monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

時鳥(ほととぎす)に寄せて

2015年05月27日 | 日本古典文学-夏

わつらはせ給ふける時、鳥羽殿にて時鳥鳴けるをきかせ給ふてよませ給ふける 鳥羽院御製
つねよりもむつましきかな時鳥しての山路の友とおもへは
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

人のもとに侍りけるに俄にたえいりてうせなむとしけれは、しとみのもとにかきいれておほちにをきたりけるに、露のあしにさはるほと郭公のなくをきゝていきのしたによめる 田口重如
草のはにかとてはしたり郭公しての山ちもかくや露けき
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

うみたてまつりたりけるみこのなくなりて、又の年、郭公をきゝて いせ
しての山こえてきつらむ(イこえてやきつる)時鳥こひしき人のうへかたらなむ
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

かの山の事や語るとほととぎす急ぎ待たるる年の夏かな
(和泉式部続集~岩波文庫)

待賢門院の女房堀川の局のもとよりいひおくられける
この世にてかたらひおかむ郭公死出の山路のしるべともなれ
かへし
時鳥なくなくこそはかたらはめ死出の山路にきみしかゝらば
(山家集~バージニア大学HPより)

題しらす 従三位為信
つてにきくことそかなしきしての山かへらぬ道のうきに付ても
 此歌は、夢に郭公の松に居たりけるを、みれははねに青き色紙を結ひつけたり、とりてみれはなくなりしおやの手にて、「しての山帰らさりける道なれはことかたらへとことつくるなり」とあり、夢のうちにいみしうなきて、返しによめりける歌となん
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

四月廿三日、あけはなるゝ程、雨すこし降りたるに、東のかた、空にほとゝぎすの初音(はつね)鳴きわたる、めづらしくもあはれにきくにも、
あけがたに初音きゝつるほとゝぎす死出の山路のことをとはばや
あらずなるうき世のはてにほとゝぎすいかで鳴く音のかはらざるらむ
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

 同じ僧都の母の許に、故内侍ともこともに(「ともろともに」の誤か)卯の花見しことなどいひやりたれば
時鳥なき陰にても故郷の苔の垣根をいかに恋(こ)ふらん
 かへし
故郷の垣根にのぞみわれは泣く死出の田長(たをさ)はとぶらひもせず
(和泉式部集~岩波文庫)

  月たちて、「今日ぞ渡らまし」と思し出でたまふ日の夕暮、いとものあはれなり。御前近き橘の香のなつかしきに、ほととぎすの二声ばかり鳴きて渡る。「宿に通はば」と独りごちたまふも飽かねば、北の宮に、ここに渡りたまふ日なりければ、橘を折らせて聞こえたまふ。
  「忍び音や君も泣くらむかひもなき死出の田長に心通はば」
  宮は、女君の御さまのいとよく似たるを、あはれと思して、二所眺めたまふ折なりけり。「けしきある文かな」と見たまひて、
  「橘の薫るあたりはほととぎす心してこそ鳴くべかりけれ
 わづらはし」
  と書きたまふ。
(源氏物語・蜻蛉~バージニア大学HPより)

家に、郭公十首歌よみ侍ける中に 法性寺入道前関白太政大臣
ほとゝきすしての山路のくらきよりいかて五月のやみにきつらん
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

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中世王朝物語全集10の「しのびね」系図

2015年05月26日 | 日本古典文学

 「中世王朝物語全集10」(笠間書院)の「しのびね」系図(139ページ)で、よく分からない部分があります。「②四位の少将」の妹である「④女(桐壷女御)」はいったい誰の女御なのか、ということと、最初に「帝の春宮」として登場した人物はどこへ行ってしまったのか、ということです。
 「四位の少将」の妹である「④女(桐壷女御)」は、10ページでは「春宮の女御」なのに、97ページでは帝の女御であるというような書き方になっています。ちなみに139ページの系図では、「春宮の女御」となっています。
 10ページには「春宮の女御」という表現があるので「⑤帝」には東宮がいるはずなのですが、97ページでは「帝は、これまで皇子がお生まれでない」とあります。そうすると、10ページの「春宮」は「⑤帝」の兄弟なのかと想像したのですが、139ページの系図では、「⑤帝」には「忍び音の内侍」所生の「若宮=春宮」以外に、母親不明の「春宮」が記されているのです。何をもって10ページに登場している「春宮」を「⑤帝」の皇子と認定したのでしょうか。

 この矛盾点について、「解題」では特にふれられていませんが、散逸古本「しのびね物語」からの改作時の齟齬などなのでしょうか。

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近藤みゆき『王朝和歌研究の方法』

2015年05月24日 | 日本古典文学-和歌

 近藤みゆき『王朝和歌研究の方法』(笠間書院)をチラ読みしました。「春の山辺」の指摘が面白かったです。男性特有の表現を探したら、他にも隠れた意味のある用語があるかもしれません。

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「結ぼおる」用例

2015年05月19日 | 日本国語大辞典-ま行

 「結ぼおる(むすぼほる)」という単語には、「心が鬱屈(うっくつ)して晴ればれしなくなる。気持が発散せず憂鬱になる。気がめいる。気づまりとなる。」という語釈があり、日本国語大辞典・第2版では、『拾遺和歌集』からの用例を早い用例として採っていますが、さかのぼる用例があります。

朝ごとにむすぼほれてぞすぐしくるふりにし里をこふる心は
(40・千里集、97)
『新編国歌大観 第三巻 私家集編1 歌集』角川書店、1985年、148ページ

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「さ濡る」用例

2015年05月18日 | 日本国語大辞典-さ行

 「さ濡る」という単語の初例として、日本国語大辞典・第二版では、『初学和歌式』(1696年)からの例が添え得られていますが、600年近くさかのぼる用例があります。

月清みあけのの(ゝ)原の夕露にさゝめ分来(く)る衣(ころも)さぬれぬ
(雑廿首、野、仲実、1399)
『和歌文学大系15 堀河院百首和歌』明治書院、2002年、256ページ

さゝめかりのはらの露にさぬれつゝこひの衣の面影そたつ
(巻第四百二十三・後鳥羽院御集、詠五百首和歌、雑百首)
塙保己一編『続群書類従・第十五輯下(訂正三版)』続群書類従完成会、1981年、596ページ

なみのやの-うらにすむてふ-あまなれや-しほにさぬれて-ころもくちけり
(歌枕名寄・9642)日文研HPの和歌データベースより

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