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西村さんは昭和56年に恩師 本條秀太郎さんの作曲による「八代の花嫁唄」でビクターレコードよりプロデビューしたのだが、このレコードのB面が熊本民謡「ポンポコニャ節」(本條秀太郎編曲)。この西村さんの「ポンポコニャ」にまつわる面白い話を、郷土史家の鈴木喬先生が残している。以前にも紹介したことがあるが、再度ご紹介したい。
▼「熊本民謡『ポンポコニャー』と熊本名所地名考」(鈴木喬)より抜粋
この唄は早くから熊本の芸妓連の間に歌い継がれ、祝事や宴席・酒席の演し物として好評を博していたが、第二次世界大戦中に戦意高揚につながらないことと曲のむずかしさから敬遠されて次第に歌われなくなってしまい、戦後になって民謡が歌番組として取り上げられるようになっても、なかなか表に出てこなかった。しかしたまたま昭和五十三年の日本民謡大賞の県予選を経て、中国九州予選で西村直子が全国大会の出場権を得、その年の全国大会で特別賞を授賞してからその存在がアピールされ、金沢明子と原田直之が中心となって全盛を極めたNHKの「民謡をたずねて」にも彼女が此の唄を携えて出演し、その後暫くこの番組のアシスタントとして勤めていた。
ところがこの唄は声の高低・抑揚の変化が多く、相当の習練を積まないと容易には歌いこなせない。歌手として著名な水前寺清子が、西村直子よりあとに「民謡をたずねて」に出演してこの曲に挑戦したことがあるが、出だしの音の高さを間違えたために散々な結果に終わったことがある。歌の専門家でも歌い損なう位であるから、素人の歯が立たないのも当然であろう。そのせいか、いろんな会合の演し物に、芸者衆もなかなかこの曲を披露してくれないのである。
▼西村直子さんが歌う「水前寺成趣園」