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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「一夏(ひとなつ)」用例

2016年06月30日 | 日本国語大辞典-は行

 「一夏(ひとなつ)」という単語の語釈に「①夏三か月の間。夏いっぱい。」という語釈があり、日本国語大辞典・第二版では、1559年辞書例が早い例としてあげてありますが、300年以上さかのぼる用例があります。

しきみつむときのまもなく山でらにわきて一なつはなたてまつる
(14・新撰和歌六帖、第六帖、しきみ、2518)
『新編国歌大観 第二巻 私撰集編 歌集』角川書店、1984年、400ページ

夏莚
やすくぬる夜はになのへそ一夏もとくへき法の莚ならすは
(草根集・03058)~日文研HPの和歌データベースより


古典の季節表現 夏 常夏・撫子

2016年06月30日 | 日本古典文学-夏

大伴家持石竹花歌一首
我が宿のなでしこの花盛りなり手折りて一目見せむ子もがも
(万葉集~バージニア大学HPより)

見わたせば向ひの野辺のなでしこの散らまく惜しも雨な降りそね
(万葉集~バージニア大学HPより)

春秋の花のなかにも常夏の匂ふ匂ひのたぐひなきかな
(天喜四年五月 頭中将顕房歌合~平安朝歌合大成2)

出居(いでゐ)あり、女なでしこを見る
咲きしより見つつ日頃になりぬれどなほ常夏にしく花はなし
(和泉式部集~岩波文庫)

からにしきしけるにはともみゆるかなこけちにさけるなてしこのはな
(左近権中将俊忠朝臣家歌合~日文研HPより)

 とこなつ
庭のおもにからの錦ををるものは猶常夏の花にさりける
(赤染衛門集~群書類従15)

 雨のふる夜つほねに人のありしつとめて大原少将入道のなでしこにさして
撫子のくれなゐふかき花の色も今宵の雨にこさやまされる
 御返し
雨水に色はかへれとくれなゐのこさも増らすなてしこの花
(赤染衛門集~群書類従15)

瞿麦帯露といへる心を 内大臣 
夏草のいつれともなき籬にも露の色そふとこなつの花 
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

瞿麦露滋といふことを 高倉院御歌 
しら露の玉もてゆへるませのうちに光さへそふとこ夏の花 
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす 式子内親王 
我のみはあはれともいはし誰もみよ夕露かゝるやまと撫子 
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

もろともにみむひともかなひとりのみをれはかひなきとこなつのはな
(万代集~日文研HPより)

御前の前栽の、何となく青みわたれるなかに、常夏のはなやかに咲き出でたるを、折らせたまひて、命婦の君のもとに、書きたまふこと、多かるべし。
  「よそへつつ見るに心はなぐさまで露けさまさる撫子の花
  花に咲かなむ、と思ひたまへしも、かひなき世にはべりければ」
  とあり。さりぬべき隙にやありけむ、御覧ぜさせて、
  「ただ塵ばかり、この花びらに」
  と聞こゆるを、わが御心にも、ものいとあはれに思し知らるるほどにて、
  「袖濡るる露のゆかりと思ふにもなほ疎まれぬ大和撫子」
  とばかり、ほのかに書きさしたるやうなるを、よろこびながらたてまつれる、「例のことなれば、しるしあらじかし」と、くづほれて眺め臥したまへるに、胸うち騒ぎて、いみじくうれしきにも涙落ちぬ。
(源氏物語・紅葉賀~バージニア大学HPより)