昭和6年生まれの姉が秋川雅史さんのコンサートのチケットをパソコンで買って欲しいと言う。調べてみたらコンビニのローソンで扱っていた。買い求めたチケットを届けに行くと、友だちが来ていると言う。知らない人ではなかったので、「それじゃー一緒にお茶でも飲みに行かない」と誘って、3人で姉が行きたかったという喫茶店へ出かけた。リニュアルを知らせるチラシに、「チラシご持参の方にスイートなデザートをプレゼント」とあるから、行きたかったと言うのだ。「3人で行って、3人とも貰えるかね」と心配するので、「大丈夫だと思うけれど、聞いてあげる」と答えた。
リニュアルした店は、テーブルが5卓ほどの小さな喫茶店だった。スイートなデザートはコーヒーを注文すればプレゼントされた。しかし、実際に出てきたデザートは小さなロールケーキを半分にしたものだった。客寄せのためのプレゼントなのだからこれくらいが当然の大きさだと思うけれど、姉は「写真にあるものとは違うね。もっとデコレーションが大きく載っているかと思った」と言う。それも、本人は私たちだけに聞こえるように言ったつもりなのだろうけれど、マスターが聞けば気分を悪くするくらいの声だった。どうして配慮がないのだろうかと私の方が慌てた。
その姉が「中国は尖閣諸島を自分のところの領土だと言うが、中国人はウソつきで、信用できない」と言い出した。私が「中国人にウソをつかれたことがあるの?」と聞くと、「中国人はみんなウソつきなの」と言う。そこで私は、日本に留学してきた中国人学生が両親から猛反対された話をした。彼女の両親は「日本人はとても野蛮な人たちで、女を見れば犯して殺す。そんな国へ行ってはならない」と言ったのだ。重慶で無差別爆撃にあい、親戚には日本兵に犯され殺された人がいた両親にとって日本は恐ろしい国だったのだ。
中国人はウソつきと姉は言うけれど、実際に中国人からウソをつかれたわけではない。昭和一桁の人たちに共通する中国人に対する意識だ。中国へ侵攻した兵士だった人たちは自分たちの仲間の行為を語らない。語りたくないのだ。戦争に理性は存在しにくい。それはどこでも同じで、ベトナム戦争で戦ったアメリカ兵にも帰国しても悪夢にうなされる人がいる。国の指導者は「国益」のために戦争を始めるけれど、戦場に送り出された兵士は生きて帰っても心は傷ついている。
愛国少女であった姉は、ひとりの中国人も知らないのに、「中国人はウソつきで、野蛮で、文字も書けない」と信じている。「みんなが領土の取り合いをしたらどうなるの?」と聞いても、「中国人に負けていてもいいのか!」と逆なことを言う。「いいじゃーないの。みんなが仲良く暮らしていけるなら。国なんか無くなった方が戦争しなくていいのではないの」と言うと、「日本がなくなったら困る」と言う。どうして?と聞きたかったけれど、止めて、「そうかなぁー」とだけ言った。姉はまだ何か言いたそうだったけれど、空気を読んで発言を控えた。ウーン、まだまだ元気だ。
リニュアルした店は、テーブルが5卓ほどの小さな喫茶店だった。スイートなデザートはコーヒーを注文すればプレゼントされた。しかし、実際に出てきたデザートは小さなロールケーキを半分にしたものだった。客寄せのためのプレゼントなのだからこれくらいが当然の大きさだと思うけれど、姉は「写真にあるものとは違うね。もっとデコレーションが大きく載っているかと思った」と言う。それも、本人は私たちだけに聞こえるように言ったつもりなのだろうけれど、マスターが聞けば気分を悪くするくらいの声だった。どうして配慮がないのだろうかと私の方が慌てた。
その姉が「中国は尖閣諸島を自分のところの領土だと言うが、中国人はウソつきで、信用できない」と言い出した。私が「中国人にウソをつかれたことがあるの?」と聞くと、「中国人はみんなウソつきなの」と言う。そこで私は、日本に留学してきた中国人学生が両親から猛反対された話をした。彼女の両親は「日本人はとても野蛮な人たちで、女を見れば犯して殺す。そんな国へ行ってはならない」と言ったのだ。重慶で無差別爆撃にあい、親戚には日本兵に犯され殺された人がいた両親にとって日本は恐ろしい国だったのだ。
中国人はウソつきと姉は言うけれど、実際に中国人からウソをつかれたわけではない。昭和一桁の人たちに共通する中国人に対する意識だ。中国へ侵攻した兵士だった人たちは自分たちの仲間の行為を語らない。語りたくないのだ。戦争に理性は存在しにくい。それはどこでも同じで、ベトナム戦争で戦ったアメリカ兵にも帰国しても悪夢にうなされる人がいる。国の指導者は「国益」のために戦争を始めるけれど、戦場に送り出された兵士は生きて帰っても心は傷ついている。
愛国少女であった姉は、ひとりの中国人も知らないのに、「中国人はウソつきで、野蛮で、文字も書けない」と信じている。「みんなが領土の取り合いをしたらどうなるの?」と聞いても、「中国人に負けていてもいいのか!」と逆なことを言う。「いいじゃーないの。みんなが仲良く暮らしていけるなら。国なんか無くなった方が戦争しなくていいのではないの」と言うと、「日本がなくなったら困る」と言う。どうして?と聞きたかったけれど、止めて、「そうかなぁー」とだけ言った。姉はまだ何か言いたそうだったけれど、空気を読んで発言を控えた。ウーン、まだまだ元気だ。