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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「陽炎(かげろう)の」という枕詞の用例

2015年02月14日 | 日本国語大辞典-か行

 日本国語大辞典・第二版では、「陽炎(かげろう)の」という枕詞の語釈として「地名「小野」にかかる。」とあり、1320年の「続千載和歌集」(土御門院)の和歌を早い用例としてあげてありますが、もっとさかのぼる例があります。ちなみに下記和歌は「新後撰和歌集(第十一・恋一、774・藤原為家)」(1304年)に入集しています。

しられじなかすみにこめてかげろふのをののわか草下にもゆとも
(14・新撰和歌六帖、第六帖、はるのくさ、1917)~1244年頃成立
『新編国歌大観 第二巻 私撰集編 歌集』角川書店、1984年、393ページ

 日国語釈には「地名・小野にかかる。」とあるのですが、日国用例を見ても他例を見ても、固有名詞とは思えないので、一般名詞「小野」にかかる枕詞なのかと思いました。語釈の参考として「→かぎろいの」となっていますが、そちらを見ても「小野」にかかる語釈はありません。
 手元の古語辞典の類を見ても「小野」にかかるという語釈自体がなく、何をもって「地名・小野にかかる」枕詞と認定しているのでしょうか。山城国の「小野」という地名で用いているのでしょうか。枕詞辞典などで調べてみたいと思います。

 以下に「かげろふの+小野」となっている他の和歌例をあげます(年代の早い順)。引用は日文研HPより。
 「平安朝歌合大成」の語句索引や「校註国歌大系」の総合索引にも他に用例はないので、1300年代頃に流行った用法と思われます。
 陽炎の立つ季節である「春」にひかれるのか、「かげろふの+春」という枕詞の用法にひかれるのか、春歌が多いです。

しられしな-かすみにこめて-かけろふの-をののわかくさ-したにもゆとも(新後撰和歌集・774・藤原為家)←前述同歌
しられしな-かすみにこめて-かけろふの-をののわかくさ-したにもゆとも(夫木抄・9675・為家)←前述同歌
かけろふの-をののふるえを-こすしほの-みなとやいつく-はるのゆふなき(夫木抄・10656・光俊)
かけろふの-をののくさはの-したもえに-つもるともなき-はるのあはゆき(文保百首・俊光・1203)
かけろふの-をののくさはの-かれしより-あるかなきかと-とふひともなし(続千載和歌集・1796・土御門院)←コレが日国用例
かけろふの-をののしはふの-すみれくさ-もゆるはるひに-いまやつむらむ(後普光園院百首_良基・16)
かけろふの-をののふゆくさ-かれしより-あるかなきかに-しももおくなり(延文百首・実夏・1858)
それとなく-かすむひかりや-かけろふの-をののふるえの-はるのよのつき(延文百首・有光・2412)
かけろふの-をののゆきまを-ふみわけて-あるかなきかの-わかなをそつむ(草庵集・25)
おとたてて-はやふきにけり-かけろふの-をののあきつの-あきのはつかせ(草庵集・416)←これは場所を特定してそう?
くもかかる-ゆふひはそらに-かけろふの-をののあさちふ-かせそすすしき(新拾遺和歌集・293)
かけろふの-をののあさちふ-うらかれて-あるにもあらぬ-あきのいろかな(慶運法師集・145)
なれもまた-おもひにもえて-かけろふの-をののあさちに-とふほたるかな(新葉集・235)
おくつゆも-あるかなきかに-かけろふの-をののあさちに-あきかせそふく(沙玉集_貞成親王・69)

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