徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

鏡が池のモデルは泰勝寺の池!?

2019-03-28 16:58:38 | 文芸
 2016年から2017年にかけて開催された夏目漱石記念年事業の一環として出版された「漱石の記憶」(熊日出版)を読んでいたら、興味深い文章に出会した。それは中村青史先生(元熊大教授)の「草枕 鏡が池のモデル」という小論だった。中村先生によれば「吾輩は猫である」の舞台となっている立田山麓の、寺田寅彦の下宿先や泰勝寺や五高などの描写から、漱石が泰勝寺の池を見ていたことは間違いなく、「吾輩は猫である」の「鵜の沼」や「草枕」の「鏡が池」のイメージは泰勝寺の池がモデルになったのではないかという説を唱えておられる。実際に現地で「鏡が池」の描写を思い浮かべながら池の周囲を見て回って確信されたようだ。一般的に「鏡が池」のモデルは小天の個人邸の庭池とされているが、そこがあまりにも小説のイメージと異なることに疑念を抱いておられたようだ。
 僕も小天の池を実際見たことがあるが、その昔、志保田の嬢様が身を投げたという物語ができるようなイメージではなかったので、この中村先生の説を読んで腑に落ちる気がした。


泰勝寺の池(現立田自然公園)


山本丘人「草枕絵巻」より「水の上のオフェリア(美しき屍)」