monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

森達也「東京スタンピード」

2009年07月08日 | 読書日記

 森達也の「東京スタンピード」(毎日新聞社)を読みました。
 「スタンピード」。聞きなれない単語ですね。「家畜の集団暴走」って意味です。それをこの本では人間の暴走に使ってます。わけもわからず家畜の群のように暴走し集団虐殺へと走る人間達…。近未来(2014年)の東京が舞台の小説です。
 不合理な殺人・傷害事件の増加などによって、人々は危機意識を強め、自衛手段として特定の弱者へのジェノサイドを決行する。ってストーリーでしょうか。
 現代の様相とそのままつながる部分が多く、“近い将来、ありえるかもしれない”と思いながら読めました。が、暴動・虐殺へと発展する部分には、あまり説得力を感じることができませんでした。(国民の大多数がサッカーに熱狂している、という設定が、サッカーにも野球にも興味がない自分には、ムリだった。)
 いっそのこと、主人公も虐殺する側になっちゃう方が、小説としては怖くなって、良かったのかも、とか思いました。

 著者の警告というかメッセージ性の高い小説なので、フィクションというよりはルポのような印象を受けました。
 著者の持ってる危機感って、かなり前から住井すゑとか加藤周一とかが言ってたことと、根は同じかな、という気がします。森達也の場合はより具体的に、《普通の人間達が虐殺する側の人間になる》という未来図を描いてるわけだけど。
 あ、あと、“メディアの関与”ってのが付加されてるか。流す情報を選択することが、集団意識を操作することにもなりうる、という主張は目新しいものではないけれど、参考資料などに興味を持ちました。

 人名の「松島」が「松嶋」になっちゃってたとこが2ヶ所あったので、誤植かなーと思います(162ページ×2)。
 あと、「封神演義」の説明はアレでいいのかな~? 殺戒→殺劫=殺人衝動・殺人欲求、ってのは安能本の解釈だよね。広く普及してるのはこの解釈だから、ってことなのかもしんないけど……。