徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

唄比丘尼(うたびくに)

2014-12-05 20:53:59 | 音楽芸能
 俳優、ラジオパーソナリティ、俳人、エッセイスト、芸能研究者等々、多彩な才能を発揮した小沢昭一さんが亡くなってやがて2年になる。小沢さんは特に大道芸について造詣が深かったので、彼の話を読んだり聞いたりしているうち、大道芸の歴史について興味を持つようになった。
 最近、「大道芸」というブログの存在を知って読み始めたら、まぁ興味は尽きない。そんな中に比丘尼の話が出てくる。比丘尼というのは尼僧のことだが、ここでいう比丘尼は、尼の姿をして諸国を巡り歩いた芸人や遊女のことである。江戸後期に書かれた古文書「只今御笑草(ただいまおわらいぐさ)」や「盲文画話(ももんがわ)」の内容を引用して紹介しているが、その中に、「十六、七から二十歳ぐらいの比丘尼が薄化粧して、無紋に浅黄ねずみ色、紡ぎのような小袖を着て、幅の広い帯を前結びにしていた。頭には納豆烏帽子とかいう、黒木綿を折った帽子を被っていた。牛王箱なのだろう、たい箱という黒塗りの文庫みたいなものを小脇に抱え小唄を唄いながら物乞いをすることもあった。」。「この比丘尼にも小比丘尼を二、三人連れている。また小比丘尼は粗末な木綿布子に手甲脚絆をつけ、黒木綿で作った角頭巾を被ていた。五合ほども入る短い柄杓を持つ、六歳から十一、二歳までの小比丘尼を連れているのは、御寮比丘尼という。四十余歳だが色っぽい姿で牛王箱を抱えて付き添い、町々や門々へ立って歌う。」などと紹介されている。
 これを読んですぐに花童の「念仏踊り」を思い出した。中村花誠先生の描いた世界はこれだったのね。