しろたへの色はまがひぬあは雪のかかれる枝のむめのはつ花(嘉元百首)
いづれをかわきて折らまし梅の花えだもたわわに降れるしらゆき(新勅撰和歌集)
梅の花にほひも雪にうづもればいかにわきてか今朝は折らまし(玉葉和歌集)
かすめどもかくれぬものは梅のはな風にあまれる匂ひなりけり(風雅和歌集)
あさみどり春の空より散る雪にこずゑの梅もにほひぬるかな(新千載和歌集)
おほぞらは梅のにほひにかすみつつくもりもはてぬ春の夜の月(新古今和歌集)
月夜にはそれとも見えず梅のはな香をたづねてぞ知るべかりける(古今和歌集)
軒ちかきむめのこずゑに風すぎてにほひに覚むる春の夜の夢(秋篠月清集)
山里は垣ねの梅のうつり香にひとり寝もせぬここちこそすれ(後拾遺和歌集)
わがやどに咲きたる梅の月きよみ夜な夜な見せむ君をこそ待て(古今和歌六帖)
ねやちかき梅のにほひに朝な朝なあやしく恋のまさるころかな(後拾遺和歌集)
あかざりし君がにほひの恋しさに梅の花をぞけさは折りつる(拾遺和歌集)
我妹子(わぎもこ)が植ゑし梅の木みるごとに心むせつつ涙しながる(万葉集)
年をへてかはらぬ梅のにほひにもなほいにしへの春ぞ恋しき(風葉和歌集)
梅が香にむかしを問へば春の月こたへぬかげぞ袖にうつれる(新古今和歌集)