独白の形によるインタビュー記事という形を取っています。(鶴見俊輔さんの所だけは鶴見さんの要望により対談形式になっています。)最近のご自分の話に多くのページが割かれている中、奥さんが働かないでほしいと言うので、10年働いては10年遊んでいたという森敦さんの話、すべての生物は元を辿っていけば兄弟なのだという埴谷雄高さんの話、飢饉の時少ない食料で済むように二宮尊徳が農民たちを強制的に寝たきりの状態にさせたという杉浦明平さんの話、水木しげるさんが空襲で片腕を失っていたという話、他の動物と同じく人間でも女は一ケ所で動かずに男を待ち構えて捕まえるという、「家畜人ヤプー」の著者で変態を自認する沼正三さんの話、存在するものはすべて正しいという、やはり沼正三さんの話は興味深く読みました。また、「生きているということにおいては百歳の人も十歳の人も変わらない」「(独特の人は)たった今見出した世界の秘密についての発見を、とにかく色あせないうちに、消失しない間に、誰かに話さなければならない」とまえがきで書く後藤さんの言葉にも深く共鳴しました。
 人の話を聞くのが苦手でない方ならばオススメです。

アルバート・リュイン監督『パンドラ』

2009-09-18 18:17:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが「山田宏一のフランス映画誌」の中でテクニカラーの極致とまで書いた、アルバート・リュイン監督の'51年作品「パンドラ」を見ました。
 「約20年前 スペイン 地中海沿岸の港町エスペランサ」の字幕。漁船が男女の水死体を発見します。そしてそこから考古学者ジェフリーの回想が始まります。パンドラ(エヴァ・ガードナー)と会ってちょうど一年目の夜、プロポーズを断られたレジーは毒を飲んで自殺します。レーサーのスティーヴンもパンドラにプロポーズし、自分の愛車を崖から落とすことによって受け入れられますが、正体不明の船が現れるとパンドラはすぐに単身乗り込み、船長のヘンドリック(ジェームズ・メイスン)に惹かれます。ヘンドリックは古文書の解読をジェフリーに頼みますが、それはヘンドリック自身の手記で、妻(エヴァ・ガードナー)を殺し裁判所で呪いをかけ脱獄した後に航海に出ますが不死の体にされてしまったという内容でした。パンドラはヘンドリックに自分の命を捧げると言いますがヘンドリックは拒否し、村に凱旋してきた闘牛士のフアンはパンドラにプロポーズしますが拒まれ、ヘンドリックを逆恨みして殺しますが、ヘンドリックは生き返ります。翌日フアンは闘牛中に現れたヘンドリックを見て驚いている間に牛から致命傷を負わされ、ヘンドリックが一度は死んだことをパンドラに告げて死にます。パンドラはジェフリーからヘンドリックの秘密を教わり、ヘンドリックの船を訪ねると、古文書に出て来る彼の妻の絵が自分にそっくりであることを知り、ヘンドリックが彼女に愛されれば不死の罰が終わると言われます。そこへ嵐が襲い船は難破し二人は死ぬのでした。
 山田宏一さんが書いていた撮影監督ジャック・カーディフの青(夜の空)も美しかったのですが、夜のエヴァ・ガードナーの顔のアップに見られる赤も素晴らしかったと思います。独白のやたら多い映画で、演出も冗長でしたが、テクニカラーの美しさは十分に味わえました。その点ではオススメです。

鳩山内閣の出発

2009-09-17 16:21:00 | ノンジャンル
 今日鎌倉ガイド協会の主催するイベントに行ってきましたが、内藤家の墓所というのにビックリしました。五輪塔は有名ですが、それとは違う巨大な石塔が無数に立っている様子はアンコールワットを見ているようでした。またそれが住宅街の真ん中にあるというのも驚きでした。今回は特別に中に入れてもらって身近から見たのですが、外からも見えるのでお近くに行くことがありましたら是非ご覧ください。光明寺、材木座海岸の近くです。

 さて、昨日鳩山内閣がようやく発足しました。菅さんが大臣の呼び出しで官邸に入るのを見て「ようやくこうした時代がやってきたんだな」と声に出そうとしたら、思わず泣き出しそうになってしまいました。志しのある人たちがようやく政治に大鉈を振るえる時代になったということです。内閣の顔ぶれですが、主なポストに関しては現在の日本の政治家のベストメンバーを適材適所で起用したように私には思えました。このメンバーで政治改革が行えないようであれば、もう誰がやってもダメでしょう。特に注目なのは利権の温床となっている国土交通省大臣に任命された前原氏で、どれだけ既成勢力と戦っていけるかを見守っていくとともに期待したいと思います。いずれにしても、私も全力でこの内閣を支えていきたいと思っています。
 ここで特筆すべきことは、同じ年にアメリカでも史上初の黒人大統領が誕生し、政府のスタッフにすべての勢力から優秀な人材を募ったということです。日米で史上初の政府が同じ年に誕生したことは、単なる偶然とは思えません。温暖化が進み、今までのスキームでは経済成長ひいては人類の生存が望めなくなってきている現在、新しい政治システムが出現することは必然でもあると思います。とにかく、これからの民主党政権には大注目です。

三崎亜記『刻まれない明日』

2009-09-16 16:10:00 | ノンジャンル
 昨日富士急ハイランドに行ってきたついでに、話題の吉田うどんを「桜井うどん」さんで食べてみました。名物にうまいものなしの格言の通り、うどんはパサパサでつゆも単なる醤油味、なんてことないものでした。ただ壁に張ってある芸能人の色紙の数は大したものでした。

 さて、三崎亜記さんの最新作「刻まれない明日」を読みました。
 10年前に町のある地区で3千人を超える人が一瞬のうちに消えてしまった事件。その地区で一人消え残った沙弓は10年ぶりに町に戻り、道に刻まれた記憶を守る歩行技師に出会って再び人生を歩き始める決心をします。消えた地区にあった図書館の分館で、消えた人々が今だに本を借り続けていることを遺族に報告する仕事をする西山係長と新しい人生を歩く決心をする、不倫に疲れてこの町にやってきた藤森さん。何人かの遺族とともに実在しない鐘の音が聞こえる駿は、音の歪みを正す共鳴士の鈴(リン)とともに、皆に鐘の音を聞かせることによってその鐘を作った谷本さんに新たな鐘を作ってもらうことに成功します。難病をかかえているため人との付き合いを断ってきた坂口さんは、消えた夫のバス運転手を待つ持田さんと知合うことによって、人と関わる勇気を持つようになります。10年前に放浪する音楽家に曲を託された宏至は、登校拒否の若葉とともにその曲を奏でることができるようになります。10年前に違法な貯蔵庫から変質した思念が漏出して事件が起きた現場に立ち合い、その後遺症で人に顔を覚えてもらえなくなった黒田さんは再び事故に会いますが、部下の梨田さんが黒田さんと同じ後遺症を背負うことで黒田さんは再び人生を歩み始めます。そして2年後、地区が再開発され、これまでの登場人物たちが皆生き生きとそこで生活を始める中、歩行技師の幡谷さんは沙弓と再会するために歩き始めるのでした。
  三崎さんのいつもの小説のように、不可思議な設定の舞台の中で人と人とのつながりの根源的な意味を模索するという見事な物語が展開されていました。特に素敵な青春小説にもなっていた第二章がいいと思いました。小説が好きな方には文句無しにオススメです。なお、詳しいあらすじは、私のサイト(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)→「Favorite Novels」→「三崎亜記」の場所にアップしておきましたので、興味のある方はぜひご覧ください。