一人暮らしをしてみて、朝ごはんが大切なものであることを再認識している。あたり前のことで、今さらのようでもあるが、充実した一日を過ごすための基本がここに詰まっているような気がする。起床して窓を開けて風を部屋に通し、最初にお湯を沸かす。これには10分程かかるので、その間に米を研いで、圧力鍋に米と水を入れて火にかける。お湯が沸いたら、仏壇に灯明を灯し、お茶と水、お菓子をあげて手を合わせる。圧力釜から蒸気が出てきたら、火を細めて4分間、ここで火をとめて蒸れるの待つ。そしてみそ汁づくり。豆腐を切り、ネギを切り、鍋に水を入れて切った具をいれる。牡蠣や銀杏を投入して煮立つのを待つ。ほぼ手を止める暇のない流れるようなルーティンワークだ。このリズムが、一日の活力のもとである。
愛読書に向笠千恵子『日本の朝ごはん』がある。北海道の酪農家の牛乳豆腐から沖縄の長寿食まで、その家自慢の朝ごはん20膳が紹介されている。共通しているのは、ご飯の作る人のキビキビとした動作と、作ることに幸福を感じている笑顔だ。自分の作る朝ごはんは、これら手練れの人に及ぶべくもないが、一日の活力を朝ごはんに求めることは学ばせもらう。牛乳豆腐といえば、子どものころ食べたものだ。酪農家では毎朝牛乳を搾って出荷するが、子牛を生んだ乳牛の乳は初乳といって出荷できない。その初乳で作るのが牛乳豆腐だ。『日本の朝ごはん』には、それを作る様子が書いてある。懐かしいから、少し引用させていただく。
「ヒサさんは初乳を大鍋に一気にあけると、中火にかけた。沸騰寸前に火を弱める。カップ一杯の米酢を少量ずつ流し込む。乳たんぱくの主成分・カゼインが酸で固まる性質を利用するので、一種のチーズといえる。(中略)二呼吸ほど待つと、一センチ大の〝湯の花〟が表面に浮いてきた。網杓子でざるにとる。」
これを固めて冷蔵庫に入れておけば、いつでも取り出して食べられる。こんなものは、今の自分には食べる方法とてないが、かわりに市販しているチーズを常備している。ウォーキングの後、30分以内でこれを食べると、血液量が増えることが分かっている。