父が寒いので何か羽織る物が欲しいという
私は 私の服の中から父が着られるようなサイズのものがあるだろうかと探す
そんな夢を見た
家は 両親が亡くなってからも 庭を除けばほとんどそのままだ
いつあの世から戻ってきても その瞬間から以前と変わらぬ生活が出来るようになっている
なっている のか そうしてしまってきているのかは定かでは無いけれど
眼鏡も 読みかけの本も 病院から出された薬も(いくつかは捨てたけれど) あるべき場所にそのままに
だから目が覚めて なんだ 父の服ならまだまだ残ってるじゃないの と苦笑した
あっ もう一つ変わったもの
位牌が二つ増えたんだった
ノンフィクション・ライターの沢木耕太郎に「無名」という作品がある
有名人である彼の「無名」で終わった父親について書かれたものである
父親の趣味でもあった俳句を随所にちりばめ それは私立探偵がかすかな証拠を求めて犯人を捕まえるがごとく
また 息子である自分と父との思い出を振り返り 決して完全にはわかるはずもないが
それでも 父を深く知りたいという思いは 決して甘ったるい感情ではなく
つまるところ 尊敬と畏怖の念を抱く父親との関係を通して 彼の人物像を描くだけではなく
自分を振り返る旅「深夜特急・臨時列車」でもあったのだろうと私には思える
そして その列車は 父を失った時が発車時刻となるものなのだろう
来週の日曜日は「父の日」である
「母の日」は先にやってくるし 誕生日も一日だけ母のほうが早かったから 当然先にプレゼントをもらうことになる
そんな時 半分冗談で お前ばっかりいいなぁ~ などと言ったりしていた
母は 何言ってるの あなただってちゃんともらってるじゃないの と返していたものだ
それで大人になってからは こちらが忙しくなったこともあり 全てまとめて同じ日にすませることにした
幼少期に きょうだいの中で何故か自分だけが母方の祖父母の家で育った父は 僻みっぽいところがあった
(その何故かに深い意味があったと最期に父が言ったことは 真相は定かではないが忘れられない)
どんなに祖父母に可愛がられようとも 一番必要とした時に親の愛情を受けられなかったことが
そして その生活の中で彼の性格も人生の処し方も決まってしまったことが 彼の核には確かにあった
だが その全てが悪かったわけでもないと 私は感じている
あの世に行くのも母に先手を取られた父は 俺を見送る家族は二人になってしまったじゃないかと僻んだはずだ
だから 霊柩車は母の時と同じリンカーンを選び 結果 葬儀の費用もほとんど同じになって私は妙な安心をした
今 父が僻むとしたら なんだろう
思い出すなら母と同じ回数だけを なんて言うのかもしれない
大丈夫だよ それは
だって思い出のほとんどは 二人でワンセットなんだから
私は 私の服の中から父が着られるようなサイズのものがあるだろうかと探す
そんな夢を見た
家は 両親が亡くなってからも 庭を除けばほとんどそのままだ
いつあの世から戻ってきても その瞬間から以前と変わらぬ生活が出来るようになっている
なっている のか そうしてしまってきているのかは定かでは無いけれど
眼鏡も 読みかけの本も 病院から出された薬も(いくつかは捨てたけれど) あるべき場所にそのままに
だから目が覚めて なんだ 父の服ならまだまだ残ってるじゃないの と苦笑した
あっ もう一つ変わったもの
位牌が二つ増えたんだった
ノンフィクション・ライターの沢木耕太郎に「無名」という作品がある
有名人である彼の「無名」で終わった父親について書かれたものである
父親の趣味でもあった俳句を随所にちりばめ それは私立探偵がかすかな証拠を求めて犯人を捕まえるがごとく
また 息子である自分と父との思い出を振り返り 決して完全にはわかるはずもないが
それでも 父を深く知りたいという思いは 決して甘ったるい感情ではなく
つまるところ 尊敬と畏怖の念を抱く父親との関係を通して 彼の人物像を描くだけではなく
自分を振り返る旅「深夜特急・臨時列車」でもあったのだろうと私には思える
そして その列車は 父を失った時が発車時刻となるものなのだろう
来週の日曜日は「父の日」である
「母の日」は先にやってくるし 誕生日も一日だけ母のほうが早かったから 当然先にプレゼントをもらうことになる
そんな時 半分冗談で お前ばっかりいいなぁ~ などと言ったりしていた
母は 何言ってるの あなただってちゃんともらってるじゃないの と返していたものだ
それで大人になってからは こちらが忙しくなったこともあり 全てまとめて同じ日にすませることにした
幼少期に きょうだいの中で何故か自分だけが母方の祖父母の家で育った父は 僻みっぽいところがあった
(その何故かに深い意味があったと最期に父が言ったことは 真相は定かではないが忘れられない)
どんなに祖父母に可愛がられようとも 一番必要とした時に親の愛情を受けられなかったことが
そして その生活の中で彼の性格も人生の処し方も決まってしまったことが 彼の核には確かにあった
だが その全てが悪かったわけでもないと 私は感じている
あの世に行くのも母に先手を取られた父は 俺を見送る家族は二人になってしまったじゃないかと僻んだはずだ
だから 霊柩車は母の時と同じリンカーンを選び 結果 葬儀の費用もほとんど同じになって私は妙な安心をした
今 父が僻むとしたら なんだろう
思い出すなら母と同じ回数だけを なんて言うのかもしれない
大丈夫だよ それは
だって思い出のほとんどは 二人でワンセットなんだから