3、エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換する
二酸化炭素の排出量の90%がエネルギーに由来することからみても、エネルギー対策は温暖化対策の要です。ところが政府は、化石燃料偏重から自然エネルギー重視に転換する明確な目標ももたず、自然エネルギーの利用拡大のカギとなる自然エネルギー発電に関する固定価格買い取り制度の導入を拒否しています。そればかりか、「福田ビジョン」では原発の新増設を今後のエネルギー対策の優先課題としています。日本にとって自然エネルギーの普及は、原油・石炭など輸入エネルギーの需要増・高騰がすすむもとで、経済基盤の安定のためにもエネルギー自給率の引き上げがもとめられているという点からも急務です。
化石燃料偏重・原発だのみから脱却し、自然エネルギー重視へと、エネルギー政策の抜本的転換が必要です。
自然エネルギーの割合を二〇二〇年までに15~20%とする導入目標を明らかにする
EUが二〇二〇年までに第一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのをはじめ、世界的に見ても、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの普及が本格的な流れになっています。こうしたなかで、日本だけが自然エネルギーの普及に背をむけ、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。二〇二〇年までに一次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を15~20%に引き上げることを明記した「自然エネルギー開発・利用計画」を策定し、自然エネルギーの開発・利用に取り組むべきです。
自然エネルギーから得られる電気やガス、将来的には水素などを販売することで、その地域には新たな収入が生まれます。ドイツでは、自然エネルギーの普及によって年間一億トンの二酸化炭素を削減するとともに、二十一・四万人の雇用と年間三・七兆円の売り上げなど、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出し、事業の成果や副産物を地元に還元しています。自然エネルギーの普及は、地域経済対策としても大きな転換となります。
自然エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度を早急に導入する
自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度の導入がカギです。固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給される電力の買い上げ価格を市場まかせにせず、一定期間(たとえば二十年間など)保障する方式です。EUのなかでも固定価格買い取り制度が導入されたドイツ、デンマーク、スペインでは、自然エネルギーの普及が急速にすすみ、世界をリードしています。国が廃止(〇五年)した住宅用太陽電池パネルの設置補助金を復活させるとともに、固定価格による買い取り制度を実施するための財源には、原発に偏重した電源開発促進税(〇八年度=三千四百八十億円)の見直し分や環境税の税収などをあてます。
また、廃熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションの導入を積極的に支援すべきです。
温暖化対策を口実にした原発推進政策は危険であり、転換をもとめる
政府は、原発を「温暖化対策の切り札」だとして、電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています(経済産業省「長期エネルギー需給見通し」)。しかし、事故や災害、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止があいついでいるように、原発は決して安定的な電源ではありません。しかも原発事故とそれによる環境破壊の危険性は重大な問題であり、原子炉から出てくる放射性廃棄物も、その処理・処分方法が未確立なため、環境汚染の危険性を軽視できません。また原発などの地下に活断層があることも次つぎと確認や指摘がされ、政府、電力会社のこれまでの原発立地のあり方がきわめて無謀なものであったことも、実証されつつあります。さらに、こうした安易な原発依存の姿勢が、自然エネルギー開発を異常に立ち遅れさせた一因となってきたことも、忘れてはなりません。
このような危険な原発推進政策をやめ、技術的に未確立で、十分な安全性の保証がない原発からは、計画的に撤退すべきです。
国民の世論と行動で、持続可能な経済・社会をめざして踏み出す
いま、国民のなかで地球温暖化問題への関心が高まり、自分たちの生活を見直し、環境にやさしいライフスタイルに転換することによって、現在の地球と将来の子どもたちに対する責任をはたそうという声と取り組みが広がっています。各種の世論調査でも温暖化の被害を心配する世論は九割をこえ、照明やシャワーなどの節約、冷暖房の控えめな使用、レジ袋を減らすマイバッグの持参など、八~九割の人が何らかの形で努力しています。
「大量生産・大量消費・大量廃棄」を大もとからただす
こうした国民一人ひとりの努力を真に実らせるためには、大企業の利潤第一主義のもとで、国民生活に「大量生産・大量消費・大量廃棄」の風潮が意図的に持ちこまれてきたことを正面からとらえ、この風潮を大もとからただす仕事に本格的に取り組む必要があります。部品がなくて修理ができず次つぎに捨てられる家電製品、約二台で通常の家庭一世帯分のエネルギーを消費する自動販売機や、家庭の十一倍の二酸化炭素を出すといわれるコンビニエンスストアの二十四時間営業、深夜の過剰なライトアップ、深夜労働や生産施設の二十四時間稼働という「労働のあり方」など、この問題はさまざまな面にあらわれています。
生産から流通、消費、廃棄までのすべての段階について、温室効果ガスを削減して地球温暖化をくいとめ、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を社会全体の努力でつくりあげるという視点から大胆に見直すことがもとめられます。国の将来にかかわる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定することも当然検討すべきです。
「人にやさしく環境を大事にする社会」をつくる視点で経済と社会を見直す
日本や世界の各地で地球温暖化問題に取り組む先進的な経験も生まれ、その先頭にはNGO(非政府組織)が立っています。こうした経験からさまざまな教訓を学び、それを広げ生かすネットワーク=共同の輪を広げることもますます大事になっています。温暖化抑止のために何ができるのか、地域・職場・学園など草の根のレベルで話し合い、知恵と力をあつめて行動をおこすことも大きな意義をもちます。
地球温暖化対策は、経済や社会、政治のすべてにおよぶ総合的な課題、将来の社会のあり方にもかかわる根本問題であり、それを確実に実行するには広範な社会的合意が不可欠です。EUでは、温暖化対策を経済・社会の「持続可能な発展戦略」のトップ課題に位置づけたうえ、実際の経済・社会政策も、「温暖化対策を通じた成長と雇用の促進パッケージ」というように、常に温暖化対策と関連づけてうちだしています。こうした取り組みの土台に、「利潤第一の考え方では温暖化は止められない。社会システムの根本的改革が必要だ」(ドイツ連邦議会・環境委員会副委員長の日本共産党欧州調査団への説明)という立場から取り組む考え方があることも、わが国の対策を考える上で学ぶべき大事な点です。
地球温暖化対策を、将来の日本社会のあり方を探求する総合的な戦略・政策の重要な一環に位置づけ、エネルギー・地域振興・雇用・福祉・交通・農業・税制・日本と世界の安定など各分野の政策をそれと有機的に結びつけて確立し、国民の合意を得ながら着実にすすめてゆくべきです。
日本共産党は、地球温暖化の進行を憂える内外のすべての人びとと力をあわせて、地球温暖化をくいとめ、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を実現するという人類的課題の推進に全力で取り組みます。
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