徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

目尻にさした紅

2014-04-03 21:04:01 | 文芸
 川端康成の「伊豆の踊子」第四章に次のような一節が出てくる。


 「伊豆の踊子」は川端康成の若い頃の実体験に基づく小説といわれるが、川端は映画化にあたり、このシーンについて手記で次のように述べている。

「思い出になによりあざやかに浮かぶのは、踊子の寝顔の目尻にさした、古風な紅である。目と口、また髪や顔の輪郭が不自然なほどきれいだった。なのに、鼻だけはちょぽんといたずらにつけたように小さかった。」


 僕は、舞踊団花童の子たちの目じりにさした紅色を見ると必ず、「伊豆の踊子」のこの一節と川端の言葉を思い出し、胸が熱くなるのである。


HIROさん撮影写真より