先日、フジテレビのトーク番組「トーキングフルーツ」に狂言の野村萬斎が登場し、MCの古舘伊知郎とトークを展開した。話題は映画「シン・ゴジラ」へ。実は「シン・ゴジラ」の動きは萬斎の動きをモーション・キャプチャーを駆使してデジタルデータ化したものがベースとなっているそうだ。古舘はその動きに込められた深奥な意味を問う。だが、萬斎はその動きよりも、「シン・ゴジラ」の存在そのものが「まれびと」と考えられると答える。「まれびと」とは、折口信夫が「翁の発生」等において使った用語。古来、日本には「まれびと信仰」が存在するとし、異界から来訪する霊的存在のことをいう。この霊的存在を、老人すなわち翁が擬して「神のもどき」の存在となる。能楽の世界で最高の存在である「翁」は、まさにそれを演劇化したものである。萬斎はこうした「神さび」が怪物の姿となって現れたとも解釈できると言いたかったのだろうが、古舘の理解がそこまで深くないことを察してか、それ以上説明することはしなかった。
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「翁」で狂言方の役割となっている「三番叟」を演じる野村萬斎
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「翁」の白色尉の舞(観世能楽堂開場記念公演より、シテ:観世清和)
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「翁」で狂言方の役割となっている「三番叟」を演じる野村萬斎
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「翁」の白色尉の舞(観世能楽堂開場記念公演より、シテ:観世清和)