みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

読書日記 今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 弱さ受容する自殺希少地域/「ピカイチ事典」と紅芋のすいーとぽてと

2016-12-21 21:58:15 | ジェンダー/上野千鶴子
きょう12月21日は二十四節気の「冬至」(とうじ)。
1年で昼が最も短い日です。
冬至には柚子風呂にはいったり、かぼちゃを食べたり、
と地方によって風習があるそうです。

ところで、、昨日の毎日新聞夕刊のテレビ欄に
上野千鶴子さんのカラー写真を見つけました。
毎週火曜日に掲載される「読書日記」、上野さんの番でした。

  読書日記 今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 
弱さ受容する自殺希少地域

毎日新聞2016年12月20日

*11月22日~12月19日
■生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある(岡檀著・2013年)講談社・1512円
■その島のひとたちは、ひとの話をきかない 精神科医、「自殺希少地域」を行く(森川すいめい著・2016年)青土社・1512円
■オープンダイアローグ(ヤーコ・セイックラほか著、高木俊介ほか訳・2016年)日本評論社・2376円


 障害者雇用促進法で示された障害者雇用枠の達成率が高く、そのなかでも精神障害者の伸び率が高い、という。精神障害へのスティグマ(社会的烙印(らくいん))が相対的に低下しただけでなく、昨今のブラック企業化で追いつめられた人たちがメンタルを病むケースが増えたのだろう。

 どういう条件があると人は自殺するのかについての研究はあるが、どういう条件があると人は自殺しないですむかについての研究は少ない。この問いに画期的な答えを与えたのが、岡檀(まゆみ)さんの「生き心地の良い町」だ。全国でも突出して自殺率の低い地域を対象に、その謎を解き明かそうとした疫学的研究である。新刊ではないが、今やこの分野における古典ともいえる著作。その「自殺希少地域」の特徴はというと、もともと移住者の多い地域であること、いろんな人がいて、つながりがゆるく、集団同調性が低く、好奇心は強いが飽きっぽい……等々の発見を疫学的エビデンスと克明なフィールドワークから明らかにしていく。

 同じ地域に関心を持って訪れた精神科医によるルポルタージュが、森川すいめいさんの「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」だ。岡さんの緻密な研究に比べると、いきあたりばったりに見えるこの探訪記は、紀行文のようでも旅日記のようでもあり、いささかぬるいが、このぬるさがもし精神科臨床の場で発揮されるとしたら、患者にとってはかかってみたい医者のひとりに思えるだろう。

 タイトルの「ひとの話をきかない」は誤解を招きそうだが、岡さんのいう「KYな(空気を読まない)人々」に通じる。だが、「ひとの話を聞かない人々」は、返事を待たずに困った相手に手をさしのべる助け合いのネットワークの中にいることが、ただのKYとは違う。岡さんの本にある「弱音を吐かせるリスク管理術」は、北海道にある精神障害者たちの活動拠点、べてるの家の「弱さの情報公開」に通じるものがあるし、「言葉でなく態度で示す」ことで「弱音を吐いてもよい」人間関係を作ってきたことがわかる。事実、ヨソモノの森川さんに、「困ってるんやろ、なら」と求めもしない助けが次々とあらわれる現場リポートは感動的だ。しかもできることしかしない、というわきまえや控えめさも、この「態度」には含まれている。

 精神科医療の世界で今年最大の事件といえば、フィンランドの精神科医、セイックラさんの来日と多くの専門職の注目を集めたワークショップだろうか。そのセイックラさんの共著「オープンダイアローグ」が翻訳された。日本では同書に先立ち、斎藤環さんを通じて「オープンダイアローグとは何か」(医学書院)が紹介された。わたしはその書評に「言語への深い理解にもとづいた驚くほど平明な実践知」「秘技もなければ秘教もない」と書いた。斎藤さんという熱心な仲介者を得たことは彼らにとっては幸運だが、逆に仲介者抜きにテキストを読むことで知り得たこともある。1対1の精神科臨床には「モノローグ」の権力が発生するのに対し、多職種による介入から生まれる、解答のない「オープンダイアローグ」は、臨床の場を多様で民主的な平場のネットワークへと変える。だからこそ帯にある<あなたは「専門性」という鎧(よろい)を脱ぎすてられますか?>という支援職への問いは、刺さるのだ。支援職という「おせっかいな他者」にとっては、岡さんの研究したコミュニティーとの符合に、腑(ふ)に落ちることがたくさんあるだろう。

 筆者は上野千鶴子、松井孝典、津村記久子、松尾スズキの4氏です。
 ■人物略歴
うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。 


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ちょっと岐阜まで出かけて、
つれあいが用事を済ませているうちに、高島屋でおろしてもらって
自由書房とデパ地下をブラブラ。

通販生活を買おうと思ったら「ピカイチ事典」を見つけたのでこちらにしました。

ピカイチ辞典

遅めのお昼は、また更科に行って、
煮込みうどんと冷やしたぬきそばを食べました。

コーヒーのおともは、「紅芋のすいーとぽてと」。
沖縄からのいただきものです。






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読書日記:社会学者・上野千鶴子さん「育メンがいなくなる時代」/京都でWAN基金の運営委員会

2016-11-24 23:44:38 | ジェンダー/上野千鶴子
WAN基金の運営委員会があって、
京都に日帰りで行ってきました。
会場は京都事務所(中西さん宅)。

夕方からの開催で少しはやく着いたので、
錦市場と寺町通りを散策してきました。

会議前に、手作りの夕食を作ってくださっている、
ということなので、ウオーキングでお腹を空かせて到着。

京都のおばんざいが所狭しと並んでいて、
どのお料理も、お手間入りでとってもおいしそうです。



煮物も薄味でやさしい味なので、
塩分を心配しないで、だされたものを全部食べました。
  


先についた人の食事が終わったころに、
講演会場から直行された、理事長の上野さんが到着。
WAN基金の審査を集中して話し合って、
2時間ほどでぶじ終わりました。

お疲れさまでした&ごちそうさまでした。

ここからは、残れる人たちで懇親会、

わたしは泊まらずに帰るので、
赤ワインを一口だけいただきました。

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ポインセチアの脇の写真にうつっているのは、
上野さんと中西さんのツーショット。

ということで、
火曜日の毎日新聞夕刊の、
上野千鶴子さん執筆の「読書日記」もあわせて紹介させていただきます。
この記事、とてもおもしろいです。

  読書日記 今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 育メンがいなくなる時代
毎日新聞2016年11月22日 

*10月25日~11月21日
■<オトコの育児>の社会学 家族をめぐる喜びととまどい(工藤保則、西川知亨、山田容編著・2016年)ミネルヴァ書房・2592円
■「家族する」男性たち おとなの発達とジェンダー規範からの脱却(大野祥子著・2016年)東京大学出版会・4104円
■「育メン」現象の社会学 育児・子育て参加への希望を叶(かな)えるために(石井クンツ昌子著・2013年)ミネルヴァ書房・3240円


 育児に「協力する」と言ったとたん、妻はキレル。あなたの子どもでしょ、当事者意識がない、と。「手伝う」もアウト。最近の若い父親たちは、地雷を踏まないように、口のきき方に気をつけなければならない。

 男性の社会学者ばかり12人が集まって書いた共著が「<オトコの育児>の社会学」。男性の家族社会学者がしたり顔で育児について論じる本はこれまでもあったが、自分自身の「父になる」という経験を通じて育児を論じる研究書はこれが初めてだろう。各論文の冒頭に、そのつど何歳と何歳の何児の父、という自己紹介が載っているのも新鮮だ。こんなの、これまで見たことがない。ほほお、研究者といえども今どきは妻から育児を免除してもらえないのだな、と感じる。

 業績主義の男たちにとっては、赤ん坊という自己チューで全面的に相手に合わせなければならない相手にふりまわされるのは、初めての経験だろう。「いいとこ取りの育児」とか「なぜイクメンが増えないか」という自己批判もある。とはいえ、なんだかなあ……。「オトコ」とカタカナ表記するのも含めて、及び腰の姿勢が見えてしまうのはなぜだろう。女性の書いた育児書にくらべて切羽詰まった感がしない。些細(ささい)な経験を大げさに書いたり、性別を問わず誰が書いても同じ記述になるような章もある。こういうぬるさも、育児ビギナーに免じて大目に見てやらなければならないのだろうか。

 大野祥子さんの「『家族する』男性たち」は心理学からのアプローチ。「家族は『家族する』ことで家族になる」は至言だ。仕事優先の業績主義は、男のアイデンティティーに深く組みこまれている。「育児のために仕事を調整する」経験はすべての女性がしているのに、男たちはそうしない。

 そこから脱却できた「仕事相対化群」の男たちには、過酷な職場からの離職や妻のキャリアアップのための進学などの「転機」がある。家族を大事にする男の満足度に「妻の稼得役割」への期待がからんでいると聞けば、社会学者ならただちに年収を考える。心理だけが説明要因ではない。男の生活充実感が自分の稼得への自己効力感から来ているとあれば、大野さんの研究は逆説的に、男が世帯を養うに十分な稼ぎを得ているあいだは、男が「家族する」ことに価値をシフトさせることはなさそうだという結論を導くことだろう。

 プレジデント社の雑誌「プレジデントファミリー」から取材を受けた。企業幹部も「育メン」「育ボス」化しているのか、と思ったが、「『育メン』現象の社会学」の著者、石井クンツ昌子さんに、さる学会で「男性の育児参加が増えているのは、母親も父親なみに業績主義的な育児観を持つ方向にジェンダー差が縮小しているからではないか?」と質問したら、そのとおり、と答えがかえってきた。知育に偏重した「オトコの子育て」は子どもには受難だろう。

 とはいえ、大野さんも石井さんも、父親の育児参加は妻のストレスを低下させ、家族との関係をよくし、長期にわたって男性の幸福感を増すことを強調する。3冊がすべて同意しているのは、理想は「育メンがいなくなる時代」だということ。男の子育てがあたりまえになれば、「育メン」という名称もなくなる。父親でなければできない育児なんてない。父親も母親もケアという同じ行為をすること……それ以外の子育ては、ない。

 筆者は上野千鶴子、松井孝典、津村記久子、松尾スズキの4氏です。

 ■人物略歴
うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。


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親子断絶防止法の案 親子関係維持のみでは子どもは生活できない(赤石千衣子)/親子断絶防止法案の問題点(千田有紀)

2016-11-09 20:30:32 | ジェンダー/上野千鶴子
米大統領選は「共和党ドナルド・トランプ氏が勝利」の報道を見て、
アメリカよお前もか、と気が重くなりました。

世界が民主主義から遠のく方向へすすんでいるとしか思えません。

米大統領選についてはすぐに取り上げる気にならないので、
きょうは日本の法案がテーマです。

超党派の国会議員でつくる「親子断絶防止議員連盟」で検討されている
「親子断絶防止法案の案」(離婚後の父母との継続的な関係維持促進法)。
制定を推進する団体がある一方で、問題点を指摘する意見もあります。

この法案について、わたしも危惧する立場の一人です。

友人の千田有紀さんと赤石千衣子さんが、この法案の問題について、
分かりやすく整理してまとめて見えますので、紹介します。

  親子断絶防止法の案 親子関係維持のみでは子どもは生活できない
赤石千衣子 | しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 
2016年11月4日  yahoonews

わたしは、9月30日朝日新聞で、『「親子断絶」防ぐ法案に懸念』という記事を書いた。

この欄としてはかなり注目をいただいた。
この記事では文字数の関係もあり、なかなか伝えきれなかったことを、何回かにわたってお伝えしたいと思う。

親子関係の維持をするのはいいことだ、と素朴に思っている方は多いと思う。
わたしも、子どもと親の交流は基本的にはよいことだと思っている。
しかし、法律をつくるとなると、いろいろな事情がある親子すべてに適用されるのだから、だれにとっても納得のいく、権利を侵害しない法律でなければならないのだ。
いま準備されている法案の案はとても、そうはなっていないのである。
「親子断絶防止法案の案」の理念がまず不適切

いわゆる「親子断絶防止法法律案の案」(離婚後の父母との継続的な関係維持促進法)は、「父母の離婚等の後も子が父母と親子としての継続的な関係を持つことが原則として子の最善の利益に資するものであるという基本理念に基づいて、父母がその実現に責任を有するという法律の建てつけがある。
平和に面会交流ができれば、それはのぞましい。
だがそもそも、この親子関係の維持という理念のみによって、子どもの最善の利益が実現できるのだろうか。
わたしは自身ひとり親家庭で男の子を育ててきてその後シングルマザーと子どもたちの支援活動を行っているところから、ひとり親家庭の生活の困難を間近に感じてきた。
ひとり親家庭の相対的貧困率は54.6%である。相対的貧困とは、所得の中央値の半分以下で生活していることである。
この数字は先進国で、最も最悪の数字である。
なぜなのか。それは世界経済フォーラムが10月末に発表した、ジェンダーギャップ指数の日本の順位とも深く関わる。日本は男女の格差が145か国中111と大きく、特に経済的な格差と政治的な格差が激しい国である。

【ジュネーブ=原克彦】世界各国の男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本の順位は調査対象144カ国のうち111位だった。前年より10下がり、過去最低の水準になった。
出典:日経新聞


こうした男女格差のもとシングルマザーも就労収入が少なく、経済的に困窮している人が半分以上となるわけである。

近年、こどもの貧困対策にも、政府はだいぶ力を入れてきている。児童扶養手当など経済支援についても充実した。しかしまだまだ不十分でやるべきことはたくさんある。
しかし、こうした流れに、この法律の案は全くコミットしていないようなのである。
こうした、離婚後の子どもの経済も含めた生活のことに関与しないで最善の利益は実現できるのだろうか。

子どもの貧困対策法ができて、ひとり親家庭の苦境にもやっと光が当たってきた。
残念ながら、親子関係の維持よりも、まず、明日食べていかなければならない、生活を維持していかなければならないひとり親家庭がいかに多いか。
毎日、私たちの団体の電話相談には、食べていけない、派遣の仕事が契約切れで更新されないがどうすればいいか、子どもが小さくて十分に働けないが養育費も低額にしか決まりそうもないので生活保護しかないのか、といった相談がある。
面会交流をすることを調停などで迫られても、まずは、住まいを安定させ、子どもの保育園や学校を確保し、仕事を見つけなければならない母子がいかに多いか。日々が必死なのである。
まず生活が安定しなければ、親子の関係を維持するための、面会するだけの時間、精神的余裕など生まれない。
その視点がすっぽり抜けていて、親子関係を維持すれば子どもは幸せになる、という脳天気な法律を作ろうとしていることに、心底驚いてしまったのだった。
脳天気というより、子どものことを考えている、考えている、と言いながら、本当には子どもたちの状況を見ていない法律なのではないだろうかという疑念がわいてくる。

もしも、離婚後(この点も不十分なのであとで触れるが)の子どもの最善の利益を追求するのであれば、まずは、そうした子どもたちの苦境も含めた、総合的な法律、これは先日インタビューさせていただいた、早稲田大学の棚村政行先生(民法)も話してくれたが、総合的な生活支援、面会交流も含めた養育支援(ということばが適切かなあとも思うが)を内容として、最善の利益を追求しなければならないのではないだろうか。

そうすれば、子どもの貧困対策ともしっかりリンクしていくのである。

なぜ離婚後等の子どもだけなのか。婚外子は排除するのか

法律の対象についても、議論があるだろう。
ここには、親と離れて暮らす子どもたちと父母すべてではなく、離婚後親と離れている子どものみを対象としている。
しかし、婚外で出生する子どももいる。
ふたおやと暮らしていない子どももいる。
親がわからない子どももいる。
それこそ、子どもの権利条約を活かして、すべての子どもたちを包括的に対象とすべきではないか。
ここでも、婚外子を排除してしまうことで、法律が脆弱となってしまう。
平成23年の全国母子世帯等調査によると、母子世帯のうち、離婚が80%、未婚の出産による母子が7.8%、死別が7.5%と婚外の出産による子どもは増えている。

この7.8%は、この法律の埒外でよいのだろうか。
婚外子は父親が認知をすれば父子関係は成立する。養育の義務もある。
この子どもたちの中にも、お父さんと会いたいという子どもと母親もいるが実現できていない子もいるし、個々のさまざまな事情がある。
また婚外で生まれたこどものいる母子家庭は、平均年収が格段に低く160万円である。
また、厳しい状況ではあるが、そのほかの事情で親と暮らしていない子どもたちも、たとえば社会的養護の子どもたちのことは、この法律では考えなくてよいのだろうか。
なぜ離婚だけを(別居中は含めたい意向で「等」が入っているようだが)これも法律としての大きな欠陥と思える。
養育費についての取り立て確保が条文にない欠陥

またせっかく子どもの貧困議員連盟でも目標と掲げている、養育費確保について、は「書面による取り決めを行うよう努めなければならない」(6条)で触れられているだけで確保の方策については全く言及していないということも驚いた。

全国母子世帯等調査によると、養育費の取得率は2割以下である。

養育費は4割が取り決めているが、支払い確保方策がひとり親家庭が利用しやすいようにはなされないため、多くのひとり親家庭は泣き寝入りしているのだ。

残念ながら、しんぐるまざあず・ふぉーらむの調査でも、5年後には、取り決めしても半数は払われないようになってしまっている。
元夫が職場を変えてしまえば、どこの会社の給料を差し押さえていいかわからない。元夫の銀行口座がわからないので、何もできない、など訴えをよく聞く。泣き寝入りしている母子は多い。

この状況をどう打開するのかは、子どもの貧困問題解決のためには、(全てではない)が一つの大きな柱であるはずである。

親子関係が維持できれば子どもは食べていけるのか、幸せになれるのか。
親子関係維持だけではなく、子どもの生活、養育全体を支援する法律を作り、国がその義務を負う、という建てつけでなければならないのではないか。
実際のところ、養育費の取り立て確保をしてくのにはたくさんの課題を解決していくことが必要だ。

11月から法制審議会が、養育費の不払いの場合の、義務者の銀行口座の情報を金融機関に開示させるような制度の検討に入るという。
金田勝年法相は12日、法務省で開かれた法制審議会(法相の諮問機関)総会で、裁判で確定した養育費や損害賠償金の未払いを防ぐため、金融機関に口座照会への回答を義務付ける民事執行法の改正を諮問した。来年にも答申を得た上で、2018年の通常国会への改正案提出を目指す。
出典:時事通信


しかし、そもそも養育費の額が低額である問題、取り決め率が低い問題、罰則規定の問題など、制度をつくっていくにはそれなりの手間と時間がかかる。
そのことにもまったく触れないこの法案は拙速すぎるといえないか。

いや、もっと大きな欠陥がある。
誰に義務を負わせるのか。

国ではなく同居親の義務を強調している法案の案
いわゆる「親子断絶防止法案の案」は、子どもの権利条約(児童の権利条約)の理念を援用しているように見える。
しかし、実は見えるだけなのである。
子どもの権利条約は、子どもを権利主体と考え、大人とは別の人格としての権利主体と考え、権利保障していこうという条約である。日本も1994年に批准した。
条約を読んでいただければ、わかるが、子どもの権利条約は、締約国に子どもの権利を守らせるための方策をするよう求めている条約である。

第2条
1. 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
2. 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
出典:ユニセフ


ところが、このいわゆる「親子断絶防止法案の案」は、子どもの権利条約の親子関係の維持についての部分(留保事項は無視)のみ引用し、条約の精神、国の義務をであるところをも知らないふりをし、子どもと同居している親だけに、面会交流義務を負わせている。

第9条
1. 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
出典:ユニセフ


これでは非同居親が同居親に面会の義務を負わせたいがために、子どもの権利条約の都合のよいところだけひっぱってきて、子どもの権利条約の精神については無視しているということになる。
子どもの権利条約を援用するのであれば、親と離れて暮らしている子どもたちの生活、権利、親との面会そのほか総合的な支援について、国が義務を負う、そういう法律をつくるべきではないのだろうか。

'''子どもの意見表明権も無視のご都合主義'''
さらに、子どもの意見表明権は、子どもの権利条約の中心的な概念であるが、このいわゆる親子断絶防止法ではそれも、意図的に、無視し法案の案には盛り込まれていない。
子どもの意見表明権を入れなかったのは、なぜなのだろう。
結局、子どもの意見表明をさせることを恐れているのではないか、と思えてくるのである。 
以上のように、一見、離婚後の親子関係を維持するという、良い法律の案に見えるが、法律の目的、理念だけ見ても致命的な欠陥があり過ぎる。
このままこの法律を通して、そのほかの条約や法律との整合性をどう担保するのだろうか。
法案の案のたてつけからみて、モラハラ法案

これでは、離婚後子どもと暮らせない親が、子どもの権利条約の一部を強引に引用して、子どもと暮らす親と子どもに、法律という強制力を使って、無理やり、離婚後の関係の維持を迫る、いわば法律によるモラハラのように見えてくるのである。 


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千田有紀 
武蔵大学社会学部教授(社会学)
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、 武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。
 

親子断絶防止法案の問題点―夫婦の破たんは何を意味するのか 千田有紀 (2016年10月8日 yahoonews)

離婚した親に求められる覚悟―親子断絶防止法の問題点(2)千田有紀 (2016年10月20日 yahoonews)

誰もがTOKIOの山口達也さんにはなれないー親子断絶防止法案の問題点(3)千田有紀 (2016年10月28日 yahoonews)

裁判所の現状と虚偽DVや片親疎外論ー親子断絶防止法案の問題点(4)千田有紀 (2016年11月6日 yahoonews)

親に会いたくない子を更生施設に入れるアメリカ、離婚に何年もかかるヨーロッパ千田有紀 (2016年11月8日 yahoonews)
 


 面会交流等における子どもの安心安全を考える全国ネットワーク
「親子断絶防止法案」が親子断絶防止議員連盟において検討されています。
このサイトは、現時点で議連で検討されている「法案」に問題があると考える「面会交流等における子どもの安心安全を考える全国ネットワーク」が運営しています。
 


この法案の問題点はあまり知られていないので、
多くの人に知ってほしいと思っています。

話しは変わりますが、
近くに鮮魚と野菜の安売りスーパーができたので、
ときどき新鮮でお値打ちな魚がないか、見に行くようになりました。

ブリと大根を買ったので、
ブリ大根とお揚げと大根葉の炒め煮をつくりました。
  




冷凍しておいた目黒大豆煮も解凍して一品できたので、
安くて、おいしくてヘルシーな夕食ができあがりました(笑)。

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【悩みのるつぼ】Qケンカしたことがありません:A(上野千鶴子)ホンネトークの練習をしてみて/リクライニングベッド「ルーパームーブ」

2016-11-06 20:52:20 | ジェンダー/上野千鶴子
11月5日土曜日の朝日新聞beの
「悩みのるつぼ」の回答者は上野千鶴子さんの番。

「自分のキモチを大切に」、共感します。

  【悩みのるつぼ】ケンカしたことがありません
2016年11月5日 朝日新聞be

●相談者 女性 29歳
 29歳の女性です。
 私はこれまで人とケンカをしたことがありません。腹がたっても納得がいかなくても、自分の心の中で怒りを鎮めて終わります。周りからは穏やかな人だとよく言われますが、本心を見せていない自分のことを気持ち悪く感じている自分もいます。

 親や兄弟とも、これまでおつきあいした男性とも、真っ向からぶつかることをしてきませんでした。そのため仲直りの仕方もよくわかりません。

 しょっちゅう彼氏やダンナさんとケンカをしては、その度に仲直りを繰り返してケンカする前より愛を深めている友人たちを見て、うらやましいと思ったことも多々あります。

 ただ、30年近くこうして生きてきたので、いまさらケンカをしようものなら、周囲から「あの人はおかしくなった」と思われるのではないか、と恐れています。自分の問題点は、いつも周りからどう見られているかを気にしすぎてしまうことかもしれません。ケンカをしてこなかった理由も、すぐに怒る人と思われることへの恥ずかしさもあったと思います。

 この先もこれまでと同じようにケンカをせず(とはいえ、心の中では不満を抱えて)おとなしく生きるべきか、それとも感情をあらわにして生きるべきか。真剣に悩んでおり、アドバイスをちょうだいしたく投稿させていただきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ○回答者 社会学者・上野千鶴子
 ホンネトークの練習をしてみて


 そうですか、30年間、ケンカをせず、怒りを収めて周囲から「穏やかな人」と思われて過ごしてきたんですか。女性の平均寿命はおよそ90歳。あと残りの60年間を同じように過ごせたら、あなたは周囲から「聖人君子」と思われることでしょう、合掌。

 そうはとうていできそうもない、と思われたから、ご相談くださったんですね。怒りや不平不満は、ため込んだら、カラダにも美容にも悪いです。周囲だってそれに気がついていないとは限りません。もしかしたら、あなたは周囲から「穏やかな人」ではなく、何を考えているかわからない「えたいの知れない人」と思われているかもしれませんよ。自分がキモチ悪く思っていることは、他人もキモチ悪く感じているはず。本心を見せないあなたは、他人からも本心をぶつけられることがないでしょう。そして結局、誰からも信頼されることがないでしょう。それでもよければ、一生お友だちのいないおひとりさまで過ごすのもアリですが、そんな自信はありますか?

 何かがおかしい、と感じている今が転機です。「周囲が気になる」のは、プライドが高すぎるか、自信がない証拠。実は同じコインのウラオモテですけれど。自分を防衛しているんですね。守るほどの自分もないと思えば、「恥ずかしさ」は捨てられます。これまで関わってきた相手に「変身」したことを知られるのがイヤなら、サークルやグループで新しい人間関係を作って、そこで変身してはいかが? 恥をかいてもいい人間関係を作って、少しずつホンネトークを練習してみてください。何事もオン・ザ・ジョブ・トレーニング。30年使わなかった怒りのスキルは錆(さ)びついていますから、少しずつ学んでいきましょう。

 ちなみに「怒る人」と思われているわたしは、そのせいでソンをしたことが一度もありません。イヤな男は避けて通ってくれるし、セクハラに遭う確率も低いです。「穏やかな人」はつけこまれやすい人でもありますよ。

 今から感情表現のスキルを磨くには、失敗もあります。だからこそ失敗してもよい(いつでも避けられる)環境で練習しましょう。でも決して遅くありません。あなたはすでに怒りを抑える訓練はできているのですから、感情の解放と抑制、両方のコントロールができればいいだけ。自分のキモチを大切に、美容と健康によい人生を今後、送ってくださいますように。 


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ところで昨日の午後、
神戸の配送やさんからベッドが届きました。

先日、名古屋までフランスベッドのショールームに行って、
注文してきた「ルーパームーブ」です。

 ルーパームーブ(フランスベッド)
  
このマットレスは、2モーターリクライニング機構を内蔵したすぐれもので、
頭と足を高くすることができます。

30年ちかく使ったクイーンのベッドのマットレスが
少しへたってきたので、マットだけ買い替えるか、
シングルを二つ並べるか思案していて、見つけたベッドです。

わたしは逆流性食道炎があるので、リクライニングベッドが欲しかったですが、
ベッド自体が動くものは、介護用のような大げさなものか、
数十万もする高価なものが主流。
マットレスが信頼できるフランスベッドでも、
マット自体が動くのはこれだけ。
ベッドの上に置いても床に置いても使えます。

ベッドとして置く位置が決まってないので、
とりあえず、座卓の上に置いてもらいました。

ベットパットはついていない、まっ白なヌードの状態なので、
とりあえず、汚れないようにカバーをかけて、寝試し。
  
モーターの音も静かで動きもスムーズ、
頭と足は別々に動き、無段階なので好みの高さに調節できます。

昼寝用に使ってみたら、知らぬに眠ってしまいました(笑)。

スプリングの堅さも柔らかすぎずちょうどよく、
今つかっているベッドと似た感じで快適です。

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【悩みのるつぼ】Q保健室に通うやっかいな子:A(上野千鶴子)「聴いてあげること」が大事/初秋の花たち

2016-09-11 18:16:57 | ジェンダー/上野千鶴子
昨日の朝日新聞beの「悩みのるつぼ」は、
上野千鶴子さんが回答者でした。

30代の中学校教師の「やっかいな問題のある生徒」という表現と質問内容に、
「えっ、こんな教師いやだな」と思ったのですが、
上野さんの「もしわたしに子どもがいたら、あなたのような教師のいる学校には預けたくありません。」
というきっぱりとした言葉に、溜飲が下がる思いがしました。

 【悩みのるつぼ】保健室に通うやっかいな子
2016年9月10日 朝日新聞be

○相談者 公立中学校教師 30代
 30代後半、公立中学校の男性教諭です。
 やっかいな問題のある生徒にどう対応したらいいか、ほとほと困っています。それは授業を受けず、保健室のベッドに寝に来て、自分勝手に時間をつぶしている生徒です。
 「疲れた」もしくは「頭が痛い、体の具合が悪い」などと理由をつけて怠けています。
 だったら、早退して医者に診てもらえ」と言うと、「少し経ったら治るかも知れない」などと言って、結局保健室にずっと入り浸りです。
 養護の先生からは「文句を言ったり、自分勝手なことをしたりして仕事ができない。担任の先生が何とかして」と半ば責められています。ですが、どうしていいのかわからず、そんな日が毎日続いています。
 「しょせん、よその子」と、自分には何ら関わりのない生徒のことで悩んでも仕方がない、と思うようにはしているのですが、それでもイライラはおさまりません。
 こういう生徒はごく少数で、ほとんどの生徒はいざとなったら話せばわかってくれます。だから、ほとんどの生徒のために力を尽くすことだけ考えようと思うことが常にあります。
 考え方をどう切り替えたらいいでしょうか。イライラして腹立たしい気持ちから解消されるのでしょうか。
 よろしくお願いします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ○回答者 社会学者・上野千鶴子
 「聴いてあげること」が大事


 ううむ。もしわたしに子どもがいたら、あなたのような教師のいる学校には預けたくありません。昔から「手のかかる子ほどかわいい」って、言うじゃありませんか。「やっかいな生徒」ほど萌(も)える、おっと燃えるのが、プロフェッショナルな教育者というもの。自分の担任の生徒を「しょせん、よその子」って。そりゃないでしょう。

 子どもは自分の問題を訴えるのに「ボキャ貧」ですから、カラダの不調で訴えます。この生徒さんは、学校へ来るのだってつらいでしょうに、保健室へ行けばますます教室へ足が遠のくでしょうに、それでも学校へ来て、それでも教室へ入れず、それでも保健室でようよう過ごし、「頭が痛い、体の具合が悪い」って、何かを必死になって、訴えてるんでしょうね。「体の不調」を文字どおり取るなんて、人間理解の初歩にも至りません。その背後に、何かいりくんだ隠された事情があることぐらい、カウンセリングの世界では常識。それを真に受けて「医者に行け」だの「休んだら」は見当違い。ましてや「怠けてる」なんて誤解もはなはだしい。ほんとに怠けてるなら、わざわざ学校へ来ないでしょう。

 ほんとはこういう機微に立ち入るのが担任にはできない、養護の先生のお役目。「仕事ができない」どころか、何かを訴えて保健室に来る子の相手をするのが「仕事」でしょ。

 こうやってお互いに責任をなすりつけあうのが今の学校なのかと暗澹(あんたん)たる思いです。これじゃ、生徒にも親にも信頼されそうにありませんね。

 大事なのは「話せばわかる」ことではなく、「聴いてあげる」こと。子どもはオトナに「聴かれて」いません。わたしも、よくおしゃべりしていると思っていた学生から、ある時「センセイ、ボクの言うこと、聴いてない」と言われて、ドキンとしたことがあります。強者の側から見た相互理解って、一方通行のことが多いものです。

 問題の生徒さんは学校へ出てきているのですから、引っ張り出すテマが要りません。「どうしたの?」「どうしたいの?」とじっくり聴いてあげてください。ただし安全な環境で。頭ごなしに否定しないで。「通訳」が必要なら学校カウンセラーのような第三者に頼んでもいいでしょう。この子が自分の子なら……あなたは見捨てることなんてできないはず。手のかからない「普通の子」より、きっとやりがいを感じるでしょう。 


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今年の夏は外に出ないようにしていたので、
庭に植えた花も少ないのですが、 宿根草が花をつけ始めています。

毎年、秋になると忘れずに咲いてくれる花たちです。

ホトトギス


  

吾亦紅(ワレモコウ)


  
仙台野萩と白萩
  

シュウメイギク「パド・スワン」


  

ヒペリカムの種   

タマスダレ(玉簾)。
花を玉に、細長い葉をスダレに見立てた名前。
学名は「ゼフィランサス・カンディダ(ヒガンバナ科)」。

夏の終わり頃から秋にかけて、白色の花をたくさん咲かせます。

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読書日記 社会学者・上野千鶴子さん 原発は政治、事故は人災

2016-09-01 18:07:02 | ジェンダー/上野千鶴子
岐阜に行く用事があったので、
高島屋11階の「あかさたな」で昼ごはん。

わたしは、極細麺のごまラーメンセット、

つれあいは、平打ち麺の冷やし中華単品。
ちょぼ焼きはもうやいっこ、白玉みつまめはセットのデザート。


数日前もホームセンターバローメガストア羽島インター店で外食。

つれあいは、寿がきやの冷やしラーメン。
なぜかいつも冷やし中華系ですね(笑)。

わたしはお好み焼きミックス。


オマケ。今年初めて食べたいちごミルク。
ふわふわでおいしかったです。

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ところで、
毎日新聞夕刊に毎週掲載される「読書日記」。
今週の筆者は上野千鶴子さんでした。

もちろん「原発は政治、事故は人災」の記事の内容もよかったのですが、
ヘルメットをかぶったカラー写真もgoodです。

  読書日記
今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 原発は政治、事故は人災

2016年8月30日 毎日新聞

*7月12日〜8月29日
 ■原発のコスト エネルギー転換への視点(大島堅一著・2011年)岩波新書・821円
 ■原子力損害賠償制度の研究 東京電力福島原発事故からの考察(遠藤典子著・2013年)岩波書店・6696円
 ■原子力発電と会計制度(金森絵里著・2016年)中央経済社・4104円 


 伊方(いかた)原発再稼働の報を聞きながら本稿を書いている。電力会社の予測では、盛夏のピーク時電源にも不足は見られず、電力消費を抑制するよう呼び掛ける必要がないにもかかわらず、住民避難の不安を残して、制御棒は引き抜かれた。フクシマ以後、絶対安全神話は崩壊したというのに。

 大島堅一著「原発のコスト」は、2012年の大佛次郎論壇賞を、遠藤典子著「原子力損害賠償制度の研究」は14年の同賞を受賞した。遠藤の本は読まなければと思いながらその本の厚さに先延ばしにし、夏休みの宿題にしていた。もう1冊、金森絵里著「原子力発電と会計制度」も宿題に取っておいた本だ。

 大島の新書はわかりやすく書かれている。経済産業省試算による各電源の発電コスト比較によると、原発は最も安い、とされてきたが、この試算には大きな問題が隠されている。発電事業に直接要するコストのみをカウントし、社会的コスト(税金によって支払われる政策コスト)が含まれていないからである。ここに国策推進による技術開発コストと巨額の交付金という立地対策コストを含め、さらに天文学的数字にのぼる原発事故損害賠償コストを加えると、原発はあらゆる電源のなかで最も高くつく電力となる。

 原発の発電コストにいくらかかっても、電力会社が痛痒(つうよう)を感じないのは、かかった原価に一定の利益率を上乗せして電力料金を設定できる総括原価制度というマジックによる。電力会社は、民営化され地域ごとに分社化されているのに、実際には完全に地域独占企業だから、消費者には選択の自由はない。競争相手がおらず、広告訴求をしても市場が拡大するわけでもないのに、電力会社が不相応に高額の広告宣伝費を使うのは、メディアの買収のためとしか思えない。

 原発コストの試算はどれもモデルプラントにもとづく予測値であり実績値ではない。そこに金森は会計学というアプローチから実績ベースで原発のコストに迫る。財務諸表を見れば会社がわかる……はずなのに、工事償却準備引当金、使用済燃料再処理引当金、施設解体引当金−−等々の複雑怪奇で、ご都合主義的な制度の導入で、企業会計はいかようにも操作可能になり、したがって、株主に対しても、消費者に対しても説明責任を果たせないものとなった。その結果は信頼の不足である。

 遠藤はフクシマの原発事故以後の原子力損害賠償をめぐる政策構築を、欠陥だらけの原賠法制定に遡(さかのぼ)って解き明かす。そして損害賠償のための支援機構設立という、ミナマタの公害処理と同じ行政手法、「国家は責任を負わないが実質的に被害者を救済する」という間接処理を採用するに至った過程を、当の政策立案者たちへの詳細なインタビューによってあきらかにする。なぜ東京電力は「異常な災害による免責条項」の適用を断念したのか? なぜ東電は破産処理されなかったのか? なぜ東電は有限責任を認められなかったのか? 歴史の「もし」に答える代替シナリオが、東電を維持したままの間接処理に収束する過程を、緻密な推理小説のような手際で次々と解き明かす。経済ジャーナリストでもある著者の取材能力のたまものであろう。

 原発は政治であり、事故は人災である。印象的なのは遠藤がしばしばくりかえす「厳しい世論を背景に」「世論がとうてい認めない」という表現だ。世論の動向は政治過程にあきらかな影響力を及ぼす。ひとりの無力は、だが非力ではないのだ。
 筆者は上野千鶴子、松井孝典、津村記久子、松尾スズキの4氏です。
 ■人物略歴
うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。


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くらしナビ・フェミニズム、新しい波/初物の小玉スイカとミニメロン、黄金桃も。

2016-07-30 16:23:58 | ジェンダー/上野千鶴子
初物の小玉スイカがとれました。
切ってみると、ちょっと過熟気味で実がやわらかくなっています。

一口大に切って、蜂蜜を少しかけて、
いつでも食べられるように冷蔵庫に保存。

西瓜のほかにも、野菜がどっさり。


樹でいろんだ貴重な無農薬の黄金桃(ゴールデンピーチ)。

3個とも虫食いですが、
手前の一個は熟して、良い香りがします。

左の2個は、とても香りがよくて、十分甘いです。
実が青い桃も、ちょっと堅めで、梨みたいです。

庭の西にネットをはったメロン類も、熟しています。

ツルは枯れてしまって、食べごろのおいしそうな実は、
先に動物(アライグマがハクビシン)にかじられているのですが、
何個か食べられそうな実が残っていました。

オチウリとミニメロン「かわいーな」です。

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ところで、
きょうは東京都知事選の最終日。
わたしは有権者ではないのですが、
岐阜から、鳥越さんが当選されることを祈っています。

数日前に毎日新聞のくらしナビに掲載された記事を紹介します。
最後のほうに、上野千鶴子さんのコメントがのっています。

   くらしナビ・ライフスタイル
フェミニズム、新しい波

毎日新聞2 016年7月27日 

 若い世代の女性たちが街頭やネットで、男性中心の側面を残す社会に「ノー」の声を上げている。日本では1970年、女性だけの街頭デモからウーマンリブが始まり、フェミニズム(女性解放の運動と思想)の波が起きた。40年以上を経て「フェミニズムの新しい波を起こしたい」と活動する人々を取材した。

 ●萌えキャラを批判
 「数十年前にフェミニストは『個人的なことは政治的なこと』と言ったが、今まだ言わないといけないぐらい抑圧はなくなっていないのではないか」。5月下旬、東京都内であった子育て世代の政策課題を語り合うイベント「保育園落ちた! 選挙攻略法2016」。ジャーナリストの治部(じぶ)れんげさん(42)の発言を聞く参加者の中に、ウサギのマスクをかぶった人たちがいた。イベントを企画した「明日(あした)少女隊」(明少隊)メンバーだ。

 明少隊は「すべての性の平等がみんなの幸せ」をコンセプトに、昨年4月に発足。日米の約30人が、ホームページ(http://ashitashoujo.com)やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)での情報発信を中心に、匿名で活動する。

 名が知られるきっかけになったのは昨夏、三重県志摩市が当時公認していた海女の萌(も)えキャラについて「行政が未成年の女性を性的に表現しているのは問題」と批判した署名運動だ。インターネットで約7800人の署名を集め、市は最終的に公認を撤回した。他にも交際相手の3歩後ろを歩く女性を「プロ彼女」と持ち上げた女性誌企画のパロディー版をつくったり、海外で制作された女性視点のCMから「世界フェミCM大賞」を決めたり。おしゃれなウェブデザインで、分かりやすく性の平等を訴える。

 メンバーで、米カリフォルニア州に住むアーティストの日本人女性、翠さん(36)=活動名=は、隊の結成理由を「日本人ママ友の悩みの深さに驚いたこと」と振り返る。美容院に行きたくても「いい母親でいなければ」と、子どもをベビーシッターに預けられない。「制度が整っても『心の壁』をなくさなければ意味がないと感じた」と語る。

 マスクをかぶり、匿名で活動するのは「容姿や学歴、肩書ではなくメッセージそのものに焦点を当ててほしい」との思いからだという。

 ●ネットで差別告発
 明少隊のユニークな特徴は「第4世代のフェミニスト」を名乗っていることだ。フェミニズムは、世界的に▽19世紀末ごろから参政権などの市民権獲得を目指した1波▽1960年代ごろから起きた、法制度だけでなく性別役割分担などの意識の変革を目指した2波−−が知られる。

 3波と4波は欧米で指摘される現象だ。90年代、2波の運動を担った人の娘世代がポップカルチャーなどを通して男女平等を訴えた3波に対し、2000年代後半から始まったとされるのが4波。人種や貧困なども含め複合的に社会的不平等を解決しようとする考え方やインターネットの活動が特徴で、性差別告発のキャンペーンが頻繁に起きている。「男性を敵対視する」など否定的なイメージを持つ人が少なくないとされるフェミニストの呼称を、歌手のビヨンセさんら著名人が積極的に名乗る動きも盛んだ。

 明少隊が「第4世代」を名乗るのは、こうした潮流に連帯の意思を示すほか「過去のフェミニストに敬意を表し、イメージの誤解を解きたい」との思いからだ。20〜30代の隊員は会社員や大学院生、主婦と多様で男性もいる。IT会社に勤める都内の男性(26)は「子どもの時から男らしさの押しつけに違和感があった」という。

 ●自分らしく生きる
 「周りの目線を気にせず、意見を言いたい!」。段ボール製のちゃぶ台をひっくり返して、心の“モヤモヤ”をはき出す−−。昨年7月に発足した「ちゃぶ台返し女子アクション」はこんなイベントを通し、女性が自分らしく生きられる社会を目指す10人ほどのグループだ。

 中心メンバーの鎌田華乃子さん(38)は米国発の「コミュニティ・オーガナイジング」という市民組織化の手法を広めるNPO法人の代表でもある。「学校は男女平等だったのに、社会に出たら意思決定層は男性ばかり。意見を言って排除されるのが怖かったが、活動でそう感じているのは自分だけではないと思えた」。これまでにちゃぶ台返しのワークショップを約10回催し、今年2月には明少隊と合同で、東京・表参道でパレードをして「私たちには力がある」と訴えた。

 若い世代のフェミニズムに詳しい大妻女子大の田中東子准教授(メディア文化論)は「今の30代以下の女性は働き続けるのが当たり前で、労働問題がより身近になったことがフェミニズムへの関心の高さにつながっている」と分析。「グループの活動は、私も声を上げても大丈夫とのメッセージになる」と評価している。【反橋希美】

 ●デモからスタート
 日本のウーマンリブは「ぐるーぷ・闘うおんな」などの女性グループが、1970年10月に初めて女性だけの街頭デモをしたのが始まりとされる。草の根の女性団体が各地に生まれ、女性学も発展。99年には男女共同参画社会基本法が施行されたが、こうした流れに反対するバックラッシュ(揺り戻し)の動きもあった。

 現代の若い世代の運動について、上野千鶴子・東京大名誉教授(女性学)は「SEALDs(シールズ)など若者の社会運動や全国各地で開催されている『怒れる女子会』を見ても、怒りは最も女に禁じられた感情といわれてきたが、受忍限度を超えたのか、女性の変化を感じる」と指摘。「時代背景が異なっても、女の生きづらさはなくなっていない。フェミニズムに偏見のない世代が新鮮な再発見をしているのでは」と分析する。


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読書日記:社会学者・上野千鶴子さん 「悪魔の光線」以後の世界で/優雅に咲くカサブランカ

2016-07-15 20:39:06 | ジェンダー/上野千鶴子
谷汲に行って、百合を生産しているところから直接カサブランカを仕入れてきて、
友人のお誕生日プレゼントに発送しました。
カサブランカを全国に発送しているお店には、
年一回この時期に行くので、「今年も来たね」と覚えていてもらえます。

一束(3本)分を自宅用にのこしておいて、
水あげして花瓶に挿して、薪ストーブの上に置きました。

活けてすぐに一輪咲いて、いまは3輪咲いています。
品質と花持ちが良くて、最後の一輪まで咲ききるので、長いあいだ楽しめます。

カサブランカの優雅に咲く白い大きな花は、
百合のなかでも別格で、やっぱりいちばん好きです。

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7月に咲くカサブランカを毎年お送りしているのは、上野さん。
ちょうどお誕生日に、毎日新聞夕刊に、読書日記が掲載されました。

  読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 「悪魔の光線」以後の世界で
毎日新聞 2016年7月12日

 *6月14日〜7月11日
 ■キュリー夫人伝(新装版)(エーヴ・キュリー著、河野万里子訳・2014年)白水社・2808円
 ■マダム・キュリーと朝食を(小林エリカ著・2014年)集英社・1404円
 ■光の子ども 1、2巻(小林エリカ著・2013、2016年)リトルモア・1512、1728円


 3・11から4回目の国政選挙で、原発は争点の中心にはならなかった。わたしたちはあの悪夢を、もう忘れてしまったのだろうか?

 放射能の発見から世界を何度でも破壊できる核兵器の開発まで、わずか半世紀足らず。その発見者、ノーベル賞を2度受賞した女性科学者、マリー・キュリーの次女エーヴ・キュリーによる伝記「キュリー夫人伝」が、新訳刊行された。

 大きくなったら何になる?……キュリー夫人みたいになりたい。どれだけの女の子たちがそう言ってきたことだろう。長じてのち、「キュリー夫人みたいになる」ことがどんなに至難かがわかるのだけれど。とはいえ、彼女の存在はどれほどのリケジョたちを励ましただろうか。

 夫をむごい馬車の事故で亡くしてから、彼女は38歳の若い未亡人になる。それから1934年に66歳で死ぬまでのおよそ30年間に世界を股にかけて獅子奮迅の働きをする。最後は長年の放射能実験のせいで、白血病でぼろぼろになって死ぬ。まだ放射能の怖さは知られていなかった。

 「悪魔の光線」を見つけてしまった人類のその後。科学の発展はやまず、やがてマンハッタン計画を経て、広島、長崎に原子爆弾が落とされるまではあっというまだった。

 若い女性作家、小林エリカが「マダム・キュリーと朝食を」で、放射能汚染以後の世界を描く。フクシマ以後の街で、自由になった猫が主人公だ。街も公園のブランコも、猫も光る。人間には目に見えない「光」が、猫には見える。時空を超越して、ラジウム発見以前と以後の世界を文章の力だけで縦横に旅する。破局の予感に胸がしめつけられるようだ。なぜなら私たちはその後、を知っているから。

 小説家かと思っていた小林エリカに、「光の子ども」というコミックがあることを知った。13年に1巻が出てから3年かけて2巻目が出て、完結した。これをコミックと呼ぶべきだろうか。あるいはコミックエッセイと? たしかに絵と吹き出しとコマ割りはある。ダイナミックなコマ割りの構図のなかに、核分裂の数式が書かれ、岡崎京子の線を思わせるタッチで、キュリー夫人の一生が、彼女の生きた世界史の文脈に織り込まれて、鮮明に描かれる。破滅の予感が全編に漂う。そして最後は……広島の焼け跡だ。それを見ているのは現代の少年、光と猫だ。破局を知っているのに、止めようとしても止められない人類の運命。

 78年生まれの小林の世代には、抜きがたい終末感が色濃くあると感じてきた。95年の阪神大震災とオウム事件のときには、多感な10代だった。20代で9・11を経験し、30代で3・11を経験している。それにしても、中村文則が「マンガ表現の最先端」と呼ぶ彼女の表現を、いったいどんなジャンルと呼べばよいのだろう。日本のコミック文化が、今や世界中どこにもないユニークな達成を生んだ。あまりにユニークなので、誰にも、どの分野においても、評価することがむずかしいだろうとすら思わされる。この世代は言語表現以前に映像による自己表現を学んだ世代だ。端倪(たんげい)すべからざる才能である。

 マダム・キュリーがもし放射能を発見していなかったら。ヒロシマ、ナガサキはなかったのか。そしてフクシマは? だが、誰もそれを止められない。そして破局のあとで、「世界の終わり」のような光景を目にしながら、それでも生きていかなければならない「光の子ども」たち……ポスト3・11の世代は、どんな選択をするだろうか。

 筆者は上野千鶴子、松井孝典、津村記久子、松尾スズキの4氏です。
 ■人物略歴
うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。 


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【悩みのるつぼ】Q認知症予備軍夫婦への助言を:A(上野千鶴子)簡単な方法は距離を置くこと/薄紫のセイヨウニンジンボクの花

2016-07-05 09:40:35 | ジェンダー/上野千鶴子
薄紫のセイヨウニンジンボクの花も咲きました。
花の少ない夏に、すすしげに長く咲き続けます。


 セイヨウニンジンボク(NHKみんなの園芸) 
セイヨウニンジンボクとは 
セイヨウニンジンボクは、花が少なくなる7月から、さわやかなスミレ色の花を咲かせます。生育旺盛で育てやすい落葉低木ですが、あまり栽培されていません。ハマゴウ属には約250種が含まれ、主に熱帯に分布します。
日本にもハマゴウ(Vitex rotundifolia)、ミツバハマゴウ(V. trifolia)が自生します。このなかで、寒さにも強く、花が美しいことから栽培されるのが、セイヨウニンジンボクです。
花には芳香があり、葉にも香りがあり、開花期も非常に長いのが特徴です。樹高は3mほどになり、枝も広く張るため、栽培するには多少広い場所が必要ですが、開花時にはひときわ目立ちます。葉は、5~9枚の手のひら状になり、花のない時期でも楽しむことができます。
なお、ニンジンボクの名は、この葉が、チョウセンニンジン(Panax ginseng)に似ることに由来します。
半日程度は日が当たる場所から日なたで、寒風が当たらず、水はけのよい場所であれば、特別な管理をしなくても、毎年よく花を咲かせます。 

セイヨウニンジンボクの育て方


切り戻した二番花のバラ
  


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話しは変わりますが、
土曜日の朝日新聞beの「悩みのるつぼ」の、
先週の回答者は上野千鶴子さんでした。
「認知症予備軍夫婦への助言を」の当事者には
ちとはやいのですが、他人事ではありません(笑)。

 【悩みのるつぼ】認知症予備軍夫婦への助言を
2016年7月2日 朝日新聞be

 ●相談者 男性 81歳
 私は81歳、妻は78歳、ふたり暮らしの夫婦です。近くに親戚はおりません。

 私たちは検査などで認知症と判断されたことはありませんが、それぞれの最近の日常生活および、ふたり一緒の生活を振り返ってみると、私たちは明らかに、いわゆる認知症の予備軍に接近しつつあることを感じています。

 短期、長期の物忘れ、持続するうつの状態、ささいなことへの怒りの爆発、ぎこちないふたりの間のコミュニケーション、お互いに対する思いやりの不足、時にはいわれのない嫌悪感の表出、徘徊(はいかい)(家出?)への誘惑感など……。これらは、明らかに認知症的夫婦の不幸な関係の現れと言わざるを得ません。

 以前は、このような関係では決してありませんでした。

 ふたりともなんとかしてこの意識的、無意識的な逆境から脱出したいと苦闘しておりますが、具体的な方策が見当たらないのです。

 最近、マスコミで高齢化社会が抱える問題として、認知症が取り上げられることが多いと思いますが、片方だけではなく、夫婦それぞれふたりともが日常的にこの問題をシェアしているようなケースに焦点があてられることは、あまりないように思います。

 今後どうしたらいいか、何か解決のきっかけとなるご助言をいただければ幸甚です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ○回答者 社会学者・上野千鶴子 
簡単な方法は距離を置くこと


 目からウロコ、のご相談でした。老老介護、認認介護については問題にされてきましたが、夫婦がふたりとも健康に暮らしているあいだは、行政も地域も問題ないものと見なしてきました。ですが、ふたりでいるからこそ、起きる問題もあるのですね。「以前はこのような関係では決してありませんでした」とおっしゃる反省的意識は十分に知的ですし、予備軍とはいえ認知症とは思えませんが、危機感はひしひしと伝わります。

 大阪の開業医、辻川覚志さんは『老後はひとり暮らしが幸せ』(水曜社、2013年)で、データにもとづき、ふたり暮らしの生活満足度がもっとも低いと実証しておられます。あいだに緩衝材がないふたり暮らしは、加齢に伴い、お互いに許容限度が下がったり気が短くなったりして、相手がいることがストレス要因になるんでしょうね。精神科医の高橋幸男さんは、独居の認知症者のほうが、同居の認知症者よりも穏やかに暮らしているという発見をしておられます。独居者には自分を否定する同居者というストレスがないからです。このままどちらかの認知症が進んで一方が他方を介護する関係になると、ストレスが高じて虐待も起きそう。おおこわ。

 いちばん簡単な方法は、ストレス源を視界からなくすこと。距離を置いて、接触を必要最小限に。家が十分に広ければ家庭内別居をしてください。あるいは一方が高齢者住宅や施設に移転するか。DV夫に怯(おび)えて暮らしていた高齢の妻が、要介護になって施設入居してから、初めて夜ぐっすり眠れた、という例もあります。それともできるだけ日中は出歩いて、顔を合わせないようにするか。公共図書館やコミュニティーカフェは、「きょういく(今日行く)」と「きょうよう(今日用)」を求める高齢者の「避難場所」になっています。

 もうひとつの方法は、ふたりのあいだに緩衝材を置くこと。辻川先生も同居家族がふたりより3人、さらに4人のほうがより満足度が高まる、と指摘しておられます。出て行った娘か息子に帰ってきてくれるように頼むか、あるいは猫か犬を飼うか。とはいえ、家族が増えるとその分お悩みも増えるので、辻川先生の結論は「老後はひとりぐらしが一番!」。なにしろエビデンスがあるから説得力があります。夫婦といえども他人は異文化、異文化はストレス……あたりまえのことです。それに耐えるのは愛があるあいだだけ、なんですよね。


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女を、沖縄を、なめるな 上野千鶴子・東京大名誉教授NPO法人WAN理事長

2016-06-01 21:37:20 | ジェンダー/上野千鶴子
市道からの上がり口のサツキが咲きはじめました。
源平花桃の陰になるので、花付きが悪かったのですが、
今年はたくさん咲いています。

昨年思い切って剪定したのがよかったのか、
花桃の枝を整理したのがよかったのでしょうか。
  

坂の反対側のハクモンレンの下には、白のサツキが一本、
  
朱赤のサツキが数本咲いています。
  

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ところで、
P-WANセレクシニュースをアップしようと、
ネットに流れるニュースを見ていたら、
上野千鶴子さんの「女を、沖縄を、なめるな」が 琉球新報に載っていました。

週刊朝日のwebには、医師の帯津良一さんとの対談。

上野さんの本は、もちろん本棚にたくさんありますが、
ホリスティック医学の帯津さんの本も、何冊か持っています。

  女を、沖縄を、なめるな 上野千鶴子・東京大名誉教授NPO法人WAN理事長
2016年5月31日 琉球新報

 いつまでこんなことが続くのか。いつまで我慢し続けなければならないのか。翁長知事は「沖縄の怒りは爆発寸前です」と語った。米軍軍属による沖縄女性遺棄事件のことである。
 米政府の統治下にあったときから、沖縄県民は、米軍にひき逃げされ、殴打され、暴行され、殺されてきた。わけても、もっとも弱く抵抗力のない若い女性が、犠牲になってきた。米兵の罪は問われず、容疑者はいつのまにか出国し、あるいは地位協定のもとで軽微な処罰で済んだ。なぜか。沖縄県民の生命が、それほど軽いからだ。またか…。何にも変わっていない、という沖縄県民の絶望は深いだろう。

 今回の容疑者は軍属だが、公務外の犯罪だから地位協定が適用されず、日本の法廷で裁かれることになるだろう。だが、地位協定が適用されなくても、容疑者が沖縄女性の生命を、どのようにもてあそんでもよいくらい、軽いものと見なしていた事実は消えない。容疑者は元海兵隊員だという。殺人の訓練を重ねてきたプロフェッショナルだ。

 つい最近、ソウルでは30代の男性が面識のない20代の女性を「女性が嫌いだ、無視されてきた」という理由で殺すという、女性嫌悪殺人が起きた。徴兵制のある韓国の男性たちもまた、軍隊で暴力を学ぶ。

 女性が暗い夜道を、ひとりでウオーキングしていたのが悪いのか? 少女がひとりで、人気のない道を下校したのが迂闊なのか? 勝手に送りつけられた腕時計を、ファンだという男に送り返したのが問題なのか?

 少女は拉致され、監禁され、女性は殴られ、暴行され、殺され、アイドルはつきまとわれ、脅迫され、刺される。愛や性欲からではない。どうにでもなるはずの相手を、恐怖でコントロールしたいという、支配の欲望からだ。コントロールできないことがわかると、逆ギレする。

 男のお守りはもうたくさんだ。女に甘え、女に依存し、女につけこみ、女をなめきり、それができないと逆ギレする。いいかげんにしろ、と言いたい。

 同じことを、男女を日本政府と沖縄に入れ替えて、言いたくなる。沖縄に甘え、沖縄に依存し、沖縄につけこみ、沖縄をなめきり、それができないと逆ギレする。いいかげんにしろ、と言いたい。日本政府と米軍への「思いやり」はもうたくさんだ、と沖縄は言いたいだろう。その怒りは本土の私たちに向けられている。(社会学) 


  意外?上野千鶴子は「最後はボケそう」
2016/5/30  週刊朝日

 がん診療とともに、養生にも造詣が深い名医・帯津良一先生(80)と養生の達人たちとの問答、今回のお相手は『おひとりさまの最期』の著書がある社会学者の上野千鶴子さん(67)。「おひとりさま」同士の対談で、上野さんは「最後はボケそう」と心情を明かした。

*  *  *
帯津さん(以下、帯):上野さんは東大の教授をやってらしたわけですが、大変でしたか。養老孟司さんとも対談したんですが、養老さんは「東大教授はもうしみじみ嫌になった」って言ってました。

上野さん(以下、上):私も定年より、2年早く辞めました。いろいろありましたが、この程度のことは大したストレスではないって思ってました。ところが、東大を辞めてみたら、まわりが、顔つきがよくなったって言うんです。なくなって初めて、そうか、あれがストレスだったのか、と(笑)。

帯:となると、今はとてもいい感じで過ごされているわけですか。

上:忙しいのは変わりませんが、ストレスフリーですね。今は自分がやりたいことだけやっていますから。

帯:体調はいかがですか。

上:いいですね。女の60代は更年期も終わって、いい年代かもしれないですね。帯津先生も60代がよかったと書かれていましたね。

帯:よかったですよ。60代から女性にもてるようになりました(笑)。70代もよかったですけど。健康のために何かやっていらっしゃるんですか。

上:それが何もやっていないんです。健康法みたいなものはまるでなくて、そういう取材をされると困ってしまうんです。

帯:でも、病気とは縁がなさそうですよね。

上:私は子どものときから丈夫ではなかったので、すぐに体にブレーキがかかるんですね。すぐ喉が腫れたり、口内炎になったり、休みになると熱が出たり。だから頑張りがきかない。それがいいんじゃないでしょうか。

 過労死とか突然死といった体力のある人の死に方はできないから、体のあちこちに小さな故障を抱えながら、それをだましだまし、ぐずぐずと長生きしてしまうという「一病息災」型ですね。で、最後はボケそうな気がしてます。

帯:ボケるんですか。

上:はい。なぜか、ボケる人は元教師が多いような気がします(笑)。まわりで、まさかあの人がと思う人がボケるのを見て、誰も老いからは逃れられない、みんな階段を下りていくんだなあ、いずれは自分にも来るんだって思っています。そのときに、子どもがいないおひとりさまの私はどうしようってずっと考えてきたんです。
※週刊朝日  2016年6月3日号より抜粋  


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