monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

有島武郎作詞「遠友夜学校校歌」

2010年02月16日 | 読書日記

遠友夜学校校歌 有島武郎

    一
沢なすこの世の楽しみの
  楽しき極みは何なるぞ
北斗を支ふる富を得て
  黄金を数へん其時か
オー 否 否 否
  楽しき極みはなほあらん。

    二
剣はきらめき弾はとび
  かばねは山なし血は流る
戦のちまたのいさほしを
  我身にあつめし其時か
オー 否 否 否
  楽しき極みはなほあらん。

    三
黄金をちりばめ玉をしく
  高どのうてなはまばゆきに
のぼりて貴き位やま
  世にうらやまれん其時か
オー 否 否 否
  楽しき極みはなほあらん。

    四
楽しき極みはくれはどり
  あやめもたへなる衣手か
やしほ味よきうま酒か
  柱ふとしき家くらか
オー 否 否 否
  楽しき極みはなほあらん。

    五
正義と善とに身をさゝげ
  欲をば捨てて一すぢに
行くべき路を勇ましく
  真心のまゝに進みなば
アー 是れ 是れ 是れ
  是れこそ楽しき極みなれ。

    六
日毎の業にいそしみて
  心にさそふる雲もなく
昔の聖 今の大人(うし)
  友とぞなしていそしまば
アー 是れ 是れ 是れ
  是れこそ楽しき極みなれ。

    七
楽しからずや天の原
  そら照る星のさやけさに
月の光の貴さに
  心をさらすその時の
アー 是れ 是れ 是れ
  是れこそ楽しき極みなれ。

    八
そしらばそしれつゞれせし
  衣をきるともゆがみせし
家にすむとも心根の
  天にも地にも恥ぢざれば
アー 是れ 是れ 是れ
  是れこそ楽しき極みなれ。

    九
衣もやがて破るべし
  ゑひぬる程もつかの間よ
朽ちせでやまじ家倉も
  唯我心かはらめや
アー 是れ 是れ 是れ
  是れこそ楽しき極みなれ。

(「有島武郎全集第一巻」筑摩書房、1980年)


 遠友夜学校とは、新渡戸稲造が札幌に設立した、勤労青少年に無料で学びの場を提供する夜学校です。当時、小学校教育はすでに義務化されていましたが、生活のために働いていて学校に通えない子どもも多かったのです。昼間は家計を助けるために働き、夜、この遠友夜学校に集まり、50年間で約5,000人が学んだとのことです。
 授業料は無料、教科書など教材もすべて学校側が用意し無償で提供。夜学校の教師は、新渡戸稲造の友人や札幌農学校の学生など有志がつとめたそうです。
 有島武郎は、この遠友夜学校に札幌農学校の学生であったときからかかわっていました。熱心な教師の一人で、夜学校の行事には極力時間を割いて参加し、生徒からは兄とも父とも慕われた存在であったといいます。明治42年1月から大正4年3月までの間、遠友夜学校の代表をつとめ、校舎の改修増築に奔走したり、夜学校の資金を道庁から助成してもらうことに成功しています。
 一身上の都合により札幌を離れたため、有島は遠友夜学校の代表を辞めましたが、その後も終世、維持会員の一人として多くの金を寄附し物的に援助したばかりでなく、札幌に来ると必ずこの夜学校を訪れて教師や生徒たちへ言葉をかけ、彼らの精神的な支えでありつづ けたそうです。
 この遠友夜学校の校歌は、有島武郎の作詞であるといわれています。(中里介山の作とする説もある。)有島の精神性を垣間見ることもできる歌詞だと思います。私は、8番9番の歌詞が気に入りました。

 不審に思ったのは「やしほ味よきうま酒」で、「やしほ(八入)」は色の濃さを言う単語だと思ってたのですが、この歌では、酒の味について使っています。こういう使い方の用例がほかにないか、探してみましたが、今のところ見つかっていません。

 いったいどんなメロディーなのか、と気になって、札幌の遠友夜学校記念室に問い合わせて楽譜を入手しました。はつらつとした若人らしいメロディーの曲でしたよ。

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ジャパンナレッジで源氏物語公開

2010年02月16日 | 日本古典文学

 有料(会員制)の知識探索サイト「ジャパンナレッジ」で、源氏物語が公開されました(2/1)。
 小学館の「新編日本古典文学全集」を公開する先陣が源氏ということらしいです。源氏は他のサイトで無料閲覧が可能なので、早く他の文学作品を公開してほしいです。そのころには会員登録してるかも。

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日本古写経データベースの公開

2010年02月15日 | 日本古典文学

 国際仏教学大学院大学で「日本古写経データベース」を公開。
 古典文学をやるなら、仏教も学ばねば、と思ってるのですが、とっつきにくいので、独学では難しそうです。こういう↑一次資料も利用できるようになりたいのですが……。
 お経の発声法にも興味があります。お経の読み方が能楽の発声の基礎になっているのだそうです。
 そうそう、禅寺の修行は掃除が8割、っていうハナシもどっかで聞きました。「身の周りを片づけて、精神もキレイにする」ってことらしいです。それを聞いたとき、“実際の掃除テクも身につくんじゃないか”と、よこしまな考えをいだいてしまいました。そんな理由でも受け入れてくれる短期修行の寺、ってないかしら?

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マンガ「孤高の人」佳境です

2010年02月15日 | 読書日記

 以前に書いてから(2009年2~3月)、随分とほったらかしにしてしまいましたが、ちゃんと読んでますヨ。連載は、まさに佳境です。(第9巻も2/19発売)
 前園蒼が後輩・武村を誘惑する女だ、という私の予想をカンペキに裏切って、かつての同級生・白井夕美がキーになる人物でした。(ちなみに結婚してるから、「白井」ではないんですけどね。)

 とうとう武村クンは、喰われちゃってます。女性ヌードを期待していたむきも多いと思いますが、反対に男性ヌードで意表をつき、女性読者の目を楽しませてくれました。
 このシーンであの描き方ってことは、今後も一般的なセックスシーンの絵が登場することはなさそう、って気がします。(ゲイジュツ的な描き方、っていうんでしょうか。でも、ちょっと残念……。) 

 このあと、原作では、文太郎は結婚して山から遠ざかり――って展開なのですが、コミックではどーなるのでしょう? かなり翻案してるので、予想がつきません。
 が、あえて勝手に想像するなら、 ――文太郎が故郷で出会った運命の相手は、美しく成長した、あの少女だった。彼女は高校卒業後、医療(あるいは福祉)系の仕事に就いており、文太郎の親のヘルパーか何かで働いていた。そして、親の強いすすめで結婚。(そのためには、文太郎がどっかに正社員として雇用されてた方が良いのか……。)

 せっかく硬派で来てるので、いっそのこと文太郎の恋愛話は飛ばしてしまい、あくまで山岳メインで行く、って手もあるのかもしれませんね。

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塚本邦雄の「詩歌博物誌」

2010年02月13日 | 日本古典文学

 塚本邦雄の「詩歌博物誌」(弥生書房)の其之壱・其之弐、を読みました。和歌と関連ありそうな部分を中心に飛ばし読みですが…。

 あとがきを読むと、日本語の乱れに憤慨する著者の姿勢がはっきりとあらわれていて、いっそほほえましいくらいです。そのため、この本は旧仮名遣いで書かれていて、内容が近現代なのに言葉遣いはレトロ、という不思議な感覚になったりもします。
 著者の薀蓄のアレコレには、ひたすら“脱帽”。ふかみぐさ(=牡丹)の表記が、「深見草」という当て字ではなく「渤海草」であるというのは、広辞苑にも載ってない、という部分は、思わずメモしてしまいましたよ。椿や万珠沙華は合辨花であるので「散る」とは言わない、というのも興味深かったです。

 同著者の「王朝百首」(講談社文芸文庫)という本が、去年、出ているようなので、こちらも是非読んでみたいです。それから「恋 六百番歌合」(文芸春秋)、「源氏五十四条題詠」(ちくま学芸文庫)も、機会があったら読みたいです。(特に、源氏物語の巻名を詠み込んだ歌を集めてるので、興味津々……。)

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