「平家花ぞろへ」より、平知盛を花(というか木)にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」角川書店)
平知盛は、清盛の四男。壇の浦の戦いで平氏滅亡を見届けた知盛は、錨(いかり)をかついで(あるいは、鎧を二枚身に付けて)海へ身を投げ自害しました。
見目(みめ)よりはじめて、気色・事柄(ことがら)優(いう)に、よき人とおぼゆ。中宮の御はらからと申したるに、つゆあかぬことなく、めやすくこそ見え給ふめれ。
神無月朔日ころ、降りみ降らずみうちしぐれたる雲まより夕日かげときどき漏り出でて、いろいろに濃く薄きもみぢの、まことに錦をひきわたせるやうなるに、風すこし吹き出でて、下葉かつ散るほどにぞ思ひよそへ給ふ。
龍田姫織るやこずゑの唐錦(からにしき)しくものもなく見ゆる色かな