百錬鏡
百錬鏡
鎔範(ようはん)は常規(じゃうき)にあらず
日辰と処所(しょしょ)と霊(れい)かつ奇(き)。
江心(かうしん)波上(はじゃう) 舟中(しうちゅう)に鋳(い)る
五月五日 日午(にちご)の時(とき)。
(略)
人間(じんかん)の臣妾(しんせふ)まさに照(てら)すべからず
背(はい)に九五飛天(きうごひてん)の龍(りょう)あり。
人人(ひとびと)呼びて天子(てんし)の鏡(かがみ)となす
われ一言(いちげん)の太宗に聞けるあり。
太宗は常に人をもって鏡(かがみ)となす
古(いにしへ)を鑑(かんが)み今を鑑(かんが)みて容(かたち)を鑑(かんが)みずと。
四海の安危(あんき) 掌内(しゃうだい)に居(を)き
百王の治乱(ちらん) 心中(しんちゅう)に懸(か)かる。
すなはち知る天子には別に鏡あるを
これ揚州の百錬の銅(どう)ならず。
(「漢詩大系12白楽天」集英社)
四つの海をただてのなかに照らすてふ君やくもらぬ鏡なるらむ 従二位行家
(夫木和歌抄~「校註国歌大系22」)
さみたれにとくるまかねをみかきつつてるひとみゆるますかかみかな
(能因法師集~日文研HPより)
後堀川院御時、五月五日といふ事をうへのおのこともによませさせ給けるにつかうまつりける 前大納言為家
みかきなす玉江の波のますかゝみけふよりかけやうつしそめけん
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
寄鏡恋 定嗣
ももねりのますみのかかみいにしへもかかる恋する影はうつらし
(宝治百首~日文研HPより)
明王の用(もちひ)し人の鏡 いにしへ今にくもらず 像(かたち)を鑑(かがみ)し百練(はくれん)は 箱の底にぞ朽(くち)にける
(究百集「明王徳」~「早歌全詞集」三弥井書店)