monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「動詞・形容詞・副詞の事典」(追加)

2009年06月19日 | 読書日記

 6月6日のブログで取り上げましたが、「動詞・形容詞・副詞の事典」(森田良行、東京堂出版)について、不審な点がもう1ヶ所見つかったので、書いときます。

 86ページの夏目伸六「父・夏目漱石」の引用文が不適当ではないか?

 この項目では、漢語サ変動詞の自動詞・他動詞について述べています。「自他のゆれは時に誤用をも生み出す」とあって、引用文
   「この小説を完成する迄は、文芸欄の仕事を一切小宮さんに
   引き受けて貰い」(夏目伸六「父・夏目漱石」)
を揚げています。
 文脈からいって、この引用文は誤用の例として揚げていると思うのですが、どう読んでも、私には誤用とは思えないのです。
 だって、「完成する」は、自動詞・他動詞両方に使いますよね?

 上の引用文に続いて揚げている二例目「土着の神々を降伏した」は、たしかに誤用と私も思いますが……。「降伏する」は自動詞のみなのに、他動詞として使ってるから、誤り、ってことですよね。

 ひょっとしたら、正しい例と誤用を合わせて紹介しているのかもしれませんが、それにしては説明不足です。それならそうとわかるように書いていただいた方がよいと思いました。


「樋口一葉和歌集」

2009年06月17日 | 日本古典文学-和歌

 樋口一葉の詠んだ和歌なら、古典和歌に近いのかな?と思って、「樋口一葉和歌集」(筑摩書房)を読んでみました。
 簡単にいえば、「一葉の和歌は、技法的には古典和歌に近いけど、自我の目覚めともいうべきものがあるので、やっぱり古典和歌とは別物だった」というところでしょうか。(分類するなら、近世和歌と近代和歌の間に位置する?)
 「石・心を+動かす」とか「濡衣を+脱ぐ」など、古典和歌には見られない用法があって、私としては違和感があるんですよねー。

 文筆活動を志す一葉が文体の選択に悩み、師である中島歌子に相談したところ、「文章であれ和歌であれ、大切なのは心を尽くして書くことである。表面的な文体や技法ではない。」と教えられた、という本書の解説(今井恵子)を読んで、感じ入ること頻り、でした。
 古典和歌の創作には一体どういう意味があるのか、しかも“題詠好き”なんて救いようがない? なんて自問してしまいました。

 題詠という方法では、あらかじめ作られた世界しか表現できない。ステロタイプ化した作品しか生まれない。規範を越えてしまうと評価されない。そこが古典和歌の限界で、近代短歌はそれゆえ題詠を否定したんだそうです。
 “マニエリスム”という単語も知りましたヨ。特定の伝統の型を踏襲する文学上の傾向を指す、んだそーです。6月16日のブログで書いた古典和歌の創作も、マニエリスム的ってことになるのかな?
 


創作古典和歌

2009年06月16日 | 日本古典文学-和歌

 古典和歌が好きでいろいろ集めて自分でアンソロジーとか作ってると、自分にも作れそーな気がしてきます。
 現代短歌とはまったく異なり、使用するのは古語のみ・用法も王朝和歌にならいます。
 名付けて、“創作古典和歌”。あるいは、擬古物語・擬古文ならぬ“擬古和歌”?

 しかし、私が思いつくぐらいだから、誰か先人がやってるだろうと思うのですが、そういう集まりをいまだ知りません。
 現代短歌を作っている人は、新聞だとか雑誌に投稿、という道がありますが、創作古典和歌はそういう発表の場がないようです。(少なくとも今のとこ、私は発見できていません。)
 唯一見つけたサイトは、「無尽和歌抄」という、高校教師・阿部泉さんのHP。自作和歌を左注付きで公開してます。歌語の説明も丁寧で、じっくり読んだらおもしろそうです。
 日本の古典文学や和歌を教えている大学教授あたりなら、趣味で作っている人がいそうなんですがねー。
 あ、ひょっとして「歌会始」って、古典和歌? これは、現在は国民の詠歌も募集してるようで、来年・2010年のお題は「光」だそうですが、私はも少し凝った歌題にしてほしいなーと思います。
 伝統文化を守る、って目的があるなら、皇族にこそ古典和歌を読んでほしいです。

 古典和歌の創作に関しては、引き続き探していこうと思ってます。


古語類語辞典

2009年06月15日 | 日本古典文学

 ワープロ作成文書のデータ移動作業を行っていると、過去の自分の興味・関心事がいろいろ出てきて、楽しーです。無茶苦茶地味な作業をチマチマやってたりしてます。そしてそれが途中で嫌になったのか、時間切れになったのか、「ココまでやって、打ち切り」とかいうメモが付いてて、途中で終ってるのも、笑える。

 しかし、前々から考えてたよーだが、『古語類語辞典』ってのがやっぱ欲しーなー。あるいは、古語のシソーラス。五十音順じゃなくって、主題別に単語が分類・配列してあるの。
 かつ、時代別が望ましい。私の関心年代は中古・中世なので、中古・中世の用例のみが引いてあるのがよい。
 今回、データ整理をしてたら、それっぽいのが出てきました。自分で作ろうとしてたのか、単に古語の勉強のためだったのか、人物名称とか住居、衣服、音楽関係、人物形容などの単語が用例とともに入力されてる。
 和歌の歌枕・地名は、特に熱心にやったらしい。これは国別にではなく、山・川・海とかに分けてある。

 『現代語-古語辞典』ってのも欲しーよなー、と思って作業をした跡もある。
 その後、「古語類語辞典」(芹生公男、金田一春彦、三省堂、1995年)が出て、“同じこと考える人がいるもんだー”と思ったもんです。(ちなみにこの本の配列は、五十音順。これの主題別も、あるとよいのに……。)
 既存の辞書等で間に合うならそれでいーし、なけりゃー自分で作りましょう。